右下腹部のCTで「石灰化」や「非常に高吸収な構造」を見つけたとき、まず尿管結石や静脈石、リンパ節石灰化、腹腔内遊離体などを考えることが多いと思います。

しかし、回盲部近傍、とくに盲腸から連続する細長い管状構造の中に高吸収域を認める場合は、虫垂内に遺残したバリウム糞石を鑑別に入れる必要があります。

今回は、腹部CTで右下腹部に高吸収域を認めたときに知っておきたい、虫垂のバリウム糞石の画像所見、通常の虫垂糞石との違い、鑑別診断、虫垂炎との関係について整理します。

虫垂のバリウム糞石とは?

虫垂のバリウム糞石とは、過去に行われた胃透視、上部消化管造影、注腸造影などのバリウム検査後に、バリウムが虫垂内腔に入り込み、そのまま遺残したものです。

虫垂は盲腸から連続する盲端構造であり、いったんバリウムが入り込むと排出されにくいことがあります。そのため、検査直後だけでなく、時間が経過した後のCTで偶然発見されることがあります。

バリウムはCTで非常に高吸収を示すため、右下腹部に「ギラギラした高吸収」「金属のような高吸収」「虫垂を鋳型状に形取る高吸収」として描出されることがあります。

CTでの典型的な画像所見

虫垂のバリウム糞石を疑うCT所見は以下の通りです。

  • 右下腹部、回盲部近傍に非常に高吸収な構造を認める
  • 盲腸から連続する虫垂内に高吸収域を認める
  • 虫垂の形に沿った管状・鋳型状の高吸収を示す
  • 通常の糞石よりも明らかに高吸収で、アーチファクトを伴うことがある
  • 虫垂腫大、壁肥厚、周囲脂肪織濃度上昇がなければ、虫垂炎ではなく遺残バリウムとして考える

重要なのは、単に「右下腹部に石灰化がある」と見るのではなく、その高吸収域が腸管内なのか、虫垂内なのか、腹腔内なのかを追うことです。

特に、盲腸から連続する細長い盲端構造を同定できれば、虫垂内病変であることが分かります。

症例 50歳代女性

盲腸から開口する虫垂に根部から虫垂を形取るように石灰化を認めています。

虫垂のバリウム糞石を疑う所見です。

通常の虫垂糞石との違い

虫垂内の高吸収としては、通常の虫垂糞石もよく知られています。虫垂糞石は急性虫垂炎の原因や増悪因子として重要です。

一方、バリウム糞石は通常の糞石よりもCT値が高く、より「白く」「ギラギラした」印象になります。

項目 通常の虫垂糞石 虫垂のバリウム糞石
CT濃度 高吸収だが比較的控えめ 非常に高吸収
形状 類円形〜不整形が多い 虫垂を鋳型状に形取ることがある
アーチファクト 目立たないことが多い 強い高吸収により目立つことがある
背景 虫垂炎に伴うことがある 過去のバリウム検査後に認められる

つまり、虫垂をそのまま型取りしたような非常に高吸収な構造を見た場合は、通常の虫垂糞石よりもバリウム遺残を考えやすくなります。

右下腹部石灰化の鑑別診断

右下腹部に石灰化や高吸収域を認めた場合、虫垂のバリウム糞石以外にも複数の鑑別があります。

1. 尿管結石

右下腹部の高吸収で最も頻繁に鑑別に上がるのが尿管結石です。尿管走行に沿っているか、水腎症や尿管拡張を伴うかを確認します。

虫垂のバリウム糞石は、尿管ではなく盲腸から連続する虫垂内に存在する点が鑑別のポイントです。

2. 静脈石

骨盤内の小石灰化として静脈石もよく見られます。中心部がやや低吸収となる target sign を示すことがあります。

尿管結石との鑑別と同様に、尿管走行との関係、周囲の尿路閉塞所見の有無を確認します。

3. 大腸憩室内のバリウム遺残

バリウムは虫垂だけでなく、大腸憩室内に遺残することもあります。

結腸壁外側に突出する憩室内に高吸収を認める場合は、虫垂ではなく憩室内バリウムを考えます。特にS状結腸や上行結腸の憩室では鑑別に上がります。

4. 腹腔内遊離体、いわゆる腹腔ネズミ

腹腔内遊離体は、脂肪壊死や石灰化を伴う遊離体として認められることがあります。一般に類円形の石灰化として認められることが多く、虫垂を形取るような管状構造とは異なります。

腹部CTで石灰化をみたときの鑑別診断は?

5. リンパ節石灰化

陳旧性炎症などに伴うリンパ節石灰化も鑑別になります。腸管内腔や虫垂内腔との連続性がない点が鑑別のポイントです。

6. 子宮卵管造影後の油性造影剤遺残

女性では、子宮卵管造影後の油性造影剤遺残が腹腔内の高吸収として認められることがあります。

この場合、腸管内ではなく腹腔内に散在する高吸収として認められることが多く、虫垂内に鋳型状に存在するバリウム糞石とは分布が異なります。

虫垂炎との関係

虫垂内にバリウムが遺残していても、必ずしも虫垂炎を起こしているわけではありません。虫垂腫大、壁肥厚、周囲脂肪織濃度上昇、膿瘍形成、腹水などを伴わない場合は、偶発的な遺残バリウムとして扱われることがあります。

一方で、バリウムが虫垂内腔を閉塞することで、通常の糞石と同様に虫垂炎の原因となることがあります。文献上も、バリウム検査後に虫垂内へバリウムが遺残し、急性虫垂炎を発症した症例が報告されています。

バリウム虫垂炎を疑う状況としては、以下のような所見が重要です。

  • 過去にバリウム検査歴がある
  • 虫垂内に非常に高吸収な物質を認める
  • 右下腹部痛、発熱、炎症反応上昇など臨床的に虫垂炎が疑われる
  • CTで虫垂腫大、壁肥厚、周囲脂肪織濃度上昇を伴う

つまり、画像上は「虫垂内のバリウム糞石」を見つけたうえで、虫垂炎所見を伴うかどうかを必ず確認する必要があります。

【保存版】急性虫垂炎のCT所見のポイント!

出典

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