転移性卵巣腫瘍(卵巣転移)
- 胃癌、大腸癌、乳癌からの転移が多い。
- 転移性腫瘍で発症し、原発巣が見つかることも少なくない。
- 両側性の卵巣腫瘍では常に転移の可能性を考える。
- 原発巣により転移性卵巣腫瘍に画像的特徴があることがある。
- 特に、大腸癌や虫垂からの転移性卵巣腫瘍は、多房性嚢胞性病変の形態を呈するため、卵巣原発の粘液性嚢胞性腫瘍との鑑別が困難なことがある。
Krukenberg tumor(Kurkenberg腫瘍、クルッケンブルグ腫瘍)
- ほとんどが、印環細胞癌(胃癌)からの卵巣転移。
- 粘液を産生する癌細胞(signet ring cell(シグネットリング細胞))の存在によって特徴付けられる。
- 充実性、分葉状の腫瘤を形成することが多い。
- T2WIで不均一な低信号を呈する。浮腫により高信号を示すこともある。
- 造影効果は良好。
- 原発腫瘍に粘液産生がみられない場合も、卵巣転移では粘液産生がみられることがある。
症例 40歳代女性
引用:radiopedia
胃周囲にリンパ節腫大を認め胃癌およびリンパ節転移が疑われます。
両側卵巣に腫瘤を認めており、両側卵巣転移が疑われます。
胃癌および両側卵巣転移(Krukenberg tumor)、リンパ節転移と診断されました。
大腸癌からの卵巣転移の特徴
- 粘液産生を反映した多房性嚢胞性病変(ステンドグラス状)の形態をとることが多い。一見すると原発性卵巣腫瘍にもみえることがある。
- 内部は出血や壊死を伴い不均一な信号を呈することが多い。
症例 50歳代女性 直腸癌術後
骨盤内に多房性嚢胞性病変を認めており、一見、原発性卵巣腫瘍のように見えますが、転移性卵巣腫瘍と診断されました。
虫垂腫瘍からの卵巣転移の特徴
- 片側性の卵巣腫瘍ならば虫垂から近い右側が多いが、しばしば両側性。
- 大腸癌同様に多房性嚢胞性病変を呈する。
- 破裂により、腹膜偽粘液腫を形成することがある(腹膜偽粘液腫の原因は虫垂腫瘍原発が最多)
ステンドグラスパターンを呈しT2WI低信号部分を含む嚢胞性卵巣病変
- 内膜症性嚢胞
- 転移性卵巣腫瘍
- 粘液性嚢胞腺腫/癌
- 成熟嚢胞性奇形腫 → 典型的には皮脂腺より分泌された脂肪成分が脂肪抑制される。
- カルチノイド → 成熟嚢胞性奇形腫と合併するのが典型的。
- 卵巣甲状腺腫
乳癌からの卵巣転移の特徴
- 小葉癌に多い。
- 80%は両側性。
- 他の腹部臓器にも転移を既に伴っていることが多い。弧発性は稀。
- 大部分が充実性。嚢胞状になることは稀。
- 基本的に小さな腫瘍で、5cm以上になることは稀。
参考文献:
- 画像診断 Vol.43 No.11増刊号 2023 P118-121