臥位の遊離ガスと気胸 寝たまま撮ったX線・CTの見落とし

救急やICUで寝たまま撮ったレントゲンだと、free airや気胸を見落としそうで不安です。どこを見ればいいですか?
仰臥位では空気が「いちばん高い所」、つまり腹部や胸部の前面にたまるので、立位と見え方が変わります。仰臥位X線のサインと、CTでfree airや気胸に似てしまう空気を整理します。

先に結論:仰臥位では空気は前面・上方にたまり、立位のサインが使えない

場面 見るポイント 落とし穴
仰臥位腹部X線のfree air 右上腹部のガス、Rigler sign、cupola sign Rigler signの偽陽性(腸管が接しているだけ)
仰臥位胸部X線の気胸 deep sulcus sign(深い肋骨横隔膜角) 肺尖部に線が見えないことがある
CTの下胸部の小さな空気 skip pneumothorax(気胸の患者の半数以上) 前方にあるとfree airに見える
CTの気胸に似た空気 胸膜外気腫(内部の網目状の隔壁・縦隔気腫) 扱いが気胸と異なる
CTの腸管壁内ガス 偽性腸管気腫(便と粘膜の間のガス) 腸管虚血と誤る

仰臥位腹部X線でfree airを探す

サインの頻度

気腹44例を対照87例に混ぜて盲検で読影した検討では、仰臥位腹部X線で何らかの気腹のサインが見えたのは26例(59%)でした。右上腹部のガス(right-upper-quadrant gas sign)18例(41%)、Rigler sign(腸管壁の両側にガス)14例(32%)、falciform ligament signとfootball signが各1例(2%)でした(Levine 1991)。

偽陽性に注意

同じ検討では右上腹部のガスとRigler signの読み誤りが多く、偽陽性が11例(13%)ありました。真の右上腹部ガスは三角形か線状で、外下方から内上方へ向かう向きでした。真のRigler signでは腸管壁の厚さが1〜8mmだったのに対し、偽陽性はすべて1mm以下でした(Levine 1991)。腸管どうしが接して壁が薄く見えるだけのものをRigler signと読まないことがポイントです。

cupola sign

仰臥位では、横隔膜下の正中部(median subphrenic space)にたまった空気がドーム状の透亮像として見えることがあり、cupola signと呼ばれます。気腹100例中6例で見られ、そのうち3例ではこれが唯一の所見でした(Mindelzun 1986)。

CTでのfree airの見え方や穿孔以外の原因はフリーエアー(腹腔内遊離ガス)のCT・レントゲン所見と消化管穿孔以外の原因をご覧ください。

仰臥位胸部X線の気胸:deep sulcus sign

仰臥位の胸部X線では、気胸の唯一の所見が患側の外側肋骨横隔膜角が深くなることだけ、という場合があります(deep sulcus sign)(Gordon 1980)。立位のように肺尖部に臓側胸膜の線が見えるとは限りません。気胸の画像所見全体は気胸の画像診断(レントゲン・CT)|ディープサルカスサインとは?にまとめています。

症例 30歳代男性 仰臥位胸部X線の気胸(deep sulcus sign)

仰臥位胸部X線 気胸 deep sulcus sign
引用:Radiopaedia(Pneumothorax with deep sulcus sign)

あおむけで撮った胸部X線で、右の肋骨横隔膜角が下に深く、黒っぽく切れ込んで見えます。症例ページでは、胸腔ドレーンが入っていても右に大きめの気胸が残っていて、deep sulcus signを示すと記載されています。

free airに見える「skip pneumothorax」

気胸のある146例のCTを見直した検討では、肺に接していない小さな空気が胸腔の最下部にスリット状・小卵円形にたまっている所見(下胸部の限局性の空気)が79例(54.1%)に見られ、外傷性の気胸でより多く見られました。前方にあるものは腹腔内のfree airに似ていました(Higuchi 2013)。

