肝腫瘍
- 肝臓には不均一な生理的集積がある。
- 肝細胞癌:形態と分化度で集積は異なる。
- 塊状の形態・低分化な腫瘍=高集積
- びまん型・高分化な腫瘍=脱リン酸化酵素活性が高い=低集積
- 肝転移が疑われた場合の担癌患者の診断精度
PET/CT 感度96%、特異度75%
造影CT 感度88%、特異度25%
胆道系腫瘍
- 胆嚢癌や胆管癌にはFDGは比較的よく集積する。
- 腫瘤を形成しない浸潤性胆管癌などは偽陰性となることが知られている。
- 胆嚢炎や胆管炎などの炎症性疾患にも集積するので注意。
- 鑑別には遅延画像を取ると、炎症部位の集積は低下(腫瘍の集積は残存)するため、有効と報告ある。しかし、実際はしばしば困難。
膵腫瘍
- 膵癌と腫瘤形成性膵炎の鑑別診断は保険適応になっていたが、炎症にも集積をし、鑑別は困難であり、適用から外れた!
- 浸潤性膵管癌(膵癌の90%)は中等度の集積を示す。
- 膵癌で集積低下になる原因は2cm以下、耐糖能障害を伴っている場合とされる。
- IPMNは細胞成分が少なく悪性の場合でも集積が弱いとされる。壁在結節に強い集積を認めることがあり、悪性を示唆する。SUV max=2.5を閾値として良悪性を鑑別するという報告あり。
- 胆管癌や膵頭部癌で注意が必要ななのは、胆道系狭窄の治療のためのステント挿入に伴う炎症であり、ステント留置部位に一致したFDG集積が認められる。
消化管腫瘍
胃癌
- 胃はさまざまな生理的集積を認めるため、胃癌の評価には基本的に使えない。
- 早期胃癌は癌で唯一保険対象外。
- 進行癌でも60%程度の検出率しかない。粘液癌、印環細胞癌、低分化型腺癌、硬癌への集積は低い。
- 結節状の生理的集積もときに認められる。
- しかし、術後の再発診断には使える。特に肝転移、腹膜播種の検出に優れている。
- 胃癌初回術後の再発診断
PET/CT 感度96%、特異度100%
CT 感度62%、特異度 10%
消化管間質腫瘍(GIST : gastrointestinal stromal tumor)
- PETの検出率は80%程度。
- 遠隔転移、腹膜播種診断に有用。
- 分子標的薬剤イマチニブの治療効果判定にも利用。なぜならば治療後必ずしも腫瘍径の縮小が見られない。CTで内部低濃度として描出されるから。
結腸癌・直腸癌
- 原発巣の検出率は95%以上と高い。
- リンパ節転移の特異度が高い。
- 肝転移 感度76%。術後再発 感度87%、特異度90%。
- ビグアナイド系経口糖尿病治療薬メトホルミンの腸管集積への影響。
- 腸管粘膜のブドウ糖利用を促進=FDG集積増加。なので、見にくくなるため、薬剤を中止する。
子宮癌
- 上皮内癌、早期癌はPETによる描出は困難。
- 偽陽性:月経出血、炎症、子宮筋腫、子宮腺筋症
- 偽陰性:高分化型、境界病変
- 術前リンパ節診断 感度70%以上、特異度高い。
- 遠隔診断、再発腫瘍の診断に有用。
卵巣癌
- 原発巣の診断精度はあまり高くない。
- なぜか? 嚢胞性腫瘤を形成するため。排卵時期から黄体形成期の正常卵巣に生理的集積が認められるため。
- 再発診断、特に腹膜播種の検出に有用。腫瘍マーカーが高値にも関わらず、CT検査にて異常が見られない場合、FDG-PETによる情報が付加されることが多いとの報告あり。
- 腹膜播種にて注意すべき好発部位:ダグラス窩、小腸間膜、回盲部、左右傍結腸溝、モリソン窩、横隔膜下、臍部皮下、大網
副腎腫瘍
- 正常副腎(50%)、周囲の褐色脂肪にも集積を認める事がある。
- 副腎転移と腺腫の鑑別では、CTやMRに内部濃度(脂肪成分の有無)の情報に加え、FDGの集積程度による鑑別が可能と報告されている。
- SUV max=3.1-3.5を閾値として、良悪鑑別に有用との報告あり。
- 偽陽性を示す良性腫瘍:腺腫、褐色脂肪腫、oncocytoma、血腫など。
腎腫瘤
- FDGが尿中に排泄されるため、腎癌、尿管癌、膀胱癌など尿路系悪性h巣用の診断は困難なことが多い。
- 腎細胞癌への集積は乏しい。→PETは使えない。
- 腎盂癌や腎転移では高集積を呈する事が多いとされる。
精巣腫瘍
- 原発腫瘍への集積も高く、病期診断・再発診断に非常に有用。
- 精巣に生理的な集積があり、若年者で高い傾向があるが、左右差に注目し、左右差があれば指摘する。
前立腺癌
- 膀胱の背側に位置していることもあり、原発腫瘍の評価は難しい。
- 骨転移の検出能も骨シンチの方が高い。
【2013年問題】
問題18
子宮や卵巣への生理的なFDG集積と病的集積を鑑別するために必要な情報はどれか、2つ選べ。
a. 月経周期
b. 妊娠・出産の経験の有無
c. 初経年齢
d. ホルモン治療の有無
e. 下剤服用の有無
解答:a, d