肺の解剖
- 気道、実質、間質に大きく分かれる。
気道
- 気道は、気管・中枢気管支と末梢気管支に分けられる。
- 分岐数と解剖名、線毛の有無については以下の通り。
- 17分岐以降が「呼吸細気管支」と呼ばれ、ガス交換に関与する呼吸細胞が存在する。
- 肺胞嚢までは23分岐。肺胞は3億個あり、表面積は50-100㎡あり、ガス交換の主役となる。
- 気管分岐部において、右は25度、左は45度の角度で分岐する。そのため、誤嚥や気管支異物は右気管支に入りやすい。挿管時も片肺挿管は右に起こりやすい。
気道、肺動脈、肺静脈の関係
- CT横断像におけるこれらの関係は、胸部正常解剖・画像診断ツールを参照ください。
- 気道と肺動脈は併走し、気管支肺動脈束(BVB:Bronchovascular bundle)と呼ばれる。
- 一方で、肺静脈は仲間はずれで、併走しない。
- ただし、肺静脈は、小葉間隔壁、胸膜に存在する。
- 肺動脈は鋭角、肺静脈はそれに比べ鈍角に分岐する。
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. Jun 2008; 3(2): 193–204.
実質
- 実質とは、臓器特有の機能を行なう領域のこと。
- 肺の場合、実質は、ガス交換の場として空気に触れる部分、つまり、肺胞腔と肺胞上皮に分けられる。
間質
- 間質とは「構造を保つ支持部」のこと。
- 肺の場合、間質は、肺胞上皮下基底膜と毛細血管内皮細胞または毛細血管基底膜との間(肺胞隔壁)のこと。
画像診断(CT診断)での間質
- 間質は狭義の間質と広義の間質に分けられる。
- 狭義の間質とは、肺胞壁から肺胞上皮を除いた領域のこと。本来の間質。ガス交換に関与する。
- 広義の間質とはリンパ路であり、気管支血管束周辺、小葉間隔壁、胸膜下間質、肺静脈周囲間質に分けられる。肺の骨組みを形成する広い意味での間質。
間質の全体像
図は、http://www.smw.ch/for-readers/archive/backlinks/?url=/docs/pdfcontent/smw-12270.pdfより引用。
二次小葉における広義間質
- リンパ路間質=広義間質であり、上の図の黄色い部位がすべて含まれる。
- ここが障害されると、①小葉中心部および気管支肺動脈束、また②小葉辺縁部である肺静脈、小葉間隔壁、胸膜の①②両方に肥厚や腫大を認めることになる。
広義リンパ路病変の鑑別診断
- リンパ増殖性疾患(MALT lymphoma、多中心性Castleman diasease(LIPと画像は同じ)、LIPなど)
- 肺水腫
- 癌性リンパ管症
- 珪肺
- サルコイドーシス
- アミロイドーシス
- ウイルス(HTLV-1感染症)、カポジ肉腫
- COP(BVBに沿った分布より)
- RA,Sjogrenに伴う膠原病肺
- IgG4関連肺疾患
症例 30歳代女性 サルコイドーシス
小葉中心性の粒状影、小葉間隔壁の肥厚、葉間胸膜の肥厚、気管支血管束の肥厚あり。広義リンパ路に沿った粒状影が見られる。
リンパ路病変に病変があるかを見るには上の症例のように小葉辺縁構造である葉間胸膜に着目しましょう。
間質性肺炎とは
- 支持組織である間質に何らかの障害(胞隔炎)が起こり、その修復過程で起こる病変(肺構造の改変・改築)のこと。しばしば線維化を来す。