
先に結論:縦隔は「気管」と「大動脈」を目印に、上から6つの高さに分けて覚えると整理できます。
| 高さ(レベル) | 見える主な構造 |
|---|---|
| ①胸郭入口 | 気管・食道・甲状腺下極・総頸動脈・鎖骨下動脈・内頸静脈 |
| ②腕頭静脈・大動脈弓の上 | 左腕頭静脈(横走)・右腕頭静脈・腕頭動脈・左総頸動脈・左鎖骨下動脈 |
| ③大動脈弓・奇静脈弓 | 大動脈弓(気管の左)・上大静脈・奇静脈弓(気管の右)・胸腺/前縦隔脂肪 |
| ④気管分岐・肺動脈幹 | 左右主気管支・上行/下行大動脈・肺動脈幹・左右肺動脈 |
| ⑤左房・肺静脈 | 左房(心臓の一番後ろ)・肺静脈・大動脈基部・右房・右室流出路 |
| ⑥心室・下大静脈 | 右室・左室・心室中隔・下大静脈・冠状静脈洞・食道・奇静脈 |
実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの胸部CT(縦隔条件)の正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。

画像診断cafe「胸部CTの正常解剖」の画面(縦隔条件・大動脈弓の少し下の高さ)。縦隔・肺野・骨の条件を切り替えられます
縦隔条件とは?まず押さえる基本
縦隔条件(mediastinal window)は、血管・心臓・リンパ節・脂肪などの軟部組織を見分けやすくした表示です。肺野条件では真っ黒に見える肺は、縦隔条件では見えにくくなる代わりに、縦隔の中身がよく見えます。縦隔条件の考え方は胸部CTの縦隔条件とは?正常解剖ツールでも解説しています。
- 空気は真っ黒、脂肪は黒っぽい灰色(CT値はマイナス)、水は0付近、血液や筋肉は水より少し白く見えます。
- 造影CTでは動脈・静脈が白く光るため、血管とリンパ節を区別しやすくなります。単純CTでは血管もリンパ節も同じような灰色なので、連続するスライスで管としてつながるかで判断します。
- 縦隔の区分は、CTの構造を境界にした3区分(血管前・臓器・椎体傍)が広く使われています(Carter 2017)。詳しくは縦隔の区分(前・中・後縦隔)とは?へ。
①胸郭入口(thoracic inlet)の高さ
首から胸へ移る高さです。中央に丸い黒い気管(trachea)があり、ここが最初の目印です。
- 食道(esophagus):気管のすぐ後ろ、やや左。中に少し空気が入っていることがあります。
- 甲状腺下極:気管の左右に、造影前でも白っぽく見える組織です(ヨードを含むため)。
- 動脈:気管の左右に総頸動脈(common carotid artery)、その外側後方に鎖骨下動脈(subclavian artery)。
- 静脈:内頸静脈(internal jugular vein)が外側前方にあり、太さは左右差が出やすい構造です。
②腕頭静脈と大動脈弓の枝の高さ
鎖骨の内側の後ろあたりで、内頸静脈と鎖骨下静脈が合流して腕頭静脈(brachiocephalic vein)になります。
- 左腕頭静脈:胸骨のすぐ後ろを、左から右へ横に長く走ります。横断像で細長い管として見えるのが特徴です。
- 右腕頭静脈:ほぼ縦に下りるため、気管の右前に丸く見えます。
- 大動脈弓の3本の枝:右前から左後ろに向かって、腕頭動脈(brachiocephalic trunk)、左総頸動脈、左鎖骨下動脈が並びます。
左右の腕頭静脈の走行は無名静脈と腕頭静脈は同じ?左右の腕頭静脈の走行で画像つきで確認できます。
③大動脈弓・奇静脈弓の高さ
| 構造 | 見分け方 |
|---|---|
| 大動脈弓(aortic arch) | 気管の左側を、前から後ろへ斜めに走る太い管。横断像では細長い楕円 |
| 上大静脈(SVC) | 気管の右前にある丸い静脈。左右の腕頭静脈が合流してできる |
| 奇静脈弓(azygos arch) | 気管の右側を、後ろから前へ回り込んで上大静脈の後ろに合流 |
| 胸腺・前縦隔脂肪 | 大血管の前。若い人では胸腺の軟部組織、年齢とともに脂肪に置き換わる |
奇静脈弓は気管の右に「こぶ」のように見えるため、リンパ節と間違えやすい構造です。上下のスライスで、背中側の奇静脈から続いているかを追うのがコツです。走行は奇静脈とは?走行と半奇静脈・奇静脈弓の解剖で詳しく説明しています。
大動脈弓の少し下には、大動脈と肺動脈のあいだの脂肪の領域(大動脈肺動脈窓、aortopulmonary window)があり、左反回神経が通ります。縦隔の神経は横隔神経・迷走神経・反回神経の走行とCT画像解剖にまとめています。
④気管分岐(carina)と肺動脈幹の高さ
- 気管分岐:気管が左右の主気管支(main bronchus)に分かれます。ここから下は、大動脈が前の上行大動脈と後ろの下行大動脈の2つの丸に分かれて見えます。
- 肺動脈幹(main pulmonary artery):上行大動脈の左前にある太い血管。左右に分かれ、右肺動脈は上行大動脈と上大静脈の後ろを右へ、左肺動脈は左主気管支の上を越えて後ろへ回ります。
- 肺動脈幹の太さは、地域住民の非造影CTで男性29mm・女性27mmが正常上限の目安とされ、上行大動脈との比は0.9が目安とされています(Truong 2012)。
