腹膜貯留嚢胞/封入嚢胞(peritoneal inclusion cyst)とは?
- peritoneal pseudocyst 、 inflammatory cysts of the pelvic peritoneum 、benign cystic mesothelioma 、 multicystic mesotheliomaとも言われる。
- 卵巣機能が保たれている生殖可能年齢の女性においては、排卵に伴い腹腔内に卵巣由来の液体が貯留するが、腹膜により吸収される。
- 子宮内膜症、骨盤内炎症性疾患、Crohn病、腹部手術や外傷などより腹膜に侵襲が加わると、液体の吸収が低下し排卵時に産生された卵巣滲出液が貯留され、貯留嚢胞を生じる。
- つまり発生には、機能的な卵巣の存在と腹膜の癒着が関連している。
- なので、ほとんどは閉経前の女性に見られる。
- 既存の空間に液体が貯留した状態。
- 下腹部痛や下腹部膨隆をきたすことがあり、症状が強い場合は治療を要する。
- 非腫瘍性の病態であり反応性変化であるため、治療は外科的手術ではなく、貯留液の吸引もしくは経口避妊薬による卵巣機能の抑制が行われる。
- (多発)嚢胞性中皮腫とは別もの。
腹膜貯留嚢胞の画像所見は?
- 同側の正常卵巣が見られ、周囲の腹膜腔に限局した液体貯留があるとperitoneal inclusion cystが疑われる。
- 既存の骨盤腔のスペースを埋めるような不規則な形の液体貯留内に正常卵巣が存在する像が特徴的。
- 嚢胞内の液体は水と同様にMRI T1強調像にて低信号、T2 強調像にて高信号を呈することが多いが、血液を混じることもある。
症例 70歳代女性
骨盤内右側に既存の骨盤腔のスペースを埋めるように、嚢胞性病変あり。
症例 70歳代女性 子宮全摘後
子宮全摘後。骨盤内右側に嚢胞性病変あり。骨盤腔に沿うように右側に嚢胞性病変あり。腹膜貯留嚢胞を疑う所見
既存の腹膜腔を埋めるような形の液体貯留内に正常卵巣が存在する像がポイントですね。