日常臨床や救急外来で腹部CTの腹膜・腸間膜・腹水を観察するときに、基本的にどのようなことに着目して読影するべきなのでしょうか?

  • 腹水(液体)の有無・量・たまる場所
  • 液体の濃さ(水・膿・血液)
  • 腸間膜・大網の脂肪織濃度上昇
  • 腹膜の肥厚・結節(腹膜播種・腹膜炎)
  • 遊離ガス(フリーエアー)
  • 腸間膜の腫瘤・リンパ節・石灰化

の有無についてまずは読影をしてみましょう。

腹膜・腸間膜は臓器と臓器の「すき間」にあるため、臓器だけを順に見ていると見落としやすい場所です。一方で、少量の液体やガス、脂肪のけば立ちが、腸や臓器の病気を最初に教えてくれることも多くあります。以下、代表的な所見ごとに、鑑別診断と次に見るポイントを解説します。

先に結論:腹部CTで腹膜・腸間膜を見るときの6つのチェックポイント

  1. 液体の場所:肝臓の周り・モリソン窩・傍結腸溝・ダグラス窩を確認。局所にたまっていれば、その近くの臓器が原因のことが多い
  2. 液体の濃さ:水に近いか(漏出性)、濃いか(滲出性・膿)、血液か。血液なら一番濃い血の塊(sentinel clot)の近くに出血源を探す
  3. 脂肪織濃度上昇:範囲と中心を見る。腸・膵臓などの炎症、浮腫、出血、腸間膜脂肪織炎(misty mesentery)を区別する
  4. 腹膜の肥厚・結節:大網の板状の肥厚(omental cake)、腹膜の結節、腸の表面の凹凸は腹膜播種を考える。結核や腹膜炎とも見分ける
  5. 遊離ガス:肺野条件や脂肪の見やすい条件で、腹壁の直下・肝臓の前を探す。分布で穿孔の場所を推定する
  6. 腸間膜の腫瘤:形(境界明瞭・不整・多発)、石灰化、周りの索状影、リンパ節腫大

1. 腹水(液体)の場所と量

腹膜腔の区分と液体がたまる場所
腹膜腔の区分の模式図です。横行結腸間膜より上(右横隔膜下腔・モリソン窩・網嚢など)と下(左右の結腸間膜下腔・傍結腸溝・直腸膀胱窩/ダグラス窩)に分かれ、液体はこれらのくぼみを通って広がります。詳しくはダグラス窩・モリソン窩とは?腹水がたまる場所とCTでの見方の記事へ。

  • 少量の液体を探す場所:仰向けで最も低くなるモリソン窩(肝臓と右腎の間)と、骨盤の一番深いダグラス窩(直腸膀胱窩)
  • 局所的な液体:その近くの臓器(虫垂・胆嚢・膵臓・卵巣など)の炎症や出血を疑う手がかりになる
  • 胸水との区別:肝臓の後ろの液体は、横隔膜の外(胸水)か内(腹水)かで意味が変わる(→CTで胸水と腹水の見分け方)

2. 液体の濃さ(水・膿・血液)

液体の濃さ(CT値)は、原因を考える大きな手がかりです。ただし濃さだけで性状は決まらないため、分布や周りの所見とあわせて判断し、必要に応じて穿刺で確かめます。

液体の見え方 考える病気と次に見るポイント
水に近い・全体に広がる 漏出性の腹水:肝硬変(肝臓の形・脾腫・側副血行路)、心不全(胸水・下大静脈の拡張)、腎不全、低アルブミン血症
やや濃い・腹膜の肥厚や造影を伴う 滲出性の腹水:腹膜炎、癌性腹膜炎、結核性腹膜炎。腹膜の肥厚・結節を探す
辺縁が造影される液体のたまり 膿瘍(ガスを含むこともある)。原因の臓器(虫垂・憩室・術後の縫合部)をたどる
水より明らかに濃い・層をなす 血性腹水(腹腔内出血)。外傷、肝細胞癌の破裂、卵巣出血・異所性妊娠、抗凝固薬など

