先に結論:腹痛の部位別の鑑別と緊急手術が必要な病気

  • 腹痛は痛む場所(心窩部・右上・左上・右下・左下・正中・下腹部)で鑑別を絞りますが、心筋梗塞・肺炎・大動脈解離など腹部以外の原因も忘れないことが大切です
  • 女性の下腹部痛では、妊娠の有無をまず確認し、異所性妊娠・卵巣茎捻転・卵巣出血を考えます。月経周期との関係も手がかりです
  • 穿孔・絞扼性腸閉塞・腸間膜動脈閉塞・ヘルニア嵌頓・大動脈瘤破裂・異所性妊娠破裂などは緊急手術やIVRが必要なので、まず見逃さないようにします
  • わき腹〜背中(側腹部)の痛みでは尿管結石・腎盂腎炎が代表的で、尿管結石の疑いでは単純CTが最初の検査です
  • 急性腹症のCTは、緊急手術に直結する所見(穿孔・壊死・出血・血管の異常)を順に確認します。消化管→腹膜・出血→肝胆膵→尿路→婦人科→血管という順番の例を、下の「急性腹症CTの読む順番」に表にしました

stomach ache

腹痛の部位を心窩部痛、右上腹部痛(右季肋部痛)、左上腹部痛(左季肋部痛)、右下腹部痛、左下腹部痛、腹部正中部痛、下腹部正中部痛に分類して、それぞれの鑑別疾患をまとめました。

また緊急手術を要することがある急性腹症についてもまとめました。なお、痛みの部位は鑑別の出発点として有用で、画像検査は右上腹部痛ではまず超音波、右下・左下腹部痛ではCTが推奨されています(Cartwright 2008)。急性腹症診療ガイドライン2015では、早期からの鎮痛(特にアセトアミノフェン静注)も推奨されています(Mayumi 2016)。米国放射線学会(ACR)の適正使用基準(2022年改訂)では、右下腹部痛の成人では造影CTが最も適切な検査とされ、妊婦では非造影MRIと超音波が選ばれます(ACR 2022)。適切な画像診断の普及により、虫垂炎を疑った手術で虫垂炎がなかった割合は最大25%から1〜3%程度まで下がったとされています(ACR 2022)。気になる腹痛、特に強い痛み・発熱・吐血や下血・冷や汗を伴う痛みがあれば、早めに医療機関を受診してください。

心窩部痛

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右上腹部痛(右季肋部痛)

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左上腹部痛(左季肋部痛)

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左下腹部痛

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右下腹部痛

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側腹部痛(わき腹〜背中側の痛み)

尿管結石が疑われるときは単純CTが最初の検査で、結石の位置・大きさや合併症、結石以外の原因も評価できます。妊婦ではまず超音波です(ACR 2023)。

腹部正中部痛

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下腹部正中部痛

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生理周期による下腹部痛の鑑別診断

月経からの日数(28日周期として)

  • 1-5日 子宮内膜症
  • 5-13日 卵胞嚢胞破裂
  • 13-15日 排卵痛、排卵出血
  • 15-28日 黄体嚢胞破裂
  • 28日以降 異所性妊娠、流産

周期には個人差があるため、あくまで目安です。

Emergency Radiology 救急の画像診断とIVR P203より引用。

緊急手術を要する腹腔内疾患

臓器の穿孔、破裂

臓器の血行障害

重症の炎症性疾患

腹腔内出血

急性腹症CTの読む順番(臓器別チェック)

CTでは痛みの部位にとらわれず、緊急手術やIVRが必要な病態を拾う順番を決めて見ていくと見落としが減ります。順番に決まりはありませんが、一例を表にまとめます。腹部CT全体の見方は腹部CTの読み方、腹部レントゲンは腹部レントゲンの読み方もご覧ください。

