恥骨結合離開(ちこつけつごうりかい)は、骨盤の前で左右の恥骨をつないでいる恥骨結合が開いてしまう損傷です。交通事故などで骨盤が前後から押しつぶされたり、脚が外へ大きく開かれたりすると、骨盤が本を開くように開くopen book型(オープンブック型)骨盤損傷になります。

この記事では、恥骨結合離開とopen book型骨盤損傷を画像でどう読むかを、恥骨結合の開き(2.5cmが目安)、仙腸関節の開き、出血と尿道・膀胱の損傷の3つに分けて、実際の論文の画像を使って解説します。

骨盤骨折の分類全体(AO分類・Young-Burgess分類)は骨盤骨折の分類とCT画像診断のポイント、骨盤骨折の基本は骨盤骨折とは、骨盤輪の考え方は骨盤輪骨折の画像診断で解説しています。

先に結論:恥骨結合離開・open book型骨盤損傷の画像診断

  • open book型は、Young-Burgess分類の前後圧迫型(APC)にあたります。APC-1は恥骨結合の開きが2.5cm未満で仙腸関節は保たれ、APC-2は2.5cmを超えて仙腸関節の前方が開き、APC-3は仙腸関節の靱帯まで断裂した、もっとも不安定な損傷です(Wakefield 2022)
  • 恥骨結合が開いていたら、後ろ側(仙腸関節・仙骨)を見ます。骨盤は輪なので、前が開くと後ろにも損傷があります
  • レントゲンやCTは撮った瞬間の形しか写さず、搬送中の骨盤固定などで開きが小さく見えることがあります。CTで仙腸関節の開きが見えなかったのに、手術中に明らかになった症例も報告されています(Kim 2016)
  • APC-2・APC-3は輸血が必要になることが多い損傷です(Manson 2010)。造影CTで骨盤内の血腫と造影剤の漏れ(活動性出血)を確認します
  • 不安定な骨盤骨折では尿道・膀胱の損傷を伴うことがあり、尿道損傷は男性に多いと報告されています(Zhao 2023)

※交通事故・転落などのあとに骨盤や足の付け根が痛む、立てない、尿に血が混じる・尿が出ないときは、すぐに医療機関を受診してください(救急要請を含みます)。出産後に恥骨のあたりの痛みで歩きにくいときも、医療機関(整形外科・産婦人科)に相談してください。

恥骨結合離開・open book型骨盤損傷とは

骨盤は「輪」

骨盤は、後ろの仙骨と左右の寛骨(腸骨・坐骨・恥骨)が輪のようにつながった構造です。前は恥骨結合、後ろは左右の仙腸関節でつながり、仙腸関節は強い靱帯で支えられています。輪の1か所が壊れると、たいてい別の場所も壊れています。

なぜ本のように開くのか

open book型骨盤損傷の典型的な受傷機転は、前から後ろへ向かう力、または片脚・両脚を外へ回す・開く力です(Kim 2016)。恥骨結合が開き、仙腸関節を蝶番(ちょうつがい)にして左右の寛骨が外へ開きます。仙腸関節の前の靱帯だけが切れれば蝶番はまだ残りますが、後ろの靱帯まで切れると骨盤の半分が自由に動いてしまいます。

強い外力で起こることが多い一方、低いエネルギーの外傷でopen book型損傷が起こることもまれにあると述べられています(Naidu 2024)。また、出産のあとに恥骨結合が開くこともあり、ある症例報告では恥骨結合の幅が10mmを超えるものを離開と定義しています(Chaudhary 2023)。

画像の見方① レントゲン(X線)

骨盤正面像で見るポイント

  1. 恥骨結合の幅:左右の恥骨の端のあいだの距離。2.5cmが分類の目安です(Wakefield 2022)
  2. 恥骨結合の上下のずれ:左右の恥骨の上縁の高さがそろっているか
  3. 仙腸関節の幅:左右の仙腸関節を比べ、片側だけ広くないか
  4. 恥骨・坐骨の骨折:結合そのものは保たれていても、恥骨枝の骨折で前方の輪が壊れていることがあります
  5. 仙骨の骨折:仙骨孔の線(弓状線)の途切れ

骨盤正面像に加え、上から見下ろす方向のinlet像、斜め下から見るoutlet像で、前後・上下のずれを確認します。恥骨の骨折は恥骨骨折の画像診断、恥骨と坐骨の正常な境目は坐骨恥骨軟骨結合で解説しています。

恥骨結合離開 X線
引用:Naidu et al. Cureus 2024(Figure 3)

骨盤正面のレントゲンです。恥骨結合離開(青矢印)と右仙腸関節の離開(緑矢印)が見えます(出典:Naidu et al. Cureus 2024, Figure 3, CC BY 4.0)。

