
ニューモシスチス肺炎(PCP・カリニ肺炎)とは、真菌のニューモシスチス・イロベチーが、免疫の落ちた人の肺で増えて起こる肺炎です。ステロイドや免疫抑制薬の治療中に両側のすりガラス影を見たとき、まず名前を挙げたい病気です。研修医のハジメくんと一緒に、原因・症状・β-Dグルカンなどの検査と、CTの見え方を整理します。
先に結論
- ニューモシスチス肺炎(PCP・カリニ肺炎)とは、真菌Pneumocystis jiroveciiによる肺炎。HIV感染症・ステロイドや免疫抑制薬・抗がん剤の治療中・臓器移植後など、細胞性免疫が落ちた人に起こります。
- CTは両側のすりガラス影が主役。肺門側・上肺優位、胸膜直下が保たれ、正常部分とモザイク状に混ざるのが典型です。
- β-Dグルカン・LDH・KL-6は上がりますが、β-Dグルカンは陰性でも否定しきれず、陽性でも確定できません。HIVのない人のPCPは急に重くなりやすいので、画像と臨床像で早めに疑います。
目的から読む: PCPとは・原因 / 症状・HIVとの違い / 検査(β-Dグルカン) / CT画像所見 / HIV患者の嚢胞・気胸 / 鑑別診断 / カリニ肺炎との違い・感染経路
ニューモシスチス肺炎(PCP・カリニ肺炎)とは? 原因と起こりやすい人
ふだんは問題にならない真菌(カビの仲間)Pneumocystis jiroveciiが、T細胞による免疫(細胞性免疫)が落ちた人の肺で増えて起こる肺炎です。日和見感染症の代表で、以前の呼び名は「カリニ肺炎」です。
ニューモシスチス肺炎(PCP:Pneumocystis pneumonia)
- 以前Pneumocystis cariniiと呼ばれていた、真菌による肺炎です(原虫ではありません)。
- ヒトに感染する病原体はPneumocystis jirovecii(ニューモシスチス・イロベチー)と名付けられています。
- 免疫不全の人(免疫抑制療法・化学療法中、臓器移植後、AIDS、ステロイド投与中、血液のがん、膠原病などの自己免疫疾患)に起こります。特にT細胞性免疫が落ちた状態(AIDSやATLなど)で起こりやすくなります。
- AIDS患者では、CD4陽性細胞が200/mm3を下回ると起こりやすくなります(Roux 2014)。ST合剤の予防投与や抗HIV療法が普及する前は、AIDS患者の多くが経過中にPCPを発症していました。
- 病理では、肺胞の中に好酸性・泡沫状の滲出物がたまり、肺胞壁が厚くなります。重いとびまん性肺胞障害(DAD)になります。

ニューモシスチス肺炎の症状と経過: HIVと非HIVの違い
主な症状は呼吸困難・乾いた咳・発熱で、特に息苦しさが目立ちます。HIVのある人は週の単位でゆっくり、HIVのない人は急に発症して呼吸不全になりやすいのが大きな違いです。
- 主訴は、呼吸困難、乾性咳嗽(から咳)、発熱です。特に呼吸困難が目立ちます。
- AIDS患者は緩やかに発症することが多く、症状も比較的軽めです。肺の中の病原体が非常に多く、喀痰や気管支肺胞洗浄液(BALF)から菌を見つけるのが比較的容易です。経過は亜急性〜慢性(週の単位)です。
- 非AIDS患者は急に発症し、呼吸困難も強くなります。肺の中の菌の量が少ないため見つけにくく、確定診断が難しくなります。
HIV患者と非HIV患者のニューモシスチス肺炎の違い
| HIV患者(AIDS) | 非HIV患者 | |
|---|---|---|
| 発症 | 比較的ゆっくり、症状は比較的軽い | 急に発症し、呼吸不全になりやすい |
| 肺の中の菌の量 | 多い(喀痰・BALFで見つけやすい) | 少ない(見つけにくい) |
| LDHの上昇 | 73% | 40% |
| 人工呼吸 | 23% | 46% |
| 入院中の死亡率 | 13% | 37% |
LDH・人工呼吸・死亡率の数字は、HIV患者と非HIV患者を比べた1施設の横断研究(Rego de Figueiredo 2019)。非HIV患者のPCPの死亡率は最大50%とされます(Rhoads 2024)。

