CTやMRIの造影検査を行っていると、血管内に入れないといけない造影剤が、血管外に漏れ出てしまうことがまれにあります。
これを造影剤の血管外漏出と言います。
圧が高まり途中で気づくことが多いですが、造影剤が漏れ出た場所にスペースがあったり、間質組織が多い場合は、相当量漏れていても検査が終わるまで気づかないこともあります。
今回は、造影剤が血管外に漏れ出た時の症状、対応、処置についてまとめました。
造影剤が血管外へ漏れたとき(血管外漏出)
基本的にCT造影剤でもMRI造影剤でも対応は同じです。
造影剤が漏れた時に、チェックすべき具体的症状は?
以下の点をチェックします。
- 疼痛
- 腫脹
- 水疱
- 稀:潰瘍、コンパートメント症候群(著明な腫脹、疼痛、動脈拍動の減少、四肢蒼白、知覚異常、運動障害)
コンパートメント症候群とは?
造影剤が血管外に漏れると、前腕の筋膜と骨で囲まれた閉鎖された区域(コンパートメント)の圧が上昇して、血管を圧迫します。
血管が圧迫されると末梢への血流が途絶えて疎血状態になります。
血流が途絶えると、虚血から壊死になります。
すると手先から言わば、腐るということが起こってしまいます。
これをコンパートメント症候群と言います。
それを防ぐために、筋膜を切開解放して圧を下げて、血管の圧迫を阻止する必要があります。
コンパートメント症候群が起こると
- 著明な腫脹
- 疼痛
- 動脈拍動の減少
- 四肢蒼白
- 知覚異常
- 運動障害
といったことが起こりますので、これらがないかを確認します。
漏出した場合の対応
- 少量→放置または漏出部位をビニールでくるんだ「ぬれタオル」で冷やす。(最近は炎症を抑えるために温めるより冷やすほうがよいと言われる。)
- 多量→冷罨法を行なう。
※漏出の見られる四肢を挙上する。
※疼痛、腫脹に対しては氷で冷やす。1〜3日にわたって1日3回、15〜60分の冷やすとよいという報告あり。
腫脹・発赤が残ったとき
冷罨法を間欠的に続ける。消失するまで観察。
疼痛、皮膚障害が見られた場合
必要に応じて、鎮痛薬、抗炎症薬、ステロイド薬の概要を行なう。症状に応じて、皮膚科や形成外科へのコンサルトを。
- 疼痛の緩和:消炎鎮痛剤の内服
- 皮膚障害の軽減:冷やす。ステロイドの外用あるいは内用、水疱持続する場合は穿刺排液。
どのようなときに皮膚科、形成外科へコンサルトするか?
- 2−4時間後の腫脹や痛みの亢進
- 組織灌流の変化
- 感覚の低下
- 皮膚の水疱または潰瘍形成
- 非イオン性造影剤で100mlを超える時
このような場合には、皮膚科や形成外科へのコンサルトが必要です。