腹部CTや骨盤CTを読影していると、子宮内にY字型、T字型、線状、リング状の人工物を認めることがあります。
このような子宮内人工物を見たときに、まず鑑別に入れたいものがIUD(Intrauterine Device:子宮内避妊用具)です。
IUDは避妊目的で子宮内腔に留置される器具で、CTでは高吸収の人工物として見えることが多いですが、素材や種類によっては低吸収に見えることもあります。
今回は、CTで子宮内に人工物を認めたときに知っておきたい、IUDのCT所見、IUSとの違い、鑑別診断、位置異常・穿孔・感染などの合併症について整理します。
IUDとは?

IUDとは、Intrauterine Deviceの略で、日本語では子宮内避妊用具と呼ばれます。
子宮内腔に小さな器具を留置することで、避妊効果を得る方法です。一般に、T字型やY字型に近い形状のものが多く、CTでは子宮内に人工物として認められます。
腹部CTや骨盤CTでは、IUDが目的で撮影されるというより、別目的のCTで偶然見つかることが多いです。そのため、読影医は「子宮内に見える人工物が何か」を知っておく必要があります。
IUDとIUSの違い
IUDと似た言葉に、IUSがあります。
- IUD:Intrauterine Device、子宮内避妊用具
- IUS:Intrauterine System、子宮内黄体ホルモン放出システム
IUDは広い意味で子宮内避妊用具を指します。銅付加IUDなど、主に器具として避妊効果を示すものがあります。
一方、IUSは黄体ホルモンを子宮内で持続的に放出するシステムです。日本ではレボノルゲストレル放出子宮内システムとして知られるものがあります。
画像上は、IUDとIUSをCTだけで厳密に区別することは難しい場合があります。読影では、まず子宮内に留置された避妊・治療用デバイスとして認識し、位置異常や合併症の有無を確認することが重要です。
CTでのIUDの典型的な見え方
CTでIUDは、子宮内腔に位置する人工物として描出されます。
典型的には以下のような所見を示します。
- 子宮内腔にY字型またはT字型の構造物を認める
- 横断像では点状・線状・V字状・Y字状に見えることがある
- 冠状断像や矢状断像で形状と位置が分かりやすい
- 銅付加IUDなどでは高吸収の人工物として見える
- ホルモン放出型などでは比較的低吸収に見えることもある
CT横断像だけでは、子宮内の点状高吸収や線状構造に見えて分かりにくいことがあります。その場合は、冠状断像や矢状断像で再構成して、子宮内腔に沿っているかを確認すると判断しやすくなります。
症例 30歳代女性

