肺水腫とは?
- 正常ならば、血管外に漏出した水分は、リンパ路によって速やかに取り除かれる。
- 肺水腫とは「血管から間質へ流出する水分量」>「リンパ路によって取り除かれる水分量」の状態になると起こる。(処理しきれなくなって、肺に溢れてしまう状態。)
- 原因としては左心不全によるものが最多。
- その他、腎不全により循環血漿量が増加したり、血漿膠質浸透圧低下(低アルブミン血症)、薬物(パラコート、刺激ガス、ヘロイン)、外傷、ショックなどにより起こる。
- 漏出液が間質内に貯留→間質性肺水腫、増悪すると肺胞内に貯留→肺胞性肺水腫となる。
肺水腫の画像診断は?
共通して見られる所見
- 心拡大(左房、左室の拡大)
- 肺血流の再分布(上肺野の血管陰影が、下肺野と同じかそれ以上に太くなる。CTでは左房圧上昇により肺静脈の拡張が見られる。)
①間質性肺水腫(PAWP 15-25mmHg)
▶広義間質が肥厚する。
- 小葉間隔壁肥厚→Kerley’s line
- 胸膜肥厚→胸膜下水腫
- 気管支周囲間質肥厚→peribronchial cuffing
- 葉間胸水→vanishing tumor
Kerley’s line、peribronchial cuffing、vanishing tumorはレントゲン上で使用される用語。
広義間質の復習
肺の広義間質とは、下の通り。
間質の病態は以下の通り。
二次小葉の図(イラスト)にすると黄色線の部位すべてが広義間質。
すなわち、小葉間隔壁が肥厚し、気管支血管束が肥厚することがわかります。
②肺胞性肺水腫(PAWP 25mmHg以上)
- 肺胞性肺水腫に至ると、すりガラス影、浸潤影が出現。
- 浸潤影は内層に優位に分布する。(これは、外層では、求心性と遠心性の2方向へのリンパ流があり、内層に比べてより速やかに滲出液が除去されるため。)
- 蝶形陰影(butterfly shadow)を呈するようになる。内部にair bronchogramあり。
※蝶形陰影は、心原性肺水腫よりも、循環血液量の増加による腎性肺水腫で見られることが多い。
まとめると肺水腫のCT所見のイメージは以下のよう。
症例 70歳代男性 心不全による肺水腫
心拡大、胸水、両側中枢側優位浸潤影、気管支血管束の肥厚、小葉間隔壁の肥厚あり、
心原性肺水腫を示唆する所見。
症例 80歳代女性 心不全による肺水腫
両側中枢側優位にconsolidation-GGOあり。
肺水腫を疑う所見あり。
症例40歳代男性 腎不全による肺水腫
両側の中枢側優位に浸潤影を認めています。
また胸水貯留あり。
右優位に胸水あり。心拡大は認めていません。(心原性肺水腫ではなさそう)
腎不全を認めており、腎不全による肺水腫と診断されました。
▶動画で学ぶ肺水腫
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