- 間質性肺炎にステロイドなどの免疫抑制薬が使われているときに起こることもあり、間質性肺炎の増悪のほかに鑑別に入れる必要があります。
- 関節リウマチに広い範囲のすりガラス影が出たときは、PCPとMTXによる肺障害を鑑別に挙げます。
- CMV肺炎のほか、結核、非結核性抗酸菌症、ほかの真菌症を合併することもあります。感染は、体の中にいた菌の再燃と、気道からの新しい感染の両方があると考えられています。
ニューモシスチス肺炎の検査: β-Dグルカン・LDH・KL-6と確定診断
血液ではβ-Dグルカン・LDH・KL-6が上がります。確定診断の基本は、喀痰・BALF・組織などで菌体を確認することです。PCRによる遺伝子の検出も診断に役立ちますが、保菌でも陽性になるため、症状・CT所見などと合わせて判断します。β-Dグルカンは感度が高い検査ですが、PCPだけで上がるものではありません。
- LDH↑、KL-6↑、β-Dグルカン↑(β-Dグルカンは診断の手がかりとして有用ですが、PCPに特異的ではありません)。
- 確定診断は、BALF、TBLBなどからP. jiroveciiの菌体を見つけることです。
- PCR法による診断も行われます。感度は高い一方、症状のない人が菌を持っている(保菌)こともあるため(Vera 2021)、陽性の意味はCT所見や臨床像と合わせて考えます。
- 血清β-Dグルカンのメタ解析(23研究)では感度91%・特異度79%で、感度はHIV患者94%に対し非HIV患者86%と低めでした(Del Corpo 2020)。検査前確率が高い患者では陰性でもPCPを否定しきれず、陽性だけでも確定できないため、CT所見や臨床像と合わせて判断します。
- 治療は抗菌薬(ST合剤)が第一選択で、ほかにペンタミジンなどが使われます。

ニューモシスチス肺炎のCT画像所見: 両側のすりガラス影と胸膜下の温存
典型は両側・左右対称のすりガラス影で、肺門側・上肺に強く、胸膜直下は保たれ、病変部と正常部がモザイク状に混ざります。見る順番は、①両側か ②どこに強いか(肺門側・上肺) ③胸膜直下が残るか ④正常部との境目、です。
画像所見
- 両側対称性で、上肺野の肺門側に優位なすりガラス影(肺胞内の滲出物を反映)です。病変部と非病変部が混ざるモザイクパターンを示し、胸膜下は保たれます。
- 汎小葉性の分布(二次小葉が1つ丸ごと染まる形)を示します。
- ときにコンソリデーションを示し、好中球性の炎症やARDSによると考えられています。
- 経過とともに、小葉間隔壁肥厚や網状影(crazy-paving pattern)がすりガラス影と一緒に見られることがあります。
広範なすりガラス影と胸膜直下の温存。代表的な所見を単純化した模式図です。参考:Nambu A 2014。比較図全体を見る


- いちばん多い所見はびまん性のすりガラス影です(Kanne 2012)。小葉中心性陰影や浸潤影が主体になることは少ない所見です。
- 両側のすりガラス影を見たときに、PCPを疑ってレポートに書くことが大事です。
- ときに見られる所見:気管支壁肥厚、小葉中心性陰影、嚢胞、浸潤影、結節影、線状・網状影など(これらの所見だけでは診断できません)。
- 胸水、肺門リンパ節腫大はまれです。

症例 50歳代男性 腎移植後、息切れ

引用:Radiopaedia
両側の中枢側と上肺に優位な、モザイク状のすりガラス影を認めます。
ニューモシスチス肺炎(PCP:Pneumocystis pneumonia)を疑う所見です。PCRで確定診断されました。
症例 動画によるPCPの2症例
HIV患者のニューモシスチス肺炎: 嚢胞と気胸
AIDS患者のPCPでは、すりガラス影に加えて両側・多発・上葉優位の嚢胞が見られることがあり、嚢胞が破れて気胸を起こすことがあります(Kanne 2012)。
AIDS患者における画像の特徴
- 一部の症例で嚢胞があります。両側性、多発性で、上葉優位です。
- 嚢胞が見られる場合、気胸を伴うことがあります。逆に、AIDS患者の気胸を見たときには、ニューモシスチス肺炎を疑います。
- 亜急性〜慢性(週の単位)の経過で発症します。一方、HIVのない人では急性です。
- 入院中の死亡率は、HIV患者13%に対し非HIV患者37%と、非HIV患者で高くなっていました(Rego de Figueiredo 2019)。
症例 HIV陽性患者のPCP画像所見2症例

ニューモシスチス肺炎の鑑別診断: 両側のすりガラス影をきたす病気
両側のすりガラス影は、CMV肺炎・肺水腫・肺胞出血・薬剤性肺炎・間質性肺炎の増悪でも見られます。画像だけで決めず、免疫の状態・薬の使用歴・心臓の状態・経過と合わせて考えます。
鑑別診断
など

