先に結論:大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF)とは

  • 骨粗鬆症などで弱くなった大腿骨頭(股関節の球の部分)の軟骨のすぐ下に、大きなけががなくても起こる骨折です。高齢女性に多いですが、若い人にも起こります。急に強い股関節の痛みが出て歩きにくくなります
  • レントゲンでは初期に写らないことが多く、MRIで関節面に沿った黒い線(骨折線)と、骨頭から首にかけての広い骨髄浮腫が見えれば診断できます
  • 大腿骨頭壊死症との区別が重要です。壊死症の黒い線は関節面に対して凹の形で骨頭の深いところを走る一方、SIFの線は関節面の近くを不規則に凸の形で走り、途切れることがあります。広い骨髄浮腫を伴うことが多いのもSIFの特徴です。SIFは体重をかけない安静などで治ることが多い一方、骨頭がつぶれて急速に悪化し人工関節が必要になることもあります

※高齢の方で、急に股関節が痛くなり歩けないときは、レントゲンで異常がなくても整形外科で相談してください。

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIFFH:Subchondral insufficiency fracture of the femoral head)

  • 高齢女性に好発する脆弱性骨折(SIF)。ストレス骨折の一種(疲労骨折とは区別される)。大腿骨頭壊死の所見を伴わない軟骨下骨折。骨折なので骨壊死とは病理像が全く異なる。
  • ただし系統的レビューでは平均年齢53.6±17.5歳で、若年者にも発症しうる(J Hip Preserv Surg. 2020;7(1):85-94.)
  • 大腿骨頭以外では膝関節に好発する。
  • 骨粗鬆症や臼蓋形成不全のある高齢者にみられることが多い。非外傷性の骨頭軟骨下骨折48股の検討では、40歳以上(36股)の38.9%に臼蓋形成不全、40歳未満(12股)の41.7%に臼蓋後捻がみられた(Kubo 2020)。
  • 大腿骨頭壊死で二次性に発生する軟骨下骨折(壊死骨内の骨折であり修復は望めない)と異なり、保存的加療で治癒することがある。一方で、短期で骨頭圧壊が進行する予後不良なケースもある。482例504股を集めた系統的レビューでは、55%が保存療法で治療され多くは症状が改善した一方、最終観察時に35%が人工股関節全置換術に移行していました。
  • このような予後を規定する一つの目安に骨折線の長さと荷重部に対する骨折線の割合がある(当然大きいほど予後不良で関節圧壊のリスクは高まる。)。
  • 急に始まる股関節痛で発症することが多い(Yamamoto 1999)。
  • 一部は急速に骨頭の圧潰が進み、急速破壊型股関節症に移行する(Yamamoto 2012)。

大腿骨頭の浮腫性変化の鑑別診断

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折の画像所見

  • 早期は単純X線での指摘困難。進行すると単純X線でも軟骨下骨の骨透亮像や圧壊、二次的な変形性変化が明瞭化する。
  • MRIは早期から有用。
  • MRIでは軟骨下の関節面に平行(中枢側に凸)な線状低信号(骨折線&それに関連した修復組織を反映)で途中で途切れていることがある(大腿骨頭壊死では関節面に対して凹の形態の線状低信号をとる)。また軟骨下骨を含んだ広範な骨髄浮腫を伴う。ただし骨髄浮腫の有無だけで壊死と区別することはできず、低信号帯の形や位置とあわせて判断する。
  • 線状低信号は関節面に平行な上に凸なものばかりでなく、大腿骨頭壊死と同様に下に凸なケースもある。60歳以上の骨頭圧潰30股を組織と対比した検討では、T1強調像の低信号帯が関節面に対して凹(骨壊死)か、不規則に凸(SIF)かで組織診断と一致した。骨壊死例は全例にステロイド投与かアルコール多飲の既往があり、これらのない骨粗鬆症の高齢女性ではSIFを考えるべきとされる。
  • 造影MRIでは線状低信号よりも中枢部には造影効果を認める。一方で大腿骨頭壊死の場合は認めない。

