非定型肺炎とは、通常の細菌とは異なる非定型病原体によって起こされる肺炎のことです。

非定型肺炎では、細菌性肺炎(定型肺炎)には効果的な合成ペニシリンやセフェム系抗生物質が効きません。マクロライド系の抗生物質など別の抗生物質が必要となります。

つまり治療方法が異なるため、非定型肺炎を定型肺炎と分けることが大事です。

そこで今回は非定型肺炎についてまとめました。

非定型肺炎とは?細菌性肺炎との違いは?

上で述べたように、非定型肺炎とは、

  • 通常の細菌とは異なる非定型病原体によって起こされた肺炎

のことです。

原因菌が通常と異なるから、非定型ということで、さらに症状などの臨床像も異なるという意味でも非定型です。

 

非定型肺炎の何が非定型なのか?
  • 肺炎の原因菌が非定型。
  • 肺炎の症状など臨床像が非定型。

 

細菌性肺炎と非定型肺炎には症状と、採血検査に次のような違いがあります。

細菌性肺炎 非定型肺炎
症状 咳嗽、喀痰、悪寒、発熱 乾性咳嗽、

呼吸器以外の症状(頭痛、神経症状、全身倦怠感、関節痛、消化器症状)

一般検査 白血球上昇 白血球は正常〜やや上昇。

AST/ALTの上昇。

非定型肺炎では、呼吸器以外の症状が出たり、白血球上昇がないことがあるんです。

そしてこららの臨床所見を元に細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別を行った場合、

  • 感度は80%程度
  • 特異度は90%程度

と報告されています。ただしレジオネラ肺炎は除きます。(呼吸器感染症に関するガイドライン;日本呼吸器学会、2008)

かなり有効だということです。

 

非定型肺炎にはどのような原因菌による肺炎がある?

非定型肺炎に分類される原因菌には、以下ものが含まれます。

  • マイコプラズマ肺炎(Mycoplasma pneumonia)
  • クラミドフィラ肺炎(Chlamydophila pneumonia)
  • レジオネラ肺炎(Legionella pneumonia)
  • ウイルス性肺炎(viral pneumonia)

など。

非定型肺炎の原因菌(非定型病原体)の特定は?

病原体を同定するための検査にはどのようなものがありますか?

以下のような検査で鑑別します。

グラム染色

ただし、非定型病原体はいずれも染色されないため、除外診断目的で使われます。

 

喀痰培養

レジオネラが疑われる場合に施行されます。

各種抗原検査

  • 咽頭ぬぐい液:インフルエンザ迅速診断、マイコプラズマ迅速診断キット
  • 尿:肺炎球菌、レジオネラ

インフルエンザの迅速キットはよく見ますね。

レジオネラ尿中抗原の注意点

レジオネラの場合、血清型1,6型の2つが人体に病原性を有するがこの検査では1型のみしか検出できず、尿中レジオネラ抗原が陰性であっても、否定することができません。

肺炎球菌尿中抗原の注意点

また、肺炎球菌の尿中抗原では、数週間以内に肺炎球菌性肺炎の既往があったり、肺炎球菌ワクチンの接種がある人では、肺炎球菌に感染していなくても陽性となる(偽陽性)ことがあります。それ以外には小児で偽陽性となることがあるので注意が必要です。

ペア血清を含む各種抗体検査

マイコプラズマ、ウイルス、クラミドフィラなどで用いられます。

最も確実な方法ですが、検査結果が出るまでに時間がかかるため、その場での初期治療には役立ちません。

寒冷凝集反応

主にマイコプラズマで用いられます。

非定型肺炎のそれぞれの病原体の特徴は?

それぞれの特徴は以下の通りです。

マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ病原体(Mycoplasma pneumoniae)による肺炎。

市中肺炎として頻度が高い病原体です。

診断には凝集反応やマイコプラズマ抗体などの血清免疫反応が利用されます。

画像上は気管支肺炎〜細気管支肺炎像を示す。気管支壁の肥厚も来たす。

マイコプラズマ肺炎

胸部CTに置いて左の下葉に小葉中心性の分布を示す結節を多数認めています。気管支壁の肥厚も認めており、マイコプラズマにも矛盾しない所見です。(抗体検査でマイコプラズマと診断された。)

この症例のCT画像を実際に見てみる→マイコプラズマ肺炎のCT画像所見

クラミドフィラ肺炎

肺炎クラミドフィラ(Chlamydophila pneumoniae)による肺炎。

非細菌性の代表的な病原菌であり、画像上は、基本は気管支肺炎像を示します。

レジオネラ肺炎

レジオネラ(Legionella pneumophila)による肺炎。

抗菌薬の選択を間違えると致死的になる場合があり重要な感染症です。

レジオネラは水周りに存在すること多く、温水施設や給水施設の水垢や粘液内部に存在します。

画像上は、肺炎球菌性肺炎などと区別がつかないこともありますが、比較的広範なすりガラス影の中に斑状のコンソリデーションが混在するパターンです。

またレジオネラ肺炎は神経症状や消化器症状、低Na血症といった症状をきたすこととがあります。

ウイルス肺炎

ウイルス肺炎は大きく2つに分けられ、

  • 市中肺炎の病原体としての呼吸器ウイルス(インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ニューメタモウイルス、RSウイルスなど)
  • 麻疹水痘ウイルスによる肺炎、サイトメガロウイルス肺炎(CMV:cytomegalovirus)

があります。

画像上は、気管支肺炎とまだらなすりガラス影が主体の肺炎となります。

ウイルス肺炎

末梢優位に両側にまだらな斑状のすりガラス影を認めます。気管支壁の肥厚もあり。インフルエンザAが陽性であり、他の非定型肺炎の起炎菌はいずれも抗体陰性であったため、インフルエンザウイルス肺炎と診断されました。

この症例の実際のCT画像を見てみる→インフルエンザウイルス肺炎のCT画像所見

最後に

非定型肺炎とはどういうものなのか、なぜ非定型なのかといったところから、非定型肺炎の起炎菌、診断方法、各論にわたり見ていきました。

いわゆる定型肺炎である細菌性肺炎と、非定型肺炎では治療が異なります。ですので、いかにこれらをまずは鑑別できるかがポイントになります。鑑別できない場合は、両方に効果的な抗生剤を使うことになります。

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