仙骨脆弱性骨折(sacral insufficiency fracture:SIF)は、骨粗鬆症などで弱くなった仙骨に、強い外傷がなくても起こる骨折です。高齢の方の「急に強くなった腰やお尻の痛み」の原因になりますが、レントゲンではとても見えにくく、腰椎の病気と思われて診断が遅れることがあります。
この記事では、仙骨脆弱性骨折をレントゲン・CT・MRI・骨シンチでどう見つけるか、骨折の形(H型など)とHonda sign、そして骨盤輪のほかの部位(恥骨など)を一緒に見る理由を、実際の論文の画像を使って解説します。
骨盤の脆弱性骨折全体の分類(Rommens分類)は骨盤脆弱性骨折(FFP)のRommens分類とHONDAサインで解説しています。
先に結論:仙骨脆弱性骨折の画像診断
- レントゲンでは見えないことが多く、ある研究では感度が28.5%でした。CTは94.2%、MRIではすべての骨折が見つかりました(Yamauchi 2022)
- 症状が腰の病気に似ているため、腰椎MRIで見つかることがいちばん多いと報告されています(Kim 2018)。腰椎MRIでは仙骨まで写っているか、画像の下の端まで見ます
- 骨折は左右の仙骨翼の縦の線+横の線(H型・U型)の形をとりやすく、骨シンチではH字型の集積(Honda sign)として見えることがあります(Fujii 2005)
- 恥骨・坐骨など骨盤輪のほかの骨折や、腰椎の圧迫骨折を一緒に持っていることが多く、骨盤全体を見ます(Fujii 2005・Yamauchi 2022)
- 骨盤への放射線治療のあとにも起こり、骨転移と見間違えないことが大切です(Razavian 2020)
※高齢の方で、転倒などのきっかけがはっきりしないのに腰やお尻・足の付け根が強く痛む、立ち上がりや歩行がつらいときは、医療機関(整形外科)を受診してください。
仙骨脆弱性骨折とはどんな骨折か
仙骨は骨盤の後ろの真ん中にある骨で、左右の腸骨と仙腸関節でつながり、背骨からの体重を骨盤に伝えています。骨が弱くなると、日常生活の負荷や軽い転倒でも、仙骨の両側(仙骨翼)にひびが入ります。
ある研究では、60歳以上で強い外傷のない77人(平均80.3歳、女性66人)が対象でした(Yamauchi 2022)。骨粗鬆症のほか、骨盤への放射線治療も危険因子です。婦人科がんで骨盤に放射線治療を受けた人のメタ解析では、骨盤の脆弱性骨折の頻度は9.4%、5年での累積頻度は15.3%で、骨粗鬆症や閉経後であることが危険因子でした(Razavian 2020)。
強い力で起こる外傷性の骨盤骨折とは原因も分類も違います。外傷性の骨盤輪骨折は骨盤輪骨折の画像診断、骨盤骨折の概要は骨盤骨折とはをご覧ください。
画像の見方① レントゲン(X線):見えないことが多い
仙骨は腸管のガスや便と重なるうえ、骨粗鬆症で骨全体が薄く写るため、細い骨折線はレントゲンでほとんど見えません。上の研究ではレントゲンの感度は28.5%でした(Yamauchi 2022)。
レントゲンで見るなら、仙骨翼の縦に走る淡い硬化線(治りかけの骨折で白く見える線)、仙骨孔の線(弓状線)の途切れ、そして恥骨・坐骨の骨折がないかを確認します。恥骨の骨折が見つかったら、仙骨も折れていないかを疑うきっかけになります。恥骨の骨折は恥骨骨折の画像診断、恥骨と坐骨の正常な境目は坐骨恥骨軟骨結合で解説しています。

引用:Yamauchi et al. J Clin Med 2022(Figure 1)
仙骨脆弱性骨折の症例です。(A)正面と(B)側面のレントゲン、(C)矢状断CT、(D)3D-CTで、赤矢印が骨折線を示しています。正面のレントゲンでは骨折線がわかりにくく、CTで仙骨の骨折線が確認できます(出典:Yamauchi et al. J Clin Med 2022, Figure 1, CC BY 4.0)。
画像の見方② CT:骨折線と形を確かめる
CTは骨折線そのものを見るのに向いており、感度は94.2%でした(Yamauchi 2022)。冠状断(仙骨に沿った斜めの冠状断)と矢状断の再構成を使うと、縦の線と横の線のつながりがわかります。
骨折の形
同じ研究でCTで分けた骨折の形は次のとおりでした(Yamauchi 2022)。
| 形 | 割合 | 特徴 |
|---|---|---|
| H型・U型 | 40.2% | 左右の仙骨翼の縦の線を、横の線がつなぐ |
| 横骨折型 | 33.7% | 仙骨を横に走る線が主 |
| λ型・T型 | 24.7% | 片側の縦の線と横の線 |
| 片側の縦骨折型 | 1.3% | 片側の仙骨翼だけ |
| 両側の縦骨折型 | 0% | 横の線を伴わない両側の縦の線 |
腰椎MRIで見つかった仙骨脆弱性骨折を含む42人の検討でも、両側の仙骨翼に横の成分を伴う形がもっとも多く、横の成分はS2の高さがもっとも多くみられました(Kim 2018)。

引用:Yamauchi et al. J Clin Med 2022(Figure 7)
