先に結論:消化管穿孔のCT
- 消化管穿孔とは、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸の壁に穴があき、内容物や空気がもれる状態です。原因は胃・十二指腸では消化性潰瘍が最多、大腸ではがん・内視鏡などの処置・憩室が多く、突然の強い腹痛で始まることが多い緊急疾患です(Pouli 2020)
- 消化管が破れると、空気や内容物が腹腔内(胃・十二指腸球部・小腸・横行結腸・S状結腸など)か、後腹膜(十二指腸下行部以降・上行/下行結腸・直腸の一部)に漏れます。CTは少量の遊離ガスも見つけられ、肺野条件(ウィンドウを広げる)で確認するのがコツです
- 穿孔部位の推定には、ガスの多い場所・量(上部消化管は肝臓の前などに多い、下部では少量で糞便を伴うことも)、腸管壁の途切れ・周囲の脂肪のにごり・液体のたまりを手がかりにします
- 下部消化管(大腸)の穿孔は便による汚染で重症化しやすく、緊急手術を要することが多いです。穿孔以外で遊離ガスが出る場合(術後など)もあるため病歴と合わせて判断します
※突然の激しい腹痛があるときは、すぐに救急を受診してください。
消化管穿孔のCT画像診断総論


- ①全体が漿膜に包まれる:胃、空腸、回腸、横行結腸、S状結腸、虫垂、卵巣
- ②大半が漿膜に包まれる:肝臓、盲腸、上行結腸、下行結腸
- ③半分が漿膜に包まれる:膀胱、子宮
- ④全く包まれず:腎臓、十二指腸、副腎、腹部大動脈、下大静脈、尿管、卵巣・精巣動脈、下腸間膜静脈
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部位別にみた消化管穿孔の原因・症状・CTの手がかり
| 部位 | 主な原因 | 症状 | CTの手がかり |
|---|---|---|---|
| 胃・十二指腸 | 消化性潰瘍が最多。ほかに外傷・腫瘍・処置後 | 急な腹痛、筋性防御・反跳痛(後腹膜への穿孔では症状が軽いことも) | 横行結腸間膜より上の遊離ガス、肝円索・肝鎌状間膜・小網のガス |
| 小腸 | 外傷、絞扼性腸閉塞、異物、炎症性腸疾患など | 突然の腹痛、嘔吐、腹膜炎 | 遊離ガスは少ないか、ないことも。壁の欠損・壁肥厚、腸間膜の液体 |
| 大腸 | がん(36%)、処置に伴うもの(20%)、憩室(19%)。ほかに宿便(糞便塞栓)など | 腹痛、発熱。便による細菌性腹膜炎で重症化しやすい | 壁の欠損、腸管外の便塊(dirty mass)、骨盤内に限局したガス |
(表はPouli 2020より作成。大腸の割合は同論文が引用する報告の値)
腹膜気腫(遊離ガス=free air)の原因
- 消化管穿孔
- 術後(開腹術、腹腔鏡下手術)
- 経膣性(Rubin試験など)
- 外傷
- 腸管壁嚢状気腫
- 縦隔気腫、肺気腫
- 特発性
関連記事:消化管穿孔以外で起こる腹腔内遊離ガス(free air)の原因
遊離ガス(free air)の部位と穿孔部位の相関
- 大量→胃十二指腸穿孔、大腸穿孔
- 小網内(lesser sac)→胃後壁、十二指腸、腹部食道
- 肝円索、肝鎌状間膜→十二指腸球部、胃。手術で確認された消化管穿孔53例の検討では、門脈周囲の遊離ガス(periportal free air sign)は上部消化管穿孔の93%にみられたのに対し下部では35%で、多変量解析で上部消化管穿孔を示す唯一の独立した所見でした(肝鎌状間膜サインは80%対43%、肝円索サインは53%対8%)(Cho 2009)。
- 後腹膜→十二指腸下行〜水平脚
- 腸間膜内→結腸、小腸
- 骨盤内に限局→結腸、小腸

腹部CT診断120ステップ (荒木力 中外医学社)P178を参考に作図。
※横行結腸、食道下部からの穿孔は頻度が低い。
※盲腸の穿孔は腸閉塞、toxic mega colonで生じることがある。
※腹腔内に漏出した便塊をdirty mass signという。内部に気泡を含み、腸管壁に囲まれない異常腫瘤である。腸管壁の途切れや腸管外のガスと並ぶ、大腸穿孔の直接所見とされる(Pouli 2020)。
後腹膜気腫と穿孔部位の相関
- 多くが、十二指腸下行脚や水平脚、上行結腸、下行結腸、直腸、S状結腸。
- 右前腎傍腔→十二指腸、上行結腸
- 左前腎傍腔→下行結腸、S状結腸
※憩室炎の穿孔は通常後腹膜側の少量のfree airとして描出される。結腸憩室の多くが自由ひも−間膜ひも、大網ひも−間膜ひもの間に生じるため。

