腹部CTで腹腔内遊離ガス(free air)を見ると、

「どこかに消化管穿孔があるはずだ」

「上部消化管か下部消化管か、破れているのはどっちだ?」

などと消化管穿孔ありきで、穿孔部位を探してしまいがちですが、病歴から穿孔以外を考慮するべきシーンがあります。

その場合は穿孔以外が原因ですので、開腹手術をして穿孔部位を縫合する必要もなく、開腹手術が必要ない腹腔内遊離ガス(free air)ということで、nonsurgical pneumoperitoneumと呼ばれます。

穿孔以外にも腹腔内遊離ガス(free air)を生じることがあることを覚えておいた上で、

  • 穿孔以外で腹腔内遊離ガス(free air)を生じる原因

についてまとめました。

消化管穿孔以外で起こる腹腔内遊離ガス(free air)の原因

  • 女性の場合は卵管経由で腹腔内にガスが至ることがある
  • 食道裂孔などを介して縦隔から腹腔内にガスが至ることがある
  • ガス産性菌による膿瘍の腹腔内破裂により腹腔内にガスが至ることがある
  • 医原性に腹腔内に腹腔内にガスが至ることがある
  • 穿通性外傷により腹腔内に腹腔内にガスが至ることがある
  • その他の原因:スキューバダイビング後など

卵管経由

  • 女性生殖器を介して、膣→子宮→卵管から腹腔内にガス(air)が入り込むことがある。
  • 通常は卵管から腹腔内に入るよりも膣から外に抜けるケースが多いがこの出口が塞がっている場合などにこのようなことが起こる。
  • その原因としては、性交後、ウォシュレット使用後、乗馬、knee-chest exercise、医原性(婦人科的内診後、子宮卵管造影後)など。

縦隔経由

  • 縦隔と腹腔内は食道裂孔などを介して連続しているため、縦隔のガス(air)が腹腔内に入り込むことがある。
  • その原因としては、縦隔気腫肺気腫、外傷、感染、陽圧人工管理など。
  • さらに、頸部→縦隔→腹腔内にガスが至ることがあり、具体的には、抜歯や扁桃腺切除後などで見られることがある。

ガス産性菌による膿瘍の腹腔内破裂

  • ガス産性菌による膿瘍が破裂した先が腹腔内である場合、腹腔内にガスが至ることがある。
  • 具体的には、肝膿瘍破裂、子宮留膿腫破裂、気腫性胆嚢炎破裂など。

医原性

  • 上に述べた婦人科的な内診後や子宮卵管造影以外にも医原性で腹腔内にガスが至ることがある。
  • 具体的には、腹部手術後、胃瘻チューブや腹膜透析チューブ、VPシャントチューブ、膿瘍ドレナージチューブなど何らかのチューブを腹腔内に留置した場合など。
  • 他、膀胱破裂後の尿道カテーテルによる医原性膀胱内airが腹腔内に流出してしまうことがある。(膀胱破裂は腹腔内のみに起こるわけではなく、成人では腹腔外が多く、小児では思春期前に膀胱の大部分が腹腔内に膨隆しているため腹腔内が多い)

消化管穿孔以外で起こる腹腔内遊離ガス(free air)の画像的特徴

  • 消化管穿孔以外で起こる腹腔内遊離ガス(free air)の画像的特徴としては、消化管穿孔の時に認める腹腔内遊離ガス(free air)と比較して量が少ないことが多い。(もちろん穿孔でも少ないこともある。また穿孔以外でも量が多いことがあるのでその傾向があるということで量だけで決め手になるわけではない。)

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参考文献:

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