画像の見方② 分類:APC-1・2・3

型 恥骨結合 仙腸関節・靱帯 安定性
APC-1 開き2.5cm未満 前方の仙腸関節と骨盤底の靱帯は保たれる 安定
APC-2 2.5cmを超える 仙腸関節の前方が開く 部分的に安定
APC-3 2.5cmを超える 仙腸関節の靱帯が断裂(後方も) 不安定

上の定義はWakefield 2022によります。APC-2では、恥骨結合が2.5cmを超えて開くことが仙棘靱帯の断裂と関係するとされ、恥骨結合のプレート固定(仙腸関節の固定を加えることもある)が必要と考えられています(Kim 2016)。

画像の見方③ CT:仙腸関節と仙骨を立体で見る

骨盤外傷では、CTで骨盤輪を一周見て、仙腸関節の前方・後方の開き、仙骨骨折、寛骨臼の骨折を確認します。軸位断で左右の仙腸関節の幅を比べ、冠状断・3D再構成で全体の形をつかみます。

open book型骨盤損傷 仙腸関節離開 CT
引用:Naidu et al. Cureus 2024(Figure 10)

骨盤CTの軸位断です。右仙腸関節の離開(緑矢印)が見えます。同じ症例では、軸位断CTで恥骨結合の開きは2.74cmと計測されていました(出典:Naidu et al. Cureus 2024, Figure 10, CC BY 4.0)。

open book型骨盤損傷 X線・3D-CT
引用:Miyashita et al. Cureus 2026(Figure 1)

(A)骨盤正面のレントゲンと(B)3D-CTで、恥骨結合離開(赤矢印)と、左の仙骨骨折の前方の開き(白矢印)、右の仙骨翼のずれのない骨折が見えます。仙腸関節そのものではなく、仙骨の骨折として後方が開く型もあります(出典:Miyashita et al. Cureus 2026, Figure 1, CC BY 4.0)。

静止画は損傷を小さく見せることがある

レントゲンもCTも、撮影した瞬間の骨盤の形しか写しません。救急搬送で骨盤を締める固定具を巻いていたり、仰向けで脚がそろっていたりすると、開いた骨盤が閉じた状態で写ることがあります。APC型の分類は静止画のレントゲンに基づくため、ストレス撮影が分類の補助として役立つとされ、APC-1(恥骨結合の開き2.5cm未満)と考えられた22人で、手術中のストレス検査により25%を超える人で治療方針が変わったという報告が紹介されています(Kim 2016)。

恥骨結合離開 X線・CT
引用:Kim et al. Hip Pelvis 2016(Figure 1)

手術前のレントゲンで恥骨結合の3.0cmの離開が見えます((A)正面、(B)inlet像、(C)outlet像)。CTの軸位断(D、E)と3D画像(F)では仙腸関節の離開は見えませんでした。骨盤を動かしていなくても、CTのような静止画像は実際の損傷を小さく見積もることがあります(出典:Kim et al. Hip Pelvis 2016, Figure 1, CC BY-NC 4.0)。

この症例では、恥骨結合をプレートで固定したあとに右の仙腸関節の離開が明らかになり、仙腸関節の固定を追加しています(Kim 2016)。

出血・尿道損傷を見る

出血

骨盤の後方が開く損傷では、骨盤の静脈叢や骨折面、動脈からの出血が起こりえます。骨盤骨折1,248人の検討では、APC-2・APC-3と側方圧迫型のLC-3は、APC-1・LC-1・垂直剪断型(VS)より最初の24時間の輸血量が多く、全体の死亡率は9.1%でした(Manson 2010)。

造影CTでは、骨盤内・後腹膜の血腫の広がりと、動脈相や遅延相で広がる造影剤の漏れ(extravasation)を探します。漏れがあれば、動脈塞栓術などの止血の判断材料になります。外傷性ショックのCT所見はショックの分類とショック指数、救急外来での超音波はFAST(外傷の迅速超音波検査)、骨盤内の動脈の走行は内陰部動脈の走行と分枝、後腹膜の見方は腹部CTの後腹膜・大血管の読影ポイントも参考にしてください。

尿道・膀胱の損傷

骨盤骨折698人の検討では、下部尿路(膀胱・尿道)の損傷は7.7%に見られ、全員が不安定型の骨盤骨折でした。膀胱損傷は男女でほぼ同じ頻度(4.5%と4.4%)でしたが、尿道損傷は男性に多く(6.1%と0.5%)見られました(Zhao 2023)。

尿道の出口からの出血、尿が出ない、会陰部の腫れなどがあるときは、尿道カテーテルを入れる前に尿道損傷を疑い、逆行性尿道造影で確認します(尿道損傷と逆行性尿道造影(RUG))。膀胱の損傷は、造影CTの遅延相やCT膀胱造影で膀胱の外へ漏れる造影剤を探します。膀胱のCTの見方は腹部CTの膀胱・前立腺の読影ポイントで解説しています。

