子宮筋腫(uterine myoma/leiomyoma)
- 子宮筋層を構成する平滑筋に発生する最多の子宮腫瘍。
- 性成熟期女性の20〜40%に発症する。
- 発生・発育・消退は女性ホルモン、特にエストロゲンに強く依存し、初経後に発症し、閉経後に縮小する。
- 鉄欠乏性貧血、不正性器出血、過月経、月経困難症、不妊を主訴とする。
- 内診で形状不整で硬く腫大した子宮を触れる。
- 検査:超音波検査(経腹、経膣)、MRI、子宮鏡。
診察の順序は?
- まず内診、双合診を施行
- 次に経膣超音波検査
- MRIで腫瘍の性状、数、大きさ、位置などを検索する。
発生する部位により、粘膜下(submucosal)、筋層内(Intramural)、漿膜下筋腫(pedunculated abdominal)がある。
- このうち粘膜下は出血および妊娠に影響あり。
- 60-70%は多発する。子宮休部に95%、頚部に5%認める。
- 20%で子宮内膜症が合併している。また子宮腺筋症との合併も多い。
- 筋腫には多数の変性あり。ヒアリン変性、粘液様変性、肉腫様変性、嚢胞変性、粘液変性、赤色変性など。しかしこれらをMRで鑑別するのは難しい事が多い。
関連記事)子宮筋腫の変性の分類と画像の特徴(特殊な子宮筋腫)
子宮筋腫の画像所見
臨床症状のある筋腫にはさまざまな治療法あり。子宮摘出、核出術、ホルモン療法、子宮動脈塞栓術など。
MRI所見(典型例)
- 境界明瞭な腫瘤。
- T1強調像:筋層と同程度の低信号。
- T2強調像:筋層よりも低信号。ひび割れ状の低信号(平滑筋組織、ヒアリン化)
- DWI:低〜中等度の信号。
- 造影:変性の程度により様々。
- ダイナミック:比較的多血性。
※ヒアリン変性:均質・無構造なタンパク成分の細胞間沈着。硝子変性。類線維素変性。ヒアリン組織を反映してT1強調/T2強調ともに信号値が低下する。
症例 40歳代女性
子宮前壁筋層内に低信号腫瘤を認めています。
子宮筋腫を疑う所見です。
他にも小さな筋腫を認めています。
横断像においても同様です。
なお子宮頚部には多数の嚢胞を認めており、ナボット嚢胞を疑う所見です。
T1強調像では、周囲の子宮筋層と同程度の信号です。
脂肪抑制造影T1強調画像では、子宮筋腫に造影効果を認めています。
まとめるとこのような感じです。
筋層内子宮筋腫と診断されました。
▶動画でチェックする。
粘膜下筋腫の画像所見は?
- 通常はT2WIで低信号。
- 浮腫を伴うとT2WIで高信号を呈し、ポリープや内膜腫瘍に類似する。
- DWIで低信号を呈するので悪性腫瘍と鑑別できる。
症例 50歳代女性
子宮底部内膜下にT2WIで低信号の腫瘤性病変あり。T1WIおよび造影にて周囲筋層と同程度です。
内膜下子宮筋腫と診断されました。
症例 50歳代女性
子宮底部内膜下にT2WIで低信号の腫瘤性病変あり。
内膜下子宮筋腫と診断されました。
漿膜下筋腫の画像所見は?
- 子宮筋層との連続(beak sign)
- 子宮筋層から連続する栄養血管(Bridging vascular sign)
- 卵巣腫瘍(線維腫)との鑑別に有用。
症例 60歳代女性
T2強調画像の横断像です。
子宮左側に子宮筋層と同程度の信号強度の腫瘤影あり。
子宮との間にflow voidを認めており、漿膜下子宮筋腫を疑う所見です。
脂肪抑制T1強調画像の横断像です。
こちらでも子宮との間にflow voidを認めており、漿膜下子宮筋腫を疑う所見です。
症例 40歳代女性
子宮の右側に石灰化腫瘤あり。子宮との連続性を認めており、漿膜下子宮筋腫の石灰化と診断されました。