先に結論:珪肺(けいはい)とは・CTの特徴
- 珪肺は、鉱山・トンネル工事・石切り・陶磁器などの仕事で結晶性シリカ(遊離珪酸)の粉じんを長年吸い込むことで肺が線維化するじん肺の代表です。多くは長い年月をかけて現れ、粉じんから離れた後も進むことがあります
- CTでは上肺に多い、両側左右対称の小さな粒状影(小葉中心性+リンパ路に沿う)が特徴で、進むと粒が集まって1cmを超える大陰影(PMF:進行性塊状線維化)になります。縦隔・肺門のリンパ節に卵の殻のような石灰化(卵殻状石灰化)が見られるのも特徴です
- 結核・肺がん・気胸を合併しやすく、大陰影と肺がんの区別が問題になります。粉じんを避けること、定期的な健診が大切です
- 病理と画像の対応:小さな粒状影は粉じんを取り込んだ細胞を中心にした小結節、大陰影(PMF)は結節が集まって線維化が進んだものに対応します。MRIのT2強調像で低信号になることが、肺がんとの区別に役立ちます
※粉じん作業の経験があり、せき・息切れが続くときは呼吸器内科を受診してください。
珪肺とは(silicosis)
- じん肺の代表的な病気(ほかに石綿肺など)。読み方は「けいはい」で、「けい肺」「珪肺症」とも書かれる。
- 鉱山労働者や石切作業者に認める。
- 線維化を強く起こす(fibrogenicな)遊離珪酸の吸入により起こる。
- 慢性珪肺、急進珪肺、急性珪肺の3型がある。
- 通常見られるのは、長年の粉じん曝露の後に発症する慢性型。珪肺は鉱山労働者の病気と考えられてきたが、近年はジーンズのサンドブラスト加工や人工石(エンジニアドストーン)の天板加工などで十分な対策がとられず、世界的に再び増えている。職業歴を詳しく聴くことが診断の出発点であり、サルコイドーシスとの鑑別も問題になる。
- Tb、肺癌の発生が多い(Leung 2012)。系統的レビューでは、珪肺・シリカ曝露者の結核のリスク比は1.35だった(Jamshidi 2025)。他、自然気胸、続発性気管支炎などを合併する。
珪肺の画像所見
レントゲン所見
- 上肺優位の境界明瞭な小粒状影
- 粒状影に石灰化が見られることあり。
- 進行すると、上中肺野に大陰影(PMF:progressive massive fibrosis)を形成。
- 上葉は収縮し、肺門挙上と下肺野に代償性肺気腫を生じる。
CT所見

- 経気道性に粉塵暴露→小葉中心性結節
- 粉塵を貪食したMφが移動中のリンパ路で病変が生じる→胸膜下、小葉間隔壁などの広義間質にも結節を認めるようになる。胸膜に接する結節が融合して胸膜プラークに似た像を形成することがあり「偽胸膜プラーク(pseudoplaque)」と呼ばれる。→気道性+間質性に病変が及ぶ(小葉中心性+広義リンパ路)ことが重要!!
- 粒状影や塊状影は左右対称。周囲にbullaや気腫を伴う。粒状影の癒合による1cmを超える大陰影(progressive massive fibrosis:PMF)。
- 上肺が多いが、下肺に認める事もある。さらに、PMFはサイズが増大することがある。また空洞を形成することがある。
※とするとPMFと肺癌の鑑別は?→PMFはMRIのT2WIにて低信号を呈する。じん肺患者でCT上肺癌が疑われた40病変の検討では、PMFは24病変すべてがT2強調像で低信号を示し、肺癌は16病変中15病変が中等度〜高信号でした。CTで区別が難しいときは、MRIのT2強調像を追加する価値があります。
- 縦隔や肺門には石灰化を伴ったリンパ節(卵殻状石灰化eggshell calcification)あり。
※腹部にもリンパ節石灰化を来す事がある(Berk 1956)。
※またリンパ節腫大のみのこともある。PETで陽性になることがあり、注意を要する。
症例 78歳男性

肺野条件では胸膜下および小葉間隔壁に粒状影を多数認めています。左右対称であり、右肺尖部には大陰影を認めています。
縦隔条件では縦隔に卵殻状石灰化を多数認めています。
珪肺に矛盾しない所見です。
症例 75歳女性
両側に大陰影を認めています。陰影内には石灰化あり。
その周囲には広義リンパ路に広がると考えられる粒状影を多数認めています。
縦隔には石灰化リンパ節を認めており、珪肺を疑う所見です。
症例 73歳男性