見逃しやすい点・まぎらわしいもの

  • 固定具を巻いたあとの画像:骨盤を締める固定具で開きが小さく見えることがあり、搬送時の状態と合わせて解釈します(Kim 2016)
  • APC-1と言われた損傷の不安定性:恥骨結合の開きが2.5cm未満でも、受傷から時間がたって骨盤の不安定性が明らかになり手術が必要になった症例が報告されています(Wakefield 2022)
  • 仙骨骨折による後方の開き:仙腸関節ではなく仙骨の骨折として後方が開く型があります(Miyashita 2026)
  • 高齢者の骨盤骨折:軽い転倒で起こる骨盤の脆弱性骨折は、外傷性の骨盤輪損傷とは別の分類で考えます(骨盤脆弱性骨折(FFP))
  • ほかの臓器の損傷:強い外力では腹部臓器や脊椎の損傷も伴いやすく、全身を見ます。見逃しやすい骨折は見逃しやすい骨折まとめも参照してください

治療方針に関わる画像所見

治療は、まず出血と全身状態の安定を優先し、そのうえで骨盤輪の安定性に応じて固定の方法を決めるのが一般的な考え方です。画像からは次の点が方針に関わります。

  • 恥骨結合の開きと仙腸関節の状態:APC-1か、APC-2・3か。APC-2では恥骨結合のプレート固定が考えられています(Kim 2016)
  • 後方の損傷の程度:仙腸関節の後方まで開いている、仙骨が折れている場合は、後方の固定も検討されます(Kim 2016・Miyashita 2026)
  • 造影剤の漏れ:活動性の出血があれば止血の処置を急ぎます
  • 尿道・膀胱の損傷:泌尿器科の処置と、骨盤の固定の順番・方法の計画に関わります

Q&A

Q1. 恥骨結合が何cm開いたら問題ですか?

A. 外傷の分類では2.5cmが目安で、2.5cm未満でほかに損傷がなければAPC-1、2.5cmを超えて仙腸関節が開いていればAPC-2以上と考えます(Wakefield 2022)。ただし撮影時の姿勢や固定具で小さく見えることがあり(Kim 2016)、数字だけでなく仙腸関節や症状と合わせて判断します。

Q2. 恥骨結合離開で、なぜ尿の検査が必要なのですか?

A. 不安定な骨盤骨折では膀胱や尿道が傷つくことがあり、骨盤骨折の7.7%に下部尿路の損傷があったという報告があります(Zhao 2023)。尿に血が混じる、尿が出ないといった症状があれば、造影検査で確認します。

Q3. 出産後に恥骨が痛いのも恥骨結合離開ですか?

A. 出産に伴って恥骨結合が開くことがあり、症例報告では10mmを超える開きを離開としています(Chaudhary 2023)。外傷による離開とは原因が違い、同じ報告では保存的な治療で症状が和らいでいます。痛みで歩きにくいときは医療機関に相談してください。

参考文献:

  1. Wakefield SM, Giannoudis V, Messori M, et al. Atypical APC-1 pelvic fracture presenting with pelvic instability: successful management with pubic symphysis fusion. BMJ Case Rep. 2022;15(12). PubMed
  2. Kim WY, Jeong JJ, Kang HV, et al. Underestimated Sacroiliac Joint Lesion on Computed Tomography in Pelvic Open-book Injury: A Case Report. Hip Pelvis. 2016;28(1):49-53. PubMed
  3. Manson T, O’Toole RV, Whitney A, et al. Young-Burgess classification of pelvic ring fractures: does it predict mortality, transfusion requirements, and non-orthopaedic injuries? J Orthop Trauma. 2010;24(10):603-9. PubMed
  4. Zhao X, Lu S, Wang B, et al. Fracture Types Influence the Likelihood of Lower Urinary Tract Injuries in Patients with Pelvic Fractures. J Clin Med. 2023;12(8). PubMed
  5. Naidu DK, S A, R M, et al. Management of Neglected Pubic Symphysis Diastasis and Sacroiliac Joint Disruption With Erectile Dysfunction in Polytrauma: A Case Report. Cureus. 2024;16(1):e52958. PubMed
  6. Miyashita T, Yunde A. Staged Reduction and Combined Anterior and Posterior Minimally Invasive Fixation for a Highly Unstable Open-Book Pelvic Ring Fracture: A Case Report. Cureus. 2026;18(9):e116895. PubMed
  7. Chaudhary B, Bidari S, Maharjan S, et al. Postpartum Symphysis Pubis Diastasis: A Case Report. JNMA J Nepal Med Assoc. 2023;61(268):953-955. PubMed

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