先に結論:腹膜病変(腹膜炎)の原因
- 腹膜の肥厚・結節・腹水の原因は、癌性腹膜炎(胃・大腸・膵・卵巣癌など)が最も重要で、腹膜偽粘液腫・悪性中皮腫・リンパ腫などの腫瘍もあります
- 原発巣が見つからない漿液性癌は、近年は卵管の上皮内癌(STIC)から起こると考えられています
- 炎症では結核性腹膜炎が癌性腹膜炎とまぎらわしく、結核は平滑で広い肥厚、癌は結節状の肥厚が手がかりです
- 腹膜リンパ腫症は大きなリンパ節腫大を伴うことが多く、化学性腹膜炎は細菌ではなく嚢腫の内容液などの刺激で起こります
腹膜炎の原因には
- 癌性腹膜炎
- その他の腫瘍性病変
- 炎症による腹膜炎
がある。
癌性腹膜炎の原因
- 胃、大腸の癌の頻度が高いが、膵も原発となることがある。
- 女性であれば、卵巣癌や子宮体癌が原因となることがある。
- 漿液性癌の組織像でありながら、これらの臓器に原発を認めない場合、従来、腹膜癌と呼ばれてきたが、最近ではSTIC(serous tubal intraepithelial carcinoma)と呼ばれる卵管の上皮内癌に由来すると考えられている。
- 他、稀だが、腹腔外である乳癌、肺癌、悪性黒色腫が原発となることがある。
症例 50歳代男性 腹痛と腹部膨満(胃癌の既往)
腹部前方の大網が厚く軟部組織の濃度になっており、omental cakeの所見です。肝臓の周囲には腹水がみられます。胃癌の既往がある患者さんで、腹膜播種による変化と考えられます。
その他の腫瘍性病変
- 大網に水に近い濃度の播種所見を認めた場合、腹膜偽粘液腫を考える。これは、多くが虫垂由来だが、膵や肝の粘液産生性腫瘍も原発となることがある。
- 悪性中皮腫が生じることがある。
- 悪性リンパ腫が腹腔や大網にびまん性に浸潤することがあり、腹膜リンパ腫症(peritoneal lymphomatosis)と呼ばれる。
腹膜リンパ腫症のCT所見
- 非ホジキンリンパ腫、特にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫での報告が多く、ホジキンリンパ腫ではきわめてまれです(Cabral 2013)。
- 大網・腸間膜に沿った均一な軟部組織の浸潤や腫瘤、腹膜の肥厚、軽度〜中等度の腹水がみられ、腸間膜・後腹膜の大きなリンパ節腫大を伴うことが診断の手がかりです(Cabral 2013)。
炎症による腹膜炎
- 結核性腹膜炎(癌性との鑑別が難しいことがあるが、癌性の場合は腹膜の肥厚が結節状、結核性の場合は広範囲でかつ平滑な肥厚として認める)結核性腹膜炎19例と癌性腹膜炎19例を比べたCTの検討では、壁側腹膜の軽度で平滑な肥厚と強い造影効果は結核の15例、癌の5例にみられ、腹膜結節は癌性腹膜炎(7例)にのみ認められた。腹水中のフィブリンも結核性腹膜炎で見られ、癌性腹膜炎では見られなかったとする報告がある。
- 化学性腹膜炎(卵巣の内膜症性嚢胞や成熟嚢胞性奇形腫の破裂による。)
化学性腹膜炎とは
細菌感染ではなく、腹腔内にもれた内容物の刺激で起こる腹膜炎です。皮様嚢腫の破裂ではCTで腹水の中に脂肪の濃度がみられるのが特徴的です(Nitinavakarn 2006)。急な強い腹痛や発熱、お腹の張りが続くなど気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
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参考文献:画像診断 Vol.41 No.4 増刊号 2021 P158-160
- Levy AD, Shaw JC, Sobin LH. Secondary tumors and tumorlike lesions of the peritoneal cavity: imaging features with pathologic correlation. Radiographics. 2009;29(2):347-73. PubMed
- Rodríguez E, Pombo F. Peritoneal tuberculosis versus peritoneal carcinomatosis: distinction based on CT findings. J Comput Assist Tomogr. 1996;20(2):269-72. PubMed
- Charoensak A, Nantavithya P, Apisarnthanarak P. Abdominal CT findings to distinguish between tuberculous peritonitis and peritoneal carcinomatosis. J Med Assoc Thai. 2012;95(11):1449-56. PubMed
- Cabral FC, Krajewski KM, Kim KW, et al. Peritoneal lymphomatosis: CT and PET/CT findings and how to differentiate between carcinomatosis and sarcomatosis. Cancer Imaging. 2013;13(2):162-70. PubMed
- Nitinavakarn B, Prasertjaroensook V, Kularkaew C. Spontaneous rupture of an ovarian dermoid cyst associated with intra-abdominal chemical peritonitis: characteristic CT findings and literature review. J Med Assoc Thai. 2006;89(4):513-7. PubMed
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