両側に石灰化を伴う大陰影を認めています。
また周囲に粒状影あり。
珪肺を疑う所見です。
症例 70歳代男性
縦隔・肺門リンパ節の石灰化をきたす疾患
リンパ節の辺縁が卵の殻のように石灰化する「卵殻状石灰化」は珪肺・炭坑夫肺に多く、ほかにサルコイドーシス・放射線治療後のHodgkinリンパ腫などでもみられます(Gross 1980)。
珪肺の病理像と画像の対応(粒状影からPMF・大陰影まで)
じん肺の基本的な病理像には、粉じんが集まった小さな病変(dust macule)、混合粉じん線維化、結節、びまん性の間質線維化、進行性塊状線維化(PMF)があり、これらは同じ人の肺に混在します。高分解能CT(HRCT)はこれらの病理像をよく反映します(Akira 2023)。
| 病理 | 画像で見えるもの | 読むときのポイント |
|---|---|---|
| 小さな結節(シリカを取り込んだ細胞が集まった病変) | 上肺優位・小葉中心性とリンパ路に沿った小粒状影(既述) | 粒状影が左右対称で、胸膜下・小葉間隔壁にも分布するかを見ます。小葉中心性の結節が主体のじん肺に、珪肺・炭坑夫肺・黒鉛肺・溶接工肺があります(Akira 2023) |
| びまん性の間質線維化 | 網状影、肺の容積減少 | 結節の周囲に間質の線維化が加わることがあります(Akira 2023) |
| PMF(進行性塊状線維化) | 大陰影(1cm超)、上中肺野、石灰化や空洞を伴うことがある | 結節が集まって大きな塊になったものです。MRIでは、PMFの病変34個のうち、T1強調像で等信号が70%、T2強調像で低信号が68%と最も多く、内部に高信号域(壊死を示唆)を伴うことがあり、造影ではリング状の造影または造影なしでした(Matsumoto 1998) |
| 急性珪肺(シリコプロテイノーシス) | 肺胞蛋白症に似た両側のすりガラス影・浸潤影 | ごく大量の曝露で起こる型です(上の「3つの型」を参照) |
- PMFと肺がんの区別:CTで難しいときはMRIのT2強調像が役立ちます。既に述べたとおり、PMFは24病変すべてがT2で低信号、肺がんは16病変中15病変が中等度〜高信号でした(Ogihara 2018)
- PMFの病理型:米国の炭鉱労働者322例のPMFを病理で分けると、炭粉型43%、混合型40%、シリカ型17%でした。新しい世代ではシリカ型が減らず、シリカ曝露の関与が示唆されます(Go 2023)
珪肺の3つの型
| 型 | どんなとき | 画像の特徴 |
|---|---|---|
| 慢性珪肺 | 長年にわたる曝露。もっとも多い | 上肺優位の粒状影、PMF、卵殻状石灰化 |
| 急進珪肺 | より短い期間の多量の曝露 | 慢性型と似た所見が早く進む |
| 急性珪肺 | ごく大量の曝露 | 肺胞蛋白症に似た両側のすりガラス影・浸潤影 |
- 人工石の珪肺106例(診断時平均36.2歳)では、曝露をやめた後も平均約4年の経過でPMFが6.6%から37.7%に増えました(León-Jiménez 2020)。
珪肺でよくある疑問(Q&A)
Q. 珪肺は治りますか?
A. 現時点で治す治療は確立していません。粉じんから離れること、禁煙、結核などの合併症への対策で悪化を遅らせることが中心です(Leung 2012、Hoy 2020)。粉じん作業の経験があり、せき・息切れがあれば呼吸器内科で相談してください。
Q. 大陰影は肺がんと見分けられますか?
A. CTだけで難しいときは、MRIのT2強調像が役立ちます。PMFはT2強調像で低信号を示すことが多く、肺がんは中等度〜高信号のことが多いと報告されています(Ogihara 2018)。ただし、じん肺では肺がんの合併も多いため、変化があるときは医療機関で相談してください。
Q. 粒状影と大陰影は、病理でどう違いますか?
A. 粒状影は粉じんによる小さな結節に、大陰影(PMF)は結節が集まって線維化した塊に対応します。HRCTは病理像をよく反映するとされています(Akira 2023)。
関連記事:塵肺の画像診断総論(珪肺、石綿肺、ベリリウム肺など)
参考文献
- Chong S, Lee KS, Chung MJ, et al. Pneumoconiosis: comparison of imaging and pathologic findings. Radiographics. 2006;26(1):59-77. PubMed
- Ogihara Y, Ashizawa K, Hayashi H, et al. Progressive massive fibrosis in patients with pneumoconiosis: utility of MRI in differentiating from lung cancer. Acta Radiol. 2018;59(1):72-80. PubMed
- Hoy RF, Chambers DC. Silica-related diseases in the modern world. Allergy. 2020;75(11):2805-2817. PubMed
- Leung CC, Yu IT, Chen W. Silicosis. Lancet. 2012;379(9830):2008-18. PubMed
- Gross BH, Schneider HJ, Proto AV. Eggshell calcification of lymph nodes: an update. AJR Am J Roentgenol. 1980;135(6):1265-8. PubMed
- Berk M, Gerstl B, Hollander AG, et al. Intra-abdominal eggshell calcifications due to silicosis. Radiology. 1956;67(4):527-30. PubMed
- Jamshidi P, Danaei B, Arbabi M, et al. Silicosis and tuberculosis: A systematic review and meta-analysis. Pulmonology. 2025;31(1):2416791. PubMed
- León-Jiménez A, Hidalgo-Molina A, Conde-Sánchez MÁ, et al. Artificial Stone Silicosis: Rapid Progression Following Exposure Cessation. Chest. 2020;158(3):1060-1068. PubMed
- Akira M, Suganuma N. Imaging diagnosis of pneumoconiosis with predominant nodular pattern: HRCT and pathologic findings. Clin Imaging. 2023;97:28-33. PubMed
- Matsumoto S, Mori H, Miyake H, et al. MRI signal characteristics of progressive massive fibrosis in silicosis. Clin Radiol. 1998;53(7):510-4. PubMed
- Go LHT, Rose CS, Zell-Baran LM, et al. Historical shift in pathological type of progressive massive fibrosis among coal miners in the USA. Occup Environ Med. 2023;80(8):425-430. PubMed
あわせて読みたい:肺疾患・胸部CTサインのシェーマ一覧
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →


