首の付け根を触ると、ぽこっと出っぱった骨があります。多くは第7頸椎(C7)の棘突起(きょくとっき)です。この棘突起だけが折れる骨折を棘突起骨折といい、首の付け根から背中の上のあたり(C6〜T1付近)に起こる典型的なものはClay-shoveler骨折(クレイショベラー骨折)と呼ばれます。粘土をシャベルで放り投げる作業員に多かったことからついた名前です。
骨折そのものは安定していることが多い一方、交通事故や転落でみつかった棘突起骨折には、靱帯の損傷や脱臼が隠れていることがあります。この記事では、X線・CT・MRIでどこを見るか、安定性をどう考えるかを、実際の画像とともに解説します。頸椎の基本は頸椎の場所と正常なレントゲン・CT画像、頸椎レントゲンの見方もあわせてどうぞ。
先に結論:棘突起骨折(Clay-shoveler骨折)の画像診断のポイント
- 好発部位:C7がもっとも多く、C6〜T1の頸胸椎移行部に集まります。1か所とは限らず、何個も続けて折れることがあります
- X線:側面像で棘突起の中ほどに斜めの骨折線、先端の骨片が後方・下方へずれます。正面像では棘突起が二重に見える「double spinous process」が手がかりです
- CT:骨折線が棘突起だけにとどまるか、椎弓板・椎弓根・関節突起に及ぶかを確かめます。上下のレベルも1つずつ確認します
- MRI:STIR像で棘間靱帯・後方靱帯群の損傷と脊柱管内を確認します。外傷例で神経症状があるときは特に重要です
- 安定性:棘突起だけの骨折は一般に安定で保存的治療が基本です。ただし椎間関節のずれ・アライメント異常があれば別の損傷として扱います
棘突起骨折(Clay-shoveler骨折)とは?
棘突起は椎骨の後ろ側に突き出た突起で、項靱帯や僧帽筋・菱形筋など首から背中の筋肉が付着しています(筋肉の位置は背中の筋肉のCT画像解剖を参照)。
Clay-shoveler骨折は、頸胸椎移行部に起こる棘突起だけの骨折で、もっとも多いのはC7です(Boutros 2025)。1930年代のオーストラリアで、粘土を掘る作業員に同じような骨折が多く報告されたのが名前の由来とされています(Boutros 2025)。
起こり方(機序)
- 筋肉に引っぱられて剥がれる(裂離):首や背中の筋肉が急に強く縮むと、付着している棘突起の先がちぎれるように折れます
- 直接の外力:首の後ろを打つ、転落・交通事故で首が強く曲がるなど
- スポーツ・繰り返しの負担:パドル競技、ウエイトリフティング、バレーボールなどでの報告があり、突然発症する型と、しばらく鈍い痛みが続いたあとに折れる型があります(Boutros 2025)
この部位が折れやすい理由として、頸胸椎移行部の棘突起は長く曲げる力がかかりやすいこと、後弯の頂点にあたり細く疲労しやすいことが挙げられています(Boutros 2025)。子どもに起こる同じ型の骨折はSchmitt病とも呼ばれます(Boutros 2025)。
外傷でみつかる棘突起骨折
CTとMRIを見直した5年間の検討では、外傷による孤立性の棘突起骨折は44人で、原因は交通事故25人・転落18人でした。部位は頸椎18人・胸椎17人・腰椎3人で、15人は複数の棘突起が折れていました。MRIを撮った12人では全員に棘間靱帯の損傷がありましたが、脊柱管内の異常はありませんでした(Altunrende 2025)。
画像の見方
X線(レントゲン)
まず撮られるのは頸椎の側面像と正面像です。
- 側面像:棘突起の先端と椎弓板との中間あたりに、斜めの透亮線(黒い線)がみえます。先端の骨片は後方や後下方へずれます(Boutros 2025)
- 正面像:ずれた骨片が下に重なり、1つの椎骨に棘突起が2つあるように見えます。「double spinous process」「double shadow」と呼ばれる手がかりです(Boutros 2025)
- 写りの限界:C7〜T1は肩と重なり、側面像で写りきらないことがあります。CTとの比較では、頸椎損傷を見つける感度はX線52%、CT98%でした(Holmes 2005)。強い外傷ではCTが基本です

引用:Stickler et al. Cureus 2026(Figure 1)
頸椎の側面像です。矢印がC7の棘突起の骨折を示しています。高校生のアメリカンフットボール選手にみられた安定型のClay-shoveler骨折です。(出典:Stickler et al. Cureus 2026, Figure 1, CC BY 4.0)

引用:Antzoulas et al. J Orthop Case Rep 2025(Figure 1)
(a)受傷後の側面像で、C7棘突起の先端に斜め〜縦方向の裂離骨折がみえます(赤矢印)。(b)正面像でも同じ骨折を赤矢印で示しています。13歳の子どもの症例です。(出典:Antzoulas et al. J Orthop Case Rep 2025, Figure 1, CC BY-NC-SA 4.0)
CT
CTでは、横断像に矢状断・3D画像を合わせて次の点を確認します。
- 骨折線の範囲:棘突起だけか、椎弓板(spinolaminar line)を越えて椎弓根・関節突起・椎体に及ぶか。典型的なClay-shoveler骨折はspinolaminar lineが保たれ、これを越える骨折は非典型として区別されます(Boutros 2025)