順番 見る場所 CTで見る所見
① 消化管(胃〜直腸) 穿孔:腹腔内の遊離ガス、壁の連続性の途絶、壁の近くに集まった小さな気泡。壊死(虚血):壁の造影不良、壁肥厚または菲薄化、壁内ガス、門脈ガス。炎症:壁肥厚、周囲の脂肪織の濃度上昇、膿瘍
② 腹膜・腹腔内(腹水、遊離ガス、出血) 腹水の濃度が高ければ血液を考え、濃い血腫(凝血)が集まる場所から出血源を探す。遊離ガスの量と分布は穿孔部位の手がかりになる
③ 肝・胆道・膵 胆嚢壁肥厚・胆石・胆管拡張(胆嚢炎・胆管炎)、膵周囲の脂肪織混濁(膵炎)、肝の腫瘍や破裂
④ 腎・尿路 尿管結石と水腎症(単純CTが最初の検査)、腎盂腎炎
⑤ 骨盤・婦人科 妊娠の有無を確認したうえで、卵巣の腫大と茎捻転、卵巣出血や異所性妊娠破裂による腹腔内の血液(血性の腹水)
⑥ 血管 腹部大動脈瘤の破裂(大動脈周囲の血腫)、上腸間膜動脈の閉塞、腸間膜の静脈血栓

消化管:穿孔・壊死・炎症に分けて考える

  • 穿孔:手術で確認した消化管穿孔155人の検討では、遊離ガスは虫垂以外の穿孔の95%を超えて見られましたが、虫垂炎の穿孔では44%にとどまりました。直接所見(遊離ガス・壁の破綻)と間接所見(炎症・液体貯留・壁の限局性肥厚)をあわせると、穿孔部位を90%で正しく診断できました(Imuta 2007)。遊離ガスがなくても穿孔を否定できません
  • 遊離ガスの量と場所は穿孔部位で異なり、壁の途絶や壁の近くに集まる気泡が部位予測の手がかりになります。多断面の再構成画像で精度が上がります(Kim 2009)
  • 壊死(虚血):経壁性の壊死と病理診断された77人の検討では、壁の造影不良または欠如は腸間膜動脈の虚血で81〜83%、絞扼性腸閉塞で56%に見られました。壁内ガスは非閉塞性の腸間膜虚血で59%、閉塞性で29%、絞扼性腸閉塞では7%、門脈ガスはそれぞれ48%・10%・0%でした。絞扼性腸閉塞では、造影前から壁が白い(自然な高吸収)所見が41%で最も多く見られました(Calame 2020)
  • 炎症:虫垂炎・憩室炎・腸炎などは、壁肥厚と周囲の脂肪織の濃度上昇、膿瘍や小さなガスの有無を見ます。穿孔の兆候(周囲の液体貯留、ガスの漏れ)があれば緊急度が上がります

婦人科疾患:超音波が先、CTは「他の病気の除外」でも使う

  • 生殖年齢の急性骨盤痛では、経腹・経腟の超音波(ドプラ併用)が最初の検査として通常適切です。婦人科以外の原因が疑われ妊娠反応が陰性なら、腹部骨盤CTも通常適切とされます(ACR 2024)
  • 妊娠反応が陰性で婦人科疾患が疑われるときは、造影CTや骨盤MRIも選択肢になります(ACR 2024)。CTで読むときは、卵巣の腫大・茎捻転・出血や腹腔内の血液を見落とさないことが大切です

血管:破裂のサインと、造影をしない場合の限界

  • 腹部大動脈瘤では、破裂した52人の中で高吸収の三日月状の領域(high-attenuation crescent)が21%に見られ、破裂していない56人では見られませんでした。大動脈周囲の血腫がはっきりしないときの手がかりになります(Siegel 1994)
  • 造影剤を使えない場合は、CTから分かることが減ります。造影CTを基準にして、造影剤を消した画像(単純CT)を読影した研究では、全体の正確度は70%、主たる診断では専門医82%・研修医76%でした(Shaish 2023)。血管や壁の造影が重要な虚血・出血が疑われるときは、造影CTを検討します

腹痛の部位別でよくある疑問(Q&A)

Q. 腹痛のCTで遊離ガスがなければ、穿孔ではないですか?
A. そうとは限りません。手術で確認した消化管穿孔155人の検討では、遊離ガスは虫垂以外の穿孔の95%超で見られましたが、虫垂炎の穿孔では44%でした(Imuta 2007)。壁の途絶や周囲の炎症、液体貯留もあわせて判断します。強い腹痛・発熱・冷や汗があるときは、早めに医療機関を受診してください。

