肺水腫(はいすいしゅ)とは、文字どおり肺に水がたまり、肺が腫れた状態と言えます。

肺に水が溜まりそうになっても、通常ならば肺の水分バランス調節により、その水は取り除かれます。この調節機構が破綻してしまった場合に、肺水腫になります。

肺に水がたまると、呼吸苦などの症状が出てきます。ところで、何が原因で肺水腫が起こるのでしょうか?またどのような症状が出て、どのように肺水腫を診断するのでしょうか?

今回は肺水腫の原因、症状、画像診断を中心とした診断方法についてまとめました。

肺水腫って、肺に水がたまるの?

肺の中の小さな袋(肺胞)に水がしみ出した状態です。息苦しさが強く、横になると苦しくなるのが特徴ですよ。

先に結論:肺水腫の原因・症状とCT所見

  • 肺水腫は、肺の血管から水がもれて肺の間質や肺胞にたまり、息苦しくなる状態です。原因は①血管の圧が上がるタイプ(心原性:左心不全が最多・腎不全・過剰輸液)と②血管から漏れやすくなるタイプ(ARDS・敗血症・誤嚥など)に分けられ、ほかに低アルブミン血症、陰圧性肺水腫などもあります
  • CTでは、間質性肺水腫(初期)として小葉間隔壁の肥厚・気管支血管束の肥厚・胸水・葉間胸水、進むと肺胞性肺水腫として肺門側に強いすりガラス影〜浸潤影(蝶形陰影)が出ます。心原性では心拡大と上肺の血管の拡張も見られ、心原性以外では心拡大や胸水が目立たない・分布が末梢優位などの違いが手がかりになります
  • 横になると苦しく、座ると楽になる(起座呼吸)のが特徴で、原因に応じて利尿薬・酸素投与・心不全の治療などを行います
  • 肺炎や間質性肺炎と紛らわしいことがあり、治療(利尿薬など)ですばやく改善するのが肺水腫の特徴です。静水圧性肺水腫は高分解能CTでほかの病気に似ることがあり、誤診から不要な肺生検につながることもあるため、心エコー・BNP・経過などの臨床情報と治療への反応を合わせて判断します。

※急な息苦しさ、横になれないほどの呼吸困難があるときは、すぐに救急車を呼んでください。

肺水腫とは?

  • 正常ならば、血管外に漏出した水分は、リンパ路によって速やかに取り除かれる。
  • 肺水腫とは「血管から間質へ流出する水分量」>「リンパ路によって取り除かれる水分量」の状態になると起こる。(処理しきれなくなって、肺に溢れてしまう状態。)
  • 漏出液が間質内に貯留→間質性肺水腫、増悪すると肺胞内に貯留→肺胞性肺水腫となる。病態生理からは、静水圧性肺水腫、びまん性肺胞傷害(DAD)を伴う透過性亢進型、DADを伴わない透過性亢進型、静水圧上昇と透過性亢進が合わさった混合型の4つに分けて整理される。

肺水腫の原因は?

肺に水が溜まる肺水腫の原因は、その病態から大きく2つに分けられます。

  1. 水力学的肺水腫:肺の毛細血管圧が上昇する。
  2. 透過性亢進型肺水腫:肺の毛細血管の透過性が亢進する。

の2つです。

肺の毛細血管の圧(静水圧)が上がって血管から水分が押し出されるのが1、血管の圧は高くないものの、血管の壁から水分が漏れやすくなるのが2です。画像診断の総説では、透過性亢進型をさらにびまん性肺胞傷害(DAD)を伴うもの(ARDSなど)と伴わないものに分け、両者が混在する混合型も区別しています(上記の4分類)。

これ以外に低アルブミン血症に陥った場合、血漿膠質浸透圧が低下して肺水腫になることがあります。

水力学的肺水腫の原因は?

肺の毛細血管圧が上昇する、つまり血管から溢れるくらい肺静脈圧が上昇してしまう原因は以下のものが挙げられます。

  • 左心不全
  • 腎不全
  • 過剰輸液

このうち左心不全によるものが最多と言われます。

腎不全と、過剰輸液は純粋に循環血漿量が増えるものですが、左心不全の場合は、心臓のポンプ機能が低下した結果、心臓から全身にうまく血液を送り出せなくなり、肺に水が溜まってしまう(肺うっ血)状態です。

肺水腫の原因として最多である左心不全を例にすると下記のようになります。

左心室のポンプ機能に低下を認めると、血液を拍出できなくなりますから、左心室の圧が上がり、その前の左心房の圧が上がり、さらにその前の肺静脈の圧が上がり、静水圧が上がります。そうなると肺の間質に血液から水分が漏れ出て来て、それが進行すると肺胞に水が溢れてきます。

透過性亢進型肺水腫の原因は?