- 何レベル折れているか:複数の棘突起骨折は頸胸椎移行部に多く、最初にみつけた骨折より下の椎骨も確認することが勧められています(Altunrende 2025)
- アライメント:椎体の前後のずれ、椎間関節の開き・乗り上げ、棘突起の間隔の開大がないか
- 椎体の骨折:圧迫骨折・破裂骨折が一緒にないか(圧迫骨折と破裂骨折の違い、CTの骨条件で見る脊椎の読影ポイント)

引用:Akhaddar et al. Pan Afr Med J 2013(Figure 1)
頸胸椎のCT矢状断像(A、B)と3D骨画像(C)です。C6からT9まで、連続した複数の棘突起に孤立した骨折があります。(出典:Akhaddar et al. Pan Afr Med J 2013, Figure 1, CC BY 2.0)

引用:Hoong et al. Diagnostics 2022(Figure 2)
(a〜c)3D再構成CTで、T2からT8まで複数の棘突起骨折がみえます。(d〜j)T2〜T8の横断像で、折れた棘突起を矢印で示しています。安定した骨折と判断され、保存的に治療されています。(出典:Hoong et al. Diagnostics 2022, Figure 2, CC BY 4.0)
MRI
MRIは骨折を見るためというより、靱帯と脊柱管を見るために撮ります。
- STIR像:棘間靱帯・棘上靱帯・項靱帯の高信号(浮腫・断裂)、椎間関節包の液体、椎体の骨挫傷
- 脊柱管:椎間板の後方突出、硬膜外血腫、脊髄の信号変化
外傷による棘突起骨折では、骨だけでなくSTIRを含むMRIで靱帯の損傷と脊柱管を評価することが勧められています(Altunrende 2025)。MRIの読み方の順番は脊椎MRIの読み方、脊髄の所見は脊髄損傷のCT・MRI画像診断で解説しています。
読影の順番(まとめ)
外傷の頸椎CTで棘突起骨折をみつけたときは、次の順で確認すると見落としが減ります。
- レベルを数える:C2から順に数え、どの棘突起かを特定します(C7とT1の取り違えに注意)
- 骨折線をたどる:棘突起の先端側か、椎弓板との境目(spinolaminar line)を越えるか
- 上下を見る:隣の棘突起、さらに数レベル下まで多発がないか
- 前方を見る:椎体の高さ、椎体前縁の軟部組織の腫れ、椎間板腔の開大
- 関節を見る:左右の椎間関節が向かい合っているか、乗り上げ・開大がないか
- MRIの要否を考える:神経症状、アライメント異常、棘間の開大があればMRIで靱帯と脊髄を評価します
安定性の考え方
典型的なClay-shoveler骨折は、後方靱帯複合体が保たれていれば力学的に安定で、神経を傷つけることはまずないとされています(Boutros 2025)。下位頸椎の外傷を点数で評価するSLIC(Subaxial Injury Classification)でも、孤立した棘突起骨折は椎弓板骨折や小さな転位のない椎間関節骨折とともに、神経症状がなければ保存的治療の群(1〜3点)に入ります(Joaquim 2014)。
一方で、次の所見があれば「棘突起だけの骨折」とは考えません。
- 椎体のすべり・回旋、椎間関節の亜脱臼や乗り上げ
- 棘突起の間隔が上下で明らかに開いている
- 骨折が椎弓板・椎弓根・関節突起に及ぶ
- 手足のしびれ・脱力など神経症状がある、あるいは時間とともに出てくる
93歳の女性が転倒した症例では、最初のCTで明らかな骨折は指摘されず、24時間以内に四肢麻痺が進行しました。再検査のCTで小さなC6棘突起骨折と椎間関節の亜脱臼がみつかり、MRIでC5-C6の脱臼骨折と靱帯損傷が確認されています(Maheshwari 2025)。外傷でみつかった小さな棘突起骨折は、より大きな損傷の目印のことがあると考えて、アライメントと靱帯を確認します。下位頸椎の損傷の分類は脊椎・脊髄外傷の画像診断、脊椎の過伸展と過屈曲による骨折も参考になります。
見逃しやすい点・まぎらわしいもの
- 項靱帯の石灰化・骨化:棘突起の後方に骨片のような影がみえます。輪郭がなめらかで、棘突起とすき間があるのが特徴です(バルソニー病(項靱帯石灰化症))
- 棘突起先端の癒合していない二次骨化核:若い人で骨折に似て見えます。Boutrosらは、項靱帯の骨形成、癒合していない二次骨化核、spinolaminar lineを越える骨折、むち打ち損傷を、取り違えやすいものとして挙げています(Boutros 2025)
- 写っていないレベル:C7〜T1が肩に隠れ、X線では骨折そのものが写らないことがあります
- 多発:1か所みつけて安心せず、上下の棘突起も1つずつ確認します(Altunrende 2025)
- ほかの部位の損傷:交通事故や転落など強い外傷では、頭部外傷(外傷性くも膜下出血など)や胸部・腹部の損傷が一緒にあることがあります。棘突起骨折の有無とは別に、受傷のしかたに応じて評価します(頭を打ったときの画像検査)
- スポーツでの繰り返しの痛み:疲労骨折のように発症することがあり、X線で見えない時期はMRIが役立ちます(疲労骨折のレントゲン・MRI画像所見)
治療方針に関わる所見
典型的なClay-shoveler骨折では、屈曲・伸展位でも安定していることを確かめたうえで、鎮痛薬・安静・原因となった動作を控えるなどの保存的治療が行われ、およそ6週間でよい経過をとることが多いとされます(Boutros 2025)。首を固定する装具は必要に応じて使われます。
