先に結論:大腿骨頸部骨折・転子部骨折
- 大腿骨の付け根の骨折は、関節包の内側の頸部骨折(内側骨折)と外側の転子部骨折(外側骨折)に分けます。高齢者の転倒後の股関節痛で最も多い原因で、骨粗しょう症があると起こりやすく、強い痛み・立てない・歩けないといった症状が出ます
- 頸部骨折は血流が途絶えやすく骨癒合しにくい・骨頭壊死が起こりやすいため、ずれが大きければ人工骨頭置換術、転子部骨折は骨接合術(髄内釘など)が基本です
- X線で分からない潜在骨折はMRI(T1強調像の低信号の線・STIRの高信号)で確認します。ずれの程度はGarden分類で評価します。X線で正常・疑いとされた低エネルギー外傷254例では、MRIでさらに25%に骨折が見つかりました。CTの潜在骨折に対する感度は単施設の報告で約86%、メタ解析で79%にとどまり、CTが陰性でも疑いが残ればMRIで確認します。全身状態が許せばできるだけ早い手術が勧められ、寝たきりを防ぐため早期からリハビリを行います
※高齢の方が転んだあと、足の付け根が痛くて立てない・歩けないときは、すぐに受診してください。
大腿骨頸部骨折
- 内側骨折は骨癒合が得られにくく治療困難。3つ理由がある。
①関節内骨折のため骨膜性仮骨が形成されない。
②頸部側から供給される血流が遮断される。
③頸部を横断する骨折線が剪断力により離開しやすい。 - 分類は、内側骨折ではGarden分類、外側骨折ではEvans分類、Jensen分類、AO分類などが用いられる。
- 内側骨折(関節内骨折、最近では大腿骨頸部骨折という)と外側骨折(大腿骨転子部骨折)に分けられる。
- 骨に関連しない危険因子は、転倒回数が多い事、喫煙、向精神薬の使用、加齢、低体重、多量のカフェイン摂取、未産など。
- 危険因子として、骨に関連するものとしては、骨密度の低下、脆弱性骨折の既往、骨吸収マーカー、骨形成マーカーの高値、血清ビタミンDの低値、非常に低い血清エストラジオール、血清ビタミンA濃度低値と高値、親の大腿骨頸部/転子部骨折の既往、甲状腺機能低下、性腺機能低下、胃切除後の既往、糖尿病、腎機能低下、膝痛、視力障害、大腿骨頸部長が長いことなど。
- 転倒など外傷後の股関節痛の原因のうち最多。
- 高齢化に伴い年々増加している。特に70歳以上に多い。
- 骨折後の大腿骨頭壊死が問題(MRIが早期診断に有用。)
- 内側骨折は、骨折部位により骨頭下骨折、中間部骨折、頸底部(基部)骨折に分けられる。Garden分類(stage I〜IV)は観察者間の一致率が低く(10名による100例の評価でκ=0.31)、非転位型(stage I・II)と転位型(stage III・IV)の2群に簡略化すると一致率が上がる(κ=0.52)と報告されている。このため、非転位型・転位型の2分類で記載することが勧められている。
- 外側骨折は色んな方向に走る。外側骨折には、転子間骨折、転子部骨折などがある。
※内側および外側骨折は関節包の境界にて分類されています。
大腿骨頸部骨折とは?(用語と骨折部位)
人間の骨の中で最も長い太ももの大腿骨のうち、脚の付け根に近い部分の骨を折った状態を、大腿骨頸部骨折(英語表記で「Femoral neck fracture」)といいます。

大腿骨近位部の骨折は、以前は内側骨折(関節内骨折)と外側骨折(関節外骨折)に分けられていましたが、現在のガイドラインでは「大腿骨頸部骨折」と「大腿骨転子部骨折」という用語が使われます。

- 内側骨折・・・骨頭骨折・頸部骨折
- 外側骨折・・・転子部骨折・転子下骨折
大腿骨頸部骨折の症状
- 強い疼痛
- 立位・歩行困難
ズキズキとうずくように痛み、立った状態でいられなくなったり、転倒して立ち上がれないなどの症状がある時には、大腿骨の骨折が疑われます。

症例 70歳代女性 右大腿骨内側骨折

症例 80歳代男性 左大腿骨外側骨折(転子部骨折)

大腿骨頸部骨折の画像診断(X線・CT・MRI)
- 単純X線検査
- CT検査
- MRI検査
などで検査し、骨折部位を確認します。
ただ、高齢者の場合、骨の強度が低下したために起こってる場合もあり、その際はX線検査では分かりにくく、MRIなどをおこなうことで診断に至ります。
MRIでは、X線検査やCTでは発見できないような骨折であっても、骨折線や周囲の骨髄浮腫を描出することができます。メタ解析では、X線で明らかな骨折がない高齢者の股関節痛のうち39%に、MRIで手術を要する骨折が見つかり、X線で大転子単独骨折に見える例では92%に及んでいました。CTの感度は79%(メタ解析)〜86%(単施設の報告)で、CTが陰性でも疑わしい場合はMRIで確認します。
内側骨折(頸部骨折)の症例
症例 70歳代 女性