上行大動脈の後ろにある三日月形の水の濃さの構造は、心膜上陥凹(superior pericardial recess)という心膜腔の一部で、リンパ節と見誤りやすいところです。
⑤左房・肺静脈の高さ
- 左房(left atrium):心臓の中で一番後ろにあり、すぐ後ろに食道と下行大動脈が接します。
- 肺静脈(pulmonary vein):左右から左房に入る管で、通常は左右2本ずつの計4本です。肺動脈と違い、気管支と並ばずに左房へ向かうのが見分けのコツです。
- 大動脈基部:心臓の中央付近。右前に右室流出路(肺動脈へつながる部分)、右に右房が見えます。
⑥心室・下大静脈の高さ
- 右室(right ventricle):胸骨のすぐ後ろ、心臓の一番前。
- 左室(left ventricle):左後ろにあり、壁が右室より厚く見えます。あいだに心室中隔。
- 下大静脈(IVC):肝臓の上端付近で右房に入ります。近くで冠状静脈洞(coronary sinus)が右房へ注ぎます。
- 心臓の後ろには食道、椎体の右前に奇静脈、左に下行大動脈が続きます。
間違えやすい構造と正常変異
- 左上大静脈遺残(persistent left SVC):大動脈弓の左側に縦に走る静脈が見えます。偶然見つかる先天的な変異で、誤読しないために知っておきたい構造です(Sonavane 2015)。
- 右鎖骨下動脈起始異常(aberrant right subclavian artery):大動脈弓から最後に出て、食道の後ろを右へ回ります。CT血管造影6833人の検討で0.47%に見られました(Krupiński 2019)。
- 食道内の空気や液体:食道を腫瘤やリンパ節と見誤らないよう、上下に連続する管かを確認します。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 単純CTでも血管とリンパ節は区別できますか?
多くの場合は可能です。血管は上下のスライスで管としてつながり、リンパ節は数スライスで途切れる「粒」です。迷うときは造影CTで確認します。
Q2. 健診のCTで「縦隔に異常なし」とは何を見ているのですか?
大血管の太さ、心臓の大きさ、リンパ節の腫れ、腫瘤の有無などを、ここで紹介した高さごとに確認しています。
Q3. 何から覚えればよいですか?
まずは気管・大動脈弓・肺動脈幹・左房の4つです。この4つの高さがわかると、残りの血管は位置関係で自然に決まっていきます。
まとめ
縦隔条件は「気管→大動脈弓→気管分岐と肺動脈幹→左房→心室」と上から順に目印を追うと、血管の名前がつながって見えてきます。実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの胸部CT(縦隔条件)の正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。スマホでは無料のiPhoneアプリ「画像診断cafe(胸部CTの縦隔解剖も確認できます)」も使えます。
参考文献
- Carter BW, Benveniste MF, Madan R, et al. ITMIG Classification of Mediastinal Compartments and Multidisciplinary Approach to Mediastinal Masses. Radiographics. 2017;37(2):413-436. PubMed
- Truong QA, Massaro JM, Rogers IS, et al. Reference values for normal pulmonary artery dimensions by noncontrast cardiac computed tomography: the Framingham Heart Study. Circ Cardiovasc Imaging. 2012;5(1):147-54. PubMed
- Sonavane SK, Milner DM, Singh SP, et al. Comprehensive Imaging Review of the Superior Vena Cava. Radiographics. 2015;35(7):1873-92. PubMed
- Krupiński M, Irzyk M, Moczulski Z, et al. CT evaluation of aberrant right subclavian artery: anatomy and clinical implications. Cardiol Young. 2019;29(2):128-132. PubMed
- Sussmann AR, Ko JP. Understanding chest radiographic anatomy with MDCT reformations. Clin Radiol. 2010;65(2):155-66. PubMed
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