骨片は筋肉に引っぱられ続けるため、骨がつかないまま(偽関節)でも症状がないことが多いとされます。一方、偽関節で痛みが長引く場合や、骨折がspinolaminar部・椎弓根・関節突起に及ぶ不安定な骨折では、骨片の摘出などの手術が検討されます(Boutros 2025)。
治療方針を左右する画像所見は、次の3つにまとめられます。
- 骨折が棘突起だけにとどまっているか
- 椎間関節・椎体のアライメントが保たれているか
- MRIで後方靱帯群の断裂や脊髄の圧迫がないか
棘突起骨折でよくある疑問(Q&A)
Q. 首の付け根の骨が折れたと言われました。首の神経は大丈夫ですか?
A. 棘突起は脊髄から離れた後ろ側の突起で、棘突起だけの骨折なら神経を傷つけることはまずないとされます(Boutros 2025)。ただし手足のしびれや力が入りにくい症状がある場合は、ほかの損傷がないかMRIなどで確認します。
Q. レントゲンでは異常なしと言われたのに痛みが続きます。
A. C7〜T1は肩と重なってX線で写りにくい場所です。強い外傷のあとや痛みが続く場合は、CTで確かめることがあります。頸椎損傷の検出感度はX線よりCTが高いことが示されています(Holmes 2005)。
Q. 骨がくっつかないと言われました。手術が必要ですか?
A. 棘突起の骨片は骨がつかないままでも症状がないことが多く、まずは経過をみるのが一般的です。痛みが長く続く場合に骨片の摘出が検討されます(Boutros 2025)。
※首の付け根や背中の上の痛みが続く、手足のしびれ・脱力があるなど、気になる症状があれば医療機関(整形外科)を受診してください。
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参考文献
- Boutros M, Karam MR, Asmar ME, et al. Clay Shoveler’s Fracture: A Pain in the Neck. Spine Surg Relat Res. 2025;9(1):11-21. PubMed
- Altunrende ME, Ekin EE. Traumatic isolated spinous process fractures. Ulus Travma Acil Cerrahi Derg. 2025;31(4):394-398. PubMed
- Maheshwari S, Munir M, Tayo B, et al. Isolated Spinous Process Fracture: A Commonly Missed Diagnosis. Cureus. 2025;17(12):e99356. PubMed
- Holmes JF, Akkinepalli R. Computed tomography versus plain radiography to screen for cervical spine injury: a meta-analysis. J Trauma. 2005;58(5):902-5. PubMed
- Joaquim AF, Patel AA, Vaccaro AR. Cervical injuries scored according to the Subaxial Injury Classification system: An analysis of the literature. J Craniovertebr Junction Spine. 2014;5(2):65-70. PubMed
- Stickler K, Rupp D, Baumgartner L, et al. A Stable C7 Fracture in a High School Quarterback: A Case of Clay Shoveler’s Fracture. Cureus. 2026;18(6):e111440. PubMed
- Antzoulas P, Giakoumakis S, Sperelakis I, et al. Clay-shoveler’s Fracture in a 13-year-old Child – Case Report and Review of Literature. J Orthop Case Rep. 2025;15(2):111-115. PubMed
- Akhaddar A, Mandour C. Multiple contiguous cervicothoracic Clay-shoveler’s fractures (from C6 to T9 spinal vertebrae). Pan Afr Med J. 2013;16:128. PubMed
- Hoong WTJ, Kaliya-Perumal AK. Multiple Clay Shoveler’s Fractures of the Thoracic Spine. Diagnostics (Basel). 2022;12(9):2190. PubMed
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