上部消化管穿孔(胃十二指腸穿孔)
上部消化管穿孔の原因は?
- 十二指腸潰瘍(最多)
- 胃潰瘍
- 特発性食道破裂
- 腫瘤(腺癌、悪性リンパ腫)
- 医原性
- 外傷性
上部消化管穿孔の症状は?
・急激な上腹部痛。
・ただし、大綱で穿孔部が覆われている場合は、痛みが軽減している場合もある。
上部消化管穿孔の診断は?
・通常、腹腔内にはガスは見られない。画像診断では、消化管穿孔により腸管外に存在しているガス(free air = 遊離ガス)を見つけることが重要。
・free airは通常、立位の胸部あるいは腹部単純レントゲン、CT検査で見つかることが多い。特に、CTでは感度が高い。
- 肝円索裂
- 網嚢内側上陥凹
- 胆嚢周囲(胆嚢床)
- Morrison窩
- 腸間膜間
上腹部CT画像診断ツールを用いて作成。
・画像診断では、これらのfree airを認めやすい部位を中心に、free airの有無を探していく。見つかれば、どの範囲までfree airが及んでいるか下腹部までチェックする。
・上腹部にfree airがあっても、下部消化管穿孔から上がってきた可能性がある。逆に、下腹部にfree airがあっても上部消化管穿孔からのairが移動した可能性もある。
・ただし、上腹部のみに、あるいは下腹部のみにfree airを認める場合は、そこが穿孔の可能性が非常に高い。
- 大量→胃十二指腸穿孔、大腸穿孔
- 小網内(lesser sac)→胃後壁、十二指腸、腹部食道
- 肝円索、肝鎌状間膜→十二指腸球部、胃
- 後腹膜→十二指腸下行〜水平脚
- 腸間膜内→結腸、小腸
- 骨盤内に限局→結腸、小腸
参考記事)消化管穿孔のCT画像診断総論
・またCT画像では、穿孔部の周囲腸管壁の粘膜下浮腫を伴い、その浮腫で肥厚した壁内に欠損像を認めることで診断できることがある。
症例 50歳代男性 腹痛:十二指腸球部穿孔
この症例では、肝表面、肝円索、胆のう周囲、(モリソン窩)などにfree airを認めています。また、下部には認めていませんでした。さらに十二指腸球部に壁の認めており、消化管外と連続する瘻孔を認めています。ですので、以上より「十二指腸球部潰瘍からの穿孔」と診断することできます。
症例 30歳代男性 腹痛:十二指腸球部穿孔
症例 60歳代男性 腹痛:十二指腸下行脚部穿孔
症例 60歳代 女性 総胆管結石に対してEST後
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上部消化管穿孔の治療は?
症状や採血結果、穿孔の程度から治療方針を決定します。
穿孔の程度が小さく、大網に被覆されている場合などは、保存的にみることもあります。
- 保存療法:胃管、PPI、H2ブロッカー、絶食、抗生剤
- 緊急手術:単純開鎖と大網被覆、洗浄ドレナージ
完敗です。今まで頭ではわかっていてもフリーエアに注意して画像を見る習慣がありませんでした。とてもいい勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
典型的なフリーエアを認めやすい場所を押さえていただき、消化管穿孔の可能性がある場合はそこを中心に観察するようにしてください。
慣れてくれば、すぐに違和感を抱けるようになります。