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折 X線 CT MRI
引用:Chen et al. Clin Orthop Surg 2022(Figure 1)

91歳女性の左大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折です。発症6週後のレントゲン(A)で関節の隙間が狭くなり、荷重部の硬化と軽い骨のつぶれがみられ、CT(B)も同じ所見でした。MRIでは荷重部から頸部に広い骨髄のむくみがあり、T1強調像(C)で低信号、T2強調像(D)で高信号(矢印)を示しています。E・Fは切除した骨頭の断面と組織像です。(出典:Chen et al. Clin Orthop Surg 2022, Figure 1, CC BY-NC 4.0)

SIFと大腿骨頭壊死の違い(まとめ)

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF) 大腿骨頭壊死
病態 骨折 骨壊死
背景 骨粗鬆症の高齢女性に多い ステロイド投与・アルコール多飲の既往
T1強調像の低信号帯 関節面の近くを不規則に凸、途切れることがある 関節面に対して凹
骨髄浮腫 低信号帯を含めて広範 浮腫の有無だけでは区別できない
造影MRI 低信号帯より中枢側が造影される 造影されない

低信号帯の「深さ」でも見分ける

  • 骨頭がつぶれた35股を組織と対比した検討では、関節面から低信号帯までの距離を骨頭径で割った比(band depth ratio)の平均が、SIFで0.16(最大の断面では0.23)、骨壊死で0.42(同0.59)と、SIFのほうが関節面に近い位置にあった。区別の目安(カットオフ)はそれぞれ0.22と0.38とされる(Ikemura 2018)。

症例 30歳代女性 3週間に及ぶ左腰痛(外傷なし)

引用:Radiopaedia

T1WIで軟骨下脆弱性骨折を示唆する、関節面に平行な低信号を認める(この点が一過性大腿骨頭萎縮症とは異なる)。

STIRでは同部を含む広範な骨髄浮腫がある。(広範な骨髄浮腫は大腿骨頭壊死との鑑別を考えるきっかけになるが、浮腫だけでは区別できない。)

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIFFH/SIF)を疑う所見です。

※大腿骨頭壊死でも骨折を伴うことがあるが、大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIFFH/SIF)では大腿骨頭壊死を背景としない点でも異なる。

ポイント:大腿骨頭壊死は骨壊死、大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折は骨折。画像は似ていても病理像は全く異なる。

大腿骨頭壊死の病型・病期と、SIFの予後の考え方

SIFと大腿骨頭壊死は治療方針も予後も違うため、「壊死だった場合はどのくらいつぶれやすいのか」を知っておくと、画像の読み方が整理しやすくなります。大腿骨頭壊死は壊死の範囲が体重を支える部分(荷重部)のどこまで及ぶかで病型を分け、つぶれる前の骨頭では病型が重いほどつぶれやすくなります。

日本の病型(JIC分類) 壊死の範囲の目安 つぶれる前の骨頭が36か月でつぶれた割合(Asada 2021)
A型 荷重部の内側1/3以下 0%
B型 荷重部の内側2/3以下 10.8%
C1型 荷重部の内側2/3以上に及ぶが、臼蓋縁を越えない 48.5%
C2型 荷重部の内側2/3以上に及び、臼蓋縁を越える 76.7%
  • この検討は日本の268人が対象で、病型が荷重部の外側に広がるほど、つぶれる割合が段階的に高くなっていた(Asada 2021)。病型の定義は日本の2001年改訂の診断基準による(Sugano 2002)。
  • つぶれやすさが病型で変わるのは、体重が最もかかる荷重部の外側が壊死に含まれるほど、骨が圧力を支えきれなくなるためです。
  • 国際的には、ARCO(Association Research Circulation Osseous)が2021年に、壊死の外側縁の位置で小さい(1型)・中等度(2型)・大きい(3型)の3つに分ける分類を示しています(Koo 2022)。MRIで102股を調べた比較では、つぶれずに保たれた割合は1型95%、2型48%、3型18%で、JIC分類ではA型100%、B型84%、C1型28%、C2型13%でした(Takashima 2025)。
  • これらは壊死の分類であり、SIFにそのまま当てはめて使うものではありません。SIFでは、T1強調像の低信号帯の長さや、荷重部に対する低信号帯の長さの割合が予後と関係するとされ、25人の検討ではつぶれが進行した15人(60.0%)で、低信号帯の長さ22.5mm・割合59.8%と、進行しなかった例(13.4mm・40.9%)より大きかった(Iwasaki 2012)。

