
先に結論:MPMNは数mmの丸い境界明瞭なすりガラス結節として見えることが多い良性病変。胸膜下に多く、多発することが多い。CT所見だけではAAH・AISや転移と区別しにくく、経過で変化しないことと、必要なら組織で確かめる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな病変か | 髄膜皮細胞に似た細胞の小さな増殖。免疫染色でEMA・PR・vimentinが陽性、TTF-1・サイトケラチンが陰性(Peng 2019) |
| CTの典型像 | 2.5〜5.0mmの丸く境界明瞭な結節。97.8%がすりガラス、89.1%が胸膜下(Zhang 2023) |
| びまん性の型(DPM) | 両肺に2〜8mmのすりガラス結節が1肺あたり40〜600個以上(Li 2023) |
| 区別のポイント | AAH・AIS・MIAとはCTの特徴だけでは区別しにくい(Zhang 2023)。多発例は転移との区別が問題になる |
| 経過 | 術前に見えていたMPMNは、経過のCTで変化しなかった(Wen 2022) |
微小髄膜皮様結節(MPMN)とは
MPMN(minute pulmonary meningothelial-like nodules)は、肺の間質に、髄膜皮細胞(脳を包む髄膜の細胞)に似た細胞が小さな巣をつくって増える病変です。もともとは手術や解剖の標本で偶然見つかる病理所見として知られていましたが、薄いスライスのCTが広く使われるようになり、術前CTで「小さなすりガラス結節」として見えている例が報告されるようになりました(Zhang 2023)。
病理では、紡錘形〜卵円形の細胞が渦巻き状に並び、異型や核分裂はほとんど見られません。免疫染色では、EMA(上皮膜抗原)、PR(プロゲステロン受容体)、vimentinが陽性で、肺腺癌のマーカーであるTTF-1とサイトケラチンは陰性です(Peng 2019)。腺癌とは細胞の由来が違うため、組織が取れれば区別は難しくありません。
中国の呼吸器センターの検討では、病理で診断されたMPMNは167例、両肺にびまん性に多発する型(びまん性肺髄膜皮腫症、DPM)は13例で、検出率はそれぞれ1.9%と0.15%でした(Li 2023)。MPMNの79.4%が女性で、DPMは全例が女性でした(Li 2023)。手術例59人の検討でも、49人が女性、54人が非喫煙者でした(Wen 2022)。
他の病変と一緒に見つかることが多い
MPMNは、肺癌など別の病変の手術標本の中で見つかることが多いのが特徴です。CTを評価できた検討では82.6%の患者に腫瘍性の病気があり(Zhang 2023)、別の検討でも12人中10人が癌や前癌病変と一緒に見つかっていました(Peng 2019)。手術例59人のうち、手術の理由の88.1%は別の悪性を疑う結節でした(Wen 2022)。そのため、術前CTで主病変のほかに小さなすりガラス結節が複数あると、多発肺癌や転移と迷う場面が生じます。
胸部CTの見え方
MPMNの多くは数mmのすりガラス結節です。CTで評価できた46人の検討では、結節は2.5〜5.0mm(平均3.04mm)で、全例が丸く、境界は明瞭でした。97.8%がすりガラス、89.1%が胸膜下にあり、多発が69.6%、単発が30.4%でした。54.3%で結節の縁が肺血管に接していました(Zhang 2023)。
手術例59人・79結節の検討では、36結節はCTで見えず(病理でのみ見つかった)、CTで見えた43結節は平均5.3mmでした。見え方は純粋なすりガラスが36、混合型が2、充実性が5で、術前の経過観察で変化は見られませんでした(Wen 2022)。つまり、MPMNは「CTで見えないほど小さいもの」から「数mmのすりガラス結節」までの幅があり、充実性に見える例も少数あります。
| CT所見 | 報告された頻度・値 |
|---|---|
| 大きさ | 2.5〜5.0mm、平均3.04mm(Zhang 2023)/CTで見えた結節の平均5.3mm(Wen 2022) |
| 濃度 | すりガラス97.8%(Zhang 2023)/純粋すりガラス36・混合2・充実5結節(Wen 2022) |
| 形・境界 | 全例が円形・境界明瞭(Zhang 2023) |
| 部位 | 胸膜下89.1%、肺の内部10.9%(Zhang 2023) |
| 数 | 多発69.6%、単発30.4%(Zhang 2023) |
| 血管との関係 | 結節の縁が肺血管に接する54.3%(Zhang 2023) |
| CT値 | MPMNの中央値−588HU、DPMの中央値−646.8HUで、差はなし(Li 2023) |
リング状・嚢胞状に見える型
まれに、中心が抜けたリング状の陰影や、薄い壁の嚢胞のように見える例があります。56歳の女性で、両肺にびまん性の薄壁の嚢胞状病変として見えたMPMNが報告されており、転移性の肺腫瘍や原発の肺腺癌に似ることがあると注意を促しています(Harada 2019)。嚢胞状の形は、すりガラス結節を多数集めた検討でも1例に見られました(Zhang 2023)。
びまん性の型:びまん性肺髄膜皮腫症(DPM)
MPMNが両肺に無数に出る状態は、びまん性肺髄膜皮腫症(diffuse pulmonary meningotheliomatosis、DPM)と呼ばれます。DPMの13例は全員が女性で、MPMNの患者より若く(平均51.4歳と57.9歳)、肺機能は保たれていました。CTでは2.0〜8.0mmのすりガラス結節が1肺あたり40〜600個以上あり、結節1個の体積やCT値はMPMNと差がありませんでした(Li 2023)。著者らは、患者背景の違いから、DPMを単にMPMNの一型とみる考えには疑問を示しています(Li 2023)。
