先に結論:肺アスペルギルス症の種類とCT所見

アスペルギルス(カビの一種)による肺の病気は、その人の免疫の状態によって姿が大きく変わります。

種類 かかりやすい人 CTの特徴
単純性肺アスペルギローマ(菌球) 免疫は正常。結核の治った後の空洞などがある人 空洞の中の丸いかたまり(fungus ball)と三日月状の空気(air crescent)、体位で動く
慢性進行性肺アスペルギルス症 COPD・結核後など肺に古い病気がある人 空洞の壁が厚くなる・増える、周りの浸潤影が数か月かけて広がる
ABPA(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症) 喘息の人 中枢の気管支拡張と、粘液栓(高吸収の粘液が詰まる)
侵襲性肺アスペルギルス症 白血病・移植後など免疫が強く低下した人 結節の周りのすりガラス影(halo sign)、のちに空洞化(air crescent)。急速に進み命にかかわる

肺アスペルギルス症(Pulmonary aspergillosis)

アスペルギルスは宿主の免疫状態により異なる画像所見を呈します。

合計、6つに分けられます。分類してそれぞれの臨床的特徴、画像所見を押さえましょう。

肺アスペルギルス症の分類

肺アスペルギルス症総論

  • 通常、既存の肺疾患や何らかの免疫異常(過敏症または免疫抑制)を呈する患者に起こる。それは、好酸球性肺疾患または過敏性肺臓炎の様々な型と関係している場合がある。
  • 喘息では、気管支拡張と粘液栓塞(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)を伴う過敏性反応を引き起こすこともある。既存の空洞に棲みつき、菌腫を形成することもある。
  • COPDのような基礎疾患を有する患者では、慢性壊死性アスペルギルス症または半侵襲性肺アスペルギルス症を引き起こすこともある。
  • 免疫抑制者では、アスペルギルスが血管に侵入して、出血性梗塞(血管侵襲性肺アスペルギルス症)を引き起こしたり、気管気管支炎、細気管支炎または肺炎(気道侵襲性肺アスペルギルス症)を引き起こすことがある。
  • しばしば、1人の患者でアスペルギルス属関連肺疾患のこれらの様々な徴候が重複することがある。

では各論にはいります。

慢性肺アスペルギルス症(CPA:chronic pulmonary aspergillosis)

  • 単純性肺アスペルギローマ
  • 慢性進行性肺アスペルギルス症

に大きく分類される。

単純性肺アスペルギローマ(SPA:simple pulmonary aspergilloma)

いわゆるfungus ballを呈するアスペルギルス症であり、免疫正常の人に発症します。
  • 正常免疫能の患者に発症し、既存の空洞(結核やサルコイドーシス)や拡張した気管支、ブラ内にアスペルギルスが侵入して菌球(fungus ball,mycetoma)を形成する。
  • 先行する疾患として結核治癒後の硬化性空洞の頻度高い。他、肺切除後や線維嚢胞性病変を形成する様々な疾患がbaseとなる。
  • 無症状例が多いが、血痰・喀血を来すこともある。
  • 現在では、慢性肺アスペルギルス症の一型に分類される。
単純性肺アスペルギローマの画像所見
  • 胸部単純X線写真およびCTでは、空洞内に菌球による円形ないし類円形の結節・腫瘤影を認め、meniscus sign(空洞の大部分を菌球が占拠した場合、空洞と菌球との隙間は三日月状の透亮像として認められる。
  • air crescent signとも呼ばれる)が見られることも多い。
  • 体位変換により菌球の移動が観察される。

※air crescent signは侵襲性アスペルギルス症でも認められるが、意味はこのケースとは全く異なる。

 

症例 70歳代男性

aspergillomas

両側肺尖部の空洞内にfungus ballを認めています。

症例 40歳代男性

aspergillomas1

fungus ballが見られます。

免疫不全でのアスペルギルス症

ここからが免疫不全のアスペルギルス症です。免疫がどの程度低下しているかにより、慢性壊死性か侵襲性かに分類されます。
  • どの免疫不全患者にも発症する可能性あり。
  • 特に、癌化学療法中の患者、あるいは移植患者に多い。
  • 結節を呈する場合が多い。
  • 免疫状態、および既存の肺の状態によって疾患が異なる。