気胸のある患者、とくに外傷例で上腹部の前方に小さな空気を見たら、それが横隔膜の上(胸腔)か下(腹腔)かを冠状断・矢状断で確かめます。

気胸に見える胸膜外気腫

胸膜外腔は胸腔の外側にある潜在的な腔で、ここにたまった空気(胸膜外気腫)は画像で気胸と区別しにくい所見です。CTで気胸と報告された2771例から、肺周囲の空気の内部に網目状の線状隔壁(web appearance)がある22例を抽出した検討では(Nishinaka 2025)、

  • 縦隔気腫が全例にあった(通常の気胸の対照群では4.5%)
  • 内胸動脈を取り囲む空気が50%(対照群0%)
  • 間質性肺疾患の合併77%、ステロイド使用73%

でした。気胸との区別は治療方針を考えるうえで重要です(Nishinaka 2025)。縦隔気腫については縦隔気腫(気縦隔)とは?原因・症状・治療とレントゲン・CT画像所見をご覧ください。

腸管気腫と偽性腸管気腫

腸管壁内のガス(腸管気腫)は、良性から致死的なものまでさまざまな原因で起こる所見で、命にかかわる原因で最も多いのは腸管虚血です。一方、便と腸粘膜のひだの間に閉じ込められた腸管内のガスの粒が、腸管気腫と誤認されることがあります(偽性腸管気腫)(Wang 2011)。

緊急腹部CTで腸管気腫ありまたは疑いとされた71例の見直しでは、27例(38%)が偽性腸管気腫でした。真の腸管気腫を示す所見として正確度が高かったのは次の3つです(Esposito 2021)。

所見 正確度
腸管壁を解離するように入り込むガス 94%
ガス・液面や便の高さを越えて(重力側の壁にも)存在する壁内ガス 86%
全周性のガス 78%

腸管気腫の原因と良悪の見分け方は腸管気腫症(腸管壁内気腫)とは?、門脈ガスは門脈内ガス(門脈気腫)の原因とCT画像所見にまとめています。

よくある疑問(Q&A)

Q. 仰臥位腹部X線でfree airがなければ穿孔は否定できますか?

気腹例でもサインが見えたのは59%でした(Levine 1991)。X線で所見がなくても、臨床的に疑わしければCTを考えます。

Q. 気胸の患者で上腹部前方に空気があれば、消化管穿孔の合併ですか?

気胸の患者の半数以上に下胸部の限局性の空気があり、前方のものはfree airに似ます(Higuchi 2013)。横隔膜との位置関係を多断面で確認します。

Q. 便のまわりの泡状のガスは腸管気腫ですか?

便と粘膜の間のガスは偽性腸管気腫のことがあります(Wang 2011)。壁を解離するガスや全周性のガスがあるかを確認し、臨床所見とあわせて主治医と相談してください。

あわせて読みたい:読影の見落としはなぜ起こる?

参考文献

  1. Levine MS, Scheiner JD, Rubesin SE, et al. Diagnosis of pneumoperitoneum on supine abdominal radiographs. AJR Am J Roentgenol. 1991;156(4):731-5. PubMed
  2. Mindelzun RE, McCort JJ. The cupola sign of pneumoperitoneum in the supine patient. Gastrointest Radiol. 1986;11(3):283-5. PubMed
  3. Gordon R. The deep sulcus sign. Radiology. 1980;136(1):25-7. PubMed
  4. Higuchi T, Takahashi N, Kiguchi T, et al. Localized air foci in the lower thorax in the patients with pneumothorax: skip pneumothoraces. Eur J Radiol. 2013;82(8):1338-42. PubMed
  5. Nishinaka H, Oi M, Hiroi T, et al. Image Findings and Background Characteristics of Extrapleural Air Collection: A Pneumothorax Mimicker. J Comput Assist Tomogr. 2025;49(5):764-768. PubMed
  6. Wang JH, Furlan A, Kaya D, et al. Pneumatosis intestinalis versus pseudo-pneumatosis: review of CT findings and differentiation. Insights Imaging. 2011;2(1):85-92. PubMed
  7. Esposito AA, Zannoni S, Castoldi L, et al. Pseudo-pneumatosis of the gastrointestinal tract: its incidence and the accuracy of a checklist supported by artificial intelligence (AI) techniques to reduce the misinterpretation of pneumatosis. Emerg Radiol. 2021;28(5):911-919. PubMed

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