先に結論:二次小葉は胸部CT読影の基本単位
- 二次小葉は、小葉間隔壁に囲まれた直径5〜25mmほどの肺の小部屋で、中心に細い気管支(細気管支)と肺動脈、まわり(小葉間隔壁)に肺静脈とリンパ管が走ります
- 陰影がこの小葉のどこにあるかで病気を推定でき、中心(小葉中心性)なら気道から入る病気(気管支肺炎・細気管支炎・過敏性肺炎など)、隔壁・胸膜に沿う(リンパ路性)ならサルコイドーシスや癌性リンパ管症・肺水腫、ばらばら(ランダム)なら粟粒結核や血行性転移を考えます
- 小葉間隔壁や気管支血管束が厚くなる広義間質(リンパ路)の病変は、肥厚の形(平滑・結節状・不整)、場所、左右対称かどうかの順に見て絞ります(Donuru 2024)。心不全による肺水腫は平滑、癌性リンパ管症とサルコイドーシスは結節状になりやすく、癌性リンパ管症は気管支血管束の肥厚が目立ちます(Johkoh 1992)。詳しくは下の「広義間質(リンパ路)が厚くなる病気」の節にまとめました
二次小葉とは?

- 二次小葉とは胸部CTの陰影の分布を理解する上で重要な肺の末梢の構造のことで、小葉間隔壁に囲まれた領域。
- Miller、Reidによる定義がある。
- Miller∋Reidなので、Millerで理解する。
- 多角形〜角錐形で直径5〜25mmほど、3〜25個の細葉を含む(Donuru 2024)。
- 終末細気管支から末梢を細葉という。
- 呼吸細気管支は分岐を重ねて肺胞管、肺胞嚢、肺胞に至る。
- 二次小葉同士は小葉間隔壁で隔てられている。
- 末梢気道と肺動脈が二次小葉の中心的構造。
1)を参考に作図
二次小葉の各部分に含まれる構造
| 部分 | 含まれる構造 |
|---|---|
| 小葉中心部 | 終末細気管支・呼吸細気管支と、伴走する肺動脈の枝(細動脈)、リンパ管 |
| 小葉実質 | 細葉(ガス交換をする肺胞の集まり)と小葉内隔壁 |
| 小葉間隔壁(辺縁) | 肺静脈の枝(細静脈)とリンパ管 |
健常者のCTでは小葉内隔壁は見えず、小葉間隔壁も肺尖部や肺底部で一部見える程度です(Donuru 2024)。
小葉から見た所見の分布
気道病変-実質病変
①小葉中心性
②汎小葉性
間質病変
③小葉辺縁性
④気管支血管束沿い
非小葉性
⑤非小葉性(ランダム)
※以下の疾患の一覧は、その分布をとりうる代表例です。多くの病気は複数の分布をとるため、分布だけで診断が決まるわけではありません。

①小葉中心性病変(Centrilobular distribution)
- 経気道性の病変が主体:経気道感染症、非感染性の気道炎症性病変、吸入性肺病変など
- 小葉辺縁の構造と病変が一定の距離を保つ!!

小葉中心性病変を呈する鑑別疾患
- びまん性汎細気管支炎(DPB)
- びまん性誤嚥性細気管支炎
- 二次性結核(気道散布性)
- NTM(非定型(非結核性)抗酸菌症)
- 細菌による呼吸器感染症とマイコプラズマ肺炎
- 過敏性肺炎(非線維性)
※2020年のATS/JRS/ALAT診断ガイドラインでは、過敏性肺炎(hypersensitivity pneumonitis)を非線維性と線維性の2つの病型に分けて扱う。小葉中心性分布を考えるときは、どちらの病型かも意識しておく。 - アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)
- 膠原病に伴う細気管支病変(関節リウマチやSjögren症候群など)
- 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA):細気管支に生じるアレルギー肉芽腫
- 珪肺/炭坑夫肺
- 溶接工肺
- 呼吸細気管支炎関連間質性肺炎(RB-ILD)
- IgG4関連肺疾患
- 異所性肺石灰化症
など。
小葉中心性の分布についてはこちらに詳しくまとめました。→【肺炎の画像診断】胸部CTにおける小葉中心性分布とは?
②汎小葉性病変(Panlobular distribution)
- 小葉全体に病変が広がる。

