
先に結論:腹腔動脈〜上腸間膜動脈の起始部の高さで、横隔膜脚の前・左副腎の内側にある帯状の構造は、まず腹腔神経節を考える
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 場所 | 腹腔動脈と上腸間膜動脈の起始部の間の高さ、横隔膜脚の前。左は腹腔動脈と左副腎の間 |
| 形 | 帯状・分葉状・円盤状・涙滴状。丸い結節状は少ない |
| 見える頻度(CT) | 左89%、右67%。左のほうが大きい |
| 濃度 | 単純・門脈相で隣の副腎とほぼ同じ。遅延相では副腎より高いことが多い |
| PET | PSMA PETで生理的集積が多い。転移リンパ節より集積は弱く、形が帯状 |
腹腔神経節とは
腹腔神経節は、自律神経のうち交感神経に属する神経節で、腹腔動脈の根もとの左右にあります。胃・肝臓・膵臓・十二指腸などを支配し、自律神経系の中で最も大きな神経節であるため、画像で最もよく見える神経節です(Osman 2021)。大内臓神経などが入り、腹腔神経叢を形づくります。
ふだんの腹部CTやMRIでも見えている構造ですが、名前を知らないと、左副腎の内側脚の腫瘤、傍大動脈・腹腔動脈周囲のリンパ節腫大、膵臓の背側の病変などと迷うことがあります。とくにがんの病期診断やPETでは、転移との区別が問題になります。
CTでの見え方
103件の連続したMDCTを調べた研究では、腹腔神経節は次のように見えました(Wang 2010)。
| 項目 | 左の腹腔神経節 | 右の腹腔神経節 |
|---|---|---|
| 見えた頻度 | 89% | 67% |
| 長径(平均) | 2.2 cm | 2.0 cm |
| 短径(平均) | 0.4 cm | 0.3 cm |
| 場所 | 左右とも、腹腔動脈と上腸間膜動脈の起始部の間の高さで、横隔膜脚の前 | |
| 形 | 多分葉状または円盤状 | |
| 濃度 | 単純CTと門脈相では、ほぼ全例で隣の副腎と同じ濃度。遅延相では約3分の2で副腎より高い濃度 | |
大事なのは、長さが2 cm前後あっても、厚みは数mmしかないことです。横断像で長く見える一方、短径は小さく、丸いリンパ節とは形が違います。CTでは上腸間膜動脈の根もとに見え、濃度は肝臓・脾臓と同じか、横隔膜脚よりわずかに低いとまとめられています。リンパ節のように丸くはなく、帯状・多分葉状・円盤状・涙滴状の形をとります(Osman 2021)。
左副腎との位置関係
左の腹腔神経節は、腹腔動脈と左副腎の間にあります(Osman 2021)。超音波内視鏡(EUS)の研究でも、腹腔動脈・大動脈の左側で、腹腔動脈と左副腎の間に見つかり、平均の大きさは18 mm×4 mmでした(Ha 2008)。左副腎の内側脚のすぐ内側に、副腎と同じくらいの濃度の細長い構造が並ぶため、副腎の一部や副腎の結節と見誤りやすくなります。
見分けるには、次の点を確認します。
- 副腎の脚(逆Y字・逆V字)そのものは別に追える。神経節は副腎の脚とは離れて、より内側・横隔膜脚の前にある。
- 高さが腹腔動脈〜上腸間膜動脈の起始部の間にある。
- 前後に薄く、帯状・分葉状である。
- 以前のCTと比べて形・大きさが変わらない(左右で似た形のことも多い)。
副腎の正常な形の見つけ方は、腹部CTにおける正常副腎の見つけ方で解説しています。
CT・MRIでの描出とEUS
EUSで腹腔神経節と考えられた構造は、57人中51人(89.4%)で見つかり、CTのあった37人中33人(89.2%)では、後からCTでも対応する構造を確認できました(Ha 2008)。一方、EUS下穿刺で細胞診の確認がついた病変をCT・MRIで見直した研究では、腹腔リンパ節は67個中59個(88.1%)が見えたのに対し、腹腔神経節は33個中13個(39.4%)にとどまりました。この研究では、EUSは腹腔神経節とリンパ節を感度93.3%、特異度93.7%で区別していました(Malikowski 2019)。
つまり、CTの読影で「腹腔神経節」と認識される頻度は、撮像条件や注意の向け方によって大きく変わると考えられます。存在を知っていることが、まず見つける・見分けるための前提になります。
MRIでの見え方
68Ga-PSMA-11のPET/MRIを受けた120人では、MRIで腹腔神経節は98%(117人)で両側に見え、2人では左だけに見えました。左の神経節は右より厚く(左4±1.4 mm、右3±1.3 mm)、69%の人で、少なくとも片側の神経節がリンパ節と紛らわしい形(結節状・楕円形・太い部分を持つ縦長の形)でした(Bialek 2019)。
拡散強調像も手がかりになります。PSMA PET/MRIで406個の交感神経節を調べた研究では、腹腔神経節の67.3%は拡散制限が「非常に弱い〜弱い」程度で、転移リンパ節の91.7%は「中等度〜強い」拡散制限を示しました。平均ADC値は、神経節のほうが転移リンパ節より有意に高い結果でした(Bialek 2020)。