免疫中等度低下

→半侵襲性肺アスペルギルス症(Semi-invasive aspergillosis)= 慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA:chronic progressive pulmonary aspergillosis)

免疫高度低下

→侵襲性肺アスペルギルス症(Invasive aspergillosis)

  • 血管侵襲性肺アスペルギルス症(angio-invasive aspergillosis)
  • 気道侵襲性肺アスペルギルス症(airway-invasive aspergillosis)

慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA:chronic progressive pulmonary aspergillosis)

  • CNPA:chronic necrotizing pulmonary aspergillosis。なお、ERS/ESCMIDの慢性肺アスペルギルス症ガイドライン(2016年)では、CNPAは亜急性侵襲性肺アスペルギルス症(subacute invasive pulmonary aspergillosis)と呼ばれ、3か月未満で進行して中等度の免疫低下患者にみられる病型として、侵襲性アスペルギルス症に準じて治療するとされています。慢性肺アスペルギルス症で最も多いのは慢性空洞性肺アスペルギルス症(CCPA)です。
  • 侵襲性肺アスペルギルス症が急性発症なのに対して、こちらは慢性に経過する。
  • 典型的には緩徐に進行する上葉の異常を認める。
  • 罹患しやすい人・リスクファクター:TB、COPD、線維症または塵肺などの慢性肺疾患、低栄養、DM、アルコール中毒、高齢、ステロイド治療。=軽度〜中等度の免疫低下状態(low grade immunocompromised patient)、その他、肺切除後、肺気腫、陳旧性肺結核、放射線治療後など。
  • 患者の免疫状態がやや低下していることがあるが、侵襲性アスペルギルス症ほど免疫不全は認めない。
  • 病理学的にはTBに類似。肉芽腫性炎症、壊死、線維化が併存。
  • 症状:非特異的で、喀痰、咳嗽、体重減少、発熱、喀血など
  • 臨床経過は、しばしば数週間〜数年かけてゆっくり進行する空洞形成を伴う上葉のconsolidationで、TBとの区別は困難である。
  • 進行性であり、予後不良のことも少なくないので注意。
慢性進行性肺アスペルギルス症の画像所見

【CT所見】

  • 結核に類似する上葉の浸潤影
  • 1つ以上の大きな結節
  • 浸潤影または結節→空洞化→菌球形成(aspergilloma:菌球内部は高吸収のことあり。)※菌球型アスペルギルスからの移行もあり。
  • 腔内菌腫
  • 胸膜肥厚
  • 数ヶ月から年単位で緩徐に増悪するため、しばしば診断が遅れる原因となる。
  • 非結核性抗酸菌症の合併感染もあり。

症例 60歳代男性

CPPA CT findings1

右肺尖部に空洞性病変及び胸膜肥厚あり。

慢性壊死性アスペルギルス症としてフォローされています。

症例 60歳代男性

Semi-invasive aspergillosis

RadioGraphics, Jul 2001, Vol. 21: 825–837, 10.1148より引用

侵襲性アスペルギルス症invasive aspergillosis

  • 好中球減少・機能低下、重度の細胞性免疫低下の患者では致死的となる。
  • 急性骨髄性白血病などの血液疾患、造血幹細胞あるいは固形臓器移植後、大量ステロイド投与などにより、著明な好中球減少(好中球500/mm3未満が10日を超えて続く)や高度の細胞性免疫低下で感染の危険性が増大する(Donnelly 2020)。
  • 症状は発熱、咳嗽、血痰、呼吸困難、胸膜痛など非特異的。高度の好中球減少では、症状が現れないことあり。
  • 発症から死亡までの期間が短く、予後不良。肺炎発症から10日以内に抗真菌薬を始めた場合の死亡率は41%、10日より遅れた場合は90%と報告されている。
  • 早期診断・治療が重要だが、喀痰からの検出率が低く、組織学的診断も困難なことが多い。
  • 胸部X線では診断が困難であるため、IPAが疑われれば、CTをすぐに施行する必要あり。
  • 血清マーカー:アスペルギルス・ガラクトマンナン、β-Dグルカン
  • 血管侵襲型(angio-invasive)と気道侵襲型(air way invasive)の2型があるが、前者の頻度が高い。しばしば両者は混在。

