
先に結論:副腎嚢胞の多くは良性。ただし「本当にただの嚢胞か」とホルモンの確認は大切
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 副腎の中の液体の袋。偶然見つかる副腎腫瘤(副腎偶発腫)の約1〜2% |
| 心配か | 大半は良性・ホルモンを出さない。症状がなければ経過観察が基本 |
| 画像の目安 | CTで境界明瞭・壁が薄い・内部が均一・20HU未満、造影されない。壁の石灰化はよくある |
| 注意する所見 | 厚い壁、造影される壁や結節、急な増大、ホルモンの異常 |
| 何科 | 内分泌内科(ホルモンの検査)。手術を考えるときは泌尿器科・内分泌外科と相談 |
副腎嚢胞とは
副腎は左右の腎臓の上にある小さな臓器で、血圧や代謝にかかわるホルモンを作っています。副腎嚢胞は副腎にできる液体の溜まった袋で、画像検査で偶然見つかる副腎腫瘤の約1〜2%とまれな病変です(Calissendorff 2023)。
病理学的には次の4つに分けられます(Calissendorff 2023、Bozic Antic 2024)。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 仮性嚢胞(pseudocyst) | 出血などのあとにできる、内側を覆う細胞の層がない嚢胞 |
| 内皮性嚢胞(endothelial cyst) | 血管やリンパ管由来の嚢胞 |
| 上皮性嚢胞(epithelial cyst) | 上皮(中皮)で覆われた嚢胞 |
| 寄生虫性嚢胞(parasitic cyst) | 包虫などの寄生虫によるもの |
良性の副腎嚢胞はやや女性に多く、40〜60歳で見つかることが多いとされます(Calissendorff 2023)。
症状は?
多くは無症状で、健診や別の病気の検査のCT・エコーで偶然見つかります。良性副腎嚢胞92例の検討では、88%が画像で偶然見つかり、圧迫による症状で見つかったのは9.8%でした(Dogra 2022)。とても大きくなると周りを押して症状が出ることがあります(Calissendorff 2023)。お腹や背中の症状など気になることがあれば医療機関を受診してください。
画像所見:CT・MRI・エコー
副腎嚢胞の画像は腎嚢胞とよく似ています(Calissendorff 2023)。
| 検査 | 典型的な良性嚢胞の見え方 |
|---|---|
| CT | 境界明瞭・類円形・薄い壁・内部均一、20HU未満の低吸収 |
| MRI | T1強調像で低信号、T2強調像で高信号 |
| エコー | 無エコー〜低エコー |
(Calissendorff 2023)
実際の92例の検討では、円形・楕円形が85.4%、均一が83.2%、石灰化が64.0%、造影されないものが97.7%でした(Dogra 2022)。長期経過を追った20例でも、全例が薄い壁で、壁の石灰化が60%、細い隔壁が20%に見られました(Ricci 2013)。壁の石灰化は副腎嚢胞ではよくある所見です。副腎の石灰化の鑑別は腹部CTで副腎に石灰化を認めたときの鑑別診断も参考になります。
症例 40歳代男性 副腎嚢胞
右腎の上、肝臓の下に、境界がはっきりした大きな類円形の低吸収域があります。症例ページでは一部に石灰化と造影されない成分を伴う右副腎の嚢胞性病変で、悪性を思わせる所見はないと記載されています。
腫瘍との見分け方
多くの副腎嚢胞は良性ですが、まれに褐色細胞腫や悪性腫瘍が嚢胞のように見えることがあり、良性嚢胞と区別しにくい場合があります(Calissendorff 2023)。
嚢胞状の褐色細胞腫
褐色細胞腫は、腫瘍の中の出血や壊死によって嚢胞のように見えることがあります。嚢胞状褐色細胞腫では、CT値5〜15HUほどの低吸収域と、造影される縁(rim enhancement)が見られ、こうした副腎病変が偶然見つかった場合はカテコラミン(褐色細胞腫が出すホルモン)の検査を行うべきとされています(Munden 1993)。
チェックしたいポイント
| 良性の嚢胞らしい | 腫瘍を考える |
|---|---|
| 薄く均一な壁、造影されない | 厚い壁、造影される壁・結節 |
| 内部均一、20HU未満 | 内部不均一、充実成分がある |
| ゆっくりした増大 | 速い増大 |
| ホルモン検査が正常 | カテコラミン・コルチゾールなどの異常 |
なお、大きくなること自体は珍しくありません。20例の長期観察では60%で大きくなり(中央値26%増)、30%で小さくなりました。大きくなることだけでは悪性や合併症を意味しないとされています(Ricci 2013)。92例の検討でも増大の速さの中央値は年2mmでした(Dogra 2022)。