一方で、血管の透過性が亢進した結果、肺水腫に陥ってしまう原因としては、

  • 尿毒症
  • 外傷
  • ショック
  • 薬剤:パラコート、刺激ガス、ヘロイン
  • ARDS(急性呼吸窮迫症候群)なお、ARDSの診断基準は、2012年のベルリン定義を拡張した「新しいグローバル定義」が提案されています。高流量鼻カニュラ(30L/分以上)使用例も含め、低酸素血症の判定にPaO2/FiO2≦300に加えてSpO2/FiO2≦315(SpO2≦97%のとき)も使え、画像基準の両側性陰影は維持したうえで肺エコーも画像診断法に加えられました。

といったものが挙げられます。

肺水腫の原因には以上のようなものがあり、これらを念頭に入れて肺水腫の原因を精査をすることになります。

再膨張性肺水腫とは?

  • 気胸や大量胸水で長くしぼんでいた肺を、ドレナージなどで急に広げたあとに起こる肺水腫です。
  • 画像では、広げた側(同側)の肺に軽度の浸潤影が出るのが典型です(Gluecker 1999)。両側性・肺門側優位の心原性肺水腫とは分布が異なります。
  • 自然気胸146例の検討では21例(14.4%)に起こり、20〜39歳では40歳以上より多く、気胸が大きいほど起こりやすくなっていました(Matsuura 1991)。

 

では、そもそも肺水腫を疑うきっかけとなる症状にはどのようなものがあるのか見てみましょう。

肺水腫の症状は?

肺水腫は以下のような症状があります。

  • 労作時息切れ
  • 頻呼吸
  • 咳
  • 喘鳴
  • 起座呼吸
  • 発作性夜間呼吸困難
  • ピンク色泡沫状の喀痰
  • 肺野の聴診で断続性のラ音
  • 心臓の聴診でⅢ音、Ⅳ音、gallop rhythm

起座呼吸とは、寝ていると静脈の血流が増えて呼吸困難が増悪してしまうため、起き上がり呼吸困難が楽になる座る姿勢を自然に取るようになることを指します。

肺水腫の画像診断は?

共通して見られる所見

  • 心拡大(左房、左室の拡大)
  • 肺血流の再分布(上肺野の血管陰影が、下肺野と同じかそれ以上に太くなる。CTでは左房圧上昇により肺静脈の拡張が見られる。)

①間質性肺水腫

肺静脈圧(肺動脈楔入圧)が上がり、まず肺の間質(肺胞壁、小葉間隔壁、気管支血管束)に水がたまった状態です。
Xray findings of heart failure

▶広義間質が肥厚する。

  • 小葉間隔壁肥厚→Kerley’s line
  • 胸膜肥厚→胸膜下水腫
  • 気管支周囲間質肥厚→peribronchial cuffing
  • 葉間胸水→vanishing tumor

Kerley’s line、peribronchial cuffing、vanishing tumorはレントゲン上で使用される用語。

広義間質の復習

肺の広義間質とは、下の通り。

lymphatic vessel2

間質の病態は以下の通り。

pulmonary edema

二次小葉の図(イラスト)にすると黄色線の部位すべてが広義間質。

lymphatic vessel1

すなわち、小葉間隔壁が肥厚し、気管支血管束が肥厚することがわかります。

②肺胞性肺水腫

圧がさらに上がり、間質から溢れた水が肺の実質(肺胞内)にたまった状態です。

  • 肺胞性肺水腫に至ると、すりガラス影、浸潤影が出現。
  • 浸潤影は内層に優位に分布する。(これは、外層では、求心性と遠心性の2方向へのリンパ流があり、内層に比べてより速やかに滲出液が除去されるため。)
  • 蝶形陰影(butterfly shadow)を呈するようになる。内部にair bronchogramあり。

まとめると肺水腫のCT所見のイメージは以下のよう。

pulmonaryedema1

胸部レントゲンでの変化

レントゲンでは、上記のKerley’s B line(カーリーのBライン:小葉間隔壁の肥厚を反映)、peri-bronchial cuffing(気管支周囲の肥厚:B3bで観察しやすい。→B3bについてはこちら)、vanishing tumor(葉間胸水を反映)、butterfly shadow(蝶形陰影:両側肺門部の浸潤影を反映)のほか、

