先に結論:子宮外妊娠(異所性妊娠)の画像診断
- 子宮外妊娠は、受精卵が子宮の内膜以外(多くは卵管)に着床した状態で、全妊娠の約2%に起こり、破裂すると腹腔内の大出血で命にかかわります。無月経・不正出血・下腹部痛が典型です
- 診断の基本は妊娠反応(hCG)と経腟超音波で、hCGが一定以上なのに子宮内に胎嚢が見えない場合に強く疑います。超音波で子宮の外の胎嚢・付属器の腫瘤・腹腔内の血液(血性腹水)を確認します
- CT・MRIは補助的ですが、出血の量の評価や、まれな部位(帝王切開瘢痕部・頸管・腹腔)の妊娠の確認に役立ちます
- MRIで子宮外の胎嚢(直接所見)を捉えられれば診断の確かさが高く、CTは血性腹水(腹腔内出血)の広がりをすばやく評価できます。妊娠中でも、超音波とMRIは胎児への危険が知られていない検査です
※妊娠の可能性があり、強い下腹部痛・不正出血・ふらつきがあるときは、すぐに受診してください。
子宮外妊娠(ectopic pregnancy)とは?

- 子宮体部内膜以外に着床し発育すること。全妊娠の約2%(Lin 2008)。
- 子宮外妊娠の約95%は卵管妊娠であり、手術例1800例の検討では膨大部妊娠が70.0%と最も多く、次いで峡部(12.0%)、采部(11.1%)、間質部(2.4%)、卵巣(3.2%)、腹腔(1.3%)と続いた(Bouyer 2002)。
- まれなものとして卵巣、頸部、子宮広間膜、大網、小腸間膜、脾、虫垂に着床することがある。
- クラミジア感染症など骨盤内炎症性疾患(PID)、子宮内膜症、骨盤内手術の既往、子宮外妊娠の既往などがリスクファクターとなる。体外受精・胚移植(in vitro fertilization and embryo transfer;IVF-ET)などの生殖補助医療の普及により発生頻度が増加している。
- 峡部や間質部のように内腔が狭い部位では筋層内で胎嚢が大きくなるため筋層が薄くなり、太い血管の多い着床部が腹膜腔に破裂して大出血を呈する(卵管破裂)。
- 一方、膨大部妊娠では内腔が広く筋層の伸展性がよいために胎嚢が内腔に突出し、この部分が破裂する(卵管流産)。そのため卵管留血腫を生じ腹腔内に流出する出血は少量にとどまることが多い。
- 未破裂であっても破裂による大量出血を生じ重篤となる可能性があるため、早期に正確な診断が必要となる。
- 妊娠初期には特徴的症状もなく、正常妊娠や切迫流産と鑑別が困難で、本来なら子宮内に胎嚢が見えてよい時期・hCG値なのに、エコーで子宮内に胎嚢が確認されない場合に疑われる。
- 卵管妊娠では妊娠週数が進むと胎嚢が増大、破裂し、腹腔内出血による急性貧血、低血圧、頻脈となり、ショック症状を呈する。
- 無月経、不正性器出血、下腹部痛は子宮外妊娠の3徴候と呼ばれる。
- 治療は手術(腹腔鏡下の卵管切除・卵管温存手術)が主体だが、状態が安定し条件を満たす例ではメトトレキサートによる薬物療法や経過観察が選択されることもある。
子宮外妊娠のエコー所見
- 付属器に嚢胞・充実成分が混在する腫瘤像を認める。腫瘤像に子宮外胎嚢を認め、その内部に卵黄嚢さらに胎児像、胎児心拍が確認されれば診断は確定する。子宮内には胎嚢像を認めず、肥厚内膜を認める。その他、腹腔内出血の所見を認める。卵管妊娠で最も多い超音波所見は、卵巣とは別に見える付属器腫瘤と、厚い高エコーの輪で囲まれた嚢胞(tubal ring sign)である。個々の所見は非特異的でも、子宮内外の所見が複数そろうと異所性妊娠に対する特異度は大きく上がる。
子宮外妊娠(破裂)のCT,MRI画像診断
血腫の同定
- 着床部位やその周囲に、反復性の出血を反映したT1、T2強調像ともに不均一な信号強度を呈する血腫を認める。腹腔内出血が少量であるときには、脂肪抑制T1強調像が有用である。
- 急性期の出血はデオキシヘモグロビンを反映してT2強調像にて低信号を呈し、出血性の腹水が低信号を呈することがある。血腫の描出にはT2*強調像が有用。
- ときに大きな卵管留血腫や卵管周囲血腫を生じることがある。
胎嚢、着床部位の同定
- 胎嚢の描出にはCTよりMRが優れている。異所性妊娠を疑った26例のMRI検討では、子宮外の胎嚢(直接所見)の正診率は92%で、卵管留血腫・付属器血腫・血性腹水といった間接所見の単独(39〜54%)より高く、直接所見または間接所見2つ以上を条件にすると正診率は100%でした(Takahashi 2013)。
- 胎嚢はT2WIで高信号を示す嚢胞を示す。T1WIで胎嚢および壁には出血を示す高信号領域を伴うことが多い。
- 胎嚢(T1WI低信号、T2WI高信号)は血流豊富な絨毛膜に囲まれている。早期相から強くリング状に増強される厚い壁を持つ嚢胞として描出される。
- したがって、MRIでは卵管に血腫があるかどうかを注意深く観察し、子宮内妊娠の可能性が否定できていれば、患者や婦人科医と合意のうえで積極的に造影を行って胎嚢の描出(良好な造影効果を示す嚢胞様構造)を試みるべき。
- 胎嚢が不明瞭でも、豊富な血流を反映し、着床部位周囲のflow void(血流による無信号))の増生や、周囲の卵管壁の造影増強効果を認める。
その他
- 妊娠に伴う子宮内膜の脱落膜化による内膜の肥厚を認め、卵巣出血との鑑別に有用である。
- 絨毛性疾患との鑑別には、異所性妊娠で子宮のzonal anatomyが保たれることや、血性腹水が存在することが鑑別に有用とされている。
- 診断が比較的困難とされる間質部や頸部妊娠においても、造影剤の投与によって絨毛組織を描出することにより着床部位を同定することが可能である。
子宮外妊娠のCTでわかること
腹痛で救急受診した女性では、妊娠がわかる前にCTが撮られ、そこで子宮外妊娠が見つかることもあります(Kao 2014)。CTでは次の点を確認します。
- 血性腹水(腹腔内出血):水より高い吸収値の液体が、ダグラス窩から肝臓や脾臓の周りまで広がっていないか。量が多いほど破裂を疑います。
- 凝血塊(血のかたまり):出血している場所の近くほど吸収値の高い血のかたまりがたまりやすく、出血源(どちらの卵管か)を推定する手がかりになります。
- 付属器の腫瘤:卵巣とは別の、リング状に造影される壁をもつ嚢胞(胎嚢)や、拡張した卵管(卵管留血腫)。
- 造影剤の漏れ出し:造影CTで血管の外に造影剤が漏れていれば、今まさに出血している所見です。
妊娠可能な年齢の女性で、腹腔内出血や骨盤内の腫瘤があれば、子宮外妊娠を常に考える必要があります(Kao 2014)。
妊娠中・妊娠の可能性があるときのCT・MRI
| 検査 | 妊娠中の考え方 |
|---|---|
| 超音波 | 放射線を使わず、胎児への危険は知られていない。子宮外妊娠の診断の第一選択 |
| MRI | 放射線を使わず、胎児への危険は知られていない。超音波でわからないときに追加する |
| CT | 放射線を使うが、ほとんどの検査では胎児に害が出る量よりずっと少ない。救急で必要なら控えるべきではない |
| 造影剤(MRIのガドリニウム) | 妊娠中は必要性が高い場合に限って使う。授乳は造影後も中断しなくてよい |
米国産婦人科学会(ACOG)の見解では、超音波とMRIは妊娠中の画像検査として第一に選ぶ検査で、CTなどが必要な場合や、すぐに使える場合には妊娠中でも控えるべきではないとされています(ACOG 2017)。
症例 20歳代女性 下腹部痛 妊娠反応陽性

