
先に結論:非定型大腿骨骨折(AFF)は、骨粗鬆症の薬を長く使う人にまれに起こる、太ももの骨幹部の「疲労骨折」に近い骨折
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 場所 | 大腿骨の転子下〜骨幹部(太ももの真ん中あたり) |
| レントゲンの特徴 | 外側の皮質(骨の外壁)が局所的に厚くなり、そこから横向きの骨折線 |
| 前ぶれ | 太ももや足の付け根の痛み(両側例の67%にあった:Hwang 2023) |
| 反対側 | 両側に起こることがある。片側で見つかったら反対側も画像で確認(Collins 2025) |
| 起こる頻度 | ビスホスホネート使用者で10万人年あたり3.2〜50件とまれ(Shane 2014) |
薬で防げる骨折の数は、このまれな骨折の数を大きく上回ると推計されています(アジア系では差が小さくなる:Black 2020)。薬は自己判断でやめず、気になる症状があれば主治医に相談しましょう。
非定型大腿骨骨折とは
非定型大腿骨骨折(atypical femoral fracture:AFF)は、大腿骨の転子下から骨幹部に起こる、ほとんど外傷のない骨折です。米国骨代謝学会(ASBMR)のタスクフォース第2報(2014年)は、AFFをストレス骨折(疲労骨折・脆弱性骨折)と位置づけています(Shane 2014)。
ビスホスホネート(BP)などの骨吸収抑制薬を使っている人で報告されてきましたが、デノスマブ使用者や、薬を使っていない人にも起こります(Shane 2014)。BPは疲労骨折ができかけている部分に集まり、そこで骨の作り替え(リモデリング)を抑えるため、本来なら治るはずの小さなひびが治りにくくなると考えられています(Shane 2014)。
関連する薬の影響による骨の病変は薬剤や治療が原因で起こりうる骨軟部病変にまとめています。
レントゲンでの特徴:ASBMRの定義(2014年版)
骨折の場所が小転子のすぐ下から、膝の上で骨が広がり始める部分(顆上部)の手前までであることが前提で、次の主な特徴(major features)のうち4つ以上を満たすものをAFFとします(Shane 2014)。
| 主な特徴 | 内容 |
|---|---|
| 1. 軽い外傷 | 外傷がない、または立った高さからの転倒程度 |
| 2. 骨折線の向き | 外側の皮質から始まり、おおむね横向き。内側へ進むと斜めになることがある |
| 3. 折れ方 | 折れきった骨折は両側の皮質を貫き、内側にとげ(spike)を伴うことがある。不全骨折は外側皮質だけ |
| 4. 粉砕 | ない、またはごくわずか |
| 5. 外側皮質の肥厚 | 骨折部の外側皮質に限局した骨膜・骨内膜の肥厚(くちばし状:beaking、flaring) |
2014年版では、横向きの骨折線が重視され、わずかな粉砕は許容され、骨折部の骨膜反応が主な特徴に格上げされました(Shane 2014)。
折れる前の段階では、外側皮質の小さな「こぶ」(くちばし状の肥厚)と細い横線だけのことがあり、これを見つけることが早期発見につながります。普通の大腿骨頸部骨折・転子部骨折との違いは大腿骨頸部骨折と転子部骨折の違い、部位の名前は大腿骨の場所はどこ?を参照してください。
どのくらい起こる?リスクと薬の関係
- BP使用者でのAFFの絶対リスクは10万人年あたり3.2〜50件と低く、長期使用では約100件程度とされます(Shane 2014)。
- スウェーデンの全国研究では、BP使用によるAFFの増加は1万人年あたり5件で、薬をやめると1年ごとにリスクが70%下がりました(Schilcher 2011)。
- 米国の約19.6万人の女性の研究では、使用期間が長いほどリスクが上がり、中止後は速やかに下がりました。アジア系は白人の約4.8倍のリスクでした(Black 2020)。
- それでも、白人では3年間の使用で大腿骨近位部骨折149件を防ぐ一方、AFFは2件、アジア系では防げる骨折91件に対しAFFは8件と推計されています(Black 2020)。
アジア系の人でリスクが高いことは、日本で暮らす人にとって知っておきたい点です(Black 2020、Collins 2025)。
症例 30歳代男性 非定型大腿骨骨折

引用:Radiopaedia(Atypical femoral fracture)
左大腿骨の転子下に、横向き(わずかに斜め)の完全骨折があり、内側にとげ状の突出(medial spike)が見えます。反対側の右大腿骨転子下にも外側の皮質が厚くなった不全骨折の変化があると症例ページに記載されています。ビスホスホネートを使っていない若い男性の症例です。
反対側も見る理由
- BP関連の両側AFF43例のレビューでは、両側が同時に見つかったのが49%、時間差で起こったのが51%でした。67%に前ぶれの痛みがありました(Hwang 2023)。
