耳下腺腫瘍総論
まず、唾液腺とは?
- 大唾液腺:耳下腺・顎下腺、舌下腺
- 小唾液腺:口腔・咽頭・喉頭・副鼻腔・気管に分布
にわけられる。耳下腺は大唾液腺に分類。
耳下腺腫瘍の局在
- 顔面神経と耳下腺管
- 下顎後静脈と補助線
何が大切か?耳鼻科医は何を恐れている?
★術後顔面神経麻痺。
★多形腺腫術後再発。を恐れている。
・顔面神経麻痺を避けるために
→顔面神経機能の温存を図るために必要な術式の選択に局在診断は重要。
→特に耳下腺深葉あるいは傍咽頭間隙にまで達する場合は顔面神経損傷を生じる危険性が高い。なので、それを知らせる必要がある。
参考)傍咽頭間隙由来の腫瘍では通常、手術は口腔や顎下部からのアプローチとなる。しかし、耳下腺深腺由来の腫瘍では顔面神経温存のため経耳下腺切開が必要となる。耳下腺深葉由来の腫瘍に対して口腔や顎下部からアプローチすると顔面神経損傷をきたしやすいとされる。
しかし、顔面神経は通常の画像では描出困難。Cadaver耳下腺管に造影剤注入MRIで確認。しかし、そんなことはやってられない。
・茎乳突孔(顔面神経が側頭骨の垂直部を下降してきて耳下腺に開口するところ)に脂肪組織がある。MRIではこの脂肪組織が明瞭に見える。その中に線状構造が見える。これが顔面神経。耳下腺管はそれよりも外側を走る。
・Dailianaらによると、3D gradient echo法による茎乳突孔下方の顔面神経主幹部の描出は1.5T装置で1.5mm厚を用いると、下顎後静脈レベル、耳下腺管レベルともに7割程度病出できたと報告あり。しかし実際はそんなにはなかなか見えない。
ではどうするか?
以下の4つの指標が有名。
- 耳下腺管
- 椎体の最背側と下顎後静脈の最背側を結んだ線(The Utrecht line)
- 顎二腹筋後腹と下顎枝を結んだ線(Facial nerve line) があるがいずれも煩雑。
- 下顎後静脈:これが最も簡便でよい。
下顎後静脈
・顔面神経主幹は側頭骨の茎乳突孔から耳下腺に入り、耳下腺内顔面神経は下顎後静脈の外側を走行。
・下顎後静脈を指標として浅葉と深葉を区分。
・非常に簡便な指標として以前から使用されている。
▶動画による下顎後静脈の同定
耳下腺腫瘍の質的診断
- 多形腺腫
- ワルチン腫瘍
- その他の腫瘍性病変
-
- 良性腫瘍:神経鞘腫、血管腫・リンパ管腫、脂肪腫、単形腺腫・筋上皮腫、オンコサイトーマ
- 悪性腫瘍:粘表皮腫、腺房細胞腫、腺様嚢胞腫、唾液腺導管癌、悪性リンパ腫
- 良性病変:木村病、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、リンパ上皮性病変、鰓弓性の右方、耳下腺気腫
鑑別は多く見えますが、実際は耳下腺腫瘍の70%は多形腺腫。なので怖がることはありません。さらにワルチン腫瘍が15%を占めます。残り15%がその他の腫瘍性病変です。
耳下腺腫瘍の質的診断
・悪性は良性と比較してT2強調像で低信号の傾向あり。
・また腺様嚢胞癌では高信号が多い。
・なので、信号強度だけでは、良悪性の鑑別は難しい。
耳下腺腫瘍の80%ルール
・全唾液腺腫瘍の80%は耳下腺腫瘍である。
・耳下腺腫瘍の80%は良性腫瘍である。
・良性腫瘍の80%は多形腺腫である。
・耳下腺腫瘍の80%は浅葉発生である。
・頭頸部に生じる多形腺腫の80%は耳下腺原発である。
参考&引用改変)
・頭頸部画像診断に必要不可欠な臨床・画像解剖 関西医大 池田耕士先生
・咽・喉頭癌読影のポイント 頸部筋膜間隙に基づく質的診断 久留米大学 小島和行先生