脛骨骨幹部骨折(けいこつこつかんぶこっせつ)は、すねの骨(脛骨)の真ん中あたりの骨折です。交通事故・転落・スポーツでのけがで起こり、すねの前は皮膚のすぐ下に骨があり、骨折部が皮膚の傷とつながる開放骨折になることもあります。
この記事では、脛骨骨幹部骨折を画像でどう読むかを、骨折の形と腓骨骨折の合併、足関節(後果)への見えない骨折線、開放骨折とコンパートメント症候群、疲労骨折との違いに分けて、実際の論文の画像を使って解説します。
先に結論:脛骨骨幹部骨折の画像診断
- レントゲンは膝から足首までを2方向で撮り、骨折の形(横・斜・らせん・粉砕)と腓骨の骨折の高さを見ます
- らせん骨折や遠位1/3の骨折では、レントゲンで見えない後果骨折を伴うことが多く、CTで確かめます。手術を受けた脛骨骨幹部骨折の24.21%に後果への伸びがありました(Myatt 2023)
- コンパートメント症候群は画像ではなく症状と組織内圧で診断します。脛骨骨幹部骨折の11.5%に起こり、若いほど起こりやすいと報告されています(McQueen 2015)
- 開放骨折は、皮膚の傷の大きさや軟部組織の損傷で重症度を分け(Gustilo分類)、画像では骨折の形・骨の欠損・ガスや異物を見ます
- 疲労骨折は外傷の覚えがないすねの痛みで、骨膜の浮腫→骨髄の浮腫→骨折線と進みます(Fredericson 1995)。脛骨の前方皮質の横線(dreaded black line)は治りにくい型のサインです(Al-Janabi 2023)
※すねを強く打った・ひねったあとに痛みや腫れが強い、体重をかけられない、または運動中のすねの痛みが続くときは、医療機関(整形外科)を受診してください。けがのあと痛みがどんどん強くなる、指を動かすと激しく痛む、しびれるときは急いで受診してください。
脛骨骨幹部骨折とはどんな骨折か
脛骨は下腿(膝から足首まで)の内側の太い骨で、体重の大部分を支えます。外側には細い腓骨が並び、2本の骨のあいだを骨間膜がつないでいます。骨幹部は骨の両端(膝側のプラトー、足首側の天蓋)を除いた真ん中の筒状の部分です。
脛骨の上端の骨折は脛骨高原骨折(プラトー骨折)、下端の関節面の骨折は脛骨天蓋骨折(ピロン骨折)、下肢の外傷全体の初期対応は下肢の外傷の画像診断と初期対応で解説しています。
画像の見方① レントゲン(X線)
膝から足首までを2方向で
下腿の正面像と側面像を、膝関節と足関節が両方入るように撮ります。骨幹部だけを見て、上下の関節の骨折や脱臼を見落とさないためです。見る順番は次のとおりです。
- 骨折の形:横骨折・斜骨折・らせん骨折・粉砕骨折・分節骨折(2か所で折れている)
- ずれ:短縮、角度のずれ(内反・外反、前後の曲がり)、回旋
- 腓骨:折れているか、脛骨と同じ高さか、離れた高さか
- 関節への伸び:骨折線が膝関節面や足関節面(特に後果)へ届いていないか
- 軟部組織:皮下のガス、異物、骨の欠損(開放骨折の手がかり)
骨折の呼び方の基本は骨折の種類と読み方まとめ、骨のレントゲンの読み方は骨のレントゲンの見方(ABCS)を参考にしてください。

引用:Pizzolo et al. J Funct Morphol Kinesiol 2018(Figure 2)
開放骨折の症例の、手術前の救急でのレントゲンです。右下腿と足関節の正面像(AP)と側面像(LL)で、脛骨と腓骨の遠位骨幹部に多数の骨片を伴う粉砕骨折が見えます(出典:Pizzolo et al. J Funct Morphol Kinesiol 2018, Figure 2, CC BY 4.0)。
腓骨骨折の合併の意味
脛骨骨幹部骨折では腓骨も一緒に折れていることが多く、その高さや形は、足関節への骨折線の伸びを予測する手がかりにもなります。442例の検討では、後果以外の関節内への伸びは、脛骨のらせん以外の骨折・遠位の骨折に加え、腓骨の斜骨折(オッズ比2.01)、脛骨と同じ高さの腓骨骨折(1.83)、腓骨が折れていないこと(7.02)と関係していました(Myatt 2023)。
