腸炎の分布と原因の相関について、左半結腸、右半結腸、回盲部、小腸、直腸、びまん性にわけてまとめました。
また腸炎以外で腸管壁肥厚をきたす疾患についてまとめました。
腸炎の分布と原因の相関
右側結腸に好発する腸炎
- サルモネラ
- カンピロバクター
- O-157腸炎
- 薬剤性腸炎(出血性)
- アメーバ腸炎
- 赤痢菌
- 好中球減少性腸炎
左側結腸に好発する腸炎
- 虚血性腸炎
- 偽膜性腸炎
- 潰瘍性大腸炎
- アメーバ腸炎
- 住血吸虫症
- 淋菌
- ヘルペスウイルス
- クラミジア
回盲部の腸炎の鑑別診断
- エルシニア:小児に好発
- 結核
- Crohn病
- 悪性リンパ腫
- 腸炎ビブリオ
- カンピロバクター
小腸炎の鑑別診断
- 血管炎に基づく虚血性腸炎:膠原病(SLE)、血管炎
- 好酸球性腸炎
- Henoch-Schonlein紫斑病
- アニサキス腸炎
- MRSA腸炎
直腸炎の鑑別診断
- アメーバ赤痢
- 偽膜性腸炎
びまん性腸炎の鑑別診断
- サイトメガロウイルス
- 大腸菌
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その他の腸管壁肥厚をきたす疾患
- 治療による直接作用:抗がん剤、NSAIDS、止血塞栓物質、放射線、骨髄移植患者のGVHDなど
- 血管閉塞性の腸管虚血:血栓塞栓症、絞扼性腸閉塞、外傷など
- 悪性腫瘍:腸管長軸に進展した大腸がん、転移性大腸がん、悪性リンパ腫
- 全身浮腫や門脈血流変化:肝硬変、腎不全・透析、うっ血性心不全、低タンパク血症、蛋白漏出性胃腸症、急性膵炎・膵癌
- 消化管吻合部の血流障害
- 血管性病変に伴う肥厚:腸管AVM、APシャント
- 他疾患による腸管への炎症波及:急性虫垂炎、消化管穿孔・子宮付属器感染による腹膜炎、胆道感染、脂肪織炎
- 食中毒(キノコなど)や腐食剤、劇毒物
- 終末期、死線期
画像診断 vol.27 No.7 2007 P892より引用一部改変。
症例 50歳代男性 肝硬変にてフォロー
肝は辺縁鈍で凹凸不整。肝硬変あり。上行結腸から横行結腸に腸管壁肥厚あり。肝硬変に伴う変化が疑われる。
(右側結腸の血流は、上腸間膜静脈→門脈へ還流するため、門脈圧亢進の影響を受けやすいため、右側結腸に壁肥厚を認めることが多いと言われている。ちなみに、左側結腸は、下腸間膜静脈経由で門脈に還流するが、脾腎シャントや短胃静脈など側副路により圧が分散されるため影響を受けにくい。)