先に結論:腹部CTで石灰化を見たら「どこにあるか」で考える

場所 主な原因
血管 動脈硬化(大動脈・脾動脈など)、静脈石(骨盤内の丸い石灰化。尿管結石と間違えやすい)
リンパ節 腸間膜・膵周囲の陳旧性結核など
胆嚢・胆管・膵臓 胆石、総胆管結石、膵石(慢性膵炎)
腸管・腹腔 虫垂結石、胃石、腹膜ネズミ(脱落した腹膜垂)、残ったバリウム
臓器・腫瘍 肝・脾の陳旧性肉芽腫、副腎(出血・結核後)、腎結石、腫瘍内の石灰化(奇形腫・粘液性腫瘍・転移など)

多くは古い炎症や加齢による心配の少ない石灰化ですが、腫瘤の中の石灰化や、腹痛の原因となる結石(尿管・胆管・虫垂)は見逃さないことが大切です。

  • 腹膜ネズミ(腹腔ねずみ・腹腔内遊離体)とは、腸の表面の脂肪の突起(腹膜垂)がちぎれて腹腔内に落ち、石灰化した小さな塊です。多くは無症状で、骨盤の底(直腸膀胱窩・ダグラス窩)で偶然見つかり、治療は不要なことがほとんどです

腹部石灰化の鑑別診断

腹部石灰化とは、CTやレントゲンで腹部の中にカルシウムが沈着して白く見える部分のことです。血管の壁・リンパ節・結石・腫瘍の中など、どこにできたかで意味が大きく変わるため、まず「どの臓器(どの管の中)にあるか」を確かめます。

腹部で石灰化を認めた場合、

  • 腹部リンパ節
  • 腹膜ねずみ
  • 虫垂結石、腸管内結石(胃石など)
  • 胆石
  • 膵石
  • 腫瘍内石灰化
  • その他(肝の石灰化、静脈の石灰化、腹膜の石灰化、副腎の石灰化)

    などがあります。

    腹部リンパ節

    結核性リンパ節炎を生じやすい部位

    • 膵周囲と腸間膜のリンパ節に好発する。小腸や回盲部からのリンパ流が関与している。
    • 具体的に:
      結核は呼吸器感染として初発
      →気道から喀出された痰を嚥下
      →消化管へ
      →回盲部から右半結腸に多発する潰瘍性病変を来す。
      →腸間膜の所属リンパ節に波及
      →リンパ流はSMAに沿って門脈に向かい
      →膵頭部から総胆管周囲の肝十二指腸間膜に沿ったリンパ節に流入。
    • 比較的小さな石灰化の多発として認められる。
    • 時に、後腹膜のリンパ節を伴う。また、肝や脾の実質内にも石灰化を伴うことあり。

    症例

    腸間膜リンパ節の石灰化のCT画像

    腸間膜に石灰化リンパ節を認めています。

    結核などによる陳旧性のリンパ節炎を疑う所見です。

    症例

    腸間膜リンパ節の石灰化のCT画像

    こちらも腸間膜に石灰化リンパ節を認めています。

    結核などによる陳旧性のリンパ節炎を疑う所見です。

    腹膜垂と腹膜鼠(ねずみ)

    • 結腸には3本の結腸ひもがあり、自由ひもと大網ひもに沿って脂肪構造を主体とする腹膜側への突起があり、腹膜垂(appendix epiploica)とよばれる。
    • 腹膜垂が遊離して腹膜腔に脱落したものが腹腔ねずみ(peritoneal mouse,intraperitoneal loose body)。
    • 腹膜遊離体(loose body)、腹膜石、腹腔内遊離体、intraperitoneal loose body、peritoneal loose body、intraabdominal free body、pearl bodyなどと呼ばれる。
    • 名前のように、ネズミのように腹腔内をちょこちょこ移動する。
    • 脂肪成分だが、石灰化の頻度も高く、辺縁は平滑。脱落して間もない時期は脂肪の縁に石灰化が見え(下の症例)、CTでは中心に石灰化をもつ境界明瞭な塊として見えることが多い(Dholakia 2026)。

    症例

    腹膜ネズミのCT画像

    直腸膀胱窩に類楕円形の石灰化あり。

    腹膜垂が石灰化し遊離した腹膜ネズミを疑う所見です。

    症例

    腹膜ネズミのCT画像

    こちらも同様に腹膜ネズミを疑う所見です。

    この部位は腹腔で最も低位であるため、好発部位です。

     

    症例 80歳代男性

    こちらはフォローで移動した腹膜ネズミです。

    腹腔内を移動するのでまるでネズミのようですね。

     

    腹膜ネズミは腹膜垂が石灰化し脱落したものですが、腹膜垂が捻転などを起こし、炎症をきたしたものが腹膜垂炎です。

    腹膜ネズミ(腹腔内遊離体)の症状と治療

    項目 内容
    別名 腹腔ねずみ、腹膜鼠、腹腔内遊離体、peritoneal loose body
    見つかる場所 骨盤の最も低い所(直腸膀胱窩・ダグラス窩)が多く、検査ごとに位置が変わることがある
    症状 小さいものは無症状。大きいものでは腹部の不快感、尿が出にくい、腸閉塞などの報告がある(Dholakia 2026)
    注意点 大きいものは腫瘍(GISTなど)と間違われ、不要な手術につながることがある(Yadav 2026)
    治療 無症状なら経過観察。症状の原因となる大きなものは腹腔鏡などで摘出される

    腹膜垂炎についてまとめました。→腹膜垂炎とは?CT画像診断のポイントは?