手術例をまとめた別の検討では、MPMNは多発し、丸く、ランダムに分布する、充実性または部分充実性の非常に小さな結節として見えることが多いとされています(Lin 2020)。ランダム分布の微小結節は、粟粒結核や血行性転移でも見られる分布で、分布の見方はびまん性粒状影の鑑別診断(胸部CT)、二次小葉との関係は胸部CTで重要な二次小葉とは?で整理しています。
症例 MPMNとDPMの典型的な胸部CT(引用元の図)

引用:Li N, Quan S, Liu Q, et al. Clinical, radiological, and pathological features of minute pulmonary meningothelial-like nodules and diffuse pulmonary meningotheliomatosis. Front Med (Lausanne) 2023;10:1209491(Figure 1)(CC BY 4.0)
(A)右下葉のMPMNで、悪性の肺結節の近くにあり、結節として見えています(拡大像の下線)。(B)DPMの肺野条件で、両肺にランダムに分布する多数の微小結節が見られ、大きさは2〜5mm、胸膜下に多い部分もあります。左下肺の拡大像で、多数の結節(赤い印)がよりはっきり見えます。
転移・AAH/AISとの区別
MPMNは良性ですが、CTの見え方が早期の肺腺癌や転移と重なるため、術前に悪性と考えられて切除されることがあります。12人の検討では、4人が術前に悪性の肺結節と診断されていました。PET-CTでSUVmaxの上昇を示した例も1人あり、FDGの集積だけで悪性と決められない例があることが分かります(Peng 2019)。
| 病変 | CTでの典型像 | MPMNと区別するときの見方 |
|---|---|---|
| MPMN | 数mmの丸く境界明瞭なすりガラス結節。胸膜下に多く、多発しやすい(Zhang 2023) | 経過のCTで変化しにくい(Wen 2022) |
| DPM | 両肺に多数のすりガラス微小結節。一部が中心の抜けた空洞状に見えることがある(Li 2023、Sakano 2025) | Li 2023の13例は全員女性。男性の報告もある(Sakano 2025) |
| AAH・AIS・MIA | すりガラス結節や部分充実結節 | CTの特徴だけではMPMNとの区別が難しい(Zhang 2023) |
| 多発肺転移 | 血行性ではランダム分布の結節。既知の悪性腫瘍がある | 多発MPMN・DPMと迷う。組織で確かめた例がある(Sakano 2025) |
AAH・AISとの区別
MPMNも、AAH(異型腺腫様過形成)・AIS(上皮内腺癌)も、小さなすりガラス結節として見えます。CTと病理を対比した検討は、特異的な所見がないため、MPMNをAAH・AIS・MIA(微少浸潤性腺癌)と区別するのは難しいと述べています(Zhang 2023)。MPMNは数mm台の小さいものが中心で、丸く境界がはっきりし、胸膜下に多いという傾向はありますが、どれも腺癌の前段階の病変と重なる特徴です。すりガラス結節の分類(AAH・AIS・MIA・浸潤性腺癌)はすりガラス結節(GGN)のCT所見と肺腺癌の分類で解説しています。
研究段階では、CT画像から多数の数値(テクスチャなど)を取り出して解析するラジオミクスの試みがあります。MPMN 51人とAIS 55人を対象にした検討では、テスト群で正診率88.5%、AUC 0.969でした(Zhang 2025)。ただし2施設の後ろ向きの小規模な検討で、日常の読影で使える基準として確立したものではありません。
転移との区別
多発するMPMNやDPMで問題になるのは、転移との区別です。前立腺癌の病期診断のCTで両肺に多数の小結節が見つかり、肺転移が疑われた60歳代の男性で、外科的肺生検によりDPMと診断され、局所の前立腺癌として根治を目指す治療を受けられた例が報告されています(Sakano 2025)。病期が変われば治療方針が大きく変わるため、悪性腫瘍のある患者で微小結節が多発しているときは、MPMN・DPMも鑑別に挙げておくことが大切です。
症例 60歳代男性 びまん性肺髄膜皮腫症(DPM)

引用:Sakano Y, Hashimoto S, Abe T, et al. Diffuse Pulmonary Meningotheliomatosis Mimicking Multiple Lung Metastases of Prostate Cancer: A Case Report. Respirol Case Rep 2025;13(4):e70176(Figure 1)(CC BY 4.0)
前立腺癌の病期診断で見つかった多発肺結節です。高分解能CTで、両肺の末梢に多数の小さなすりガラス結節があり(黄色の印)、一部は中心が抜けた空洞状に見えます。肺転移が疑われましたが、外科的肺生検でDPMと診断されました。
経過観察と組織診断の考え方
手術例59人の検討では、術前のCTで見えていたMPMNは、経過のCTで変化が見られず、著者らはCTでの継続的な観察が管理の一部になると述べています(Wen 2022)。別の検討でも、術後に経過を追えた12人で、症状や胸部CTに異常は出ていませんでした(Zhang 2023)。一方、経過で増大や新出があれば、悪性との区別のために組織を確かめる判断になります。
