先に結論:上部消化管穿孔(胃・十二指腸穿孔)とは
- 胃や十二指腸の壁に穴が開き、中身や空気がお腹の中にもれ出す状態です。原因は十二指腸潰瘍が最多、次いで胃潰瘍で、ほかに胃がん、内視鏡などの医原性、外傷などがあります
- 症状は突然の激しい上腹部(みぞおち)の痛みで、お腹全体が板のように硬くなります(腹膜炎)。大網が穴をふさぐと痛みが軽くなることもあります
- 診断はCTで腸の外の空気(free air・遊離ガス)を見つけることが最も重要で、肝臓の表面・肝円索のまわり・胆嚢のまわりなどにたまりやすいです。十二指腸球部や胃の前壁付近の壁の途切れや空気・液体から穿孔部位を推定します。治療は手術(穴を閉じる)が基本で、条件により保存療法も行われます
- free airは少量だと立位の胸部レントゲンでは見えないことがあり、CTのほうが見つけやすいです(Stapakis 1992)
※突然の激しい腹痛があるときは、すぐに救急受診してください。
上部消化管穿孔(胃十二指腸穿孔)

上部消化管穿孔の原因は?
- 十二指腸潰瘍(最多)
- 胃潰瘍
- 特発性食道破裂
- 腫瘍(腺癌、悪性リンパ腫)
- 医原性
- 外傷性
手術で確かめられた胃十二指腸穿孔146例では、穿孔部位は十二指腸38.3%、幽門近く35.6%でした(Grassi 2004)。消化性潰瘍による穿孔の背景には、ピロリ菌感染、痛み止め(NSAIDs)などの薬、ストレス、喫煙、飲酒が挙げられています(Pouli 2020)。
上部消化管穿孔の症状は?
・急激な上腹部痛。
・ただし、大網で穿孔部が覆われている場合は、痛みが軽減している場合もある。
上部消化管穿孔の診断は?
・通常、腹腔内にはガスは見られない。画像診断では、消化管穿孔により腸管外に存在しているガス(free air = 遊離ガス)を見つけることが重要。
・free airは通常、立位の胸部あるいは腹部単純レントゲン、CT検査で見つかることが多い。特に、CTでは感度が高い。
・腹腔内に空気が入った外傷患者13人の比較では、CTでは全員にfree airが見えたのに対し、立位胸部レントゲンで見えたのは5人(38%)だけで、ごく少量のfree airはレントゲンでは見えなかった(Stapakis 1992)。
・ただし画像でfree airがはっきりしない穿孔もある。胃十二指腸穿孔146例のうち12例ではレントゲン・超音波・CTでfree airが見えず、その66%では腹水が唯一の手がかりだった(Grassi 2004)。
- 肝円索裂
- 網嚢内側上陥凹
- 胆嚢周囲(胆嚢床)
- Morrison窩
- 腸間膜間

上腹部CT画像診断ツールを用いて作成。
・画像診断では、これらのfree airを認めやすい部位を中心に、free airの有無を探していく。見つかれば、どの範囲までfree airが及んでいるか下腹部までチェックする。


・上腹部にfree airがあっても、下部消化管穿孔から上がってきた可能性がある。逆に、下腹部にfree airがあっても上部消化管穿孔からのairが移動した可能性もある。
・ただし、上腹部のみに、あるいは下腹部のみにfree airを認める場合は、そこが穿孔の可能性が非常に高い。
- 大量→胃十二指腸穿孔、大腸穿孔
- 小網内(lesser sac)→胃後壁、十二指腸、腹部食道
- 肝円索、肝鎌状間膜→十二指腸球部、胃
- 後腹膜→十二指腸下行〜水平脚
- 腸間膜内→結腸、小腸
- 骨盤内に限局→結腸、小腸
参考記事)消化管穿孔のCT画像診断総論
・またCT画像では、穿孔部の周囲腸管壁の粘膜下浮腫を伴い、その浮腫で肥厚した壁内に欠損像を認めることで診断できることがある。
症例 50歳代男性 腹痛:十二指腸球部穿孔

