
先に結論:中咽頭は4つの部位に分け、傍咽頭間隙の脂肪層で深さを確認する
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 範囲 | 上は硬口蓋と軟口蓋の移行部、下は喉頭蓋谷の底の高さまで |
| 4つの部位 | 側壁(口蓋扁桃など)、前壁(舌根・喉頭蓋谷)、上壁(軟口蓋・口蓋垂)、後壁 |
| 深さの見方 | 外側にある傍咽頭間隙の脂肪層が保たれているかを見る |
| 落とし穴 | 舌根や扁桃のリンパ組織は正常でも造影され、腫瘍と似て見える。左右差と脂肪層の消失に注目する |
中咽頭はどこからどこまでか
咽頭は、上から上咽頭・中咽頭・下咽頭の3つに分けられます。中咽頭は、口を開けたときにのどの奥に見える部分にあたり、上は硬口蓋と軟口蓋の移行部の高さ、下は喉頭蓋谷(舌の付け根と喉頭蓋の間のくぼみ)の底の高さまでをいいます(Gray 2026)。前方は口腔と接し、舌の前方3分の2と後ろ3分の1の境にある有郭乳頭が目安になります。
粘膜は重層扁平上皮で覆われ、口蓋扁桃や舌根のリンパ組織、小唾液腺が数多くあります。そのため、この領域にできる病変は種類が多くなります。視診や触診で見える範囲が広いため、画像診断の役割は病変の深さや広がりを調べることが中心です。
上咽頭と下咽頭の解剖は、それぞれ上咽頭癌・上咽頭悪性リンパ腫のCT・MRIと下咽頭癌の画像診断で整理しています。あわせて読むと、咽頭全体の位置関係がつかみやすくなります。
4つの部位と画像で見る構造
| 部位 | 含まれる構造 | 画像で見るところ |
|---|---|---|
| 側壁 | 口蓋扁桃、前・後口蓋弓、扁桃窩、舌扁桃溝 | 左右の扁桃の大きさと造影の差、外側の脂肪層 |
| 前壁 | 舌根(有郭乳頭より後ろの舌)、喉頭蓋谷 | 舌根の厚みの左右差、喉頭蓋谷が保たれているか |
| 上壁 | 軟口蓋の下面、口蓋垂 | 軟口蓋の厚み、上方の翼突筋や頭蓋底への広がり |
| 後壁 | 咽頭後壁の粘膜と咽頭収縮筋 | 後ろの咽頭後間隙や椎前筋との間の脂肪 |
側壁:口蓋扁桃と2本の口蓋弓
側壁の中心は口蓋扁桃です。口蓋扁桃は、前の口蓋弓(口蓋舌弓)と後ろの口蓋弓(口蓋咽頭弓)に挟まれたくぼみ(扁桃窩)にあります。扁桃を包む被膜と、その外側にある上咽頭収縮筋の間は疎な結合組織で、炎症が広がる通り道にもなります。
扁桃は、アデノイド(咽頭扁桃)、耳管扁桃、舌扁桃などとともに輪のように並び、ワルダイエル輪(Waldeyer輪)と呼ばれるリンパ組織の集まりをつくっています。中咽頭ではこのうち口蓋扁桃と舌扁桃が関係します。
前壁:舌根と喉頭蓋谷
前壁は、有郭乳頭より後ろの舌(舌根)と喉頭蓋谷です。舌根の表面には舌扁桃というリンパ組織があり、正常でも厚みのある場所として見えます。ここは左右差の判断が難しく、読み間違いの多い場所です。
上壁と後壁
上壁は軟口蓋の下面と口蓋垂、後壁は咽頭の後ろの壁です。後壁の外側には咽頭収縮筋があり、その後ろに咽頭後間隙(咽頭後リンパ節が並ぶ場所)があります。頸部の間隙の全体像は頸部間隙と深頸筋膜、頸部MRIでの正常の見え方は頸部MRIの正常解剖で確認できます。
CTとMRIでの見え方
中咽頭の画像は、筋肉・リンパ組織・脂肪の3つを見分けることから始まります。
| 組織 | CT | MRI |
|---|---|---|
| 筋肉(咽頭収縮筋、舌の筋肉など) | 扁桃や口蓋弓と近い濃度 | T1・T2強調像とも比較的低信号 |
| リンパ組織(口蓋扁桃・舌扁桃) | 筋肉と近い濃度で、左右対称に見える | T1強調像は筋肉と同程度、T2強調像は筋肉より高信号。造影で強く染まる |
| 脂肪(傍咽頭間隙など) | はっきりした低濃度 | T1強調像で高信号 |
CTでは、扁桃や舌根、筋肉の濃度が近いため、境界がはっきりしないことがあります。一方、脂肪は低濃度で見分けやすいので、外側の傍咽頭間隙の脂肪が目印になります。MRIはT1強調像で脂肪と筋肉を、T2強調像で筋肉とリンパ組織を分けやすく、造影T1強調像ではリンパ組織が強く染まるため筋肉との区別がつきます。MRIでの口腔・中咽頭の解剖と、神経に沿った進展の経路は、Varghese 2021で整理されています。
傍咽頭間隙の脂肪層を確認する
中咽頭の粘膜面は、頸部の深い層(深頸筋膜中層)より内側にあたります。その外側には脂肪に富む傍咽頭間隙があり、中咽頭から深部へ病変が広がったかどうかは、この脂肪層が保たれているかで判断します。腫瘍でも炎症でも、脂肪層が消えていれば深部への波及を考えます。
症例を見てみます。次は、口蓋扁桃が左右非対称に腫れていて、脂肪層が消えていた例です。
