「肺水腫ってどんなレントゲン画像になるの?」

「心不全ってどんなレントゲン所見があるの?」

「CTでは?」

肺水腫の胸部レントゲン画像やCT画像所見については、肺炎などの他疾患との鑑別が難しいことが臨床の現場では多々あります。

  • 肺炎か?
  • 心不全(による肺水腫)か?

しばしば鑑別できないこともありますし、併発していることもあります。

そこで今回は特徴的な肺水腫のレントゲン・CT画像所見をおさらいして、少しでもこれらを鑑別ができるようなり、診断に近づけるようにしていきましょう。

肺水腫の胸部レントゲン、CT画像所見は?

まず、肺水腫が起こった時に胸部レントゲンや胸部CTではどのような画像所見を呈するのかをチェックしましょう。

肺水腫の場合、画像による変化では主に以下のことが起こります。

  • 心拡大
  • 肺血流の再分布
  • 間質性肺水腫
  • 肺胞性肺水腫

の4つです。

と言われてもピンとこないかもしれませんが、以下に説明していくので大丈夫です。

これらの結果、(これらが全て見られた場合)以下のような図のレントゲン所見となります。

これらは同時に見られることもありますし、原因などによりどれか一つしか見られない場合もあります。

ではこれを1つひとつ見ていきましょう。

 

心拡大

まず、心原性の場合、心拡大(左房、左室)をきたすことがあります。

症例 胸部レントゲン

肺血流の再分布

また、心不全の場合、肺血流の再分布が起こります。

どういうことかというと、下の図のように左心不全になると、肺の静脈圧が上がり、肺静脈が拡張し、静水圧が上昇し、肺うっ血となります。

さらにその前の肺動脈も拡張してきます。

すると、普段拡張しない上肺の肺動脈も拡張してきます。

レントゲンやCT画像では、

  • 上肺野の血管陰影が増強、上肺野=下肺野、上肺野>下肺野となる。
  • CTでは、左房圧上昇による肺静脈の拡張を認める。

ようになります。

正常ならば、下肺野の血管だけが目立つのですが、血流の再分布が起こると、上肺野の血管が目立つようになります。

症例 胸部レントゲン

間質性肺水腫

毛細血管から水が溢れてくると、まずは間質に水が溜まります。
その後、さらに溢れると肺胞に水が溜まります。

間質に水が溜まった状態を間質性肺水腫と言います。

間質性肺水腫か、より進行した肺胞性肺水腫かの境は、肺静脈圧(PAWP)により分けることができます。

すなわち、

  • 肺静脈圧(PAWP)  15-25mmHg→間質性肺水腫
  • 肺静脈圧(PAWP)  >25mmHg→肺胞性肺水腫

となります。

間質性肺水腫(肺静脈圧(PAWP)  15-25mmHg)の画像所見としては、

  • 小葉間隔壁肥厚→レントゲンではKerley’s line
  • 胸膜肥厚→胸膜下水腫
  • 気管支周囲間質肥厚→レントゲンではperibronchial cuffing
  • 葉間胸水→レントゲンではvanishing tumor
  • 胸水→レントゲンではCp-angleの鈍化

が挙げられます。

いわゆる広義間質が肥厚する所見がみられます。

胸部CTでも特に薄いスライス(thin slice)で見ると

  • 肺静脈の拡張
  • 気管支周囲間質肥厚
  • 小葉間隔壁の肥厚

と言った構造までもよく見えます。

症例 胸部CT

最新のCT装置では非常に細かい構造まで見えます。

症例 胸部レントゲン

major fissure沿いに葉間胸水を両側に認めています。

これをvanishing tumorと言います。

vanising tumorとは?

vanising tumor(バニッシング チューモア)は日本語訳すると「消える腫瘤」となります。

これは葉間の胸水のことを示します。

レントゲンでは腫瘤のように見えますが、胸水ですので、治療により消失することからこのように呼ばれます。

 

肺胞性肺水腫

間質に水が溢れても、なおも溢れる場合、今度は肺胞に水が溢れてきます。

これを肺胞性肺水腫と言います。

肺胞性肺水腫(肺静脈圧(PAWP) 25mmHg以上)となると、胸部レントゲン画像やCT画像では、

  • 蝶形陰影(butterfly shadow(バタフライシャドウ)):肺門部に認めるコンソリデーション
  • 中枢側優位にすりガラス影やコンソリデーション

が見られるようになります。

「ちょうちょ(バタフライ)」がいるかのようなレントゲン像になります。

症例 胸部CT

CTではすりガラス影に加えて、浸潤影を認めるようになります。

この症例では、すりガラス影〜浸潤影が出現しており、間質性肺水腫→肺胞性肺水腫へと移行していることがわかります。

症例 胸部CT

両側広範に浸潤影を認めています。

ただし、分布は中枢側に優位で末梢はspareされていることがわかります。

この分布も肺水腫に特徴的です。

最後に

ややこしい肺水腫の画像ですが、肺に水があふれるとどのような所見を示すのかをあらかじめ知っておくことで、

「これは左右対称であり、分布などから肺水腫、肺うっ血ぽい」

「これは偏在性であり、陰影の特徴から肺炎ぽい」

というよりどちらに近い陰影であるかを予想することができるようになります。ぜひ参考にしてください。ただし、あくまで症状などありきで画像であり、もちろん画像のみで判断してはNGです。

最後に:心不全と肺炎の鑑別のポイント

心不全と肺炎は症状もレントゲンやCT所見が非常に似ることがあります。

両者の鑑別に有用なのは喀痰などのグラム染色であると言われています。

また症状や、心音、頸静脈怒張、下腿浮腫、BNP高値などで心不全を疑い診断することは可能ですが、それは肺炎の合併を否定することになりません。肺炎と心不全はしばしば合併します。

肺炎の有無をチェックするにはやはりグラム染色が重要だということです。

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