癌性腹水
引用:Radiopaedia(Malignant ascites of ovarian origin)
癌性腹水の造影CTです。肝臓の周りから左上腹部まで腹水が広がり、左上腹部の大網の脂肪が濃く、けば立っています。詳しくは腹水・腹腔内の液体貯留の鑑別診断(漏出性と滲出性)の記事へ。

血性腹水を見たら

腹腔内の出血では、出血源の近くに最も濃い血の塊(sentinel clot)ができやすく、造影剤の漏れ出し(extravasation)があれば活動性の出血を示します。また外傷では、腸間膜の中の三角形の液体は腸管・腸間膜損傷で多く見られます(Lubner 2007)。

3. 腸間膜・大網の脂肪織濃度上昇

本来は真っ黒に見える腸間膜や大網の脂肪が、灰色っぽく濃くなる(けば立つ)所見です。中心がどこにあるかで原因を考えます。

  • 原因の臓器の周りに限局:虫垂炎・憩室炎・膵炎・腸炎などの炎症、穿孔
  • 腸間膜全体・左右対称:心不全・肝硬変・低アルブミン血症による浮腫、腸間膜静脈の閉塞
  • 腸間膜根部に限局し、血管の周りの脂肪が保たれる:腸間膜脂肪織炎(misty mesentery)
  • 大網・腹膜垂の小さな脂肪の塊:大網捻転・大網梗塞、腹膜垂炎

misty mesentery
引用:Radiopaedia(Misty mesentery sign)
misty mesenteryの造影CT冠状断です。中腹部の小腸間膜の脂肪が、周りの脂肪より淡く濃くなって見えます。詳しくはmisty mesentery(腸間膜脂肪織濃度上昇)とは?原因と腸間膜脂肪織炎との違いの記事へ。

偶然見つかった腸間膜脂肪織炎(misty mesentery)の扱い

腸間膜脂肪織炎は、腹部CTでよく偶然見つかる所見で、報告されている頻度は0.6〜2.4%ですが、実際にはもっと多いと考えられています。多くは症状がなく治療を必要とせず、最も大切な鑑別は悪性リンパ腫です(Gögebakan 2018)。

  • 444人を追跡した研究では、新たに見つかった悪性腫瘍のうち腸間膜脂肪織炎と関係がありそうなものは5人(1%)で、すべて低悪性度のB細胞リンパ腫でした。短径10mmを超える軟部の結節か、腹部・骨盤の別の場所のリンパ節腫大があるときに、悪性腫瘍が隠れている可能性が高くなりました(Grégory 2022)
  • ACRの偶発所見white paperを更新・補う総説でも、misty mesenteryは偶然見つかる所見として取り上げられています(Govardhan 2026)

4. 腹膜の肥厚・結節(腹膜播種・腹膜炎)

omental cake(大網ケーキ)
腹膜播種の単純CTです。大網の脂肪が濃くなって板状の腫瘤のようになり(omental cake、黄色の矢印)、腹水とモリソン窩の腹膜の肥厚(水色の矢印)も見えます。詳しくは腹膜播種・癌性腹膜炎のCT画像診断の記事へ。

  • 腹膜播種のサイン:大網の網目状〜板状の肥厚、腹膜の結節や肥厚・造影増強、肝臓や脾臓の表面のくぼみ(scalloping)、腸の表面の凹凸や腸閉塞、腹水
  • 小さい播種は見えにくい:卵巣癌64人の検討で、CTの播種に対する感度は全体で85〜93%でしたが、1cm以下の病変では25〜50%に下がりました(Coakley 2002)
  • 原因を探す:胃癌・大腸癌・膵癌・卵巣癌が多い。ゼリー状の腹水で肝表面がくぼむときは腹膜偽粘液腫を考える

播種とまちがえやすいもの

病気 見分けの手がかり
細菌性の腹膜炎 腹膜が薄く均一に肥厚・造影され、膿瘍や遊離ガス、原因の臓器(穿孔・虫垂炎など)を伴う(→腹膜炎の原因とCT画像所見)
結核性腹膜炎 腹膜の肥厚と腹水に、中心が低吸収の腸間膜リンパ節腫大を伴うことがある(→腹部の結核の画像診断)
その他の腹膜炎 腹膜リンパ腫症・化学性腹膜炎など(→腹膜炎の原因(癌性・炎症性・その他))。腹膜透析の長い人では腸を包む膜ができる硬化性被包性腹膜炎
脾症(splenosis) 脾臓の外傷・手術歴があり、脾臓と同じように造影される結節(→脾症と腹膜播種との鑑別)

5. 遊離ガス(フリーエアー)

腹腔内遊離ガス
引用:Radiopaedia(Perforated peptic ulcer)
消化性潰瘍穿孔の造影CTです。肝臓の前、腹壁のすぐ下に黒い帯状のガス(遊離ガス)が見えます。詳しくは消化管穿孔のCT画像診断(遊離ガスと穿孔部位の推定)の記事へ。

  • 探し方:仰向けではガスは一番高い所(肝臓の前・腹壁の直下)に集まる。肺野条件など、ウィンドウ幅を広げると脂肪と少量のガスを区別しやすい
  • 分布から穿孔部位を推定:93人の検討では、門脈周囲と横隔膜下の遊離ガスは上部消化管の穿孔、骨盤内・右下腹部・左下腹部・腸間膜内のガスは下部消化管の穿孔と関連しました(Toprak 2019)
  • 部位ごとの手がかり:168人の検討で、穿孔部位の正診率は2人の読影者で91.07%と91.67%で、胃・十二指腸の穿孔が最も当てやすい結果でした(Kim 2014)。詳しくは上部消化管穿孔のfree airの探し方も参考にしてください
  • 穿孔以外の遊離ガス:術後・腹膜透析・腹腔鏡のあと、腸管気腫症など(→フリーエアーの消化管穿孔以外の原因)。寝たまま撮ったX線ではガスが分かりにくい(→臥位のfree airと気胸の見落とし)

6. 腸間膜の腫瘤・リンパ節・嚢胞・石灰化

腸間膜の腫瘤は、形(境界明瞭か、辺縁不整か、多発か)で整理すると鑑別が進めやすくなります。

  • 境界明瞭な腫瘤:リンパ節腫大(リンパ腫・転移)、デスモイド、GISTなど
  • 辺縁不整・放射状の索状影:回腸の神経内分泌腫瘍の腸間膜転移、硬化性腸間膜炎
  • 多発する結節:腹膜播種、リンパ腫、結核
  • 嚢胞:リンパ管腫、腹膜封入嚢胞(手術歴のある女性の骨盤で卵巣を包む嚢胞)
  • 石灰化:結核などの古い腸間膜リンパ節、腹膜ネズミ(腹腔内遊離体)など

腸間膜の神経内分泌腫瘍(カルチノイド)
引用:Radiopaedia
腸間膜の神経内分泌腫瘍(カルチノイド)の造影CT冠状断です。中腹部の腸間膜に石灰化を伴う腫瘤があり、周りに放射状の索状影が広がり、引きつれた小腸が拡張しています。詳しくは腸間膜腫瘤の鑑別診断(境界明瞭・辺縁不整・多発)の記事へ。