子宮内腔には胎嚢を疑う所見を認めず、子宮外妊娠が示唆されます。
子宮左腹側に胎嚢を疑う所見があります。

左卵管の拡張および内部に血腫を疑う不均一な液貯留を認めており、卵管留血腫が疑われます。

またDouglas窩などには血性腹水を認めており、子宮外妊娠の破裂と診断され、緊急手術となりました。
手術の結果、左卵管妊娠破裂と診断されました。
子宮外妊娠の画像でよくある疑問(Q&A)
Q1. MRIで妊娠しているかどうかわかりますか?
子宮の中や外に胎嚢があればMRIで見えることがありますが、妊娠しているかどうかの確認は妊娠反応(尿・血液のhCG)と経腟超音波で行います。MRIは、子宮外妊娠の場所や出血の広がりがはっきりしないときに追加する検査です。
Q2. 子宮外妊娠は何週くらいで破裂しますか?
破裂の時期は着床した場所によって違います。内腔の狭い峡部や間質部では、胎嚢が大きくなると筋層が薄くなって破裂し、大出血になりやすいとされています。膨大部では卵管流産となり、出血が少量にとどまることが多いです。妊娠反応が陽性で強い腹痛・ふらつきがあれば、週数にかかわらずすぐに受診してください。
参考:
臨床画像 Vol.34 No.10増刊号,2018 P205
画像診断 Vol.36 No.14 2016 P1408
あわせて読みたい:侵入奇胎・絨毛癌(妊娠性絨毛性腫瘍)の画像所見
参考文献
- Bouyer J, Coste J, Fernandez H, et al. Sites of ectopic pregnancy: a 10 year population-based study of 1800 cases. Hum Reprod. 2002;17(12):3224-3230. PubMed
- Tamai K, Koyama T, Togashi K. MR features of ectopic pregnancy. Eur Radiol. 2007;17(12):3236-3246. PubMed
- Takahashi A, Takahama J, Marugami N, et al. Ectopic pregnancy: MRI findings and clinical utility. Abdom Imaging. 2013;38(4):844-850. PubMed
- ACOG Practice Bulletin No. 193: Tubal Ectopic Pregnancy. Obstet Gynecol. 2018;131(3):e91-e103. PubMed
- Lin EP, Bhatt S, Dogra VS. Diagnostic clues to ectopic pregnancy. Radiographics. 2008;28(6):1661-71. PubMed
- Kao LY, Scheinfeld MH, Chernyak V, et al. Beyond ultrasound: CT and MRI of ectopic pregnancy. AJR Am J Roentgenol. 2014;202(4):904-11. PubMed
- Committee Opinion No. 723: Guidelines for Diagnostic Imaging During Pregnancy and Lactation. Obstet Gynecol. 2017;130(4):e210-e216. PubMed
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