股関節のレントゲンでは、骨折線ははっきりしません。


MRIではT1強調像で骨折線を示唆する低信号あり。
STIRでは骨折部位及び周囲に異常な高信号を認めています。
大腿骨頸部骨折(ストレス骨折疑い)と診断されました。
症例 70歳代女性

レントゲンでも骨折を診断可能です。
左に比べて右の大腿骨頸部は短縮を認めています。

股関節のCT画像です。
CTの横断像や冠状断像で右の大腿骨頸部に明らかな骨折線を認めています。

3D再構成で骨折の様子がよくわかります。
症例 40歳代女性

この症例もレントゲンでも骨折を診断可能です。
左に比べて右の大腿骨頸部は短縮を認めています。

MRIではT1強調像で骨折線を示唆する低信号あり。
STIRでは骨折部位及び周囲に異常な高信号を認めています。
大腿骨頸部骨折(内側型)と診断されました。
外側骨折(転子部骨折)の症例
症例 70歳代 女性

股関節のCT画像です。
転子部に骨折線を認めています。
大腿骨転子部骨折と診断されました。
Garden(ガーデン)分類
大腿骨頸部骨折(内側骨折)は、骨折した部分の転位の大きさと方向で、ステージⅠ〜Ⅳに分類します。上で述べたように4段階の検者間一致率は高くないため、実臨床では非転位型(StageⅠ・Ⅱ)と転位型(StageⅢ・Ⅳ)の2群に分けて治療方針(骨接合術か人工骨頭置換術か)を決めることが多いです。

それぞれについて説明します。
ステージⅠ
内側の骨性連続が残存している状態で、骨頭は外反位であり、不完全な骨折のものをいいます。
(転位のない骨折)
ステージⅡ
軟部組織の連続は残存している状態なものの、完全骨折のものをいいます。
(転位のない骨折)
ステージⅢ
頸部被膜や支帯の連続性は残存しているものの、骨頭の回旋転位はある、完全骨折の状態をいいます。
(転位のある骨折)
ステージⅣ
重度の完全骨折で、全ての軟部組織の連続性がない状態をいいます。
(転位のある骨折)
治療
- 出来るだけ早期の手術療法が選択される。
手術の種類
- 骨接合術→骨折した骨を、金属などの器具で固定して、骨がつながるのを待つ
- 人工骨頭挿入術(人工骨頭置換術)→骨折した頸部から骨頭までを切除し、人工物(金属・セラミックス・ポリエチレン)で置き換える手術
全身状態などで手術ができない場合は保存療法となります。股関節はギプスで固定できないため、痛みに応じてできるだけ早く座位や車椅子への移乗を進め、寝たきりを防ぎます。
大腿骨頸部骨折(内側骨折)
- 癒合不全や大腿骨頭壊死およびそれに伴う遅発性の骨頭圧潰(late segmental collapse:LSC)が問題となる。
- 手術法は、骨接合術(内固定、multiple screw固定)と人工物置換術(人工骨頭置換)に大別される。
- 非転位型は骨接合術、高齢者の転位型は人工物置換術が推奨される。
- 骨接合術の内固定材料には、ハンソンピン、cannulated cancellous screw、sliding hip screw(CHSタイプ)が推奨される。
大腿骨転子部骨折(外側骨折)
- 転位のある場合は、骨接合術、転位のない場合は、保存的治療も可能だが、骨接合術が推奨される。
- 骨接合術の内固定材料には、sliding hip screw(CHSタイプ)または、short femoral nail(gamma nailタイプ)が推奨される。
症例 80歳代 女性

大腿骨頸部に骨折線を認めています。
また転位を認めており、Garden分類のstageⅢに相当します。

左大腿骨頸部骨折に対して、人工骨頭置換術が施行されました。
大腿骨頸部骨折の予後は?
高齢者の場合、安静のために床に伏せた状態が長く続くと筋力が低下し、その後寝たきりになってしまうことも多くあります。
そのため、リハビリは重要で、医師の指示に従い、筋力低下を予防する無理のない運動等をすすめられます。
大腿骨頸部の疾患では、頸部骨折以外にもこちらも重要です。→大腿骨頭壊死症とは?原因(ステロイド・アルコール)・症状とMRI(バンド像)・X線所見、治療
高齢者の転倒が原因として多いことから、特に認知症のある方はうまく症状を伝えられないこともあります。立ち上がれない、歩けないといったいつもと違う様子に家族が気づき、早期に医療機関を受診することも大切です。
参考文献:
骨軟部疾患の画像診断 第2版 P30-31
全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P308〜309
整形外科疾患ビジュアルブック P373〜375
あわせて読みたい:大腿骨頭すべり症(SCFE)のレントゲン
参考文献
- Collin D, Göthlin JH, Nilsson M, et al. Added value of interpreter experience in occult and suspect hip fractures: a retrospective analysis of 254 patients. Emerg Radiol. 2016;23(3):229-234. PubMed
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- Cannon J, Silvestri S, Munro M. Imaging choices in occult hip fracture. J Emerg Med. 2009;37(2):144-152. PubMed
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