子宮内に高吸収な人工物を認めています。

この人工物(異物)は横断像でも冠状断像でもY字型をしています。
子宮内避妊用具であるIUD(Intrauterine device)です。
IUDの素材によりCT濃度は異なる
IUDといえば、CTで高吸収に見える人工物をイメージしやすいですが、すべてのIUDが同じ濃度で見えるわけではありません。
銅付加IUDや金属成分を含むものでは、CTで明瞭な高吸収を示しやすいです。一方、ホルモン放出型デバイスや樹脂成分が主体のものでは、金属ほど強い高吸収を示さず、比較的低吸収または淡い線状構造として見えることがあります。
したがって、CTで子宮内に高吸収人工物がある場合だけでなく、子宮内にY字型・T字型・線状の低吸収構造を認める場合にも、IUD/IUSを鑑別に入れることが大切です。
子宮内人工物を見たときの鑑別診断
骨盤内に人工物を認めた場合、IUD以外にも複数の鑑別があります。
1. IUD・IUS
子宮内腔に沿ってY字型・T字型・線状構造を認める場合は、IUDまたはIUSを考えます。
子宮底部に横腕があり、子宮体部に縦軸が伸びるような形状であれば、典型的な位置です。
2. 子宮脱・骨盤臓器脱に対するペッサリー
高齢女性で腟内や子宮頸部付近にリング状の人工物を認める場合は、ペッサリーを考えます。
IUDは子宮内腔に留置されるのに対し、ペッサリーは腟内に留置されることが多いため、位置が鑑別のポイントになります。
3. 避妊リング・過去の婦人科デバイス
古いタイプの子宮内避妊具では、現在よく見るT字型・Y字型とは異なる形状を示すことがあります。
リング状、ループ状、コイル状などの形状を示すことがあるため、年齢や装着歴を確認することが重要です。
4. 手術クリップ・縫合材料
婦人科手術後や骨盤内手術後では、手術クリップや縫合材料が高吸収人工物として見えることがあります。
子宮内腔に沿っているか、術後部位に一致するかを確認します。
5. 腹腔内異物・迷入IUD
IUDが子宮外へ穿孔・逸脱した場合、腹腔内や骨盤内に異所性人工物として認められることがあります。
子宮内にIUDが見えず、腹腔内にT字型・線状高吸収を認める場合は、IUD穿孔・迷入を鑑別に入れます。
IUDで確認すべき位置異常と合併症
IUDを認めた場合は、存在だけでなく位置と合併症を確認することが重要です。
1. 正常位置
正常位置では、IUDは子宮内腔に留置され、横腕が子宮底部側、縦軸が子宮体部から頸部方向に伸びるように見えます。
CTでは、子宮内腔の中央に位置しているか、子宮筋層外へ突出していないかを確認します。
2. 低位IUD
IUDが子宮下部や頸管側に位置している場合、低位IUDを考えます。
低位の場合、避妊効果の低下や症状の原因となることがあるため、婦人科的評価が必要になることがあります。
3. 埋没・embedment
IUDの一部が子宮筋層内へ食い込むように位置することがあります。
CTだけでは評価が難しいこともありますが、子宮筋層内への偏位、片側腕の非対称な位置、子宮壁外への突出がないかを確認します。
4. 子宮穿孔・腹腔内逸脱
IUDが子宮壁を穿孔し、部分的または完全に子宮外へ逸脱することがあります。
CTでは、IUDが子宮内腔から外れて骨盤内・腹腔内に位置していないかを確認します。腹腔内へ逸脱したIUDは、腸管や大網、膀胱周囲などに接して認められることがあります。
5. 破損・遺残
IUDの一部が破損し、子宮内または腹腔内に遺残することがあります。
断片状の線状高吸収や、通常のIUD形状を保たない人工物として認められる場合があります。
IUDと骨盤内感染・放線菌感染
IUD使用者では、まれに骨盤内感染症や放線菌感染が問題になることがあります。
特に長期間IUDを使用している場合、Actinomycesに関連した骨盤内感染が報告されています。ただし、Actinomyces様菌が細胞診で検出されることと、実際に侵襲性の骨盤放線菌症を発症していることは同じではありません。
骨盤放線菌症はまれですが、発症すると腫瘤性病変や膿瘍、周囲臓器浸潤様の所見を示し、悪性腫瘍や骨盤内炎症性疾患と紛らわしいことがあります。
CTで以下のような所見を伴う場合は、感染性合併症を考慮します。
- 骨盤内膿瘍
- 子宮・付属器周囲の脂肪織濃度上昇
- 腫瘤様軟部影
- 腸管や膀胱など隣接臓器への炎症波及
- 腹水や腹膜肥厚
IUD単独の存在だけで感染と判断するのではなく、症状、炎症反応、帯下、婦人科診察、培養・病理所見などと合わせて総合的に判断します。
IUDとMRIは禁忌なのか?
IUDを認めた場合、「MRIは禁忌なのか」と疑問になることがあります。
現在使用されている多くのIUDやIUSは、条件付きでMRI可能とされるものが多いですが、製品や素材によって条件が異なります。
銅付加IUDに関しては、3.0T MRIでの安全性を検討した報告もあります。ただし、実際の検査前には必ず製品情報、添付文書、施設のMRI安全管理基準を確認する必要があります。
読影上は、IUDがあるから一律にMRI禁忌と考えるのではなく、製品ごとのMR適合性を確認するという考え方が重要です。
出典
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