先に結論:外傷性副腎損傷
- 外傷性副腎損傷は右側に多く(肝臓と脊椎に挟まれるため)、肝損傷・腎損傷など他の臓器の損傷を伴うことがほとんどです
- CTでは副腎の腫大(血腫)・周囲脂肪の濃度上昇が見られ、造影剤の漏れ出し(extravasation)があれば活動性の出血です
- 両側の損傷では副腎不全に注意し、外傷が軽いのに副腎だけ出血している場合は腫瘍からの出血も考えます
- 副腎出血は外傷のほか、強いストレス・出血しやすい状態(抗凝固薬の使用を含む)・腫瘍でも起こり、CTでは造影されない副腎の腫大として見えます
交通事故や転落などの外傷で腹部の臓器を損傷することがあります。
今回は、腹部の臓器の中でも副腎損傷についてまとめました。
副腎損傷とは?
副腎損傷の多くは片側性でとくに右側に多いとされます。
これは肝臓と椎体の間に副腎が挟まれるためと考えられています。外傷でCTを撮影した2,692例の検討では副腎血腫は1.9%に見られ、大半が右側でした。副腎血腫を伴う患者は損傷の重症度スコアが高く、死亡率も高かったと報告されています(Rana 2004)。
副腎が損傷している場合は、他の臓器(腎や肝など)にも損傷を認めていることが多いとされます。
逆に、外傷が軽いのに副腎のみに出血が見られる場合は、腫瘍からの出血や、外傷以外の原因による副腎出血(後述)の可能性も考慮する必要があります。
両側副腎に損傷が起きると、外傷後副腎機能不全をきたすことがあります。
副腎損傷のCT画像所見
副腎損傷を起こした場合、腹部CTで
- 血腫による副腎腫大
- 周囲脂肪織濃度上昇
- ダイナミックCTにより造影剤の漏出像(extravasation)
などを認めます。鈍的外傷による副腎損傷23病変の検討では、83%が副腎を腫大させる円形〜楕円形の血腫、9%が副腎の輪郭を消すびまん性の出血として描出され、副腎周囲脂肪の毛羽立ちは61%、横隔膜脚の肥厚に似た後腎傍腔の出血は39%に見られました(Burks 1992)。
血腫の平均最大径は2.8cm、平均CT値は52HUでした(Rana 2004)。造影剤の漏れ出し(extravasation)が見えた例は73例中1例(1.4%)とまれです(Sinelnikov 2007)。
経過観察のCTでは、多くの血腫が縮小し、低吸収化していきます(Rana 2004)。73例の検討では、手術が必要だったのは他の臓器の損傷に対してだけでした(Sinelnikov 2007)。
症例 60歳代男性 脚立で作業中に4-5段から転倒

単純CTで右副腎の腫大および単純CTで高吸収を認めています。

ダイナミックCTでは右副腎内にextravasationを疑う所見を認めています。
右副腎損傷と診断されました。
このほか肝損傷(Ⅲb型)および腹腔内出血を伴っていました(非提示)。
外傷以外の副腎出血(非外傷性副腎出血)
強いストレス下や、抗凝固薬の使用を含む出血しやすい状態で、造影されない副腎の腫瘤が急に現れたり、MRIのT1強調像で高信号を示したりする場合は急性の副腎出血を考えます。腫瘤内の石灰化・造影される部分・PETでの集積は、下に腫瘍が隠れている手がかりです(Jordan 2012)。
両側の副腎出血では副腎不全をきたすことがあり、症状は腹痛・吐き気・だるさなどはっきりしません(Aloini 2023)。気になる症状がある場合は医療機関を受診してください。
参考文献:
臨床画像 Vol.28,No.10増刊号,2012 P100
- Rana AI, Kenney PJ, Lockhart ME, et al. Adrenal gland hematomas in trauma patients. Radiology. 2004;230(3):669-75. PubMed
- Burks DW, Mirvis SE, Shanmuganathan K. Acute adrenal injury after blunt abdominal trauma: CT findings. AJR Am J Roentgenol. 1992;158(3):503-7. PubMed
- Sinelnikov AO, Abujudeh HH, Chan D, et al. CT manifestations of adrenal trauma: experience with 73 cases. Emerg Radiol. 2007;13(6):313-8. PubMed
- Jordan E, Poder L, Courtier J, et al. Imaging of nontraumatic adrenal hemorrhage. AJR Am J Roentgenol. 2012;199(1):W91-8. PubMed
- Aloini ME, Manella S, Biondo I, et al. Bilateral adrenal hemorrhage: learning notes from clinical practice and literature review. Front Endocrinol (Lausanne). 2023;14:1233710. PubMed
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