症例 41歳女性 口蓋扁桃の低悪性度粘表皮癌

引用:Yen JH, et al. Diagnostics (Basel) 2026;16(18):2938 (Figure 2) CC BY 4.0・PMC
右の口蓋扁桃が左より大きく、隣の傍咽頭間隙の脂肪層が見えなくなっています。症例報告では、のどの粘膜を直接観察した内視鏡では異常がなかったものの、CTで粘膜の下にある病変を疑う所見が見つかり、最終的に口蓋扁桃の小唾液腺から生じた低悪性度の粘表皮癌と診断されました(Yen 2026)。典型的な扁平上皮癌ではなく、まれな腫瘍の症例ですが、左右差と脂肪層の消失という見方は中咽頭の評価に共通します。
見間違えやすいところ:正常のリンパ組織
頭頸部の多くの場所では、腫瘍は周囲より強く造影され、輪郭をとらえやすくなります。ところが中咽頭では、舌根や扁桃窩の正常なリンパ組織が、CTでもMRIでも扁平上皮癌と同じように造影されます(Corey 2012)。原発巣が小さい、あるいは見つけにくいことがあり、造影CTだけでは見落とされることもあります。PETを併用すると、原発不明とされる例はごく少なくなると述べられています(Corey 2012)。
| 見えたもの | 考え方 |
|---|---|
| 左右対称で均一に造影される扁桃・舌根 | 正常のリンパ組織や扁桃肥大が多い。壊死や周囲への浸潤がなければ、正常範囲のことが多い |
| 片側だけ大きい、造影が不均一 | 腫瘍を考える。傍咽頭間隙の脂肪層、咽頭収縮筋との境を確認する |
| 扁桃の周囲に膿を示す低吸収域 | 扁桃周囲膿瘍。症状と合わせて判断する(扁桃周囲膿瘍のCT) |
| 首のリンパ節だけが目立つ | 小さな原発巣が隠れていないか、舌根・扁桃窩・咽頭後壁を見直す |
中咽頭癌の広がりと読み方
側壁の癌は、口蓋舌筋や口蓋咽頭筋に沿って軟口蓋へ、下方へは舌扁桃溝を通って舌根へ広がりやすいことが知られています。外側へは咽頭収縮筋を越えて傍咽頭間隙に入り、さらに咀嚼筋間隙や翼突筋、頭蓋底へ及ぶことがあります。範囲が広くなると、中咽頭癌か上咽頭癌かの区別がつきにくくなります。
MRIで分かる広がり
HPV(ヒトパピローマウイルス)関連の中咽頭癌50例の報告では、造影CTやPET/CTと比べて、MRIで腫瘍の進行度が上がった例が12%(6例)ありました。いずれもT2またはT3からT4への変更でした(Wren 2025)。また、CTやPET/CTでは分からなかった咽頭後リンパ節転移がMRIで10%(5例)見つかっています(Wren 2025)。この報告は単一施設の少数例ですが、MRIが深さや咽頭後リンパ節の評価に役立つ場面があることを示しています。
T分類の基準は、分類の版やp16(HPV関連の目印)の有無によって異なります。実際の判定は、現行の分類(AJCC第8版など)の表で確認してください。
リンパ節転移の行き先
頸部のリンパ節に加えて、中咽頭癌では咽頭後リンパ節にも転移することがあります。22の報告をまとめた解析では、中咽頭扁平上皮癌の咽頭後リンパ節転移は13%で、部位別では咽頭後壁24%、軟口蓋17%、口蓋扁桃15%、舌根8%でした(Tirelli 2022)。咽頭後壁の癌では特に咽頭後リンパ節を意識して読む必要があります。
またHPV関連の中咽頭癌では、転移リンパ節が嚢胞のように見え、第2鰓裂嚢胞(生まれつきの良性の嚢胞)と誤診されることがあります(Corey 2012)。首の嚢胞性腫瘤を見たら、扁桃や舌根を見直す習慣が役立ちます。
側壁ではリンパ腫も多い
口蓋扁桃は、扁平上皮癌のほかに悪性リンパ腫も起こる場所です。中咽頭の非ホジキンリンパ腫30例の解析では、口蓋扁桃が侵されていたのは19例(63.3%)でした(Zhang 2015)。MRIでは傍咽頭間隙が外から押されて狭くなっていても、脂肪の高信号は保たれ、粘膜も保たれていました。首のリンパ節転移は25例にあり、そのうち22例は内部に壊死がありませんでした(Zhang 2015)。
| 所見 | 扁平上皮癌でよくある像 | リンパ腫でよくある像(Zhang 2015) |
|---|---|---|
| 傍咽頭間隙の脂肪 | 浸潤すると脂肪層が消える | 外から押されても脂肪の高信号は保たれる |
| 転移リンパ節 | 中心の壊死や嚢胞状変化をみることがある | 壊死のないリンパ節が多い |
ただし、扁平上皮癌でもリンパ腫と似た所見を示すことがあり、画像だけで決めることは難しい場合があります。最終的には生検による診断が必要です。
中咽頭を読む順番のチェックリスト
- 左右の口蓋扁桃を比べる(大きさ・造影・輪郭)。
