腹部CTで副腎の石灰化を認めた場合、その背景にはさまざまな疾患が存在します。

副腎石灰化の主な鑑別診断と、それぞれの画像所見・臨床背景についてまとめました。

先に結論:副腎の石灰化を見たら

  • 副腎の石灰化は、昔の出血(新生児期・外傷・抗凝固療法など)の跡や結核・真菌感染の後が代表的で、腫瘤を伴わない小さな石灰化は、それ自体を治療することはふつうありません
  • 石灰化そのものは症状を起こしません。症状が出るのは、両側の病変で副腎の働きが落ちたときなどです
  • 両側の石灰化と副腎の萎縮なら結核によるアジソン病(副腎機能低下)を考え、だるさ・低血圧・色素沈着などがないか確認します
  • 石灰化を伴う腫瘤の場合は、小児の神経芽腫、大人では副腎皮質癌・褐色細胞腫・転移なども考え、大きさや造影所見、ホルモン検査で評価します

副腎石灰化の主な鑑別疾患

  • 副腎結核
  • 副腎出血後の石灰化
  • 神経芽腫(特に小児)
  • 真菌感染(ヒストプラズマなど)
  • 副腎皮質癌・褐色細胞腫
  • 副腎嚢胞(石灰化した壁)
  • 転移性腫瘍

各疾患の画像所見と臨床背景

1. 副腎結核

両側の副腎の腫大や石灰化がみられます。未治療の副腎結核42例では、両側の腫大が91%、石灰化が50%にみられました(Guo 2007)。未治療の活動期には両側の副腎が腫大することが多く、罹病期間が長くなるほど石灰化が増えます。副腎皮質機能低下症(Addison病)を伴うこともあります。肺結核やリンパ節石灰化を伴うことも。

参考文献: Lam KY, Lo CY. “A critical examination of adrenal tuberculosis and a 28-year autopsy experience of active tuberculosis.” Clin Endocrinol (Oxf). 2001.

2. 副腎出血後の石灰化

出血後の陳旧性変化として石灰化が生じます。片側または両側の副腎に石灰化を認め、時に嚢胞状変化(偽嚢胞)を伴います。敗血症、抗凝固療法、新生児期のストレスなどが原因となります。急性〜亜急性期の副腎血腫は円形〜楕円形で50〜90HUの高吸収を示し、経過観察のCTで吸収値が下がっていくことが診断の手がかりになります(Kawashima 1998)。

参考文献: Kawashima A, et al. “Imaging of nontraumatic hemorrhage of the adrenal gland.” RadioGraphics. 1999;19:949-963.

3. 神経芽腫(小児)

副腎部に不整な腫瘤を形成し、内部にびまん性の細かな石灰化を認めます。石灰化した副腎腫瘤33例の検討では神経芽腫が最も多く(10例)、すべて小児でした(Kenney 1987)。腫瘤は隣接血管を巻き込むように浸潤し、境界不明瞭なことが多いです。VMA、HVAの上昇が診断の手がかりになります。

参考文献: Lonergan GJ, Schwab CM, et al. “Neuroblastoma, ganglioneuroblastoma, and ganglioneuroma: radiologic-pathologic correlation.” Radiographics. 2002.

4. 真菌感染症(ヒストプラズマ、コクシジオイデスなど)

播種性ヒストプラズマ症の7例では、全例で両側対称性の副腎の変化があり、軽い腫大と細かな石灰化から、高度の腫大・壊死・密な石灰化までさまざまでした。5例は副腎不全を伴っていました。

参考文献: Wilson DA, et al. “Histoplasmosis of the adrenal glands studied by CT.” Radiology. 1984.

5. 副腎皮質癌・褐色細胞腫

石灰化は比較的まれですが、大型腫瘍で壊死や出血を伴う場合に不整な石灰化を認めることがあります。石灰化した副腎腫瘤33例のうち副腎癌は4例、褐色細胞腫は2例でした(Kenney 1987)。造影CTでの不均一な濃染や血管構造の変位が特徴です。

