腰椎・胸腰椎の圧迫骨折は、骨粗鬆症のある高齢の方に多い背骨の骨折です。尻もちや重い物を持ち上げた程度の力で起こることもあり、はっきりしたきっかけがないまま「背中や腰が痛い」として見つかることもあります。
この記事では、骨粗鬆症性椎体骨折(osteoporotic vertebral fracture)をレントゲン→CT→MRIの順にどう読むかを、実際の論文の画像を使って解説します。特に、偽関節・椎体内クレフト(Kümmell病)と、骨転移や骨髄腫による骨折との見分けに重点を置きます。
椎体後壁が壊れる破裂骨折との違いは圧迫骨折と破裂骨折の違い(Denisの3柱理論)、新しい骨折と古い骨折のMRIでの見分け方の基本は脊椎圧迫骨折の画像診断(MRI・STIR)で解説しています。
先に結論:腰椎・胸腰椎の圧迫骨折の画像診断
- まずレントゲンの側面像で椎体の高さと形を見ます。胸部レントゲンの側面像に写っている椎体骨折が、報告書に書かれないことが少なくありません(Kim 2004)
- CTは椎体後壁(破裂骨折かどうか)と、椎体の中のガス(椎体内クレフト)、骨の破壊の有無を見るのに向いています
- MRIは新しい骨折かどうかを判断する中心の検査です。ただしSTIRの高信号は数か月以上続くことがあり、骨折から12か月でも64%で残っていました(Takahashi 2017)
- T2強調像やSTIRで終板に沿って水のように白い線(fluid sign)や、その両側の低信号の帯(double line sign)が見えたら、偽関節・Kümmell病を考えます
- 椎体後縁の外側への膨らみ、椎弓根・後方要素の異常信号、硬膜外や椎体周囲の腫瘤は、骨転移による骨折を疑う所見です(Jung 2003)
※背中や腰の痛みが続く、寝返りや起き上がりで強く痛む、足のしびれや力が入りにくい・尿が出にくいなどの症状があるときは、医療機関(整形外科)を受診してください。
骨粗鬆症性椎体骨折とはどんな骨折か
椎体(背骨の前方の円柱状の部分)が、上下からつぶれるように変形する骨折です。胸椎にも腰椎にも起こり、骨がもろくなっていると、転倒・尻もち・前かがみで物を持ち上げる動作でも起こります。
痛みが強くない骨折も多く、ほかの目的で撮ったレントゲンやCTで偶然見つかることもあります。救急外来で撮影された60歳以上の100人の胸部レントゲンを見直した研究では、椎体高が25%以上低下した中等度〜高度の椎体骨折が22%に見つかりましたが、公式の読影報告書に書かれていたのはそのうち55%(22例中12例)だけでした(Kim 2004)。
腹痛や別の部位の痛みで撮った検査で背骨の骨折が見つかる例は痛む場所と違うところの骨折でも紹介しています。
画像の見方① レントゲン(X線)
側面像で見るポイント
- 椎体の高さ:前方・中央・後方の高さを、上下の椎体と比べます。前だけ低いくさび状、中央がへこむ魚椎状、全体が低くなる扁平状があります
- 終板:上下の終板(椎体の上面・下面)の線が途切れたり、段差がないか
- 椎体後壁:後ろの壁が後方へ飛び出していないか(破裂骨折の疑い)
- 椎体の中の黒い横線:椎体内のガス(vacuum cleft)は、偽関節の手がかりです
- 椎弓根:正面像で椎弓根の丸い輪郭が消えていないか(骨転移の手がかり)
脊柱全体の弯曲の見方は脊柱の生理的弯曲とレントゲンの見方にまとめています。
立位と臥位で形が変わることがある
骨折が骨癒合せず椎体の中にすき間が残ると、体勢によって椎体の高さが変わることがあります。MRIで骨折を追跡した多施設研究でも、MRIの信号変化は椎体のつぶれの程度と、骨折した椎体の動き(角度の変化)に関係していました(Takahashi 2017)。

引用:Matzaroglou et al. Open Orthop J 2014(Figure 1)
関節リウマチでステロイド治療中の76歳女性、治りにくい背部痛。(A)正面のレントゲンでかろうじて見えるL2椎体の水平な線状の椎体内クレフトが、(B)側面像ではよりはっきり見えます(矢印)(出典:Matzaroglou et al. Open Orthop J 2014, Figure 1, CC BY-NC 3.0)。
画像の見方② CT
CTはレントゲンで重なって見えにくい部分を、断面と再構成画像で確認できます。圧迫骨折で見るのは主に次の3つです。
- 椎体後壁と脊柱管:後壁の骨片が脊柱管へ飛び出していれば破裂骨折として扱います(詳しくは破裂骨折の記事)。シートベルト損傷のように後方要素まで横に割れる骨折はChance骨折です
- 椎体内のガス・クレフト:骨癒合していない部分に、ガス(真空現象)が見えることがあります。関節や椎間板のガスについてはvacuum phenomenon(真空現象)で解説しています
- 骨の破壊:皮質が溶けている、椎弓根まで骨が抜けている、骨のまわりに軟部の腫瘤がある場合は、骨転移や骨髄腫を考えます
CTの骨条件で脊椎を読む順番はCTの骨条件で見る脊椎・骨盤の読影ポイントにまとめています。強直性の脊椎(DISHなど)の骨折は不安定になりやすく、DISHの記事も参考にしてください。
画像の見方③ MRI:新しいかどうか・偽関節・悪性かどうか
新しい骨折の信号と、その続き方
受傷から2週間以内の骨粗鬆症性椎体骨折153例を、1・3・6・12か月とMRIで追った多施設研究では、登録時のSTIRでは100%が高信号でした。T1強調像では43%が椎体全体の低信号、57%が一部に限った低信号でした。STIRの高信号は3か月で98%、6か月で87%、12か月でも64%に残っていました(Takahashi 2017)。