腓骨の下の端(外果)の骨折は外果骨折(腓骨遠位端骨折)、内果・外果・後果の骨折は三果骨折とはで解説しています。
画像の見方② CT:後果への見えない骨折線
脛骨骨幹部骨折、特にらせん骨折では、骨折線が下へ伸びて足関節の後ろ側(後果)が折れていることがあり、レントゲンでは見えないことがあります。
- CTも撮った手術例442例では、107例(24.21%)に後果骨折、さらに128例(28.96%)に後果以外の関節内への伸びがあり、足関節面への伸びはおよそ半数に見られました。後果骨折はAO/OTA分類のらせん骨折(オッズ比4.18)と、近位から遠位へ内側に回るらせんの向き(4.38)と関係しており、著者らは手術前のCTを撮るハードルを低くすべきだと述べています(Myatt 2023)
- 186例の脛骨骨折の検討では、CTで25例(13.44%)に潜在性の後果骨折が見つかりました。らせん骨折と遠位1/3の骨折が予測に役立ち、感度はそれぞれ88.00%、92.00%でした(Wang 2021)

引用:Myatt et al. Eur J Trauma Emerg Surg 2023(Figure 1)
(A)3D-CTと(B)軸位断CTは、ずれのない後果骨折を伴う脛骨骨幹部のらせん骨折です。比較として(C)3D-CTと(D)CTは、内側の関節内への伸びを伴う脛骨骨幹部の粉砕骨折です(出典:Myatt et al. Eur J Trauma Emerg Surg 2023, Figure 1, CC BY 4.0)。

引用:Wang et al. J Healthc Eng 2021(Figure 2)
56歳男性、左脛骨下端のらせん骨折で、潜在性の後果骨折を伴っていた症例です。左はレントゲン、右は矢状断CTで、赤矢印が後果の骨折線を示しています(出典:Wang et al. J Healthc Eng 2021, Figure 2, CC BY 4.0)。
後果骨折は、髄内釘の遠位の横止めスクリューで二次的にずれることがあります。脛骨遠位のらせん骨折にずれのない後果骨折を合併した例の検討では、後果骨片の高さが31.2mmを超えると93.33%で二次的なずれが起きていました(Zhang 2018)。らせん骨折・遠位の骨折では足関節までのCTを考えます。後果の骨片の評価は三果骨折の記事も参照してください。子どもの脛骨遠位の骨端線の骨折はTillaux骨折・triplane骨折で解説しています。
開放骨折とコンパートメント症候群
開放骨折
開放骨折は、皮膚や軟部組織の傷が骨折部までつながっている骨折で、感染の危険が高くなります。重症度は傷の大きさ・軟部組織の損傷・汚染・血管損傷の有無で分けるGustilo分類がよく使われます(ガスティロ分類(Gustilo分類)とは)。
画像では、骨折の形に加えて、骨片の欠損(傷から骨が失われていないか)、皮下・筋肉内のガス、異物(砂利・ガラスなど)を確認します。ただし皮下のガスは、傷から入った空気でも見られるため、ガスだけで感染と決めつけず、傷の状態と合わせて判断します。四肢外傷で緊急の処置が必要なものは四肢外傷とはにまとめています。
コンパートメント症候群は画像で診断しない
下腿の筋肉は筋膜で区切られた区画(コンパートメント)に分かれています。骨折の出血や腫れで区画の中の圧が上がり、血流が悪くなって筋肉や神経が傷むのが急性コンパートメント症候群です。
- 急性コンパートメント症候群164人の検討では、69%に骨折があり、その約半分が脛骨骨幹部骨折でした。多くは35歳未満の男性で、10分の1は出血しやすい病気があるか抗凝固薬を使っていました(McQueen 2000)