87歳女性、λ/T型の仙骨脆弱性骨折。(A)正面・(B)側面のレントゲン、(C)3D-CT、(D)軸位断CT、(E)冠状断CT、(F)軸位断T1強調像、(G)軸位断脂肪抑制T2強調像、(H)冠状断T1強調像、(I)冠状断脂肪抑制T2強調像で、赤矢印が骨折線を示しています(出典:Yamauchi et al. J Clin Med 2022, Figure 7, CC BY 4.0)。
画像の見方③ MRI:もっとも見つけやすい検査
MRIでは、骨折線がT1強調像で黒い線として、周りの骨髄浮腫がT1強調像で低信号、脂肪抑制T2強調像やSTIRで高信号として見えます。上の研究ではMRIですべての骨折が見つかり、65%の例でCTより複雑な骨折の形が見えました。腰椎MRIに仙骨を含む冠状断の脂肪抑制T2強調像を加えることがすすめられています(Yamauchi 2022)。

引用:Yamauchi et al. J Clin Med 2022(Figure 2)
仙骨脆弱性骨折のMRIです。(A)冠状断T2強調像、(B)矢状断T1強調像、(C)軸位断T2強調像で、赤矢印が骨折線を示しています(出典:Yamauchi et al. J Clin Med 2022, Figure 2, CC BY 4.0)。
腰椎MRIの「下の端」を見る
42人の仙骨脆弱性骨折のうち、64.3%(27人)は腰椎MRIで診断され、骨盤CT・骨シンチ・骨盤MRIで見つかったのは残りの35.7%でした。腰椎MRIで見つかった群では、腰痛や下肢への放散痛、ほかの痛みの原因を合わせ持つことが多かったと報告されています(Kim 2018)。腰の痛みで撮った腰椎MRIでは、矢状断の下の端に写る仙骨の信号変化を見落とさないようにします。

引用:Kim et al. BMC Musculoskelet Disord 2018(Figure 4)
81歳女性、横の成分を伴う両側仙骨翼の仙骨脆弱性骨折。(a)矢状断T1強調像で右の仙骨翼に低信号の線状影(矢印)、(b)軸位断T1強調像と(c)T2強調像(S1遠位の高さ)で両側の仙骨翼に低信号の骨折線と、わずかな周囲の骨髄浮腫(矢頭)が見えます(出典:Kim et al. BMC Musculoskelet Disord 2018, Figure 4, CC BY 4.0)。
脊椎MRIを読む順番は脊椎MRIの読み方、骨粗鬆症による椎体の骨折の見方は脊椎圧迫骨折の画像診断も参考にしてください。
画像の見方④ 骨シンチとHonda sign
骨シンチ(骨シンチグラフィ)では、左右の仙骨翼の縦の集積と、それをつなぐ横の集積がH字型に見えることがあり、Honda signと呼ばれます。仙骨脆弱性骨折が疑われた26人の骨シンチを見直した研究では、骨折のあった24人のうち典型的なHonda signは15人(63%)で、ほかは変わった形(variant)でした。Honda signとその変形を合わせると感度96%、陽性的中率92%でした(Fujii 2005)。
同じ研究では、71%に仙骨以外の集積があり、もっとも多いのは恥骨(50%)、次いで脊椎(46%、圧迫骨折や変性によるもの)でした。著者らは、Honda signかその変形があり、ほかの部位の骨折があるか転移の所見がなければ、仙骨脆弱性骨折の強い根拠になるとまとめています(Fujii 2005)。
骨シンチの見え方は骨シンチとは、骨折など転移以外の集積は骨シンチの見方と偽陽性で解説しています。
骨盤輪のほかの部位も一緒に見る
骨盤は輪の形をしているため、輪の1か所が折れると、別の場所も折れていることがよくあります。仙骨脆弱性骨折では恥骨の骨折との合併が多いことが知られており(Aretxabala 2000)、骨シンチでも恥骨の集積が50%に見られました(Fujii 2005)。CT・MRIでの検討では、仙骨だけの骨折は71.4%で、13.0%にほかの骨盤の骨折、9.1%に脊椎の骨折を伴っていました(Yamauchi 2022)。
骨盤の脆弱性骨折の多くは、ずれが少なく手術を必要としませんが、一部では骨の損傷が少しずつ進み、ずれが大きくなったり骨がつかなかったりします。Rommensらは245人の検討をもとに、形と不安定性の程度に応じた分類(FFP分類)を提案しています(Rommens 2013)。分類の中身はFFPのRommens分類の記事、外傷性骨盤骨折の分類は骨盤骨折の分類(AO分類)をご覧ください。
見逃しやすい点・まぎらわしいもの
- 骨転移:がんの治療歴がある人で仙骨にT1低信号があると転移を心配しますが、骨折線が見えるか、左右対称の縦の帯状の変化か、骨の外へ広がる腫瘤がないかを確認します。骨シンチでも1つの転移が仙骨だけにある可能性は小さいとされています(Fujii 2005)。骨転移の画像は骨転移の画像診断で解説しています
- 放射線治療後:子宮頸がんなどで骨盤に放射線治療をした人の仙骨の変化は、再発と見分けが必要です(子宮頸癌の放射線治療後のMRI・放射線治療後の画像変化まとめ)