血管侵襲型アスペルギルス症(angio-invasive aspergillosis)

  • 病理:菌体の肺動脈浸潤による出血性梗塞。

▶CT所見:

  • 単発性または多発性結節、浸潤影、胸膜面を底辺とする楔状影。
  • CT halo sign : 結節周囲のすりガラス影。周囲のすりガラス影=haloは出血を反映。早期。好中球減少患者の侵襲性肺アスペルギルス症25例では、診断日のCTで24例にhalo signがみられましたが、3日後68%、7日後22%、14日後19%と短期間で消えていきました(Caillot 2001)。そのため疑ったら早くCTを撮ることが大切です。

※但し、CT halo signはさまざまな疾患で見られるため、これをみたら→angio-invasiveアスペルギルスというわけではない。
例)細菌性肺炎、肺癌、CMV肺炎、カンジダ症、リンパ腫、クリプトコッカス、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)。

症例 40歳代男性

invasive aspergillosis

RadioGraphics, Jul 2001, Vol. 21: 825–837, 10.1148より引用

症例

CT halo sign

RadioGraphics, Nov 1997, Vol. 17: 1359–1371, 10.1148より引用

  • Air crescent sign : 白血球の回復により壊死組織の吸収・排出が進行し、三日月状(スリット状)の空洞病変が認められる。感染からの回復を示唆する所見。後期に見られる所見で、診断から3日後8%、7日後28%、14日後63%と増えていきました(Caillot 2001)。遅く現れ、侵襲性アスペルギルス症に特異的ではない所見とされます(Donnelly 2020)。

Air crescent sign

RadioGraphics, Nov 1997, Vol. 17: 1359–1371, 10.1148より引用

気道侵襲型アスペルギルス症(airway-invasive aspergillosis)

  • 菌体の深部基底膜への浸潤:気管支壁の破壊。

▶CT所見:

  • 他の病原体による気管支肺炎との鑑別は困難。
  • 斑状気管支周囲浸潤影(気管支肺炎の形態)
  • 境界不明瞭な結節、小葉中心性結節影、またはtree-in-bud
  • すりガラス状陰影、大葉性浸潤影

airway-invasive aspergillosis

RadioGraphics, Nov 1997, Vol. 17: 1359–1371, 10.1148より引用

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

  • アスペルギルスに対して生体のアレルギー反応を生じることにより、気管支喘息や肺浸潤が生じる病態。
  • Ⅰ、Ⅲ、Ⅳ型アレルギーを生じる。
  • 診断は血清総IgE・アスペルギルス特異的IgE・沈降抗体・好酸球増多と画像所見などを組み合わせて行い、喀痰からのアスペルギルス検出は補助となる。2024年に改訂されたISHAM-ABPAワーキンググループのガイドラインでは、素因(喘息など)や合致する臨床・画像所見がある患者で、真菌感作の証明と血清総IgE 500 IU/mL以上を必須とし、さらに真菌特異的IgG、末梢血好酸球増多、示唆的な画像所見のうち2つを満たすものをABPAと診断する。総IgEが正常でABPA様の像を示し、原因真菌が喀痰から繰り返し培養される場合はABPMを考える。
  • 治療はステロイド。
  • 他の真菌でも同様の病態が起こり、アスペルギルス以外の真菌によるものはアレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)と呼ばれる。
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の画像所見
  • 中枢側の気管支拡張症が特徴的(多くは両側)。ただし末梢まで拡張が及ぶこともまれではありません(Agarwal 2024)。
  • 粘液栓もしばしば見られGloved finger sign(finger-in-glove sign)と呼ばれ、カルシウム塩やマンガンを反映して高吸収域を示すことが多い。
  • また粘液栓は細気管支レベルにも生じ、小葉中心性の結節として認められることがある。
ABPAのCTで押さえるポイント(高吸収粘液栓:HAM)
  • 高吸収粘液栓(high-attenuation mucus:HAM)は、単純CTで粘液栓が傍脊柱筋より白く(濃く)見えるものと定義されています(Agarwal 2024)。
  • HAMは感度35%・特異度100%で、ABPAに特徴的(pathognomonic)とされ、ほかの基準を満たさなくてもABPAの診断を確定できるとされています(Agarwal 2024)。
  • CT値では70HUが高吸収粘液栓の目安とされ、100HUを超える例では血清IgEなどの値も高い傾向がありました(Phuyal 2016)。
  • 診断は、喘息などの素因がある人で、真菌への感作と血清総IgE 500 IU/mL以上を必須とし、真菌特異的IgG・末梢血好酸球増多・示唆的な画像所見のうち2つを満たすものです(Agarwal 2024)。CTは気管支拡張や粘液栓の評価のため診断時に撮ることがすすめられています(Agarwal 2024)。

