大腿骨頸部骨折
- 内側骨折は骨癒合が得られにくく治療困難。3つ理由がある。
①関節内骨折のため骨膜性仮骨が形成されない。
②頸部側から供給される血流が遮断される。
③頸部を横断する骨折線が剪断力により離開しやすい。 - 前者は、Garden分類、後者は、Evans分類、Jensen分類、AO分類などが用いられる。
- 内側骨折(関節内骨折、最近では大腿骨頸部骨折という)と外側骨折(大腿骨転子部骨折)に分けられる。
- 骨に関連しない危険因子は、転倒回数が多い事、喫煙、向精神薬の使用、加齢、低体重、多量のカフェイン摂取、未産など。
- 危険因子として、骨に関連するものとしては、骨密度の低下、脆弱性骨折の既往、骨吸収マーカー、骨形成マーカーの高値、血清ビタミンDの低値、非常に低い血清エストラジオール、血清ビタミンA濃度低値と高値、親の大腿骨頸部/転子部骨折の既往、甲状腺機能低下、性腺機能低下、胃切除後の既往、糖尿病、腎機能低下、膝痛、視力障害、大腿骨頸部長が長いことなど。
- 転倒など外傷後の股関節痛の原因のうち最多。
- 高齢化に伴い年々増加している。特に70歳以上に多い。
- 骨折後の大腿骨頭壊死が問題(MRIが早期診断に有用。)
- 内側骨折は、骨折部位により骨頭下骨折、中間部骨折、頸底部(基部)骨折に分けられる。
- 外側骨折は色んな方向に走る。外側骨折には、転子間骨折、転子部骨折、転子下骨折の3種類がある。
※内側および外側骨折は関節包の境界にて分類されています。
こちらにも詳しくまとめました→大腿骨頸部骨折とは?症状や診断、治療や予後のまとめ
症例 70歳代女性 右大腿骨内側骨折
症例 80歳代男性 左大腿骨外側骨折(転子部骨折)
治療
- 出来るだけ早期の手術療法が選択される。
- 2005年のガイドラインでは少なくとも1週以内の早期手術が推奨されている。
大腿骨頸部骨折(内側骨折)
- 癒合不全や大腿骨頭壊死およびそれに伴う遅発性の骨頭圧潰(late segmental collapse:LSC)が問題となる。
- 手術法は、骨接合術(内固定、multiple screw固定)と人工物置換術(人工骨頭置換)に大別される。
- 非転位型は骨接合術、高齢者の転位型は人工物置換術が推奨される。
- 骨接合術の内固定材料には、ハンソンピン、cannulated cancellous screw、sliding hip screw(CHSタイプ)が推奨される。
大腿骨転子部骨折(外側骨折)
- 転位のある場合は、骨接合術、転位のない場合は、保存的治療も可能だが、骨接合術が推奨される。
- 骨接合術の内固定材料には、sliding hip screw(CHSタイプ)または、short femoral nail(gamma nailタイプ)が推奨される。