頸部間隙(cervical space)とは?
- 頸部は筋膜によって分けられ、筋膜により頭頸部を頭尾方向に長い円筒状の組織間隙の集合体として捉える。
- それぞれの境界には筋膜が存在しているため、腫瘍や炎症が間隙同士の障壁となり、間隙内で広がりやすいという特徴を持つ。
頸部間隙を分ける深頸筋膜(deep cervical fascia)とは?
動画解説しましたので、まずは動画を見ていただき、記事を読んでいただくことで理解がより深まると思います。
- 深頸筋膜は浅葉、中葉、深葉の3つに分けられる。
- 浅葉と中葉が舌骨に付着することから舌骨上および下のみに存在する間隙が存在するため、舌骨上レベルと舌骨下レベルに分ける。
浅葉
- 浅葉は、浅頸筋膜と深部組織間隙を分ける筋膜で、咀嚼筋、耳下腺・顎下腺、胸鎖乳突筋、僧帽筋を包み込むように存在する。舌骨上部では咀嚼筋間隙、耳下腺間隙、顎下間隙などを形成する。
中葉
- 中葉は、内臓筋膜とも呼ばれ、腹側で前頸筋群を包み、背側で臓器(喉頭、咽頭、気管、食道、甲状腺、副甲状腺、反回神経)および主要血管を包む。舌骨上部では咽頭粘膜間隙、下部では臓器間隙を形成する。
深葉
- 深葉は、椎前筋や椎体周囲の筋群を覆う最も深い筋膜。椎周囲間隙の前方で咽頭後間隙の間に深葉の一部である翼状筋膜があり、椎周囲間隙椎前部と咽頭後間隙の間に危険間隙が形成される。
頸部間隙と深頸筋膜(deep cervical fascia)の関係
各深頸筋膜をまとめて、間隙を記載すると以下の様になる。
- 深頸筋膜浅葉のみで咀嚼筋間隙、耳下腺間隙、椎周囲間隙が構成される。
- 深頸筋膜中葉のみで咽頭粘膜間隙が構成される。
- 深頸筋膜深葉のみで椎周囲間隙が構成される。
- 傍咽頭間隙・頸動脈間隙・咽頭後間隙(+危険間隙)は複数の葉により構成される。
- 舌骨下部においては、深頸筋膜中葉のみで臓器間隙が構成される以外は上レベルと同様。
参考文献:画像診断 Vol.31 No.11 臨時増刊号 2011 P196-209