先に結論:喉頭蓋嚢胞
- 喉頭蓋嚢胞は、のどの奥の喉頭蓋(飲み込むときに気管にふたをする部分)にできる袋状の良性病変で、多くは粘液腺の出口が詰まった貯留嚢胞です。舌側(喉頭蓋谷側)に多くできます
- 多くは無症状で偶然見つかりますが、大きいとのどの違和感・声の変化・飲み込みにくさ・息苦しさが出ます。CTでは薄い壁の液体の濃さの病変で、感染すると壁が造影されます
- 症状がある場合は手術で切除します。まれに急に大きくなって気道をふさぐことがあるため注意が必要です
- のどの嚢胞には、ほかに上咽頭のTornwaldt嚢胞、舌根の甲状舌管嚢胞、喉頭室から出る喉頭瘤などがあり、できる場所で見分けます
喉頭蓋嚢胞とは?
- 喉頭蓋嚢胞は、綿貫らが提唱した分類が主に用いられている。発生母地により以下の3つに分けられる。
①腺組織ないし、その導管あるいはリンパ管などの閉塞により生じる貯留嚢胞
②上皮組織の迷入、陥入、移植など、あるいは胎性組織からの異常発生により生じる類上皮嚢胞あるいは皮様嚢胞
③特殊な嚢胞:鰓性器官の残存、甲状舌管の残存、喉頭室より生じる喉頭瘤(laryngocele)で嚢胞を形成したもの - これらのうち、ほとんどが貯留嚢胞と類上皮嚢胞とされている。嚢胞の位置については80%が喉頭蓋の舌面に、20%が喉頭面に発生する。
症状は
- 主な症状は咽喉頭違和感、嗄声。
- 自覚症状のない場合が多い。
- 偶然発見されても小さなものは治療の対象とならない。
- 嚥下困難や呼吸困難を訴える場合は手術の適応となる。喉頭嚢胞は急速に進行する喉頭蓋炎や呼吸困難、死亡との関連も報告されており、軽視すべきではないとされる。切除は多くの症例で経口的アプローチが優れるとする報告がある。麻酔導入後にマスク換気が困難となった喉頭蓋嚢胞の報告もあり、気道管理上の重大な合併症につながりうる。画像で偶然見つかった場合も、全身麻酔を予定している患者では麻酔科と共有しておくことが望ましい。
画像所見
- CTでは薄い壁の液状濃度の病変として認められる。感染を合併すると壁の造影剤増強効果や内部の気泡が認められる。
参考)綿貫幸三ほか;喉頭蓋嚢胞の14例.日耳鼻,85:767‐777,1982
喉頭蓋・喉頭蓋谷の正常CT
喉頭蓋の舌側と舌根の間のくぼみが喉頭蓋谷(vallecula)で、正常のCTでは空気を含む左右対称の小さなくぼみとして写ります。左右差や、くぼみを埋める丸い低吸収域があれば嚢胞や腫瘤を考えます。
のど(咽頭・喉頭)の嚢胞の見分け方
| できる場所 | 病変 | 特徴 |
| 上咽頭の後壁正中 | Tornwaldt嚢胞 | CT・MRI約5万3千件の調査で0.06%に偶然みつかった(Moody 2007) |
| 喉頭蓋谷・喉頭蓋 | 喉頭蓋谷嚢胞・喉頭蓋嚢胞 | 薄い壁の液体濃度で気道側へ突出 |
| 舌根の正中 | 甲状舌管嚢胞 | 液体濃度。充実性なら舌甲状腺も考える |
| 喉頭室〜仮声帯 | 喉頭瘤(laryngocele) | 空気または液体を含む |
のどの違和感や声がれ、飲み込みにくさ、息苦しさが続く場合は、耳鼻咽喉科を受診してください。
症例 60歳代男性 手術の挿管時に気道内の嚢胞性腫瘤を指摘

引用:Radiopaedia(Epiglottic cyst)
左喉頭蓋谷に、内部が均一な低吸収で壁の薄い境界明瞭な嚢胞性病変(最大約25mm)を認め、気道側へ突出しています。周囲に炎症所見はなく、症例報告では偶然みつかった良性の喉頭蓋嚢胞と診断されています。
参考文献
- Heyes R, Lott DG. Laryngeal Cysts in Adults: Simplifying Classification and Management. Otolaryngol Head Neck Surg. 2017;157(6):928-939. PubMed
- Hasnaoui M, Masmoudi M, Chefai J, et al. [Symptomatic vallecular cyst in adults: about 4 cases]. Pan Afr Med J. 2018;31:36. PubMed
- Sugita T, Arisaka H. AirWay Scope for Difficult Ventilation in a Patient With Epiglottic Cyst. Anesth Prog. 2018;65(3):204-205. PubMed
- Moody MW, Chi DH, Mason JC, et al. Tornwaldt’s cyst: incidence and a case report. Ear Nose Throat J. 2007;86(1):45-7, 52. PubMed
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