好酸球性肉芽腫性多発血管炎(Eosinophilic granulomatosis with polyangitis(EGPA))

    • Churg-Strauss症候群(CSS)と元々呼ばれていた疾患。好酸球浸潤と壊死性血管炎を特徴とするANCA関連血管炎の一種。
    • 40〜50歳代に多く発症し、やや女性に多い。
    • 男:女=4:6~5:5。
    • 発生頻度は、0.24/100,000人。
    • 病理所見:中小動脈・静脈の好酸球に富む壊死性血管炎、血管および周囲組織における好酸球浸潤、血管外の肉芽腫性変化。
    • しばしば慢性的なアレルギー性疾患を先行する。気管支喘息好酸球性鼻副鼻腔炎が先行し、その後多臓器の血管炎症状を呈する。多発性単神経炎、肺、皮膚、心血管系、中枢神経など。
    • 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)とともに、鼻副鼻腔炎を伴うことがあり、鑑別の一つとして注意が必要。
    • 成人発症の難治性の気管支喘息や好酸球性鼻副鼻腔炎の経過観察中に、しびれ、呼吸器症状、皮膚症状の臨床所見に加え、末梢血好酸球数が異常高値を認める場合、EGPAを念頭におくことが重要。
    • 検査所見:WBC,Eo,Plt,IgE増加(特に著明な末梢好酸球増多>10%)、MPO-ANCA陽性(陽性率3−4割)、リウマチ因子陽性。
    • 治療:ステロイド、免疫抑制剤(アザチオプリン、シクロフォスファミドなど)
    • 予後;10年生存率70%。後遺症として末梢神経障害が残存しやすい。
    • 症状:病期は3相からなる。

    EGPAの病期

    1. 成人発症の重症気管支喘息鼻茸を伴う好酸球性鼻副鼻腔炎などのアレルギー性疾患が先行
    2. 好酸球増加、喘息悪化、一部に好酸球性肺炎が見られる。
    3. 全身の血管炎症候群
    • 発熱:38℃以上が、2週間以上
    • 関節痛、筋肉痛
    • 体重減少:6ヶ月以内に6kg
    • 多発性単神経炎:高率にみられる。
    • 消化管虚血症状:出血、炎症、穿孔、イレウス、腹痛、嘔吐、下痢
    • 皮膚症状:紫斑、皮疹
    • 中枢神経障害:脳梗塞症状
    • 心血管系障害:同期、不整脈、心不全など

    診断基準(ACR/EULAR分類基準 2022)

    EGPAの診断には、2022年ACR/EULAR分類基準が活用される(診断感度85%、特異度99%)。

    分類基準に含まれる臨床所見、検査所見は以下。

    • 臨床所見: 喘息、鼻ポリープ(鼻茸)、多発性単神経障害 。
    • 検査所見: 末梢血好酸球増加、組織での好酸球浸潤 。

    ACR/EULAR分類基準スコア項目

    項目 スコア
    末梢血好酸球増加 (>1000μl) +5
    閉塞性気道疾患 +3
    鼻茸 +3
    血管外好酸球増加 +2
    多発単神経炎 or 運動性ニューロパチー +1
    顕微鏡的血尿 -1
    cANCA or PR3-ANCA陽性 -3

    EGPAの画像所見

    CT所見:

    • 一過性、移動性の胸膜下非区域性または班状の浸潤影、すりガラス状陰影。
    • 気管支壁肥厚または気管支拡張性変化。
    • 結節影(5mm-3cm)ときにair bronchogramや稀に空洞形成。
    • 小葉間隔壁肥厚。
    • 小葉中心性陰影。
    • 稀にリンパ節腫大、胸水、心拡大、心嚢水貯留。
      ※おおざっぱには慢性好酸球性肺炎+気管支喘息の陰影
    • 心筋炎や心嚢液貯留、心膜肥厚を認めることがあるので疑う上でヒントになることがある。

    症例 70歳代男性 咳の悪化と息切れ。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の既往あり。

    引用:radiopedia

    左肺尖部および舌区に気管支壁の肥厚および円柱状気管支拡張症・厚い小葉間隔を伴うすりガラス様陰影を認めます。

    これらの所見は6ヶ月前のCTでは認めていませんでした。

    移動性の非区域性または班状の浸潤影、すりガラス状陰影であり、好酸球性肉芽腫性多発血管炎(EGPA)を疑う所見です。

    肺好酸球増加症の鑑別診断

    • 単純性好酸球増多症(レフレル症候群)
    • 好酸球増加症候群
    • EGPA
    • 喘息
    • 急性好酸球性肺炎
    • 慢性好酸球性肺炎
    • アレルギー性肺アスペルギルス症
    • 気管支中心性肉芽腫症
    • 寄生虫疾患
    • 薬剤性好酸球性肺炎

    成人発症の重症喘息やアレルギー性鼻副鼻腔炎の患者で好酸球が増加し、すりガラス影や非区域性浸潤影、気管支壁肥厚などの所見が見られた場合、EGPAが示唆される。

    ・EGPAは比較的予後は悪く、神経障害などの後遺症がみられるため、早期診断・早期治療が重要である。

     

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