  • C-P angleの鈍化:胸水を反映。
  • 左心不全によるものの場合、心陰影の拡大。

が見られます。

左心不全によるものの場合、レントゲン以前に、心エコーによる心機能の評価が重要となります。

心原性(静水圧性)と透過性亢進型の画像の違い

所見 心原性(静水圧性) 透過性亢進型(ARDSなど)
陰影の分布 肺門側(中枢側)優位 斑状・末梢優位のことがある(約半数)
心拡大・肺静脈の拡張 見られることが多い 目立たないことが多い
小葉間隔壁肥厚・胸水 よく見られる 見られることもある

ただし画像だけでの区別には限界があります。重症の肺水腫45例の胸部X線写真の検討では、静水圧性の87%は正しく判定できた一方、透過性亢進型は60%にとどまりました。斑状・末梢優位の分布が最も区別に役立つ所見で、静水圧性の13%、透過性亢進型の50%に見られました。透過性亢進型でも気管支周囲の肥厚(72%)、血管茎の拡大(56%)、小葉間隔壁の線(40%)、胸水(36%)がしばしば見られました(Aberle 1988)。

肺水腫の動脈血液ガス所見は?

低酸素血症およびⅠ型呼吸不全を反映して、PaO2が低下し、A-DO2の開大を認めます。

また、頻呼吸になることで呼吸性アルカローシスとなり、PaCO2の低下がみられます。


 

症例 70歳代男性 心不全による肺水腫

pulmonary edema

心拡大、胸水、両側中枢側優位浸潤影、気管支血管束の肥厚、小葉間隔壁の肥厚あり、

心原性肺水腫を示唆する所見。


 

症例 80歳代女性 心不全による肺水腫

cardiogenic pulmonary edema

両側中枢側優位にconsolidation-GGOあり。

肺水腫を疑う所見あり。


 

 症例40歳代男性 腎不全による肺水腫

pulmonaryedema

両側の中枢側優位に浸潤影を認めています。

また胸水貯留あり。

pulmonaryedema1

右優位に胸水あり。心拡大は認めていません。(心原性肺水腫ではなさそう)

腎不全を認めており、腎不全による肺水腫と診断されました。

肺水腫のCT画像10選

肺水腫の画像診断はレントゲンであっても、胸部CTであっても慣れないと画像からはなかなか難しいところがあります。そこで、肺水腫のCT画像を目に焼き付けていただくために、さらに肺水腫のCT画像10選を集めました。

なお肺水腫ではどう言ったレントゲンやCT画像になるのかはこちらにもまとめましたので、合わせてご覧下さい。→肺水腫や心不全の胸部レントゲンやCT画像診断のポイントは?

心不全が原因の肺水腫CT画像7選

肺水腫の原因として最も多いのが心不全であり、特に左心不全です。

左心不全で肺水腫となる機序は以下の通りです。

そこでまずは心不全が原因で肺水腫となったCT画像を7症例見ていきましょう。

症例1 80歳代男性  心房細動及び大動脈弁閉鎖不全症によるうっ血性心不全

【CT所見】肺野に上葉優位に気腫性変化あり。気管支血管束の肥厚及び中枢側優位にすりガラス影あり。心拡大及び心嚢水貯留あり。間質性肺水腫の状態。

診断:エコーと合わせてrapid Af +ARに伴ううっ血性心不全

症例2  50歳代男性  拡張型心筋症に伴ううっ血性心不全

【主訴】起坐呼吸 ピンク色痰
【CT所見】(エコーにて拡張型心筋症に伴ううっ血性心不全と診断されている)
両側中枢側優位にすりガラス影、小葉間隔壁の肥厚、気管支血管束の肥厚あり。両側胸水あり。拡張型心筋症に伴ううっ血性心不全に矛盾しない所見。

症例3 80歳代女性  心不全

【主訴】呼吸苦、胸部不快感、顔面・両側下腿浮腫あり。
【CT所見】心拡大および心嚢水あり。肺動脈拡張あり。肺野では小葉間隔壁の肥厚、気管支血管束の肥厚、中枢側優位にコンソリデーションあり。胸水貯留あり。心不全を疑う所見。