SIFの画像の見方(どこを見るか・見逃しやすい点)

どこを見るか

  • T1強調像:関節の軟骨のすぐ下に、関節面に向かって凸の、途切れた低信号の帯があるかを見ます。これがSIFの特徴的な所見とされます(Chen 2022)。
  • STIR・脂肪抑制T2強調像:骨頭から頸部に広がる骨髄のむくみを見ます。
  • レントゲン:初期にははっきりしないことが多いため(Chen 2022)、関節の隙間の狭まりと、骨頭の荷重部のつぶれを前の写真と比べます。

経過のレントゲン:関節の隙間が狭くなるかを見る

高齢者31例(平均68.9歳)の検討では、保存療法がうまくいかない危険因子は関節の隙間の狭まりでした(オッズ比11.8)。人工股関節に至った例では、関節の隙間の狭まりと骨頭のつぶれの進行が多くみられています(Yoon 2014)。関節の隙間が急に狭くなり骨頭がつぶれていく例は、人工股関節全置換術を考えるべきとされます(Chen 2022)。

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折 X線 経過
引用:Yoon et al. J Korean Med Sci 2014(Figure 3)

76歳男性の最初のレントゲン(A)で右股関節の隙間が狭くなっています。5か月後(B)には関節の隙間の狭まりが進み、大腿骨頭がつぶれています。(出典:Yoon et al. J Korean Med Sci 2014, Figure 3, CC BY-NC 3.0)

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折 MRI T1強調像 T2強調像
引用:Yoon et al. J Korean Med Sci 2014(Figure 4)

同じ患者のMRIのT1強調像(A)とT2強調像(B)で、軟骨下の骨折(矢印)と、軟骨下まで広がる骨髄のむくみがみられます。(出典:Yoon et al. J Korean Med Sci 2014, Figure 4, CC BY-NC 3.0)

見逃しやすい点・まぎらわしいもの

  • 大腿骨頭壊死:SIFは大腿骨頭壊死と間違えられたり、見逃されたりしやすいとされます(Chen 2022)。低信号の帯の形と深さで見分けます(大腿骨頭壊死症)。
  • 急速破壊型股関節症:SIFは急速に進む股関節症の主な原因の一つとされます(Chen 2022)。短い期間で関節の隙間が狭くなる例では、SIFを考えます。
  • 一過性大腿骨頭萎縮症:広い骨髄のむくみは似ていますが、軟骨下の低信号の帯の有無で区別します(一過性大腿骨頭萎縮症)。
  • ほかの骨折:高齢の方の股関節の痛みでは、大腿骨頸部骨折、レントゲンに写らない頸部・転子部の骨折(大腿骨頸部骨折と転子部骨折の違い)、骨盤脆弱性骨折も考えます。膝の同じ病気はSIFKです。

MRIが必要になる場面

  • 急に始まった股関節の痛みで歩きにくいのに、レントゲンで異常がはっきりしないとき
  • レントゲンで関節の隙間が急に狭くなってきたとき(SIFか壊死か、骨頭のつぶれの程度を確かめる)

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF)でよくある疑問(Q&A)

Q. SIFとは何の略ですか?
A. Subchondral Insufficiency Fracture(軟骨下脆弱性骨折)の略です。大腿骨頭に起こるものはSIFFHとも呼ばれ、主に整形外科で診療します。

Q. 治療はどうするのですか?
A. まずは杖などで体重をかけるのを控える保存療法が行われます。系統的レビューでは55%が保存療法で治療され、多くは症状が改善しました(Gaudiani 2020)。一方、高齢者31例の検討では48.4%が人工股関節全置換術に至り、関節裂隙の狭小化が保存療法がうまくいかない危険因子でした(Yoon 2014)。