- 舌根と喉頭蓋谷を見る(厚みの左右差、喉頭蓋谷の消失)。
- 軟口蓋と咽頭後壁を見る(厚み、粘膜の連続性)。
- 外側の傍咽頭間隙の脂肪層が保たれているかを確認する。
- 咀嚼筋間隙・翼突筋・頭蓋底・下顎骨への広がりを確認する。
- 顎下、上内深頸、咽頭後のリンパ節を確認する(嚢胞状・壊死に注意)。
- 術後や放射線治療後の画像では、再建に使った筋皮弁など術式を確認してから読む。
よくある疑問(Q&A)
Q. 扁桃が片方だけ大きいと言われました。がんですか?
A. 扁桃の左右差は、炎症や正常の個人差でも見られます。画像では、外側の脂肪層が保たれているか、造影が均一かなどを合わせて判断します。気になる症状が続く場合は、耳鼻咽喉科で診察を受けてください。
Q. 舌の付け根が厚く見えるのは異常ですか?
A. 舌根には舌扁桃というリンパ組織があり、正常でも厚く見え、造影もされます(Corey 2012)。左右差や周囲との境界、首のリンパ節の有無と合わせて評価します。
Q. CTとMRIはどちらが向いていますか?
A. 造影CTは広い範囲を短時間で調べられ、MRIは軟部組織のコントラストが高く、深さの評価に役立ちます。HPV関連の中咽頭癌では、MRIで進行度が上がった例が報告されています(Wren 2025)。どちらを使うかは、施設の方針と目的で選ばれます。
Q. 首のしこりだけで見つかることはありますか?
A. あります。小さな中咽頭癌では、首のリンパ節が先に見つかることがあります。その場合は、扁桃・舌根・咽頭後壁を丁寧に見直します。
参考文献
- Corey AS, Hudgins PA. Radiographic imaging of human papillomavirus related carcinomas of the oropharynx. Head Neck Pathol. 2012;6 Suppl 1:S25-40. PubMed
- Gray B, Mosier K. Anatomy and Imaging of the Nasopharynx, Oropharynx, and Oral Cavity. Oral Maxillofac Surg Clin North Am. 2026;38(1):71-82. PubMed
- Varghese J, Kirsch C. Magnetic Resonance Imaging of the Oral Cavity and Oropharynx. Top Magn Reson Imaging. 2021;30(2):79-83. PubMed
- Zhang CX, Liang L, Zhang B, et al. Imaging Anatomy of Waldeyer’s Ring and PET/CT and MRI Findings of Oropharyngeal Non-Hodgkin’s Lymphoma. Asian Pac J Cancer Prev. 2015;16(8):3333-8. PubMed
- Tirelli G, Gardenal N, Zanelli E, et al. Prevalence and prognostic impact of retropharyngeal lymph nodes metastases in oropharyngeal squamous cell carcinoma: Meta-analysis of published literature. Head Neck. 2022;44(10):2265-2276. PubMed
- Wren SD, Chen L, Yu Y, et al. Tumor Upstaging With MRI for HPV-Associated Oropharynx Cancer: Implications for De-Escalation Trials. Am J Clin Oncol. 2025;48(11):556-559. PubMed
- Yen JH, Ou MC, Jin JS, et al. Imaging-Endoscopy Discordance in Occult Tonsillar Tumors: Diagnostic Challenges of Submucosal Mucoepidermoid Carcinoma-A Case Report and Literature Review. Diagnostics (Basel). 2026;16(18):2938. PubMed
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