腫瘤を見つけたら、原発巣(回腸・大腸・卵巣など)、ほかの場所のリンパ節、肝転移を確認し、必要に応じてMRI・PET、生検へ進みます。

腹膜・腸間膜で見落としやすい場所と、確認のしかた

場所 見落としやすい理由 確認のしかた
横隔膜下・肝臓の表面 少量の液体・遊離ガス・播種が、肝臓の輪郭や肺底部に溶け込む 冠状断で横隔膜の下を確認し、肺野条件で遊離ガスを探す
モリソン窩 肝臓と右腎の間の細い液体は、腎周囲の脂肪と紛れる 少量の腹水の最初のサインとして意識して見る
ダグラス窩(直腸膀胱窩) 撮影範囲の下端にあり、腸・子宮・膀胱と重なる 矢状断で骨盤の一番深い所の液体や結節を確認する
傍結腸溝 上行・下行結腸の外側の細いすき間で、液体が帯状に薄くたまる 左右を見比べる
腸間膜根部 血管とリンパ節、脂肪が入り混じり、軽いけば立ちや小さなリンパ節が目立たない 冠状断で上腸間膜動静脈に沿って追う
大網(腹壁のすぐ下) 薄い網目状の播種は、正常の大網の血管と区別しにくい 以前のCTと比べ、左右差と腹水の有無をあわせて見る

腹膜・腸間膜の読影でよくある疑問(Q&A)

Q. CTで「少量の腹水」と言われました。心配ですか?
A. 骨盤内のごく少量の液体は、特に女性では排卵などに伴って見られることがあります。一方、量が多い、濃い、腹膜の肥厚を伴う場合は原因を調べる必要があります。症状とあわせて主治医に相談してください。

Q. 「腸間膜脂肪織炎(misty mesentery)」と言われました。治療が必要ですか?
A. 多くは症状がなく、治療を必要としない所見とされています。ただし、大きめの結節やほかの場所のリンパ節の腫れを伴うときは、リンパ腫などを確かめるために経過観察や追加の検査がすすめられます。

Q. 遊離ガスがあれば、すぐに手術になりますか?
A. そうとは限りません。手術や腹腔鏡のあと、腹膜透析などでも遊離ガスは見られます。腹膜炎の症状や、穿孔部位を示す所見(壁の途切れ・周りの炎症)とあわせて判断します。

まとめ

腹膜・腸間膜・腹水のCT読影では、

  • 液体の場所と量、濃さ(漏出性・滲出性・膿・血液)
  • 脂肪織濃度上昇の範囲と中心
  • 腹膜の肥厚・結節(播種・腹膜炎)
  • 遊離ガスの有無と分布
  • 腸間膜の腫瘤・リンパ節・石灰化

を順に確認し、原因となる臓器へさかのぼって考えます。お腹の張り・腹痛・発熱など気になる症状があれば、医療機関を受診してください。

参考になれば幸いです(^Д^)

あわせて読みたい:腹部CTの読み方

参考文献

  1. Lubner M, Menias C, Rucker C, et al. Blood in the belly: CT findings of hemoperitoneum. Radiographics. 2007;27(1):109-25. PubMed
  2. Gögebakan Ö, Osterhoff MA, Albrecht T. Mesenteric Panniculitis (MP): A Frequent Coincidental CT Finding of Debatable Clinical Significance. Rofo. 2018;190(11):1044-1052. PubMed
  3. Grégory J, Dana J, Yang I, et al. CT features associated with underlying malignancy in patients with diagnosed mesenteric panniculitis. Diagn Interv Imaging. 2022;103(9):394-400. PubMed
  4. Govardhan C, Carney BW, Larson MC, et al. Update on Management of Incidental Findings Seen on Imaging Studies of the Abdomen and Pelvis. Radiographics. 2026;46(4):e250104. PubMed
  5. Coakley FV, Choi PH, Gougoutas CA, et al. Peritoneal metastases: detection with spiral CT in patients with ovarian cancer. Radiology. 2002;223(2):495-9. PubMed
  6. Toprak H, Yilmaz TF, Yurtsever I, et al. Multidetector CT findings in gastrointestinal tract perforation that can help prediction of perforation site accurately. Clin Radiol. 2019;74(9):736.e1-736.e7. PubMed
  7. Kim HC, Yang DM, Kim SW, et al. Gastrointestinal tract perforation: evaluation of MDCT according to perforation site and elapsed time. Eur Radiol. 2014;24(6):1386-93. PubMed

臓器・部位ごとの読影ポイント(シリーズ)

同じ形で、臓器・部位ごとに「何が起こりうるか、どう読むか」をまとめています。

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