原発性アルドステロン症の診断において、左右どちらの副腎からアルドステロンが分泌されるのかを鑑別するために、副腎静脈サンプリングが行われます。
副腎静脈サンプリングのメインである副腎静脈は左右異なる場所に存在し、腎静脈のように同定は容易ではありません。
今回は、副腎静脈サンプリングの検査の方法・手技について図(イラスト)と実際のアンギオの画像を用いて解説しました。
副腎静脈サンプリングのカテーテル検査の方法・手技
右(もしくは左)の大腿静脈から穿刺を行い、カテーテルを下大静脈へと進めます。
そして、左右の副腎静脈にカテーテルを入れて採血(サンプリング)するのが基本となります。
その他、左腎静脈の遠位・近位、下大静脈の上部・中部・下部、右腎静脈からも採血(サンプリング)を行い参考にすることがあります。
この手技の最大の山場であり、最も難しいのが、右の副腎静脈を見つけてカテーテルを入れて、採血(サンプリング)を行うことです。
しばしば右の副腎静脈は同定さえできず、仮に見つけられたとしてもカテーテルを入れられなかったり、仮に入れられても採血(サンプリング)ができないこともあります。
右副腎静脈の解剖と注意点
- 右副腎静脈用カテーテルを用いる。
- 同定は困難なことが多い。
- 右副腎静脈はTh11~12レベルの後壁右寄りに開口することが多い1)。
- 右副腎静脈開口部付近には副肝静脈が開口している場合が多いので注意。鑑別点は強く造影すると副肝静脈の場合、肝臓実質の染まりが見られる。
- 右副腎静脈が副肝静脈へ開口することがあるので注意が必要1)。
- また、右副腎静脈を選べても採血(サンプリング)が困難な場合もある。
症例 40歳代女性 高血圧
Th12上縁レベルにて右副腎静脈を同定し、サンプリング施行。
症例 60歳代男性 高血圧
右副腎静脈を選択できたと思い、造影すると肝実質の造影効果あり。
副肝静脈を選択していたことがわかります。
左副腎静脈の解剖と注意点
- 左副腎静脈用カテーテルを用いる。
- 左副腎静脈は、左下横隔静脈と共通幹を形成して、左腎静脈に開口するものがほとんど。
- 左副腎静脈は、左下横隔静脈よりも、後方で外側に見られる。
- 左副腎静脈用カテーテルで左副腎静脈と左下横隔静脈との共通幹へ入れ、その後マイクロカテーテル(子カテ)で左副腎静脈を選択する。
- 左副腎静脈用カテーテルを共通幹に入れる手技:
左副腎静脈用カテーテルの形を作る(対側の腸骨静脈を用いてカテ交換、もしくは心臓(右房)で作る)
→左腎静脈よりも先端を上方へ持っていき、そこからカテーテルを引いて、左腎静脈に入れる。
→さらにカテーテルを引くと、共通幹に入る。
症例 40歳代女性 高血圧
左副腎静脈は左下横隔静脈と共通幹を形成。
共通幹に親カテを起き、マイクロカテーテルにて左副腎静脈を選択し、サンプリング(採血)を施行した。
ACTHの負荷を行う場合
- ACTHの負荷を行う場合は、負荷後20-30分後に再びサンプリング(採血)を行う。
副腎静脈サンプリングの合併症
- 合併症としては、特に右副腎静脈を選択する際の血管損傷が最も多い。
- また、左副腎静脈用カテーテルの形を心臓(右房)で作る際にカテーテル先端が心筋に絡まれることが稀にある。
参考文献:
1)日本内科学会雑誌 第95巻 第4号P90-96