遺伝性(成人家族性)腎腫瘍の種類
腫瘍組織 | 腫瘍症候群 | 責任遺伝子(染色体座) |
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淡明細胞癌 | Von Hippel-Lindau(VHL)病 | VHL(3p25) |
乳頭状腎癌type1 | 遺伝性乳頭状腎細胞癌 | c-MET(7q31) |
乳頭状腎癌type2 | 皮膚および子宮平滑筋腫を 伴う家族性腎癌 | fumarate hydratase(1q42-43) |
嫌色素性腎癌 オンコサイトーマ | Birt-Hogg-Dube(BHD)症候群 | FLCN(17p11.2) |
血管筋脂肪腫AML | 結節性硬化症 | TSC1(9q34),TSC2(16p13) |
腎芽腫 | WAGR症候群 | WT1(11p13) |
遺伝性腎腫瘍の特徴
- 遺伝性腎癌:若年、両側、多発、サイズが小さい→腎部分切除や核出術を繰り返す。
- 結節性硬化症:AMLが若年、両側、多発、サイズが大きい、増大傾向がある、症状がでやすい→積極的にEmbolizationの対象になりやすい。
Von Hippel-Lindau病(VHL)
- 常染色体優性遺伝と孤発例が半々。
- 原因遺伝子:3番染色体上のVHL病癌抑制遺伝子の不活性化または欠損。
- 母斑症(神経皮膚症候群)の1つ。
- 様々な臓器にhypervascular tumorと嚢胞が多発。
中枢神経系
- 血管芽腫が8割に生じる。小脳血管芽腫>脳幹、脊髄血管芽種。予後規定因子であり、嚢胞+壁在結節のパターンが多い。
- 上衣腫、星細胞腫
- 網膜血管腫
膵
- 内分泌腫瘍
- 膵嚢胞:VHLの3割。多発性。多房性。
- 漿液性嚢胞腺腫/癌
- 膵血管芽腫
肝
- 肝血管腫、肝腺腫、肝嚢胞
泌尿器系
- 腎細胞癌:VHLの2-4割。淡明細胞癌が多く、予後規定因子となる。
- 腎嚢胞:VHLの7割。多発・両側。
- 褐色細胞腫(2割)
- 嚢胞形成:様々な臓器(肝、脾、副腎、精巣上体、大網、腸間膜、肺、骨)
臨床診断基準
- VHL病の家族歴のある場合:中枢神経の血管芽腫、腎癌、褐色細胞腫、網膜血管腫、膵内分泌腫瘍、膵癌、膵嚢胞、精巣上体嚢胞のうち1病変以上を発症する場合。
- VHL病の家族歴がない場合:中枢神経系の血管芽腫と網膜血管腫の合併のいずれかと、腎癌、褐色細胞腫、精巣上体嚢胞、膵病変のいずれか1つ以上を発症する場合。
Birt-Hogg-Dube症候群
- 常染色体優性遺伝をとる家族性腫瘍症候群。
- 原因遺伝子:17番染色体の17p12上に位置するFLCN遺伝子。コードする蛋白はfolliculin。
- 肺嚢胞(ブラ破裂→気胸)・腎腫瘍・顔面皮疹(線維毛嚢腫)をTriasとする遺伝疾患
肺嚢胞の特徴
- 下肺野内側優位に分布。下肺野優位。
- 胸膜直下や外層に多い。内層にも分布。
- 胸膜直下ほど変則的。
- いわゆる広義間質を裂くように嚢胞が存在する(胸膜や気管支血管束に沿って存在する)
- びまん性陰影は伴わない。
- 親の方に増加増大傾向。
- 多発する不整形の様々なサイズの嚢胞。
腎腫瘍の特徴
- 8割に両側多発に発生。
- 多くが嫌色素性腎細胞癌(3割)とオンコサイトーマ(5%)。Hybrid tumor(5割)も見られる。
結節性硬化症(Tubersous sclerosis complex)
- 全身の過誤腫を特徴とする症候群。
- 常染色体優性遺伝。
- 頻度は1/5000-10000人。
- 原因遺伝子:9番染色体上のTSC1遺伝子、16番染色体上のTSC2遺伝子。
- 幼児期以降に出現する顔面の「血管線維腫」「てんかん」「精神遅滞」を3徴とする。過誤腫病変が多発する神経皮膚症候群。
他の合併症
- 中枢神経系の皮質結節(cortical tuber)/上衣下結節(subependymal nodules)/上衣下巨細胞性星細胞腫(Subependymal giant cell astrocytoma)
- 顔面血管線維腫
- 肺過誤腫性リンパ管筋腫症(LAM)
- 心横紋筋腫
- 骨硬化
- 泌尿器系:腎血管筋脂肪腫(4割)は多発性で両側性・出血のリスクあり。他、腎嚢胞、(腎癌は3%だがうち4割は両側性)