消化管穿孔でよくある疑問(Q&A)
Q. 「穿孔」と「穿通」の違いは?
穿孔は消化管の壁に穴があいて、内容物が腹腔内や後腹膜にもれ出る状態です。穿通は、潰瘍などが壁を貫いても膵臓や肝臓などの隣の臓器にふさがれて、内容物が自由にもれない状態をいいます。穿通では遊離ガスがはっきりしないことがあります。
Q. CTで遊離ガスがなければ穿孔は否定できますか?
否定できません。小腸の穿孔では遊離ガスがごく少ないか、ないこともあります(Pouli 2020)。腸管壁の途切れ、壁の肥厚、周囲の脂肪のにごり、液体のたまりも合わせて確認します。
Q. 経口造影剤のもれは必要ですか?
造影剤のもれが見えれば穿孔部位の特定に役立ちますが、見える割合は19〜42%と低いと報告されています(Pouli 2020)。もれがないことは穿孔の否定にはなりません。
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穿孔部位の推定が治療方針に直結する理由
消化管穿孔の治療の中心は手術ですが、穿孔の部位と原因によって、手術の方法や、そもそも手術が必要かどうかが変わります。たとえば、胃・十二指腸潰瘍の穿孔では、全身の腹膜炎の徴候がなく、穿孔部が自然にふさがっていると考えられる場合は、手術以外の治療が選ばれることがあります(Kim 2009)。一方、大腸の穿孔は便による汚染で重症になりやすく、緊急手術になることが多くなります(Pouli 2020)。つまり、CTで遊離ガスを見つけるだけでなく、「どこが破れたか」まで読んで外科に伝えることが大切です。
上部と下部で変わる遊離ガスの見え方
| 見るところ | 胃・十二指腸 | 小腸 | 大腸 |
|---|---|---|---|
| 遊離ガスの量 | 多い(肝臓や胃のまわりに集まる) | 少ない。CTで見つかるのは約50%と報告されている(Kim 2009が引用した報告) | 少量〜多量。後腹膜のものは後腹膜に出る |
| 特徴的なサイン | 肝鎌状間膜サイン、肝円索サイン、小網内のガス(Kim 2009) | 腸管壁の肥厚、異常な造影効果、腸間膜の液体・脂肪織混濁(Kim 2009) | 腸管外の便塊(dirty mass sign)、壁の欠損(Pouli 2020) |
| 上部消化管穿孔を示す所見 | 門脈周囲の遊離ガスは上部消化管穿孔の93%、下部消化管穿孔の35%にみられ、多変量解析で上部消化管穿孔を示す独立した所見でした(Cho 2009) | ||
小腸穿孔では遊離ガスが少ないため、前方の腹膜面(肝臓の前、腹部の中央)や腸間膜のひだの間の少量のガスを探します。そのうえで、壁肥厚、異常な造影効果、腸間膜の液体や脂肪織混濁といった間接所見を合わせて判断します(Kim 2009)。
間違えやすいポイント
- ガスが少ない=軽い、ではありません:小腸や、後腹膜側の穿孔、穿孔の直後は、ガスが少なくても重症のことがあります。
- 「上部は保存的」は一部の例外です:手術以外の治療が選ばれるのは、腹膜炎が限られ、穿孔部がふさがっていると判断された十二指腸潰瘍穿孔などで、判断は臨床の経過とCTを合わせて行います(Kim 2009)。
- 穿孔部位の予測は外れることもあります:85例の検討で、CTで穿孔部位を正しく予測できたのは73例(86%)でした。強い予測因子は、腸管壁のすぐ近くに集まる腸管外ガス(p<0.001)、区域性の壁肥厚(p<0.001)、壁の局所的な欠損(p=0.007)でした(Hainaux 2006)。
消化管穿孔のCTでよくある疑問(Q&A、続き)
Q. 経口の造影剤は飲ませないといけませんか?
いいえ。造影剤のもれは特異度の高い所見とされますが、見える割合は低く(Pouli 2020)、経口造影剤を使わずにCTで評価する方針の施設もあります(Kim 2009)。
Q. 突然の強い腹痛があるとき、様子を見てもよいですか?
突然の強い腹痛や、お腹が硬くなる、発熱が続くといった症状があれば、すぐに救急を受診してください。
参考文献
- Kim SH, Shin SS, Jeong YY, et al. Gastrointestinal tract perforation: MDCT findings according to the perforation sites. Korean J Radiol. 2009;10(1):63-70. PubMed
- Hainaux B, Agneessens E, Bertinotti R, et al. Accuracy of MDCT in predicting site of gastrointestinal tract perforation. AJR Am J Roentgenol. 2006;187(5):1179-1183. PubMed
- Pouli S, Kozana A, Papakitsou I, et al. Gastrointestinal perforation: clinical and MDCT clues for identification of aetiology. Insights Imaging. 2020;11(1):31. PubMed
- Cho HS, Yoon SE, Park SH, et al. Distinction between upper and lower gastrointestinal perforation: usefulness of the periportal free air sign on computed tomography. Eur J Radiol. 2009;69(1):108-13. PubMed
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