汎小葉性病変を呈する鑑別疾患
など
③小葉辺縁性病変(Perilobular distribution)

小葉辺縁性病変を呈する鑑別疾患
※ただし、下3つは他の病変分布が主体。
小葉間隔壁の肥厚は、平滑・結節状・不整に分けると絞り込みやすくなります。平滑な肥厚は最も多いものの特異性は低く、結節状は癌性リンパ管症・サルコイドーシス・珪肺など、不整な肥厚は線維化を示唆します(Donuru 2024)。
④気管支血管周囲性病変(Bronchovascular distribution)
- 気管支血管束の周囲に病変あり。

気管支血管周囲性病変の鑑別疾患
- サルコイドーシス
- 癌性リンパ管症
- 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA、旧Churg-Strauss症候群)
- 肺結核
- マイコプラズマ肺炎
- その他(悪性リンパ腫、白血病の肺浸潤など)
③小葉辺縁性病変(Perilobular distribution)+④気管支血管周囲性病変(Bronchovascular distribution)
この③小葉辺縁性病変(Perilobular distribution)+④気管支血管周囲性病変(Bronchovascular distribution)を合わせたものを広義リンパ路と言います。

広義リンパ路病変にはこちらにまとめました。→広義リンパ路病変の鑑別診断
⑤非小葉性(ランダム)
- ランダムパターンは、粒状影が二次小葉の構造と関係しない分布を示し、血行性散布を呈する疾患で認められる。