PETでの見え方:PSMA PETの落とし穴
前立腺がんで使われるPSMA PETでは、腹腔神経節への生理的な集積がよく知られた落とし穴です。
| 報告 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| Rischpler 2018 | 68Ga-PSMA PET 407人 | 腹腔神経節の集積が89%の人にみられた。腹腔神経節の平均SUVmaxは2.9±0.8で、近くの転移リンパ節(13.5±12.3)より明らかに低い。神経節は帯状71.2%・涙滴状26.8%・結節状2.0%、転移リンパ節は帯状1.1%・涙滴状40.3%・結節状58.6% |
| Bialek 2019 | 68Ga-PSMA-11 PET/MRI 120人 | 75%でSUVmax 2以上の集積。紛らわしい形と集積の両方をもつ例が55% |
| Osman 2021 | 同じ患者で2種類のPSMA製剤を比較した画像集 | 神経節の集積のしかたは製剤によって違うことがある。左の腹腔神経節は腹腔動脈と左副腎の間にある |
転移との区別には、集積の強さ、正確な場所、形(帯状か結節状か)をあわせてみることがすすめられています(Rischpler 2018)。
FDG PET/CTについては、肺がん患者129人の検討で、腹腔神経節は127人で片側、108人で両側に見え、いずれも異常なFDG集積は伴っていませんでした(Abtahi 2014)。FDGで腹腔神経節に目立つ集積があるときは、生理的な所見と決めずに、リンパ節転移など他の原因を考えます。腹部のPETの生理的集積は、PETの画像診断(腹部・婦人科・泌尿生殖器)もご覧ください。
引用元の図 PSMA PET/CTでみられた左腹腔神経節

引用:Osman MM, et al. Cancer Imaging 2021(Figure 9)(CC BY 4.0)
前立腺がんの患者で、同じ人に2種類のPSMA PET/CTを行った画像です。上段の68Ga-PSMA-11では、左の腹腔神経節に集積がみられ(矢印、SUVmax 2.4)、下段の18F-DCFPyLでは同じ場所に集積はみられません(丸)。CTでは、左の腹腔神経節は腹腔動脈と左副腎の間にあるのが典型的です。
リンパ節・副腎腫瘤との見分け方
| 見る点 | 腹腔神経節 | リンパ節(転移など) | 左副腎の結節 |
|---|---|---|---|
| 形 | 帯状・分葉状・円盤状・涙滴状で薄い | 丸い・結節状が多い | 副腎の脚の中や脚から連続した丸い結節 |
| 場所 | 横隔膜脚の前、腹腔動脈〜上腸間膜動脈起始部の高さ。左は腹腔動脈と左副腎の間 | 大動脈・腹腔動脈の周り、さまざま | 副腎そのもの |
| 左右 | 左のほうが見えやすく大きいが、両側にあることが多い | 左右差はさまざま | 片側のことが多い |
| 拡散強調像 | 拡散制限は弱いことが多い | 転移リンパ節は中等度〜強い拡散制限が多い | — |
| PSMA PET | 弱い集積が多い | 転移なら強い集積が多い | — |
表の神経節とリンパ節の項目は Wang 2010、Rischpler 2018、Bialek 2019・2020 によります。副腎の欄は一般的な解剖にもとづく目安です。副腎の結節そのものの評価は、腹部CTの副腎の読影ポイントにまとめています。
見分けがつかないとき
- 以前の画像と比べる。神経節なら形・大きさがほぼ変わりません。
- 冠状断・矢状断の再構成で、上下に長い帯状の形かを確かめる。
- 反対側にも似た構造があるかを見る。
- 膵がんなどの病期診断でどうしても区別が必要なときは、EUS(必要に応じて穿刺)が使われます。EUSは腹腔神経節とリンパ節を高い精度で区別できたと報告されています(Malikowski 2019)。
読影のポイント
- 腹腔動脈と上腸間膜動脈の起始部の間の高さで、横隔膜脚の前を左右とも見る。
- 左副腎の内側脚と、その内側の細長い構造を分けて追う。
- 短径が数mmの帯状・分葉状の構造なら、まず腹腔神経節を考える。
- 丸く厚い、前の画像より大きくなった、強い集積があるときは、リンパ節転移などを考える。
- PSMA PETでは、腹腔神経節の弱い集積を転移と読みすぎない。
腹部の血管とスライスの高さの関係は、腹部CTの解剖|臓器・血管の場所をスライスの高さごとに解説で確認できます。なお、画像で指摘された所見について気になることがあれば、検査を受けた医療機関で相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 腹腔神経節はどのくらいの人に見えますか?
