多くの医療関係者に聞いてもみなさん苦手意識がある急性虫垂炎の画像診断。
今回はそんな急性虫垂炎の画像診断について動画を交えてまとめました。
ポイントは
- 虫垂の場所をしっかり把握し
- 虫垂を同定すること
- 腫大の有無・周囲の炎症波及の有無をチェックすること
です。
ではいきましょう。
急性虫垂炎(acute appendicitis)
急性虫垂炎の動画講義
中川整骨院だよりより引用
・正常虫垂は鉛筆程度(7mm径)の太さで、長さ2~20cm(平均8cm)で、盲腸下面から出て盲腸の背部を上方に向かう(65%)、下方に向かう(30%)ことが多い。
・症状は典型的には、右下腹部痛、食欲不振、悪心・嘔吐。※典型的には痛み→嘔吐の順番。
・非典型的には消化不良、鼓腸、下痢、全身倦怠感。
※初期は心窩痛(内臓痛)→炎症が進むと右下腹部に限局性疼痛(体性痛)
※通常便秘傾向、穿孔すると直腸刺激症状として下痢
※体温は通常38.5度以下(穿孔すると高熱になる)
・合併症として、膿瘍(abscess)(盲腸周囲膿瘍、横隔膜下膿瘍、Douglas窩膿瘍)や、穿孔し、汎発性腹膜炎から麻痺性イレウスを起こすことあり。
・壁肥厚が高度で炎症が強いのに内腔が虚脱している場合には、穿孔の可能性を考える。
急性虫垂炎のCT所見
①虫垂の炎症による所見
- 外径6mmを超える(正常とのoverlapあり)。
- 壁が厚く(>3mm)、造影効果が強い。壁の層状化。
- 糞石(fecalith)。虫垂結石のこと。
※虫垂炎の1/3に虫垂結石が存在するが、急性腹症の患者に虫垂結石があるだけでは、虫垂炎を疑う根拠にはならない。虫垂結石が存在する場合には、穿孔を伴う確率が高い。
- 壁内ガス
②2次性の炎症所見
- 虫垂周囲(虫垂間膜)の脂肪組織浸潤像(dirty fat sign,fat stranding)
- 腸の壁肥厚(炎症の波及による。arrowhead sign , cecal bar sign)
- 外側円錐筋膜の肥厚。
- 虫垂周囲の液体貯留。
- 周囲腸管の壁肥厚および膿瘍(abscess)形成。
※膿瘍は比較的整でよく造影される壁を有する。虫垂周囲のみでなく、離れた場所、特にdouglas窩にできることもある(douglas窩膿瘍)。
※糞石(虫垂結石)は放っておくと穿孔→腹膜炎となるため、手術適応を示す重要な所見。
※dirty fat signは脂肪ウインドウ(fat window,WW/WL:400/-25HU程度)で見る。※WW=window width,WL=window level
③穿孔を示唆する所見
- 壁外遊離ガス ☆
- イレウスの合併 ☆
- 周囲膿瘍 ☆ ※この3つが特に重要。
- 周囲の限局的蜂窩織炎(dirty fat sign )
- 造影される虫垂壁の欠損
- 虫垂結石の脱出
動画で学ぶ虫垂炎画像(虫垂の腫大:典型例)
▶キー画像
動画で学ぶ急性虫垂炎(典型例②)
動画で学ぶ虫垂炎(穿孔+腹膜炎)
虫垂の同定の仕方
上行結腸を同定
→盲腸先端まで追う
→5,6cm戻って右側結腸の内側から始まる回腸末端同定
→その間に虫垂があるので同定する。
※冠状断がわかりやすいことも多々あるので多方向からthin sliceも用いて観察する。
この他には、とにかく、管状の構造を見つける事がポイントです。
また横断像では全然わからないけど、冠状断(まれに矢状断)なら、一目で同定できるということもしばしばあります。
虫垂炎除外には横断像だけではなく、冠状断(まれに矢状断)も必ず参照するようにしましょう。
虫垂炎の鑑別診断
・回盲部の炎症性疾患(回腸末端炎、Crohn病、PID、盲腸憩室炎等)
→炎症所見の主体が,回盲部側、虫垂のどちらであるかの判断が診断上有用であるが、これらの疾患による炎症が虫垂に及んだ時 は,画像上診断が困難になることは少なくない。
・悪性腫瘍(盲腸癌、虫垂癌)
→虫垂に病変が及ばない限り、虫垂の腫大は認められないが、腫瘍自体が虫垂の閉塞をきたし、炎症の原因となる。
虫垂炎の治療
・圧痛があっても、WBC1万以下や腹膜刺激症状(-)のときは保存的に経過を見る(絶食、補液、抗生剤)。
抗生剤:入院なら
スルバシリン®3g+生食100ml ×2回/日 or セフメタゾン® 1g +生食100ml ×2-3回/日 とか
・腹膜刺激症状+(腹膜炎、穿孔、膿瘍)は緊急手術の適応。
抗生剤:
メロペン®0.5~1g +生食100ml ×2回/日 とか
※嫌気性菌・腸球菌を意識。