6. 副腎嚢胞

壁が石灰化した嚢胞として認められます。境界明瞭な低吸収域+壁面に輪状石灰化があれば、副腎嚢胞を疑います。無症状で偶発的に発見されることが多いです。

副腎嚢胞とは、副腎にできる袋状の病変で、内皮性嚢胞・偽嚢胞・上皮性嚢胞・寄生虫性嚢胞の4つに分けられます(Wedmid 2010)。偽嚢胞は出血のあとにできる嚢胞で、副腎嚢胞の中で多いとされます(Dar 2024)。大人の石灰化した副腎腫瘤で最も多いのは嚢胞で、壁に沿う曲線状の石灰化が特徴でした(Kenney 1987)。

症例 20歳代男性 漠然とした腹痛

副腎石灰化 CT 横断像 引用:Radiopaedia(Adrenal calcification) 右副腎に、厚く強く石灰化した壁をもつ嚢胞性病変を認めます。腹痛の精査で偶然見つかったもので、過去の出血や感染(結核)による変化と考えられています。

7. 転移性腫瘍

副腎に腫瘤性病変を形成し、まれに石灰化を伴います。経過や臨床情報との総合評価が必要です。

診断のポイント

  • 両側 or 片側か:両側なら感染・内因性疾患を疑う
  • 石灰化の形状:粗大か細小か、びまん性か限局性か
  • 腫瘤形成の有無:腫瘤+石灰化なら腫瘍性疾患を考慮
  • 臨床背景:結核既往、小児、免疫不全、出血素因など

副腎の石灰化でよくある疑問(Q&A)

Q. 副腎の石灰化で症状は出ますか?
A. 石灰化そのものは症状を起こしません。両側の副腎が結核などで壊れると副腎不全(アジソン病)になり、だるさ・低血圧・色素沈着などが出ることがあります。結核の剖検例では両側の病変による副腎不全が7例にみられました(Lam 2001)。

Q. 副腎嚢胞の原因は?
A. 多い偽嚢胞は、過去の副腎の出血のあとにできる嚢胞です。偽嚢胞45例の集計では、症状のない人が26.67%、漠然とした腹痛が28.89%でした(Dar 2024)。

※だるさや血圧の低下、腹痛などの症状が気になるときは、医療機関を受診してください。

まとめ

副腎石灰化は、感染、出血、腫瘍など多様な原因で生じます。CT画像所見と臨床背景を丁寧に突き合わせることで、適切な鑑別と追加検査の判断が可能となります。

特に副腎結核や神経芽腫など、見逃しやすい疾患を意識しておくことが画像診断の質を高めます。

 

  1. Guo YK, Yang ZG, Li Y, et al. Addison’s disease due to adrenal tuberculosis: contrast-enhanced CT features and clinical duration correlation. Eur J Radiol. 2007;62(1):126-31. PubMed
  2. Ma ES, Yang ZG, Li Y, et al. Tuberculous Addison’s disease: morphological and quantitative evaluation with multidetector-row CT. Eur J Radiol. 2007;62(3):352-8. PubMed
  3. Kawashima A, Sandler CM, Fishman EK, et al. Spectrum of CT findings in nonmalignant disease of the adrenal gland. Radiographics. 1998;18(2):393-412. PubMed
  4. Lam KY, Lo CY. A critical examination of adrenal tuberculosis and a 28-year autopsy experience of active tuberculosis. Clin Endocrinol (Oxf). 2001;54(5):633-9. PubMed
  5. Kawashima A, Sandler CM, Ernst RD, et al. Imaging of nontraumatic hemorrhage of the adrenal gland. Radiographics. 1999;19(4):949-63. PubMed
  6. Lonergan GJ, Schwab CM, Suarez ES, et al. Neuroblastoma, ganglioneuroblastoma, and ganglioneuroma: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2002;22(4):911-34. PubMed
  7. Wilson DA, Muchmore HG, Tisdal RG, et al. Histoplasmosis of the adrenal glands studied by CT. Radiology. 1984;150(3):779-83. PubMed
  8. Kenney PJ, Stanley RJ. Calcified adrenal masses. Urol Radiol. 1987;9(1):9-15. PubMed
  9. Wedmid A, Palese M. Diagnosis and treatment of the adrenal cyst. Curr Urol Rep. 2010;11(1):44-50. PubMed
  10. Dar SA, Qayyum F, Amir A, et al. Pseudocysts of the Adrenal Gland: A Systematic Review of Existing Scientific Literature From 2000 to 2023. Cureus. 2024;16(9):e70528. PubMed

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