偶然見つかった小さなすりガラス結節そのものの経過観察の間隔は、MPMNに特有の基準ではなく、一般の肺結節の指針に沿って決めます。その考え方はFleischnerガイドライン2017とは?を参照してください。手術の要否や経過観察の方法は、主治医と相談して決めます。
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よくある疑問(Q&A)
Q. MPMNはがんになりますか?
A. MPMNは良性の病変と考えられています。術前CTで見えていたMPMNは、経過で変化しなかったと報告されています(Wen 2022)。ただしCTだけでは腺癌の前段階の病変と区別しにくいため(Zhang 2023)、主病変の評価とあわせて経過を見ます。
Q. 病理でMPMNと言われたら、CTで見えていた結節がそれですか?
A. そうとは限りません。手術例の79結節のうち36結節はCTで見えず、病理でのみ見つかっていました(Wen 2022)。CTの結節と病理の結節が同じものかは、位置を照らし合わせて確かめます。
Q. PETで集積がなければMPMNと考えてよいですか?
A. PETだけでは決められません。数mmの結節はPETで評価しにくいうえ、MPMNでSUVmaxの上昇を示した例も報告されています(Peng 2019)。
Q. 両肺に無数の小結節があるとき、DPMを考えるのはどんな場合ですか?
A. すりガラス主体の数mmの結節が両肺に多数あり、症状や肺機能の異常が乏しいときに考えます。報告された13例は全員が女性で平均51.4歳でしたが(Li 2023)、男性の例もあります(Sakano 2025)。悪性腫瘍がある患者では転移との区別が重要で、組織で確かめた例があります(Sakano 2025)。気になる症状があれば医療機関に相談してください。
参考文献
- Li N, Quan S, Liu Q, et al. Clinical, radiological, and pathological features of minute pulmonary meningothelial-like nodules and diffuse pulmonary meningotheliomatosis. Front Med (Lausanne). 2023;10:1209491. PubMed
- Wen Z, Zhang Y, Fu F, et al. Clinical, pathological and radiologic features of minute pulmonary meningothelial-like nodules. J Cancer Res Clin Oncol. 2022;148(6):1473-1479. PubMed
- Zhang Y, Wu J, Zhao Y, et al. Minute pulmonary meningothelial-like nodules: associations between computed tomography and pathology features. Quant Imaging Med Surg. 2023;13(1):462-470. PubMed
- Lin D, Yu Y, Wang H, et al. Radiological manifestations, histological features and surgical outcomes of pulmonary meningothelial proliferation: a case series and rethinking. Transl Lung Cancer Res. 2020;9(4):1159-1168. PubMed
- Peng XX, Yan LX, Liu C, et al. Benign disease prone to be misdiagnosed as malignant pulmonary nodules: Minute meningothelioid nodules. Thorac Cancer. 2019;10(5):1182-1187. PubMed
- Zhang Y, Zhou L, Yao J, et al. Differentiation of Minute Pulmonary Meningothelial-Like Nodules and Adenocarcinoma In situ with CT Radiomics. Curr Med Imaging. 2025;21:e15734056354822. PubMed
- Harada M, Aono Y, Yasui H, et al. Minute Pulmonary Meningothelial-like Nodules Showing Multiple Ring-shaped Opacities. Intern Med. 2019;58(21):3149-3152. PubMed
- Sakano Y, Hashimoto S, Abe T, et al. Diffuse Pulmonary Meningotheliomatosis Mimicking Multiple Lung Metastases of Prostate Cancer: A Case Report. Respirol Case Rep. 2025;13(4):e70176. PubMed
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