- 脛骨骨幹部骨折1,388人では、160人(11.5%)に急性コンパートメント症候群が起こり、もっとも強い予測因子は年齢で、12〜19歳と20〜29歳で多く見られました(McQueen 2015)
診断は痛みの強さなどの症状と、必要に応じて組織内圧の測定で行い、レントゲン・CTで「コンパートメント症候群がない」とは言えません。画像は骨折の評価と、他の原因(血腫・血管損傷)の確認に使います。腓骨だけの骨折でも起こることがあり、ずれの少ない腓骨骨幹部骨折で起こった症例も報告されています(Bortman 2025)。筋肉の壊死が進んだときの画像は横紋筋融解症のCT・MRI、造影剤の漏れによるものは造影剤の血管外漏出も参考にしてください。
疲労骨折との違い
外傷の覚えがないのに、走る・跳ぶなどの運動で少しずつすねが痛くなる場合は、疲労骨折を考えます。ランナーの脛骨の痛みをMRIで調べた研究では、骨膜の浮腫→骨髄へ広がる浮腫→はっきりした皮質の骨折という段階的な進行が見られ、MRIは骨シンチより骨の損傷の程度を正確に示すとして、MRIがすすめられています(Fredericson 1995)。
脛骨の前方の皮質(すねの前側)にできる疲労骨折は治りにくい型で、レントゲンの側面像で前方皮質に横に走る細い黒い線(dreaded black line)として見えることがあります(Al-Janabi 2023)。プロサッカー選手で前方の脛骨疲労骨折の診断が遅れ、髄内釘で治療された症例も報告されています(Shah 2025)。

引用:Shah et al. J Orthop Case Rep 2025(Figure 1)
プロサッカー選手の左下腿のレントゲンです。(A)正面像と(B)側面像で、脛骨骨幹部の中央に異常な濃度(矢印)が見られます(出典:Shah et al. J Orthop Case Rep 2025, Figure 1, CC BY-NC-SA 4.0)。
| 外傷による骨幹部骨折 | 疲労骨折 | |
|---|---|---|
| きっかけ | 事故・転落・スポーツの衝突など1回の強い力 | 運動の繰り返し |
| レントゲン | はっきりした骨折線・ずれ | 初めは異常なし。のちに骨膜反応・硬化・皮質の線 |
| MRI | 骨折線と周りの浮腫 | 骨膜→骨髄の浮腫→皮質の骨折線と段階的に進む |
疲労骨折の画像は疲労骨折のレントゲン・MRI画像所見と疲労骨折とは(MRIで白く見える理由)、子どものすねの痛みは子どもの足の痛みと画像検査で解説しています。
見逃しやすい点・まぎらわしいもの
- 上下の関節の損傷:骨幹部の骨折に気を取られて、膝のプラトー骨折や足関節の後果骨折を見落とさないようにします(Myatt 2023・Wang 2021)
- 分節骨折:2か所で折れていることがあり、1本目の骨折線を見つけたあとも骨全体を見て、別の骨折線を見落とさないようにします
- 病的骨折:軽い力で折れたときは、骨腫瘍や骨転移、骨粗鬆症の薬に関係した非定型骨折がないかを見ます
- 血管損傷:足の脈が触れにくい・冷たいときは、造影CTなどで血管を確認します
治療方針に関わる画像所見
脛骨骨幹部骨折の治療は、ずれが少なく安定した骨折では保存的治療、ずれが大きい・不安定な骨折では手術(髄内釘やプレート、開放骨折では創外固定など)が選ばれます。画像からは次の点が方針に関わります。
- 骨折の形とずれ:短縮・角度・回旋のずれの大きさ、粉砕の程度
- 関節への伸び:後果やそのほかの関節内骨折があれば、骨幹部の固定とは別に整復・固定を考えます(Myatt 2023)
- 開放骨折の重症度:骨の欠損や軟部組織の損傷の程度は、洗浄・固定・皮膚の再建の計画に関わります
- 手術後の評価:髄内釘やスクリューの位置、骨のつき具合をレントゲンで追います(人工関節・プレート・スクリューのレントゲンの見方)
Q&A
Q1. すねの骨折でCTまで撮るのはなぜですか?