欧州内分泌学会の副腎偶発腫ガイドライン(2023年版)では、単純CTで10HU以下の均一な病変は大きさにかかわらず良性で追加の画像検査は不要とされ、それ以外は多職種で検討することが勧められています(Fassnacht 2023)。副腎腫瘍(腺腫)のCT値の考え方は副腎腫瘍(副腎腺腫)とは?CT値10HUの意味と経過観察、副腎腺腫のCT・MRIによる画像診断で詳しく解説しています。
ホルモンの検査と何科に行くか
同ガイドラインでは、偶然見つかった副腎腫瘤のすべての患者さんに、ホルモンの過剰がないかを調べる診察と検査(血液または尿のメタネフリン、1mgデキサメタゾン抑制試験)を行うことが勧められています(Fassnacht 2023)。
良性副腎嚢胞の検討でも、デキサメタゾン抑制試験の異常が10%(50例中5例)、原発性アルドステロン症のスクリーニング検査の異常が9.5%(42例中4例)に見られました(Dogra 2022)。「嚢胞だからホルモンは関係ない」とは言い切れません。
- まず相談する科:内分泌内科(ホルモンの検査)
- 手術を検討する場合:泌尿器科・内分泌外科
- 方針は副腎の多職種チームで検討するのが望ましいとされています(Calissendorff 2023)。
治療は必要?
症状のない副腎嚢胞は、経過観察(保存的管理)が基本です(Calissendorff 2023)。とても大きく症状がある場合は手術で取ることがあります(Calissendorff 2023)。92例の検討では半数が副腎摘出術を受けており、手術を受けた人は若く、嚢胞の増大が速い傾向がありました(Dogra 2022)。良性と言い切れない場合は、追加の検査や経過観察が必要です(Calissendorff 2023)。
よくある疑問(Q&A)
Q. 副腎嚢胞はがんになりますか?
A. 副腎嚢胞の大半は良性です。ただし、まれに褐色細胞腫や悪性腫瘍が嚢胞のように見えることがあるため、最初の画像とホルモン検査で確認します(Calissendorff 2023)。
Q. 前より大きくなったと言われました。手術が必要ですか?
A. 副腎嚢胞は経過で大きくなることがよくあり、増大だけでは悪性を意味しないと報告されています(Ricci 2013)。増大の速さや壁・造影の所見、症状を合わせて主治医と相談してください。
Q. 壁に石灰化があると言われました。悪いものですか?
A. 壁の石灰化は良性副腎嚢胞の6割前後に見られる、よくある所見です(Ricci 2013、Dogra 2022)。
参考文献
- Calissendorff J, Juhlin CC, Sundin A, et al. Adrenal cysts: an emerging condition. Nat Rev Endocrinol. 2023;19(7):398-406. PubMed
- Dogra P, Rivera M, McKenzie TJ, et al. Clinical course and imaging characteristics of benign adrenal cysts: a single-center study of 92 patients. Eur J Endocrinol. 2022;187(3):429-437. PubMed
- Ricci Z, Chernyak V, Hsu K, et al. Adrenal cysts: natural history by long-term imaging follow-up. AJR Am J Roentgenol. 2013;201(5):1009-16. PubMed
- Fassnacht M, Tsagarakis S, Terzolo M, et al. European Society of Endocrinology clinical practice guidelines on the management of adrenal incidentalomas, in collaboration with the European Network for the Study of Adrenal Tumors. Eur J Endocrinol. 2023;189(1):G1-G42. PubMed
- Munden R, Adams DB, Curry NS. Cystic pheochromocytoma: radiologic diagnosis. South Med J. 1993;86(11):1302-5. PubMed
- Bozic Antic I, Djurisic I, Nikolic S. Adrenal Cysts: To Operate or Not to Operate? J Clin Med. 2024;13(3):846. PubMed
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