- 仙腸関節の病気:仙腸関節のそばの硬化や浮腫は、仙腸関節炎や腸骨硬化性骨炎でも見られます(腸骨硬化性骨炎(OCI))
- 疲労骨折との違い:若い人が運動などの繰り返しの負荷で起こすのが疲労骨折、弱くなった骨に普通の負荷で起こるのが脆弱性骨折です(疲労骨折のレントゲン・MRI画像所見)
治療方針に関わる画像所見
仙骨脆弱性骨折は、痛みの治療と、できる範囲で体を動かす保存的治療から始めることが多い骨折です。画像の役割は、骨折の範囲と、骨盤輪の安定性を判断する材料を出すことです。一般的には次の点が方針に関わります。
- 両側か片側か・横の線があるか:両側の縦の線と横の線(H型・U型)がある場合は、骨盤輪と背骨のつながりが弱くなっている形です
- 前方(恥骨など)の骨折の有無:前と後ろの両方が折れているかどうかは、FFP分類での不安定性の評価に関わります(Rommens 2013)
- 経過での変化:痛みが続く、歩けない状態が長引くときは、CTでずれが進んでいないか、骨がついていないかを確かめます。骨の損傷が少しずつ進む例があるためです(Rommens 2013)
- 骨粗鬆症の評価:脊椎の圧迫骨折を合わせ持つことも多く(Fujii 2005)、骨粗鬆症の治療につなげることも大切です
Q&A
Q1. レントゲンで「骨折はない」と言われましたが、仙骨の骨折のことはありますか?
A. あります。仙骨脆弱性骨折はレントゲンで見つかりにくく、研究ではレントゲンの感度は28.5%でした(Yamauchi 2022)。強い痛みが続くときは、CTやMRIで確かめることがあります。
Q2. 腰のMRIで仙骨の骨折がわかることはありますか?
A. あります。仙骨脆弱性骨折の64.3%が腰椎MRIで診断されたという報告があります(Kim 2018)。腰椎MRIに仙骨を含む冠状断の脂肪抑制T2強調像を加えると見つけやすいとされています(Yamauchi 2022)。
Q3. Honda signとは何ですか?
A. 骨シンチで、左右の仙骨翼の縦の集積と横の集積がつながってH字型に見える所見です。典型的な形は63%で、変形した形を含めると感度96%と報告されています(Fujii 2005)。CTやMRIでは骨折線そのものを確かめることができます(Yamauchi 2022)。
参考文献:
- Yamauchi T, Sharma S, Chandra S, et al. Superiority of MRI for Evaluation of Sacral Insufficiency Fracture. J Clin Med. 2022;11(17). PubMed
- Kim YY, Chung BM, Kim WT. Lumbar spine MRI versus non-lumbar imaging modalities in the diagnosis of sacral insufficiency fracture: a retrospective observational study. BMC Musculoskelet Disord. 2018;19(1):257. PubMed
- Fujii M, Abe K, Hayashi K, et al. Honda sign and variants in patients suspected of having a sacral insufficiency fracture. Clin Nucl Med. 2005;30(3):165-9. PubMed
- Rommens PM, Hofmann A. Comprehensive classification of fragility fractures of the pelvic ring: Recommendations for surgical treatment. Injury. 2013;44(12):1733-44. PubMed
- Aretxabala I, Fraiz E, Pérez-Ruiz F, et al. Sacral insufficiency fractures. High association with pubic rami fractures. Clin Rheumatol. 2000;19(5):399-401. PubMed
- Razavian N, Laucis A, Sun Y, et al. Radiation-Induced Insufficiency Fractures After Pelvic Irradiation for Gynecologic Malignancies: A Systematic Review. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2020;108(3):620-634. PubMed
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