A. らせん骨折や遠位1/3の骨折では、足首の後ろ側(後果)にレントゲンで見えない骨折が隠れていることがあり、CTで13.44%に見つかったという報告があります(Wang 2021)。手術の計画に関わるため、CTを撮ることがあります。
Q2. コンパートメント症候群はMRIやCTでわかりますか?
A. 画像ではわかりません。痛みの強さや指を動かしたときの痛みなどの症状と、組織内圧の測定で診断します。脛骨骨幹部骨折では11.5%に起こり、若い人ほど多いと報告されています(McQueen 2015)。けがのあと痛みが急に強くなるときは、すぐに医療機関に伝えてください。
Q3. ランニングですねが痛いのですが、レントゲンで異常なしと言われました。
A. 疲労骨折は初期にはレントゲンで写らないことが多く、MRIで骨膜や骨髄の浮腫として見つかります(Fredericson 1995)。痛みが続く場合は、整形外科でMRIを撮るかどうか相談してください。
参考文献:
- Myatt D, Stringer H, Chapman J, et al. Prediction of distal tibial articular extension in tibial shaft fractures: both posterior malleolar fracture and non posterior malleolar fracture intra-articular extension. Eur J Trauma Emerg Surg. 2023;49(2):903-910. PubMed
- Wang D, Yang J, Dong X, et al. Incidence and Predictive Factors of Tibial Fracture with Occult Posterior Ankle Fractures. J Healthc Eng. 2021;2021:4392595. PubMed
- Zhang Y, Qin X, Song L, et al. The risk of violating the posterior malleolar fracture when nailing the ipsilateral concomitant spiral distal tibial fracture. BMC Musculoskelet Disord. 2018;19(1):123. PubMed
- McQueen MM, Gaston P, Court-Brown CM. Acute compartment syndrome. Who is at risk? J Bone Joint Surg Br. 2000;82(2):200-3. PubMed
- McQueen MM, Duckworth AD, Aitken SA, et al. Predictors of Compartment Syndrome After Tibial Fracture. J Orthop Trauma. 2015;29(10):451-5. PubMed
- Bortman JM, Buchanan MW, Freccero DM. Isolated Fibula Fracture With Development of Acute Compartment Syndrome. J Am Acad Orthop Surg Glob Res Rev. 2025;9(3). PubMed
- Fredericson M, Bergman AG, Hoffman KL, et al. Tibial stress reaction in runners. Correlation of clinical symptoms and scintigraphy with a new magnetic resonance imaging grading system. Am J Sports Med. 1995;23(4):472-81. PubMed
- Al-Janabi MJM, Gupta N, Döring S. The Dreaded Black Line. J Belg Soc Radiol. 2023;107(1):70. PubMed
- Shah ZA, Hammadi BA, Ismaily HA, et al. Diagnostic Pitfalls: Anterior Tibial Stress Fracture in a Professional Football Player – A Case Report. J Orthop Case Rep. 2025;15(9):208-212. PubMed
- Pizzolo S, Testa G, Papotto G, et al. Open Tibial Fracture in a Non-Compliant Patient: A Case Report. J Funct Morphol Kinesiol. 2018;3(3). PubMed
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