症例4 60歳代男性   左心不全による肺水腫に加えて、右心不全の合併

【主訴】1週間前からの呼吸困難
【心エコー所見】TTE:wall motion diffuse hypo, EF 40%,LV dilatation(+),LVH(+),moderate MR,AS(-),mild AR,severe TR, IVC dilatation(+),RC decreased,PE(-)
【CT所見】肺野に気管支血管束の肥厚及び肺底部を中心に小葉間隔壁の肥厚あり。またすりガラス影が散見される。両側胸水あり。IVC拡張あり。左心不全による肺水腫に加えて、右心不全の合併あり。

症例5 40歳代男性   拡張型心筋症による急性心不全

【主訴】呼吸苦
【CT所見】気管支血管束・小葉間隔壁の肥厚あり。中枢側優位にすりガラス影〜コンソリデーションあり。心拡大あり(拡張型心筋症と診断されている)。心嚢水あり。多発性嚢胞腎あり。心不全を疑う所見。

診断:拡張型心筋症による急性心不全

症例6 70歳代女性  心不全

【CT所見】小葉間隔壁の肥厚及び気管支血管束の肥厚あり。小葉中心性のすりガラス影あり。少量胸水あり。葉間胸水あり。心不全による間質性肺水腫を疑う所見。

 

症例7 40歳代男性   左心不全による肺胞性肺水腫

【CT所見】 (エコーにて左心不全(求心性肥大、EF=35-40%と低下。)の診断。)
肺野には両側中枢側優位にコンソリデーションあり。気管支拡張も一部であり。両側胸水あり。心拡大は認めないが左室壁肥厚あり。心嚢水あり。左心不全による肺胞性肺水腫を疑う所見。

心原性以外の原因の肺水腫CT画像

では、続いて心原性以外の原因が原因で起こる肺水腫の症例を見ていきましょう。

症例8 40歳代女性 慢性腎不全、尿毒症肺による肺水腫

【主訴】ふらつき
【CT所見】髄質嚢胞腎による慢性腎不全。肺野では、中枢側優位に浸潤影あり。両側胸水あり。
慢性腎不全、尿毒症肺による肺水腫が疑われる。

 

症例9   50歳代男性  過剰輸液による肺水腫

【CT所見】両側肺野に中枢側優位に浸潤影〜すりガラス影あり。気管支血管束の肥厚あり、両側胸水あり。腸間膜及び皮下は浮腫状。腹水あり。過剰輸液があり、過剰輸液による肺水腫と診断された。

症例10 40歳代 男性  脳出血による神経原性肺水腫

【CT所見】頭部CTにおいて脳出血の脳室内穿破あり。肺野には両側中枢側優位にすりガラス影〜一部でコンソリデーションあり。脳出血による神経原性肺水腫を疑う所見。神経原性肺水腫は両側性の比較的均一な浸潤影を示し、約半数で肺尖部優位に分布すると報告されています(Gluecker 1999)。

最後に

肺水腫の原因で最も多いのは左心不全によるものです。ですので、肺水腫=左心不全のように紹介されることもありますが、それ以外にも原因はたくさんあります。

肺炎なのか心不全による肺水腫なのか、あるいはそれらを合併しているのか、臨床の現場では非常に悩ましいことも多々あります。肺水腫を見たときは、その原因が何であるかを検索していく必要があり、その際には、

  • 症状
  • 心エコー
  • 胸部レントゲン、CT
  • 血液ガス

などが参考になります。肺水腫というのはCT画像でこのような所見を認めるということを目に焼き付けることによって、少しでも明日からの医療に役立てば幸いです。

肺水腫でよくある疑問(Q&A)

Q. バタフライシャドウ(蝶形陰影)があれば心不全ですか?
A. 心不全による肺水腫の代表的な所見ですが、腎不全・過剰輸液・神経原性など心原性以外の肺水腫でも肺門側優位の浸潤影になることがあります(本記事の症例8〜10)。心拡大の有無、心エコー、BNP、利尿薬への反応をあわせて原因を考えます。

Q. 肺水腫と肺炎はCTで区別できますか?
A. 典型例では、両側対称・肺門側優位のすりガラス影に小葉間隔壁や気管支血管束の肥厚と胸水を伴う点が肺水腫らしい所見です。ただ、静水圧性肺水腫はほかの病気に似ることがあり(Storto 1995)、肺炎の合併もあるため、治療後の短期間での変化を確認することが役立ちます。

▶動画で学ぶ肺水腫

関連記事)心不全の画像診断

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あわせて読みたい:胸部レントゲンの肺胞性陰影と間質性陰影の見分け方

参考文献

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