     

    症例

    直腸右側に辺縁に高信号の被膜様構造あり、一部に石灰化を有する楕円形の脂肪あり。

    脱落した腹膜垂が疑われ、今後より石灰化が進むものと考えられる。

    症例 90歳代女性 スクリーニング

    SD junctionに結腸に接して、辺縁に石灰化を有する脂肪塊あり。

    腹膜垂を疑う所見。結腸からは遊離はしていない。

     腸管内結石

    • 糞石の1つである虫垂結石は、虫垂炎の原因の一つ。
    • ただし、結石があれば虫垂炎と診断できるわけではない。
    • 他に、腸管内に生じる結石としては、胃石があり、植物性(柿など)・毛髪・薬剤など消化されない物質が胃の中で固まったものである(Iwamuro 2015)。
    • 胃の手術歴は胃石の代表的な危険因子で、胃腸の胃石42例では42.8%に胃の手術歴があった(Kement 2012)。
    症例

    虫垂糞石のCT画像

    腹部単純CTの横断像と冠状断像です。

    冠状断像では、管状の虫垂を認めており、石灰化で満たされています。

    横断像でもその様子がわかります。

    バリウムによる虫垂糞石を疑う所見です。

    胆石

    胆石と鑑別すべきもの

    • 細かな石灰化=胆砂。
    • 造影剤が沈殿しているように見える石灰化胆汁(milk of calcium)。

    胆石の合併症

    • 胆石が大きくなると、炎症を起こして、隣接する腸管、主に十二指腸に穿破することがある。胆嚢十二指腸瘻という。
    • この際に胆石が大きいと小腸内で腸閉塞となり、これが胆石イレウスである。

    その他

    症例

    胆石のCT画像

    胆嚢に複数の結石があります。

    胆嚢結石を疑う所見です。

    膵石

    • 慢性膵炎の診断に重要。膵実質の石灰化ではなく、膵管内の結石のことなので注意。
    • 膵液の流れを妨げることが膵炎の原因となる。
    • 拡張した膵管分枝に沿って結石が形成され、いびつな、あるいは、樹枝状の構造となる。腹部を横走する膵の形態に一致した分布は特徴的。
    • 膵頭部のみに限局する事がある。
    • 高カルシウム血症をきたす副甲状腺機能亢進症は膵炎の原因となることがある(Minisola 2018)。
    • 脾動脈の石灰化を膵石としないこと。管状構造を反映し、2本の平行線あるいは動脈瘤であれば、球状の輪郭の石灰化となるので、鑑別は容易。
    症例

    膵石のCT画像

    膵頭部および膵尾部に主膵管内に結石を認めています。

    膵石を疑う所見です。

    膵は萎縮を認めており、慢性膵炎が疑われます。

     

     

    腫瘍内石灰化

    • 胃の粘液癌:粘液癌でない胃癌より石灰化が多く、石灰化は粘液癌の診断で特異度98.7%(Zhao 2017)。
    • 大腸癌:肝転移に石灰化を伴うことがある。大腸癌肝転移210例では10.5%に石灰化があった(Xu 2010)。粘液癌との関連が指摘されている。
    • 膵腫瘍:膵神経内分泌腫瘍、solid pseudopapillary neoplasm(SPN)、漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腫瘍は石灰化を伴いやすい。膵腫瘍311例では27.7%に石灰化があり、点状の石灰化は神経内分泌腫瘍、粗大な石灰化は漿液性嚢胞腺腫を示唆した(De Robertis 2026)。
    • Castleman病(単中心性・硝子血管型):43例中21%に石灰化(Hoshiai 2024)。
    • 腸間膜の神経内分泌腫瘍(カルチノイド):CTで約70%に石灰化。

    その他

    関連記事:

    腹部の石灰化でよくある疑問(Q&A)

    Q. 胃や腸のあたりに石灰化があると言われました。原因は?
    A. 腸の中の結石(虫垂結石・胃石)、残ったバリウムや薬、腸の外の腹膜ネズミ・石灰化リンパ節・静脈石、腸間膜静脈の石灰化(静脈硬化性大腸炎)、腫瘍内の石灰化(胃の粘液癌など)があります。腸の壁の中か、腸の内腔か、腸の外かで考えます。

    Q. 腹膜ネズミは取らなくてよいのですか?
    A. 小さく症状のないものは経過観察でよいとされます。大きくなって腸や膀胱を圧迫するものは摘出されることがあります(Dholakia 2026)。

    Q. 石灰化リンパ節は心配ですか?
    A. 多くは昔の結核などによる古い炎症のあとです。ただし腫瘍に伴う石灰化もあるため、大きさや他の所見とあわせて判断します。腹痛などの症状や気になる点があれば、医療機関で相談してください。

    参考)臨床画像2010年9月 消化器 聖路加国際病院 齋田幸久先生

    参考文献

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