ランダム病変の鑑別疾患
- 粟粒結核
- 悪性腫瘍の血行性転移
- リンパ球浸潤性・増殖性肺疾患
- 珪肺/炭坑夫肺
- 肺ランゲルハンス細胞組織球症(LCH、旧称:好酸球性肉芽腫症)
1)胸部疾患のCT診断(医学書)P10図12
広義間質(リンパ路)が厚くなる病気:場所と形で絞る
広義間質(リンパ路)は、気管支血管束の周囲、小葉間隔壁、胸膜下(葉間胸膜を含む)にあたります。ここが厚くなる病気は多いため、次の順に整理すると絞り込みやすくなります(Donuru 2024)。
- 肥厚の性質(平滑・結節状・不整)、分布(びまん性か、上・中・下肺野のどこが優位か、中枢側か末梢側か)、左右対称かどうかを見る
- 随伴所見(結節・腫瘤、すりガラス影、浸潤影、空洞、嚢胞、気道病変、リンパ節腫大、胸水、胸郭外の所見)を確かめる
- 臨床背景(症状、既往歴、危険因子)を考え合わせる
- 以上をあわせて、候補を絞る
肥厚の形から見る
| 形 | 代表的な原因 | ポイント |
|---|---|---|
| 平滑 | 肺水腫、肺胞蛋白症、癌性リンパ管症 | 最も多い形ですが特異性は低いです(Donuru 2024) |
| 結節状 | 癌性リンパ管症、サルコイドーシス、珪肺 | 原因がある程度絞られる形です(Donuru 2024) |
| 不整 | 線維化を伴う肺疾患(サルコイドーシスの線維化、通常型間質性肺炎など) | 線維化による肺構造のゆがみを示唆します(Donuru 2024) |
場所から見る:心不全・癌性リンパ管症・サルコイドーシス
| 病気 | 肥厚の場所と特徴 |
|---|---|
| 心不全による肺水腫 | 小葉間隔壁の平滑な肥厚が、びまん性・両側性に出て、肺実質の濃度上昇を伴います。心拡大と両側の胸水が診断の助けになります。肺水腫と癌性リンパ管症は、小葉間隔壁が厚くなる原因として最もよく遭遇します(Donuru 2024) |
| 癌性リンパ管症 | CTで確かめた20例では、15例で気管支血管束側(軸側の間質)の肥厚が目立ち、小葉間隔壁の肥厚は軽いかありませんでした。広がりはびまん性が4例、限局性が11例でした。3例は両方が厚く、2例は小葉間隔壁側が主体でした(Johkoh 1992)。つまり「隔壁が厚くなければ否定的」とは言えず、気管支血管束の肥厚も確認します。肺癌が疑われた94人では、気管支血管束の肥厚は癌性リンパ管症の診断で感度69%、特異度83%でした(Jreige 2020) |
| サルコイドーシス | リンパ路に沿った(perilymphatic)小さな結節が特徴で、縦隔・肺門のリンパ節腫大を伴います。癌性リンパ管症とともにperilymphaticな結節を示す代表疾患です(Kim 2021、Fujimoto 2025) |
サルコイドーシスと癌性リンパ管症は画像が似るため、がんの既往、症状の経過、片側か両側かなどの臨床情報とあわせて判断します。リンパ路の病変の鑑別は広義リンパ路病変(リンパ路性分布)にもまとめています。
隔壁の肥厚は薄いスライスで見るとわかりやすくなり、HRCTの推奨スライス厚は1〜1.5mmです。胸部X線よりCTの方が隔壁肥厚を見つける感度が高いとされています(Donuru 2024)。
二次小葉でよくある疑問(Q&A)
Q. 二次小葉と細葉の違いは?
A. 細葉は終末細気管支より末梢の、ガス交換をする小さな単位です。二次小葉はその細葉がいくつか集まり、小葉間隔壁で囲まれた、より大きな単位です。
Q. 小葉中心性と小葉辺縁性の違いは?
A. 小葉中心性は小葉の中心(細気管支と肺動脈)に病変があり、胸膜や小葉間隔壁から少し離れて並びます。小葉辺縁性は小葉の縁(小葉間隔壁や胸膜の近く)に病変があり、多角形やアーチ状の陰影になります。
Q. 小葉間隔壁が厚いと言われたら、まず何を考えますか?
A. 最も多い原因は心不全による肺水腫と癌性リンパ管症です。心不全では両側びまん性の平滑な肥厚に心拡大・両側胸水を伴うことが多く、結節状の肥厚ならサルコイドーシスや珪肺も候補になります(Donuru 2024)。
Q. 癌性リンパ管症は、小葉間隔壁が厚くなければ否定できますか?
A. できません。報告された20例では、15例が気管支血管束側の肥厚が主体で、小葉間隔壁の肥厚は軽いかありませんでした(Johkoh 1992)。
関連記事:胸部CT画像を見る上で重要な肺の解剖とは?気道、実質、間質とは?
実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの胸部CTの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。全体の見方は胸部CTの縦隔の解剖にまとめています。
あわせて読みたい:α1アンチトリプシン欠損症とは
参考文献
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- Jennette JC, Falk RJ, Bacon PA, et al. 2012 revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Vasculitides. Arthritis Rheum. 2013;65(1):1-11. PubMed
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- Raoof S, Amchentsev A, Vlahos I, et al. Pictorial essay: multinodular disease: a high-resolution CT scan diagnostic algorithm. Chest. 2006;129(3):805-15. PubMed
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- Donuru A, Torigian DA, Knollmann F. Uncommon Causes of Interlobular Septal Thickening on CT Images and Their Distinguishing Features. Tomography. 2024;10(4):574-608. PubMed
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- Johkoh T, Ikezoe J, Tomiyama N, et al. CT findings in lymphangitic carcinomatosis of the lung: correlation with histologic findings and pulmonary function tests. AJR Am J Roentgenol. 1992;158(6):1217-22. PubMed
- Jreige M, Dunet V, Letovanec I, et al. Pulmonary Lymphangitic Carcinomatosis: Diagnostic Performance of High-Resolution CT and (18)F-FDG PET/CT in Correlation with Clinical Pathologic Outcome. J Nucl Med. 2020;61(1):26-32. PubMed
- Kim J, Dabiri B, Hammer MM. Micronodular lung disease on high-resolution CT: patterns and differential diagnosis. Clin Radiol. 2021;76(6):399-406. PubMed
- Fujimoto K, Chikasue T, Zaizen Y, et al. Imaging of Diseases Involving Pulmonary Lymphatics: Focus on Pulmonary Sarcoidosis. Semin Ultrasound CT MR. 2025;46(4):325-342. PubMed
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