ニューモシスチス肺炎でよくある疑問: カリニ肺炎との違い・感染経路
「カリニ肺炎」と「PCP」は同じ病気です。感染は主に空気を介すると考えられ、健康な人が発症することはまれです。
ニューモシスチス肺炎でよくある疑問(Q&A)
Q1. ニューモシスチス肺炎とは、わかりやすく言うと?
ふだんは問題にならない真菌(カビの仲間)が、免疫の落ちた人の肺で増えて起こる肺炎です。HIV感染症のほか、ステロイド・免疫抑制薬・抗がん剤を使っている人に起こる「日和見感染症」の代表です。
Q2. カリニ肺炎との違いは?
同じ病気です。ヒトに感染する病原体がPneumocystis cariniiからPneumocystis jiroveciiに名付け直されたため、呼び名が変わりました。略語のPCPはそのまま使われています。
Q3. 人にうつりますか?
主な感染経路は空気を介するものと考えられ、症状のない人が菌を持っていること(保菌)もあります(Vera 2021)。健康な人が発症することはまれです。
免疫を抑える治療中の患者さんに、息苦しさ・から咳・発熱が出たときは、胸部レントゲンが正常でもPCPを鑑別に入れ、CTと検査を考えます。
よくある勘違い
Q. β-Dグルカンが陰性なら、PCPは否定できる?
強く疑う患者さんでは否定しきれません。メタ解析の感度は91%、HIVのない人では86%でした(Del Corpo 2020)。CTと臨床像で判断します。
Q. ステロイド中の両側すりガラス影は、間質性肺炎の増悪と考えればいい?
免疫抑制中なら、PCPを鑑別に入れます。胸膜直下が保たれたモザイク状の分布は、PCPを疑う手がかりです。
Q. HIVのない人のPCPは、エイズの人より軽い?
逆です。HIVのない人は急に発症して重くなりやすく、人工呼吸・入院中の死亡率も高いと報告されています(Rego de Figueiredo 2019)。
今日のまとめ
- PCPは細胞性免疫が落ちた人の真菌の肺炎。ステロイド・免疫抑制薬・移植・血液のがんでも起こり、HIVのない人ほど急に重くなる。
- CTは両側・肺門側・上肺優位のすりガラス影、胸膜直下の温存、モザイク状の分布を見る。HIVでは嚢胞と気胸にも注意。
- β-Dグルカンは陰性でも陽性でも単独で決めない。免疫の状態とCTから疑い、菌の検出で確かめる。
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参考文献
- Thomas CF Jr, Limper AH. Pneumocystis pneumonia. N Engl J Med. 2004;350(24):2487-98. PubMed
- Kanne JP, Yandow DR, Meyer CA. Pneumocystis jiroveci pneumonia: high-resolution CT findings in patients with and without HIV infection. AJR Am J Roentgenol. 2012;198(6):W555-61. PubMed
- Del Corpo O, Butler-Laporte G, Sheppard DC, et al. Diagnostic accuracy of serum (1-3)-β-D-glucan for Pneumocystis jirovecii pneumonia: a systematic review and meta-analysis. Clin Microbiol Infect. 2020;26(9):1137-1143. PubMed
- Chou SH, Prabhu SJ, Crothers K, et al. Thoracic diseases associated with HIV infection in the era of antiretroviral therapy: clinical and imaging findings. Radiographics. 2014;34(4):895-911. PubMed
- Roux A, Gonzalez F, Roux M, et al. Update on pulmonary Pneumocystis jirovecii infection in non-HIV patients. Med Mal Infect. 2014;44(5):185-98. PubMed
- Rego de Figueiredo I, Vieira Alves R, Drummond Borges D, et al. Pneumocystosis pneumonia: A comparison study between HIV and non-HIV immunocompromised patients. Pulmonology. 2019;25(5):271-274. PubMed
- Rhoads S, Maloney J, Mantha A, et al. Pneumocystis jirovecii Pneumonia in HIV-Negative, Non-transplant Patients: Epidemiology, Clinical Manifestations, Diagnosis, Treatment, and Prevention. Curr Fungal Infect Rep. 2024;18(2):125-135. PubMed
- Wang Y, Zhou X, Saimi M, et al. Risk Factors of Mortality From Pneumocystis Pneumonia in Non-HIV Patients: A Meta-Analysis. Front Public Health. 2021;9:680108. PubMed
- Vera C, Rueda ZV. Transmission and Colonization of Pneumocystis jirovecii. J Fungi (Basel). 2021;7(11):979. PubMed
症例画像は各図の引用元のとおりです。
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