MDCTの検討では左89%、右67%で見えました(Wang 2010)。PET/MRIでは98%で両側に見えています(Bialek 2019)。正常な構造なので、見えること自体は異常ではありません。
Q2. 左のほうがよく見えるのはなぜですか?
左の腹腔神経節のほうが大きく、厚いためと考えられます(Wang 2010、Bialek 2019)。PSMA PETで片側だけ集積がみられるときも、左であることが多いと説明されています(Osman 2021)。
Q3. PSMA PETで集積があれば転移を疑うべきですか?
腹腔神経節には生理的な集積が多くみられます。集積の強さ(転移リンパ節よりかなり弱いことが多い)、場所、帯状か結節状かの形をあわせて判断します(Rischpler 2018)。PET/MRIでは拡散強調像も参考になります(Bialek 2020)。
Q4. 副腎の腫瘤と言われましたが、腹腔神経節のことはありますか?
左副腎の内側に並ぶため、紛らわしいことがあります。濃度も単純CTと門脈相では副腎とほぼ同じです(Wang 2010)。副腎の脚とは別に追える帯状の構造かどうかを、薄いスライスや再構成画像で確認します。判断は画像を読んだ医師・主治医に確認してください。
参考文献
- Wang ZJ, Webb EM, Westphalen AC, et al. Multi-detector row computed tomographic appearance of celiac ganglia. J Comput Assist Tomogr. 2010;34(3):343-7. PubMed
- Ha TI, Kim GH, Kang DH, et al. Detection of celiac ganglia with radial scanning endoscopic ultrasonography. Korean J Intern Med. 2008;23(1):5-8. PubMed
- Malikowski T, Lehrke HD, Henry MR, et al. Accuracy of Endoscopic Ultrasound Imaging in Distinguishing Celiac Ganglia From Celiac Lymph Nodes. Clin Gastroenterol Hepatol. 2019;17(1):148-155.e3. PubMed
- Abtahi SM, Elmi A, Hedgire SS, et al. Depiction of celiac ganglia on positron emission tomography and computed tomography in patients with lung cancer. Clin Imaging. 2014;38(3):292-5. PubMed
- Rischpler C, Beck TI, Okamoto S, et al. (68)Ga-PSMA-HBED-CC Uptake in Cervical, Celiac, and Sacral Ganglia as an Important Pitfall in Prostate Cancer PET Imaging. J Nucl Med. 2018;59(9):1406-1411. PubMed
- Bialek EJ, Malkowski B. Celiac ganglia: can they be misinterpreted on multimodal 68Ga-PSMA-11 PET/MR? Nucl Med Commun. 2019;40(2):175-184. PubMed
- Bialek EJ, Malkowski B. Is the level of diffusion restriction in celiac and cervico-thoracic sympathetic ganglia helpful in their proper recognition on PSMA ligand PET/MR? Nuklearmedizin. 2020;59(4):300-307. PubMed
- Osman MM, Iravani A, Hofman MS, et al. Intra-patient comparison of physiologic (68)Ga-PSMA-11 and (18)F-DCFPyL PET/CT uptake in ganglia in prostate cancer patients: a pictorial essay. Cancer Imaging. 2021;21(1):35. PubMed
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