つまりSTIRで高信号=数日〜数週間の骨折とは限りません。前回のMRIとの比較、レントゲンでの高さの変化、痛みが出た時期を合わせて判断します。シーケンスごとの見え方の基本は脊椎圧迫骨折の画像診断(新しい骨折と古い骨折)、脊椎MRIを読む順番は脊椎MRIの読み方を参照してください。
偽関節・椎体内クレフト(Kümmell病)
Kümmell病は、1891年にKümmellが報告した「軽い外傷のあと、しばらく症状が落ち着いてから、遅れて椎体がつぶれて痛む後弯が進む」状態です。遅れてつぶれる理由として、虚血による骨壊死の仮説が出されてきました(Matzaroglou 2014)。
画像では、椎体の中のすき間(椎体内クレフト、intravertebral cleft:IVC)が手がかりになります。すき間にガスがたまればレントゲン・CTで黒く、液体がたまればT2強調像・STIRで白く見えます。急性の椎体圧迫骨折87例(骨粗鬆症性52例・腫瘍性35例)を比べた研究では、終板に沿う液体のような高信号(fluid sign)が骨粗鬆症性骨折の40%(52例中21例)に見られ、腫瘍による骨折では6%(35例中2例)でした。組織では骨壊死・浮腫・線維化が確認されています(Baur 2002)。
椎体内クレフトのある79例を、Kümmell病44例と急性の骨粗鬆症性骨折35例に分けて比べた研究では、クレフト縁の硬化(95.5%)、椎体の骨化、椎弓根の骨化、double line sign(27.3%)、棘突起の疲労骨折、椎体周囲の仮骨は、Kümmell病の群だけに見られました。一方、クレフトそのものは両方の群に見られました(Chen 2021)。クレフトがある=Kümmell病とは限らず、周りの硬化や骨化を合わせて判断します。

引用:Chen et al. Orthop Surg 2021(Figure 5)
78歳男性。(A)CTでL1椎体に椎体内クレフトが見えます。(B)矢状断STIRと(C)矢状断T2強調像では、線状の高信号の両側を低信号が囲む「double line sign」(矢印)、(D)矢状断T1強調像ではL1の低信号が見られます(出典:Chen et al. Orthop Surg 2021, Figure 5, CC BY 4.0)。
骨転移・骨髄腫による骨折との見分け
転移による圧迫骨折27例と急性の骨粗鬆症性圧迫骨折55例のMRIを比べた研究では、次の所見がそれぞれを示唆するとされています(Jung 2003)。
| 転移による骨折を示唆する所見 | 骨粗鬆症性骨折を示唆する所見 |
|---|---|
| 椎体後縁が外側へ凸に膨らむ | T1・T2強調像での低信号の帯 |
| 椎弓根・後方要素の異常信号 | 椎体内に正常な骨髄の信号が残る |
| 硬膜外の腫瘤・硬膜を取り囲む腫瘤 | 椎体後方の骨片の後方突出(retropulsion) |
| 椎体周囲の限局した腫瘤 | 複数の圧迫骨折 |
| ほかの椎体の転移 |
同じ研究では、脂肪抑制なしの高速スピンエコーT2強調像の信号は、両者の区別にはあまり役立たなかったとされています(Jung 2003)。骨転移の画像所見と椎弓根のサイン(pedicle sign)は椎体骨転移のCT・MRI画像診断、骨転移全体は骨転移の画像診断で解説しています。
多発性骨髄腫では、局所の腫瘤がはっきりせず、骨髄全体に細かい斑点が散らばる(salt-and-pepper)だけのことがあり、見分けが難しくなります。T1強調像の画像特徴量から良性・悪性の圧迫骨折を分けるAIモデルを作った研究でも、見落とされた3例はいずれも多発性骨髄腫でした(Chiari-Correia 2023)。

引用:Chiari-Correia et al. J Digit Imaging 2023(Figure 5)
いずれも多発性骨髄腫の患者です。(A)59歳男性:圧迫骨折に限局した結節状病変、椎体後壁の凸状の膨らみ(左の白矢印)、椎弓根への進展(右の白矢印)を伴います。(B)52歳女性、(C)51歳女性:骨髄にsalt-and-pepperの浸潤パターンがあり、(C)で小結節(白矢頭)がよく見えます(出典:Chiari-Correia et al. J Digit Imaging 2023, Figure 5, CC BY 4.0)。
骨髄腫の画像は多発性骨髄腫の画像診断、骨髄の信号がまだらに見える正常のパターンは骨髄再転換(赤色髄化)のMRIも参考にしてください。
見逃しやすい点・まぎらわしいもの
- 化膿性脊椎炎:椎間板をはさんで上下の椎体に信号変化があり、椎間板にも異常があるときは感染を考えます(化膿性脊椎炎・椎間板炎)
- シュモール結節:終板の一部に椎間板が入り込んだもので、急性期は周りに浮腫が出ることがあります(シュモール結節)
- 椎体血管腫:骨梁が粗く見える良性の病変で、骨折や転移と間違えないようにします(脊椎血管腫)
- 複数の骨折:1か所見つけたら、上下の椎体と仙骨・骨盤まで見ます。高齢者では仙骨や恥骨の脆弱性骨折が一緒にあることがあります
- 神経症状:脚の麻痺・排尿障害があるときは、後壁の突出や硬膜外の病変による脊髄・馬尾の圧迫を急いで確認します(馬尾症候群)
治療方針に関わる画像所見