症例 20歳代女性 慢性咳嗽

引用:Radiopaedia

両側中枢側優位に気管支拡張を認めています。

左上葉の気管支に高吸収な粘液栓を認めその末梢は無気肺となっています。

右下葉気管支にも高吸収な粘液栓を認め、その周囲には小葉中心性粒状影を認めています。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)による閉塞性肺炎を強く示唆する所見で、実際ABPAと診断されました。

肺アスペルギルス症でよくある疑問(Q&A)

Q. アスペルギローマとアスペルギルス症はどう違いますか?
A. アスペルギルス症は、アスペルギルスによる病気全体の呼び名です。アスペルギローマ(菌球)はそのうちの1つで、もともとある空洞の中でアスペルギルスがかたまり(菌球)になった状態です。免疫が正常な人に多く、侵襲性肺アスペルギルス症のように組織や血管に入り込むものとは別の病型です。

Q. フンガスボール(fungus ball)とは何ですか?
A. 菌糸が絡まってできた「菌の球」で、菌球ともいいます。CTでは空洞の中の丸いかたまりと、そのまわりの三日月状の空気(meniscus sign / air crescent sign)として見え、体の向きを変えると動きます。

Q. finger-in-glove signとは何ですか?
A. 拡張した気管支に粘液が詰まり、手袋をはめた指のようなY字・V字の枝分かれした棒状の影に見える所見です。ABPAでよくみられ、粘液栓が高吸収ならABPAの可能性がさらに高くなります(Agarwal 2024)。

長引く咳・血痰・発熱などの気になる症状があれば、医療機関を受診してください。

関連記事:真菌性副鼻腔炎の画像診断|菌球(アスペルギルス)・急性浸潤性・アレルギー性のCT・MRI

参考文献

  1. Franquet T, Müller NL, Giménez A, et al. Spectrum of pulmonary aspergillosis: histologic, clinical, and radiologic findings. Radiographics. 2001;21(4):825-37. PubMed
  2. Denning DW, Cadranel J, Beigelman-Aubry C, et al. Chronic pulmonary aspergillosis: rationale and clinical guidelines for diagnosis and management. Eur Respir J. 2016;47(1):45-68. PubMed
  3. von Eiff M, Roos N, Schulten R, et al. Pulmonary aspergillosis: early diagnosis improves survival. Respiration. 1995;62(6):341-7. PubMed
  4. Agarwal R, Sehgal IS, Muthu V, et al. Revised ISHAM-ABPA working group clinical practice guidelines for diagnosing, classifying and treating allergic bronchopulmonary aspergillosis/mycoses. Eur Respir J. 2024;63(4):2400061. PubMed
  5. Donnelly JP, Chen SC, Kauffman CA, et al. Revision and Update of the Consensus Definitions of Invasive Fungal Disease From the European Organization for Research and Treatment of Cancer and the Mycoses Study Group Education and Research Consortium. Clin Infect Dis. 2020;71(6):1367-1376. PubMed
  6. Caillot D, Couaillier JF, Bernard A, et al. Increasing volume and changing characteristics of invasive pulmonary aspergillosis on sequential thoracic computed tomography scans in patients with neutropenia. J Clin Oncol. 2001;19(1):253-9. PubMed
  7. Phuyal S, Garg MK, Agarwal R, et al. High-Attenuation Mucus Impaction in Patients With Allergic Bronchopulmonary Aspergillosis: Objective Criteria on High-Resolution Computed Tomography and Correlation With Serologic Parameters. Curr Probl Diagn Radiol. 2016;45(3):168-73. PubMed

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