この症例では、肝表面、肝円索、胆のう周囲、(モリソン窩)などにfree airを認めています。また、下部には認めていませんでした。さらに十二指腸球部に壁の欠損を認めており、消化管外と連続する瘻孔を認めています。ですので、以上より「十二指腸球部潰瘍からの穿孔」と診断することができます。
症例 30歳代男性 腹痛:十二指腸球部穿孔

症例 60歳代男性 腹痛:十二指腸下行脚部穿孔

症例 60歳代 女性 総胆管結石に対してEST後

関連記事)腸間膜(間膜)の画像診断!間膜の理解には主要な動静脈を同定する。
上部消化管穿孔の治療は?
症状や採血結果、穿孔の程度から治療方針を決定します。
穿孔の程度が小さく、大網に被覆されている場合などは、保存的にみることもあります。ただし2020年のWSESガイドライン(Tarasconi 2020)では、保存療法をルーチンに行うことは推奨されておらず、水溶性造影剤で穿孔部の閉鎖が確認された、ごく限られた症例でのみ検討するとされています。また70歳を超える高齢者では、保存療法が失敗した場合の死亡率が高く注意が必要です。
- 保存療法:胃管、PPI、H2ブロッカー、絶食、抗生剤
- 緊急手術:単純閉鎖と大網被覆、洗浄ドレナージ
上部消化管穿孔でよくある疑問(Q&A)
Q. free air(フリーエアー)とは何ですか?
本来は腸の中にしかない空気が、腸の外の腹腔内にもれ出たものです(遊離ガス、腹腔内遊離ガスとも)。消化管穿孔の大切な所見ですが、手術後などでもみられるため病歴と合わせて判断します。
Q. 十二指腸穿孔の原因は?
最も多いのは十二指腸潰瘍です。ほかに内視鏡の処置(乳頭切開など)、外傷、腫瘍などがあります。球部の穿孔では腹腔内に、下行部より先の穿孔では後腹膜に空気がもれます。
Q. free airが見えなければ穿孔ではありませんか?
そうとは限りません。free airが見えない胃十二指腸穿孔もあり(Grassi 2004)、穿孔部の壁の途切れ、周囲の脂肪のにごり、腹水なども合わせて確認します。
消化管穿孔全体(小腸・大腸を含む)の原因と画像所見は「消化管穿孔のCT画像診断総論」にまとめています。
あわせて読みたい:胃潰瘍・十二指腸潰瘍の透視(バリウム)・CT所見
参考文献
- Kim SH, Shin SS, Jeong YY, et al. Gastrointestinal tract perforation: MDCT findings according to the perforation sites. Korean J Radiol. 2009;10(1):63-70. PubMed
- Hainaux B, Agneessens E, Bertinotti R, et al. Accuracy of MDCT in predicting site of gastrointestinal tract perforation. AJR Am J Roentgenol. 2006;187(5):1179-83. PubMed
- Tarasconi A, Coccolini F, Biffl WL, et al. Perforated and bleeding peptic ulcer: WSES guidelines. World J Emerg Surg. 2020;15:3. PubMed
- Pouli S, Kozana A, Papakitsou I, et al. Gastrointestinal perforation: clinical and MDCT clues for identification of aetiology. Insights Imaging. 2020;11(1):31. PubMed
- Rubesin SE, Levine MS. Radiologic diagnosis of gastrointestinal perforation. Radiol Clin North Am. 2003;41(6):1095-115, v. PubMed
- Grassi R, Romano S, Pinto A, et al. Gastro-duodenal perforations: conventional plain film, US and CT findings in 166 consecutive patients. Eur J Radiol. 2004;50(1):30-6. PubMed
- Stapakis JC, Thickman D. Diagnosis of pneumoperitoneum: abdominal CT vs. upright chest film. J Comput Assist Tomogr. 1992;16(5):713-6. PubMed
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完敗です。今まで頭ではわかっていてもフリーエアに注意して画像を見る習慣がありませんでした。とてもいい勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
典型的なフリーエアを認めやすい場所を押さえていただき、消化管穿孔の可能性がある場合はそこを中心に観察するようにしてください。
慣れてくれば、すぐに違和感を抱けるようになります。