- 最初のAFFのあと、反対側に不全骨折がなかった大腿骨では9.7%、不全骨折があった大腿骨では37.5%が、のちに折れきった骨折になりました。太ももの痛みのある不全骨折は特にリスクが高いとされています(Tsuchie 2024)。
- AFFのあとは、骨吸収抑制薬の中止の検討、反対側の大腿骨の画像検査、骨粗鬆症そのものの治療が勧められています(Collins 2025)。
両側例の約半数は時間差で起こるため(Hwang 2023)、片側の骨折の治療中も反対側の痛みや画像に注意します。
医療者向け:レポートでの注意
スウェーデンの検討では、AFFのレントゲンの読影レポートにAFFや疲労骨折の特徴が書かれていたのは、2008〜2010年で7%、2015〜2018年でも27%にとどまりました(Bögl 2025)。
- 転子下〜骨幹部の横骨折では、外側皮質の限局性肥厚を確認し、AFFの可能性をレポートに記載する。
- 反対側の大腿骨の評価を勧める(Collins 2025)。
心配なとき、次にすること
骨粗鬆症の薬を使っていて、太ももや足の付け根の鈍い痛みが続くときは、医療機関を受診し、薬の使用歴を伝えてください。薬を続けるか、休むか、別の薬に替えるかは、骨折予防の効果とのバランスで決まるため、自己判断でやめずに主治医と相談しましょう。
よくある疑問(Q&A)
Q. 骨粗鬆症の薬は飲まないほうが安全ですか?
A. AFFはまれで、薬で防げる骨折の数のほうが多いと推計されています。ただしアジア系ではその差が小さくなります(Black 2020)。中止や休薬は主治医と相談してください。
Q. どんな痛みに気をつければよいですか?
A. 太ももや足の付け根の鈍い痛みが前ぶれになることがあります(Hwang 2023)。続く場合は受診してください。
Q. 片方が折れました。反対側も手術が必要ですか?
A. 反対側の状態(不全骨折の有無、痛みの有無)によって考え方が変わります(Tsuchie 2024)。まず画像で確認し、方針は主治医と相談してください。
参考文献
- Shane E, Burr D, Abrahamsen B, et al. Atypical subtrochanteric and diaphyseal femoral fractures: second report of a task force of the American Society for Bone and Mineral Research. J Bone Miner Res. 2014;29(1):1-23. PubMed
- Black DM, Geiger EJ, Eastell R, et al. Atypical Femur Fracture Risk versus Fragility Fracture Prevention with Bisphosphonates. N Engl J Med. 2020;383(8):743-753. PubMed
- Schilcher J, Michaëlsson K, Aspenberg P. Bisphosphonate use and atypical fractures of the femoral shaft. N Engl J Med. 2011;364(18):1728-37. PubMed
- Hwang S, Seo M, Lim D, et al. Bilateral Atypical Femoral Fractures after Bisphosphonate Treatment for Osteoporosis: A Literature Review. J Clin Med. 2023;12(3):1038. PubMed
- Tsuchie H, Kasukawa Y, Nozaka K, et al. Factors Affecting the Second Complete Atypical Femoral Fracture after the First Atypical Fracture. Med Princ Pract. 2024;33(1):10-20. PubMed
- Bögl HP, Schilcher J. Identification of subtrochanteric and femoral shaft fractures as atypical femur fractures on radiology reports. Acta Radiol. 2025;66(5):529-535. PubMed
- Collins L, Nguyen HH, Milat F, et al. Epidemiology, Pathophysiology and Management of Atypical Femur Fractures: an Update. Curr Osteoporos Rep. 2025;23(1):40. PubMed
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