坐骨恥骨軟骨結合(ischiopubic synchondrosis)

  • 小児の坐骨枝と恥骨下枝は軟骨結合により、一過性軟骨性関節を形成し、坐骨恥骨軟骨結合(ischiopubic synchondrosis)と呼ばれる。軟骨結合が完全に骨化しないで残っている状態。
  • 成長とともに骨性癒合により閉鎖するため、小児の未熟骨のtemporary joint(正常変異)である。
  • この軟骨結合が見られるのはCaffeyらは6-8歳で50%、Hernethらは4-15歳で60.7%と報告している。
  • この軟骨結合が残っている場合、多くは無症状だが、臀部痛や股関節の運動制限を起こすことがある。
  • 恥骨と坐骨の軟骨結合が一時的に膨隆して腫瘤のように見えることがある。これがしばしば片側性に認めることがあり、この部位に坐骨恥骨軟骨結合(ischiopubic synchondrosis)が生じることを知っておかないと病的と誤診してしまう。片側性の場合は、利き足じゃない側に認めることが多い。
  • 症状がある場合は疾患として扱われ、ischiopubic synchondrosis、van Neck病、van Neck-Odelberg病と呼ばれ、骨端症(osteochondrosis)に含まれることがある。ただし、本来の骨端症の定義には当てはまらない。
  • 症候性の場合は、MRIで関節周囲に骨髄、軟部組織の浮腫としてSTIRや脂肪抑制T2WIで高信号となる。
  • 閉鎖後の年齢で同部にSTIRや脂肪抑制T2WI高信号を認める場合は、単なる正常変異としてのischiopubic synchondrosisではなく、ストレス骨折(中でも疲労骨折)の可能性を考える。

症例 5歳女児

恥骨下枝と坐骨枝に境界があり、軟骨結合により関節を形成していることがわかります。

同部に症状はありませんので、正常変異です。

恥骨坐骨骨折などと誤診しないように注意しましょう。

症例 7歳男児

先ほどの症例と異なり、成人例のように恥骨下枝と坐骨枝の間に骨性癒合を認めており、境界ははっきりしません。

同部の軟骨関節が既に閉鎖していると判断できます。

 

症例 6歳男児 右腰痛

引用:radiopedia

レントゲンで右坐骨恥骨軟骨結合に不整、膨隆を認めており、左右差があることがわかります。これ自体は正常範囲なのですが、MRIのSTIRでは同部を中心に高信号を認めており、同部に炎症があり、主訴の原因となっていることが示唆されます。

 

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参考文献:股関節・骨盤の画像診断 P233-234

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