Q. 若い女性の下腹部痛では、CTの前に何を確認しますか?
A. まず妊娠の有無を確認します。生殖年齢の急性骨盤痛では、超音波が最初の検査として通常適切とされています(ACR 2024)。

Q. お腹の右上(右季肋部)が痛いときに考える病気は?
A. 胆石発作・急性胆のう炎・急性胆管炎などの胆道の病気が代表的で、画像検査はまず超音波です(Cartwright 2008)。発熱や黄疸を伴う痛みは早めに受診してください。

Q. 尿管結石ではどんな症状が出る?
A. 片側のわき腹から背中の強い痛みが突然起こり、下腹部や陰部の方へ広がることがあり、血尿を伴うこともあります。石が膀胱の近くまで下りてくると、頻尿や残尿感など膀胱の症状が出ることがあります。

Q. 尿管結石は自然に出る?
A. 大きさと位置で変わります。CTで診断した172例では、自然に出た割合は2〜4mmで76%、5〜7mmで60%、9mmより大きいと25%で、膀胱の入口(尿管膀胱移行部)の石では79%でした(Coll 2002)。

あわせて読みたい:救急外来・当直対応のまとめ、消化管疾患の画像診断まとめ

参考文献

  1. Mayumi T, Yoshida M, Tazuma S, et al. The Practice Guidelines for Primary Care of Acute Abdomen 2015. Jpn J Radiol. 2016;34(1):80-115. PubMed
  2. Cartwright SL, Knudson MP. Evaluation of acute abdominal pain in adults. Am Fam Physician. 2008;77(7):971-8. PubMed
  3. Stoker J, van Randen A, Laméris W, et al. Imaging patients with acute abdominal pain. Radiology. 2009;253(1):31-46. PubMed
  4. Expert Panel on Gastrointestinal Imaging, Kambadakone AR, Santillan CS, et al. ACR Appropriateness Criteria Right Lower Quadrant Pain: 2022 Update. J Am Coll Radiol. 2022;19(11S):S445-S461. PubMed
  5. Expert Panel on Gastrointestinal Imaging, Scheirey CD, Fowler KJ, et al. ACR Appropriateness Criteria Acute Nonlocalized Abdominal Pain. J Am Coll Radiol. 2018;15(11S):S217-S231. PubMed
  6. Expert Panel on Urological Imaging, Gupta RT, Kalisz K, et al. ACR Appropriateness Criteria Acute Onset Flank Pain-Suspicion of Stone Disease (Urolithiasis). J Am Coll Radiol. 2023;20(11S):S315-S328. PubMed
  7. Coll DM, Varanelli MJ, Smith RC. Relationship of spontaneous passage of ureteral calculi to stone size and location as revealed by unenhanced helical CT. AJR Am J Roentgenol. 2002;178(1):101-3. PubMed
  8. Imuta M, Awai K, Nakayama Y, et al. Multidetector CT findings suggesting a perforation site in the gastrointestinal tract: analysis in surgically confirmed 155 patients. Radiat Med. 2007;25(3):113-8. PubMed
  9. Kim SH, Shin SS, Jeong YY, et al. Gastrointestinal tract perforation: MDCT findings according to the perforation sites. Korean J Radiol. 2009;10(1):63-70. PubMed
  10. Calame P, Malakhia A, Turco C, et al. Transmural Bowel Necrosis From Acute Mesenteric Ischemia and Strangulated Small-Bowel Obstruction: Distinctive CT Features. AJR Am J Roentgenol. 2020;214(1):90-95. PubMed
  11. Brook OR, Dadour JR, Robbins JB, et al. ACR Appropriateness Criteria® Acute Pelvic Pain in the Reproductive Age Group: 2023 Update. J Am Coll Radiol. 2024;21(6S):S3-S20. PubMed
  12. Siegel CL, Cohan RH, Korobkin M, et al. Abdominal aortic aneurysm morphology: CT features in patients with ruptured and nonruptured aneurysms. AJR Am J Roentgenol. 1994;163(5):1123-9. PubMed
  13. Shaish H, Ream J, Huang C, et al. Diagnostic Accuracy of Unenhanced Computed Tomography for Evaluation of Acute Abdominal Pain in the Emergency Department. JAMA Surg. 2023;158(7):e231112. PubMed

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