腹部の膨張や痛み、下痢や発熱などがあらわれ、ショック症状が起きると命に関わる危険性のある疾患の1つに中毒性巨大結腸症というものがあります。
ただの腹痛と侮れないこの疾患、特に原因となる炎症性大腸疾患を患っている方(治療中の方を含め)は注意が必要です。
今回は中毒性巨大結腸症(ちゅうどくせいきょだいけっちょうしょう・英語表記で「toxic megacolon」)について
- 原因
- 診断基準
- 治療法
について、分かりやすくまとめましたので、参考にされて下さい。
中毒性巨大結腸症とは?
腸が大きく膨らんでしまう疾患で、大腸炎になり腸の動きが止まることで、毒素やガスが溜まり体外へガスを放出することが出来なくなります。
この状態になると、全身に中毒症状があらわれます。
あらわれる症状は以下のようなものがあります。
症状
- 発熱
- 腹痛
- 脱水
- 貧血
- 下痢
- 血便
- 精神異常
- 脈拍が速くなる
- ショック症状
高熱が出やすく、全身に腹痛をともなう様々な症状が出現します。
また、ガスや便が溜まりすぎると、腸が破裂する恐れもあります。
腸が破裂すると、通常は腸内にいる細菌が腹部に放出され、それによって感染症になったり命に関わることにもなりかねません。
中毒性巨大結腸症の原因は?
炎症性大腸疾患が原因となります。
炎症性大腸疾患とは
長期間にわたって下痢や血便があらわれる原因不明の難病です。
食中毒とは違い自然回復せず、長期にわたって症状が落ち着いたり悪化したりを繰り返します。
生命に関わることはありませんが、一生治療しながら症状を抑えつつ付き合っていかなくてはならない疾患です。
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 偽膜性大腸炎
- 赤痢
- アメーバー
- サイトメガロウイルス
がこれにあたります。
中毒性巨大結腸症の診断基準は?
まずX線で腹部を撮影し、腸の拡張を確認します。
診断基準としては、以下の通りです。
拡張した腸が6cm以上の場合、
- 38度以上の発熱
- 脈拍120以上
- 白血球増多
- 貧血
などの症状のうち3つに当てはまり、さらに
- 脱水
- 意識障害
- 電解質異常
- 低血圧
などの症状を1つでもともなえば巨大結腸症を疑い、原因となる炎症性大腸疾患があれば中毒性巨大結腸症と診断されます。
また中毒性巨大結腸症と診断されたら、CTを行い正確に評価し、治療方針を決定します。
穿孔(読みは「せんこう」腸に穴が空いていないかどうかということ)の有無、腹膜腔遊離ガス・壁内ガスや拡張した腸の壁の厚さ、壁内出血の有無と程度などを詳しく調べます。
※大腸内視鏡や注腸造影は、中毒性巨大結腸症を悪化させたり穿孔の危険性が高くなるため、通常行われません。
症例 60歳代男性 潰瘍性大腸炎あり。
レントゲン及び腹部造影CT検査で、結腸はほぼ全域にわたり拡張を認め、正常ならば存在する大腸の構造であるハウストラの消失を認めています。中毒性巨大結腸症を疑う所見です。
中毒性巨大結腸症の治療法は?
以下のような治療法があり、症状に合わせて選択されます。
- 入院
- 絶食
- 血圧管理
- 脱水症状予防
- 貧血管理
- ステロイド薬
- 抗生剤
- 腸内減圧
- 手術
まずは入院して絶食し、ショック(急激な血圧低下など)を避けるために点滴が行われます。
軽症の場合は、ステロイドホルモン大量投与(日本では7時間が目安)や腸内減圧が行われ、症状の改善に合わせて量を徐々に減らしていくという方法もとられます。
これらの薬物療法で効果が見られなかった場合は手術となりますが、結腸が10cm以上になれば緊急手術となります。
手術は異常な腸部分を切除し、肛門まで続ける(人工肛門にする場合も)処置を行います。
手術は、検査結果を見ながら状態に合わせた方法が選択されます。
最後に
- 腸が大きく膨らみ、大腸炎になり腸の動きが止まり、毒素やガスが溜まり体外へガスを放出することが出来なくなる疾患
- ガスが溜まりすぎると破裂し感染症を起こし、命に関わることも
- 炎症性大腸疾患が原因
- 入院・絶食・血圧管理・脱水症状予防・貧血管理・ステロイド薬・抗生剤・腸内減圧・手術などの治療が行われる
この中毒性巨大性結腸症中毒性巨大性結腸症を予防するためには、炎症性大腸疾患の治療をしっかり行うことが重要です。
また症状を放置すると悪化し命に関わるため、破裂を未然に防ぎ早期に適切な治療を行うことが予後に関係します。