潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC、炎症性腸疾患)とは?
- 疫学:罹患年齢は2峰性。15−25歳の若年層、50−80歳にも小さなピークあり。
- 病理:病理学的には大腸粘膜の広範な潰瘍とびまん性炎症であり、病変は直腸から近位側結腸へと進行。
- 症状:粘血便、下痢、粘液便、腹痛、発熱。
- 分類:直腸限局型、左側大腸型、全大腸型の3つに分類。直腸型では左側-全大腸炎症型と比べて下痢は少なく血便・粘液便が多い。
- 回盲部病変(backwash ileitis)はUCの25%に認められ、しばしばCrohn病との鑑別になる。回盲弁の肥厚と開存による。通常狭窄・潰瘍は認めない。
- 大腸壁の全層に及ぶ重症炎症から神経原性の蠕動障害をきたし、大腸径が拡大した状態を特に「toxic megacolon」といい、潰瘍性大腸炎に合併することが多い。
toxic megacolonをきたす疾患
- 潰瘍性大腸炎
- Crohn病
- サルモネラ腸炎
- 偽膜性腸炎
- 虚血性腸炎
潰瘍性大腸炎の治療
- 臨床症状(排便回数、血便の程度、発熱、頻脈)と検査所見(貧血、赤沈)の6項目からなる重症度(軽症、中等症、重症)に応じた分類を行い、薬物療法を選択して治療を行う。
- 寛解導入後も再燃を予防する為に維持療法を行う。
- 軽症、中等症→ペンタサまたはサラゾピリンの経口投与。
- 改善がななし→中等症→PSL30−40mg/日の経口投与を施行する。
- これで改善ない場合は重症→PSL1〜1.5mg/kgの投与を施行し、明らかな効果が得られたらPSLを漸次減量する。
潰瘍性大腸炎の画像所見
CT画像所見 | |
早期 | ほとんどCTではわからない。 |
亜急性期〜慢性期 | 大腸粘膜肥厚と内腔狭小化。病変は直腸から近位側結腸へと進行。 |
慢性期 | 粘膜固有層・粘膜下層が肥厚。 周囲結腸間膜に結節状・線状陰影を伴う濃度上昇(perirectal fat増生=fibrofatty proliferation) |
症例1 60歳代男性 直腸限局型
腹部造影CTで、直腸に粘膜の肥厚を認めています。
結腸には認めておらず(非提示)、直腸限局型の潰瘍性大腸炎と診断されました。
症例2 10歳代男性 左側大腸型
腹部造影CTで、直腸からS状結腸にかけて全周性の壁肥厚及び造影効果の増強を認めています。
左側大腸型の潰瘍性大腸炎と診断されました。
症例3 50歳代女性 左側結腸型
腹部造影CTで、直腸からS状結腸及び下行結腸にかけて全周性の壁肥厚及び造影効果の増強を認めています。
左側大腸型の潰瘍性大腸炎と診断されました。
症例4 50歳代女性 全結腸型
腹部造影CTで、直腸から上行結腸にかけて全周性の壁肥厚及び造影効果の増強を認めています。
全結腸型の潰瘍性大腸炎と診断されました。
症例5 30歳代女性 全結腸型
腹部造影CTで、直腸から上行結腸にかけて全周性の壁肥厚及び造影効果の増強を認めています。
全結腸型の潰瘍性大腸炎と診断されました。