Q. MRIで骨折線(低信号帯)があれば、SIFと考えてよいですか?
A. 低信号帯は壊死でも見られます。形(関節面に対して凹か、不規則に凸か)や関節面からの深さ、年齢やステロイド・アルコールの既往とあわせて判断します(Ikemura 2010、Ikemura 2018)。

Q. SIFは骨粗しょう症と関係がありますか?
A. 骨粗しょう症のある高齢女性に最も多くみられるとされます(Chen 2022)。急な股関節の痛みで歩きにくいときは、医療機関(整形外科)で相談してください。

参考文献

  1. Yamamoto T. Subchondral insufficiency fractures of the femoral head. Clin Orthop Surg. 2012;4(3):173-80. PubMed
  2. Gaudiani MA, Samuel LT, Mahmood B, et al. Subchondral insufficiency fractures of the femoral head: systematic review of diagnosis, treatment and outcomes. J Hip Preserv Surg. 2020;7(1):85-94. PubMed
  3. Iwasaki K, Yamamoto T, Motomura G, et al. Prognostic factors associated with a subchondral insufficiency fracture of the femoral head. Br J Radiol. 2012;85(1011):214-8. PubMed
  4. Miyanishi K, Hara T, Kaminomachi S, et al. Contrast-enhanced MR imaging of subchondral insufficiency fracture of the femoral head: a preliminary comparison with that of osteonecrosis of the femoral head. Arch Orthop Trauma Surg. 2009;129(5):583-9. PubMed
  5. Ikemura S, Yamamoto T, Motomura G, et al. MRI evaluation of collapsed femoral heads in patients 60 years old or older: Differentiation of subchondral insufficiency fracture from osteonecrosis of the femoral head. AJR Am J Roentgenol. 2010;195(1):W63-8. PubMed
  6. Yamamoto T, Bullough PG. Subchondral insufficiency fracture of the femoral head: a differential diagnosis in acute onset of coxarthrosis in the elderly. Arthritis Rheum. 1999;42(12):2719-23. PubMed
  7. Kubo Y, Motomura G, Utsunomiya T, et al. Distribution of Femoral Head Subchondral Fracture Site Relates to Contact Pressures, Age, and Acetabular Structure. AJR Am J Roentgenol. 2020;215(2):448-457. PubMed
  8. Yoon PW, Kwak HS, Yoo JJ, et al. Subchondral insufficiency fracture of the femoral head in elderly people. J Korean Med Sci. 2014;29(4):593-8. PubMed
  9. Sugano N, Atsumi T, Ohzono K, et al. The 2001 revised criteria for diagnosis, classification, and staging of idiopathic osteonecrosis of the femoral head. J Orthop Sci. 2002;7(5):601-5. PubMed
  10. Asada R, Abe H, Hamada H, et al. Femoral head collapse rate among Japanese patients with pre-collapse osteonecrosis of the femoral head. J Int Med Res. 2021;49(6):3000605211023336. PubMed
  11. Takashima K, Uemura K, Ando W, et al. Comparison of the 2021 Association Research Circulation Osseous Classification System for Osteonecrosis of the Femoral Head and the Japanese Investigation Committee Classification System. J Arthroplasty. 2025;40(S10):S21-S26. PubMed
  12. Koo KH, Mont MA, Cui Q, et al. The 2021 Association Research Circulation Osseous Classification for Early-Stage Osteonecrosis of the Femoral Head to Computed Tomography-Based Study. J Arthroplasty. 2022;37(6):1074-1082. PubMed
  13. Ikemura S, Mawatari T, Matsui G, et al. The depth of the low-intensity band on the T1-weighted MR image is useful for distinguishing subchondral insufficiency fracture from osteonecrosis of the collapsed femoral head. Arch Orthop Trauma Surg. 2018;138(8):1053-1058. PubMed
  14. Chen M, Wang X, Takahashi E, et al. Current Research on Subchondral Insufficiency Fracture of the Femoral Head. Clin Orthop Surg. 2022;14(4):477-485. PubMed

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