骨粗鬆症性椎体骨折の多くは、痛みの治療やコルセットなどの保存的治療で経過をみます。画像の役割は、保存的に見てよいかどうか、別の治療を考えるべきかを判断する材料を出すことです。一般的には次の所見が方針に関わります。
- 椎体後壁の損傷・脊柱管への突出:破裂骨折として扱い、神経症状と合わせて判断します
- 椎体内クレフト・体勢で高さが変わる:骨癒合していない可能性があり、経皮的椎体形成術などを検討する材料になります。椎体形成術後の画像は脊椎術後の画像診断も参照してください
- 悪性を疑う所見:椎弓根・後方要素の異常、硬膜外腫瘤などがあれば、骨折の治療とは別に原因の検索(生検など)が必要になります(Jung 2003)
- 骨粗鬆症そのもの:骨折の画像所見とは別に、骨密度の評価や骨粗鬆症の治療につなげることも大切です
Q&A
Q1. MRIで「新しい圧迫骨折」と言われましたが、いつ折れたのですか?
A. MRIのSTIRで白く見える骨髄浮腫は新しい骨折の手がかりですが、研究では骨折から6か月で87%、12か月でも64%に残っていました(Takahashi 2017)。MRIだけで日付まではわかりません。前に撮ったレントゲンやMRIがあれば比べることで、時期の見当をつけやすくなります。
Q2. 「椎体の中に空気がある」と言われました。どういう意味ですか?
A. 骨折した椎体の中にすき間ができ、そこにガスがたまった状態(椎体内クレフト)と考えられます。骨がくっついていない(偽関節)可能性を示す所見で、Kümmell病と呼ばれることもあります(Matzaroglou 2014)。急性の骨折でも見られることがあり(Chen 2021)、痛みの経過と合わせて担当医が判断します。
Q3. がんの骨転移による骨折かどうかは、画像でわかりますか?
A. 椎体後縁の膨らみ、椎弓根の異常、硬膜外や椎体周囲の腫瘤は転移を疑う所見で、低信号の帯や正常な骨髄が残ることは骨粗鬆症性骨折を示唆します(Jung 2003)。ただし多発性骨髄腫などでは見分けが難しいこともあり(Chiari-Correia 2023)、必要に応じて追加の検査や生検で確かめます。
参考文献:
- Kim N, Rowe BH, Raymond G, et al. Underreporting of vertebral fractures on routine chest radiography. AJR Am J Roentgenol. 2004;182(2):297-300. PubMed
- Takahashi S, Hoshino M, Takayama K, et al. Time course of osteoporotic vertebral fractures by magnetic resonance imaging using a simple classification: a multicenter prospective cohort study. Osteoporos Int. 2017;28(2):473-482. PubMed
- Baur A, Stäbler A, Arbogast S, et al. Acute osteoporotic and neoplastic vertebral compression fractures: fluid sign at MR imaging. Radiology. 2002;225(3):730-5. PubMed
- Jung HS, Jee WH, McCauley TR, et al. Discrimination of metastatic from acute osteoporotic compression spinal fractures with MR imaging. Radiographics. 2003;23(1):179-87. PubMed
- Chen Z, Lou C, Yu W, et al. Comparison of Intravertebral Clefts between Kümmell Disease and Acute Osteoporotic Vertebral Compression Fracture: A Radiological Study. Orthop Surg. 2021;13(7):1979-1986. PubMed
- Matzaroglou C, Georgiou CS, Panagopoulos A, et al. Kümmell’s Disease: Clarifying the Mechanisms and Patients’ Inclusion Criteria. Open Orthop J. 2014;8:288-97. PubMed
- Chiari-Correia NS, Nogueira-Barbosa MH, Chiari-Correia RD, et al. A 3D Radiomics-Based Artificial Neural Network Model for Benign Versus Malignant Vertebral Compression Fracture Classification in MRI. J Digit Imaging. 2023;36(4):1565-1577. PubMed
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